発熱:医学部CBT過去問解説
CBT過去問の予想問題の解説記事を続けたいと思います。
今回は、4連問です。以前にも書かせていただきましたが、4連問の最初の問題は、医療面接と関連した問題が出題されることになっています。
作題する方の立場になりますと、どうしても無理な出題になりがちのように思います(無理矢理に医療面接の問題にせざるをえないため)。
(1/4)
56歳の男性.発熱を主訴に来院した.10日前より微熱と倦怠感があった.近医で抗菌薬を処方されたが改善せず,昨日は体温38.5℃まで上昇した.立ちくらみが出現し,動くと動悸がする.
医療面接で重要でないものはどれか.
a たばこを吸っているか
b 体重は減少しているか
c 下痢があるか
d 咳・痰はあるか
e 周囲に同じ症状の人はいるか
(解説)
微熱から始まり、高熱に移行しています。感染症と関連した項目が特に重要です。
a 喫煙と感染症とは、直接関係ありません。
b 感染症では食事摂取量が低下して、体重減少をきたす可能性があります。
c 消化管感染症などでは、下痢がみられます。
d 呼吸器感染症では、咳や痰がみられます。
e 感染症では周囲に同じ症状の人がいる場合があります。
(正答)a
(続く)出血傾向:医学部CBT過去問解説 へ
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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血小板数低下:医学部CBT過去問解説
CBT過去問の予想問題の解説記事を続けたいと思います。
20歳の女性。
血液所見:血小板0.8万のほかは異常なし。PT,APTTは正常。
この病態を示す疾患は何か。
この病態を示す疾患は、以下のなかで何か。
a Bernard-Soulier症候群
b von Willebrand病
c 血友病
d 血小板無力症
e 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
f 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
g 播種性血管内凝固症候群(DIC)
h アレルギー性紫斑病
i ビタミンK欠乏症
【解説】
若い女性で、血小板数が著減しています。
ただし、その他の血液検査は正常ということですので、FDPやフィブリノゲン正常(参考:血液凝固検査入門)、腎障害はなく、LDH、ビリルビンも正常と判断されます。
選択肢のなかで、血小板数が低下する疾患は、Bernard-Soulier症候群(BSS)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、播種性血管内凝固症候群(DIC)です。
BSSでは血小板数が著減することはありません。
TTPでは、LDHや間接ビリルビンが上昇、DICではFDP上昇、フィブリノゲン低下します。
ITPでは、血小板数低下以外の所見はありません。
【正答】
e 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
【解説】
特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)
【病態】血小板に対する自己抗体が産生され、 血小板破壊が亢進し、血小板寿命短縮。
【症状】 点状出血、粘膜出血など。
【検査&診断】
・血小板数の低下 (PT&APTTは正常)。
・他血液疾患の除外(除外診断)。特に,MDSは確実に否定。
・骨髄巨核球の増加。
【治療】
1)血小板数が数万以上では無治療で経過観察。
2)血小板数が2-3万以下で出血があれば、 副腎皮質ステロイド。
3)無効例では, 摘脾術を考慮。摘脾術に際して、免疫グロブリン大量療法。
4)免疫抑制療法も試みられる。
5)ピロリ菌の除菌療法 :今や、ITPの第一選択の治療か。
【リンク】
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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出血時間、PT、APTT:医学部CBT過去問解説
医学部4年生を対象にした、CBT過去問の予想問題の解説を試みたいと思います。
受験生の記憶をもとに再生した過去問ですので、実際の問題とは若干違っている可能性がありますが、ご了解いただきたいと思います。
6歳の男児。出血時間延長、PT正常、APTT延長。
この病態を示す疾患は、以下のなかで何か。
a Bernard-Soulier症候群
b von Willebrand病
c 血友病
d 血小板無力症
e 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
f 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
g 播種性血管内凝固症候群(DIC)
h アレルギー性紫斑病
i ビタミンK欠乏症
【解説】
出血時間の延長(以下の3つの病態のみです)
1. 血小板数の低下:e、f、g
2. 血小板機能の低下:a、b、d
3. 血管壁の脆弱性(+)
(c、h、iは出血時間正常)
von Willebrand病(vWD)では、von Willebrand因子(vWF)が低下します。
vWFは血小板粘着に必要な因子であり、vWDでは血小板粘着能(血小板機能)が低下して出血時間が延長します。
PTの延長
VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)のいずれかの活性が低下:g、i
APTTの延長
XII、XI、IX、VIII、X、V、II、Iのいずれかの活性が低下:b、c、g、i
vWDでは、vWFが低下しますが、vWFは第VIII因子のキャリア蛋白であるため、本疾患では第VIII因子活性も低下します → APTT延長
【正答】
b von Willebrand病
【解説】
von Willebrand病(vWD)
1. 常染色体性優性遺伝(男女とも発症) (cf.血友病は、伴性劣性遺伝で男性のみに発症)。
2. 粘膜出血 :鼻出血など(cf.血友病は、関節内出血、筋肉内出血)。
3. 出血時間&APTTの延長。血小板粘着能の低下。PTや血小板数は正常。血小板凝集能のリストセチン凝集の低下(cf.血友病は、PT&出血時間正常、APTT延長)。
4. von Willebrand 因子 (vWF) の低下。第VIII因子も低下!
5. 治療:血漿由来血液凝固第VIII因子製剤(第VIII因子濃縮製剤だが、vWFも混入している) 、抗利尿ホルモン剤の DDAVP(デスモプレシン)
【リンク】
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(3)
肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(2)から続く。
肝障害を有する患者に抗がん剤を投与する際の用量調整(3)
文献
1. Superfin D, Iannucci AA, Davies AM. Commentary: Oncologic drugs in patients with organ dysfunction: a summary. Oncologist. 2007 Sep;12(9):1070-83.
2. Tchambaz L, Schlatter C, Jakob M, Krahenbuhl A, Wolf P, Krahenbuhl S. Dose adaptation of antineoplastic drugs in patients with liver disease. Drug Saf. 2006;29(6):509-22.
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(2)
肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(1)から続く。
肝障害を有する患者に抗がん剤を投与する際の用量調整(2)
文献
1. Superfin D, Iannucci AA, Davies AM. Commentary: Oncologic drugs in patients with organ dysfunction: a summary. Oncologist. 2007 Sep;12(9):1070-83.
2. Tchambaz L, Schlatter C, Jakob M, Krahenbuhl A, Wolf P, Krahenbuhl S. Dose adaptation of antineoplastic drugs in patients with liver disease. Drug Saf. 2006;29(6):509-22.
(続く)肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(3)へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(1)
著しい肝障害/黄疸症例と抗がん剤治療の実際 から続く。
肝障害を有する患者に抗がん剤を投与する際の用量調整(1)
文献
1. Superfin D, Iannucci AA, Davies AM. Commentary: Oncologic drugs in patients with organ dysfunction: a summary. Oncologist. 2007 Sep;12(9):1070-83.
2. Tchambaz L, Schlatter C, Jakob M, Krahenbuhl A, Wolf P, Krahenbuhl S. Dose adaptation of antineoplastic drugs in patients with liver disease. Drug Saf. 2006;29(6):509-22.
(続く)肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(2)へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
著しい肝障害/黄疸症例と抗がん剤治療の実際
CTCAE:抗がん剤と肝障害 から続く。
著しい肝障害/黄疸のある患者に抗がん剤治療の実際
各薬剤に応じて、用量調整か変更を行います。
Superfin D, Iannucci AA, Davies AM. Commentary: Oncologic drugs in patients with organ dysfunction: a summary. Oncologist. 2007 Sep;12(9):1070-83.
Tchambaz L, Schlatter C, Jakob M, Krahenbuhl A, Wolf P, Krahenbuhl S. Dose adaptation of antineoplastic drugs in patients with liver disease. Drug Saf. 2006;29(6):509-22.
抗がん剤の用量調整には、以下の3つの方法があります。
1) 投与間隔を変えず、1回投与量を減らす。
2) 1回投与量を変えず、投与間隔を空ける。
3) 1回投与量を減らし、投与間隔も空ける。
抗がん剤の種類と肝機能により、用量調整の方法が決まります。
ただし、全ての抗がん剤で用量調整法が確立しているわけではありません。
個別の薬剤情報に関しては、薬剤を販売している製薬会社へ照会するようにつとめます。臨床医の経験も重要な要因であり、使用経験の多い医師へ相談するのもよいです。
抗がん剤治療前からgrade 3以上の肝毒性(CTCAE)に相当する肝障害を認めている場合、抗がん剤の種類にかかわらず、抗がん剤の使用により全身状態が著しく悪化する可能性がああります。
たとえ抗がん剤が直接肝障害を来さなかったとしても、高度の血球減少や重症感染症の発症、抗菌薬の影響などにより、間接的に肝障害を来す可能性もあります。
臨床試験は重症肝障害患者を除いて行われることが多いですので、安全性に関する情報は決定的に不足していることが多いです。
期待される有効性と、臨床情報および医師の経験から予想される毒性を天秤にかけ、患者と十分話し合いながら、抗がん剤治療の適応を判断することになります。
参考として、用量調整の目安を、次回のブログ記事で表として示したいと思います。
(続く)
肝障害症例に抗がん剤を投与する際の用量調整(1)へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
CTCAE:抗がん剤と肝障害
肝障害症例に対する抗がん剤治療 から続く。
Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE)
version 4.0
ULN=正常上限
項目 |
Grade 1 |
Grade 2 |
Grade 3 |
Grade 4 |
AST・AST |
ULN 3倍までの上昇 |
ULN 3倍を超え5倍までの上昇 |
ULN 5倍を超え20倍までの上昇 |
ULN 20倍を超える上昇 |
ビリルビン |
ULN 1.5倍までの上昇 |
ULN 1.5倍を超え3倍までの上昇 |
ULN 3倍を超え10倍までの上昇 |
ULN 10倍を超える上昇 |
(続く)
著しい肝障害/黄疸症例と抗がん剤治療の実際 へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13
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肝障害症例に対する抗がん剤治療
肝障害と抗がん剤治療 から続く。
黄疸/肝障害症例に対する抗がん剤治療
まず、肝機能の評価と、肝障害の原因精査を行います。
特に薬剤性肝障害は重要です。
その場合、薬剤のウォッシュアウト期間後、自然回復が期待できます。
肝機能は、Child-Pugh分類で評価します。
肝予備能の評価にインドシアニン・グリーン(ICG)試験など負荷テストの適応も考慮されますが、がん患者の場合、そこまで求められることは少ないです。転移などがん自体による肝障害もありますので、画像学的検査も重要です。
抗がん剤を用量調整する際、指標となる肝機能検査は、主にAST、ALT、総ビリルビン値です。
黄疸が無くとも、AST・ALT高値は、肝細胞傷害が疑われますので、同様の対応が必要です。
抗がん剤治療前からCommon Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE)で評価してもよいです。
他の肝機能検査値も参考にすべきですが、抗がん剤の用量調整という観点では、AST・ALT・総ビリルビン値に劣ります。
肝障害の有無にかかわらず、抗がん剤治療を受ける患者は、HBs抗原・HBs抗体・HBc抗体・HCV抗体を必ず測定します。
ウイルス量の増加など、肝炎として治療が必要な場合、ウイルス性肝炎の治療を優先しますが、がんの状態によってはやむを得ず抗がん剤治療と並行して治療せざるを得ないこともあります。
B型肝炎の無症候性キャリアや既感染者でも、抗がん剤治療後に肝炎ウイルスの活性化を認めることがありますので、注意深くフォローします。
B型肝炎ウイルスを有する患者にリツキシマブを投与する場合、特に注意が必要です。
(続く)CTCAE:抗がん剤と肝障害 へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
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肝障害と抗がん剤治療
黄疸/肝障害のある場合の抗がん剤治療
抗がん剤の多くは肝代謝・肝排泄型であり、肝障害は抗がん剤の代表的な毒性の一つです。
がん患者は、高齢や臓器機能の低下から、抗がん剤治療の時点ですでに肝障害を認めていることも少なくありません。
やむを得ず肝障害を有する患者に抗がん剤治療を行う際には、抗がん剤の用量調整や変更を考慮します。
一方、毒性回避だけを念頭に抗がん剤を過度に減量し、抗がん剤の効果が得られないのも困ります。
次回より、肝障害を有する患者に抗がん剤治療を行う際の、具体的なアプローチについてブログ記事をお届けしたいと思います。
Child-Pugh分類
ポイント |
1点 |
2点 |
3点 |
脳症 |
ない |
軽度 |
ときどき昏睡 |
腹水 |
ない |
少量 |
中等量 |
血清ビリルビン値(mg/dL) |
< 2.0 |
2.0-3.0 |
> 3.0 |
血清アルブミン値(g/dL) |
> 3.5 |
2.8-3.5 |
< 2.8 |
プロトロンビン活性値(%) |
> 80% |
50-80% |
< 50% |
各項目のポイントを加算しその合計点で分類する。
Class A:5-6点 Class B:7-9点 Class C:10-15点
(続く)肝障害症例に対する抗がん剤治療 へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
低腎排泄抗がん剤の用量調整:国際老年腫瘍学会ガイドライン
腎排泄抗がん剤の用量調整:国際老年腫瘍学会ガイドライン から続く。
低腎排泄抗がん剤の用量調整を、表(.pdf)で掲載したいと思います。
低腎排泄抗がん剤の用量調整.pdf
国際老年腫瘍学会ガイドラインより
Lichtman SM, Wildiers H, Launay-Vacher V, Steer C, Chatelut E, Aapro M. International Society of Geriatric Oncology (SIOG) recommendations for the adjustment of dosing in elderly cancer patients with renal insufficiency. Eur J Cancer. 2007 Jan;43(1):14-34.
(続く)
腎障害と抗がん剤治療(インデックス) へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
腎排泄抗がん剤の用量調整:国際老年腫瘍学会ガイドライン
腎障害例に対する抗がん剤治療の方法 から続く。
腎排泄抗がん剤の用量調整を、表(.pdf)で掲載したいと思います。
腎排泄抗がん剤の用量調整.pdf
国際老年腫瘍学会ガイドラインより
Lichtman SM, Wildiers H, Launay-Vacher V, Steer C, Chatelut E, Aapro M. International Society of Geriatric Oncology (SIOG) recommendations for the adjustment of dosing in elderly cancer patients with renal insufficiency. Eur J Cancer. 2007 Jan;43(1):14-34.
(続く)
低腎排泄抗がん剤の用量調整:国際老年腫瘍学会ガイドライン へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
腎障害例に対する抗がん剤治療の方法
CKD(慢性腎臓病)重症度分類 から続く。
腎障害のある患者に対する抗がん剤治療の方法
各薬剤に応じて、用量調整か変更を行います。
抗がん剤の用量調整には、以下の3つの方法があります。
1) 投与間隔を変えず、1回投与量を減らす。
2) 1回投与量を変えず、投与間隔を空ける。
3) 1回投与量を減らし、投与間隔も空ける。
抗がん剤の種類と腎機能により、用量調整の方法が決まります。
ただし、全ての抗がん剤で用量調整法が確立しているわけではありません。
Kitzelらは、腎機能障害患者における腎排泄または腎毒性を有する抗がん剤の用量調整に関するガイドラインを作成して、活性代謝体も含め腎排泄率30%以上の薬剤か、腎毒性を有する薬剤を使用する場合は、用量調整を考慮すべきと提案しました。
Kintzel PE, Dorr RT. Anticancer drug renal toxicity and elimination: dosing guidelines for altered renal function. Cancer Treat Rev. 1995 Jan;21(1):33-64.
この考えは、現在でも変わりません。
実際の用量調整には、国際老年腫瘍学会ガイドラインが参考になります。
Lichtman SM, Wildiers H, Launay-Vacher V, Steer C, Chatelut E, Aapro M. International Society of Geriatric Oncology (SIOG) recommendations for the adjustment of dosing in elderly cancer patients with renal insufficiency. Eur J Cancer. 2007 Jan;43(1):14-34.
個別の薬剤情報に関しては、薬剤を販売している製薬会社へ照会するようにつとめます。
臨床医の経験も重要な要因ですので、使用経験の多い医師へ相談するのもよいです。
抗がん剤治療後は十分な補液(ただし心不全に注意)とアロプリノール投与を行い(ただし腫瘍量の少ない患者では不要)、腎障害のさらなる悪化や腫瘍崩壊症候群が起こらないように注意します。
尿アルカリ化の効果は、現在では否定的です。もし腫瘍崩壊症候群が起こった場合は、米国臨床腫瘍学会のガイドラインを参考に対応します。
Coiffier B, Altman A, Pui CH, Younes A, Cairo MS. Guidelines for the management of pediatric and adult tumor lysis syndrome: an evidence-based review. J Clin Oncol. 2008 Jun 1;26(16):2767-78.
(続く)
腎排泄抗がん剤の用量調整:国際老年腫瘍学会ガイドライン へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
CKD(慢性腎臓病)重症度分類
腎障害と抗がん剤治療 より続く。
CKD(慢性腎臓病、chronic kidney disease)重症度分類
病期 |
GFR (mL/min/1.73 m2) |
説明 |
1 |
90以上 |
GFR低下の無い腎障害 |
2 |
60-89 |
腎障害、GFR軽度低下 |
3 |
30-59 |
腎障害、GFR中等度低下 |
4 |
15-29 |
腎障害、GFR高度低下 |
5 |
<15または透析 |
腎不全 |
GFR:糸球体濾過量(glomerular filtration rate)
(続く)
腎障害例に対する抗がん剤治療の方法 へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
腎障害と抗がん剤治療
腎障害のある場合の抗がん剤治療の考え方
がん患者は、高齢者であったり、臓器機能の低下から腎機能障害が起こりやすいです。
特に、腎排泄や腎毒性を有する薬剤は、腎機能に対する安全域が狭く、用量調整が必要な場合が多いです。
腎障害を有する患者さんに抗がん剤治療を行う際の、具体的なアプローチをまとめてみたいと思います。
まず、腎機能の評価と、腎前性・腎性・腎後性の鑑別を行います。
がん患者の場合、嘔吐や下痢、食欲不振などで脱水に陥っていることも多いです。腎前性腎障害とわかれば、抗がん剤投与前に十分補液し、腎機能の改善を目指します。
腎機能の評価法は多数ありますが、抗がん剤治療を受ける患者は、糸球体濾過量(glomerular filtration rate: GFR)及びクレアチニン-クリアランス(creatinin clearance: CCR)で評価します。
Launay-Vacher V, Chatelut E, Lichtman SM, Wildiers H, Steer C, Aapro M. Renal insufficiency in elderly cancer patients: International Society of Geriatric Oncology clinical practice recommendations. Ann Oncol. 2007 Aug;18(8):1314-21.
シスタチンC (cystatin C)で評価してもよいです。
GFRは糸球体で濾過される1分あたりの血液(血漿)量で、腎クリアランスと一致します。
体表面積(body surface area: BSA)1.73 m2で補正しますので、GFRはmL/min/1.73 m2であらわされます。
BSAの計算法(DuBois式)
BSA (m2) = 体重(kg)0.425 x 身長(cm)0.725 x 0.007184
正確にはイヌリンクリアランスなどでGFRを計算しますが、成人の場合、「日本腎臓学会 日本人のGFR推定式プロジェクト」が2008年に発表した推算式による推算GFRを用いて良いです。
推算GFR(日本腎臓学会 日本人のGFR推定式プロジェクト2008年)
男性:GFR (mL/min/1.73 m2) = 194 x 血清クレアチニン値-1.094 x 年齢-0.287
女性:GFR (mL/min/1.73 m2) = 男性計算式 x 0.739
シスタチンCは近位尿細管で全て再吸収されるため、GFRの評価には血清クレアチニン値より優れています。また、年齢や性別、筋量の影響を受けにくいという利点があります。シスタチンCからGFR値を推算しても良いです。
Hoek FJ, Kemperman FA, Krediet RT. A comparison between cystatin C, plasma creatinine and the Cockcroft and Gault formula for the estimation of glomerular filtration rate. Nephrol Dial Transplant. 2003 Oct;18(10):2024-31.
推算GFR(シスタチンCからの推算)
男女とも:GFR (mL/min/1.73 m2) = -4.32 + 80.35/シスタチンC
慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)重症度分類(CKD重症度分類)を利用し、GFR値から腎障害を評価します。
腎障害を有する患者に抗がん剤の用量調整を行う場合、通常はCCRを参考にします。血清クレアチニン値が正常でも、CCRが低下していることがありますので、抗がん剤使用前のCCRの計算は重要です。
CCRの正確な計算には24時間蓄尿が必要ですが、成人の場合、Cockcroft-Gault式による推算CCRを用いて良いです。
推算CCR(Cockcroft-Gault式)
男性:CCR (mL/min) = {(140-年齢) x 体重(kg)}/(72 x 血清クレアチニン値)
女性:CCR (mL/min) =男性計算式 x 0.85
ただし、CCRは腎障害を過小評価する可能性がありますので、腎障害の評価はCKD分類(CKD重症度分類)を用います。
特に、肥満や浮腫がある患者ではCCRの信頼性は低いです。18歳未満の患者や、筋量が極端に減少した患者の場合も、CCRで腎機能を評価するのは不適当です。
高齢のがん患者では、GFRやCCRから考えられるより実際は腎予備能が低く、抗がん剤治療後思いがけない腎障害が生じることがあります。
抗がん剤治療中の併用薬(特にアミノグリコシド系薬剤など腎毒性を有するもの)にも注意が必要です。
総合的には、ある程度臨床医の経験に頼らなければならない部分も多いです。
(続く)
CKD(慢性腎臓病)重症度分類 へ
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
病院工事とアスペルギルス感染症:HEPAフィルター&LAFの効果
ラミナエアフロー(LAF)の効果/アスペルギルス感染症の危険因子 より続く
Q 病院改築や工事の影響は?
A 病院の改築・改修工事がありますと、血液がんなど免疫不全の患者におけえる真菌感染症(特にアスペルギルス感染症)が増加します。
その場合、HEPAフィルターやラミナエアフロー(LAF)によるアスペルギルス感染予防効果が報告されています。
Barnes RA, Rogers TR. Control of an outbreak of nosocomial aspergillosis by laminar air-flow isolation. J Hosp Infect. 1989 Aug;14(2):89-94.
Alberti C, Bouakline A, Ribaud P, Lacroix C, Rousselot P, Leblanc T, et al. Relationship between environmental fungal contamination and the incidence of invasive aspergillosis in haematology patients. J Hosp Infect. 2001 Jul;48(3):198-206.
なお、隔離予防策に、voriconazoleかcaspofunginの予防的抗真菌療法を加えることにより、病院改築中でも、急性白血病患者における侵襲性アスペルギルス症発症率は12%から4.5%に低下したという報告があります。
Chabrol A, Cuzin L, Huguet F, Alvarez M, Verdeil X, Linas MD, et al. Prophylaxis of invasive aspergillosis with voriconazole or caspofungin in patients with acute leukemia during building works. Haematologica. 2009 December 8, 2009:haematol.2009.012633.
(続く) HEPAフィルターとLAF: インデックス へ
【関連記事】
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
ラミナエアフロー(LAF)の効果/アスペルギルス感染症の危険因子
ラミナエアフロー(laminar air flow: LAF)とHEPAフィルター より続く
Q:ラミナエアフロー(LAF)の効果について。
A:LAFは、同種造血幹細胞移植患者を中心に、免疫不全患者におけるアスペルギルス感染発症の予防効果が報告されています。
Barnes RA, Rogers TR. Control of an outbreak of nosocomial aspergillosis by laminar air-flow isolation. J Hosp Infect. 1989 Aug;14(2):89-94.
しかし、他の真菌感染症や細菌感染症、ウイルス感染症の予防に関するエビデンスには乏しいです。
アスペルギルス感染症予防効果の報告も、これまでのところ同種造血幹細胞移植患者に限定されています。
さらに、患者全員をLAFで管理しても生存率が向上しなかったことから、2009年に発表されたCDCやIDSAなどの合同ガイドラインでは、新しく移植センターを作る場合、LAFは必要ないと結論づけています。
Tomblyn M, Chiller T, Einsele H, Gress R, Sepkowitz K, Storek J, et al. Guidelines for preventing infectious complications among hematopoietic cell transplantation recipients: a global perspective. Biol Blood Marrow Transplant. 2009 Oct;15(10):1143-238.
一方、LAFで移植した患者の感染症死亡が有意に低下したという報告があり、アスペルギルス感染症のリスクが高い(下表)患者では、LAF室を考慮すべきと思われます。
Passweg JR, Rowlings PA, Atkinson KA, Barrett AJ, Gale RP, Gratwohl A, et al. Influence of protective isolation on outcome of allogeneic bone marrow transplantation for leukemia. Bone Marrow Transplant. 1998 Jun;21(12):1231-8.
アスペルギルス感染症の危険因子
・ 2週以上の好中球500以下
・ 3週以上のステロイド投与
・ 4週以上の免疫抑制薬投与
・ 造血幹細胞移植
・ 臓器移植
・ 移植片対宿主病
・ 低栄養
・ HIV感染
・ 病院の改築・改修工事
Horn DL, Fishman JA, Steinbach WJ, Anaissie EJ, Marr KA, Olyaei AJ, et al. Presentation of the PATH Alliance registry for prospective data collection and analysis of the epidemiology, therapy, and outcomes of invasive fungal infections. Diagn Microbiol Infect Dis. 2007 Dec;59(4):407-14.
ただし、2007年に発表された隔離予防策に関するガイドラインでも、LAFの適応は同種造血幹細胞移植患者に限られ、AMLの化学療法をLAFで行うべきとの指針はありません。
Siegel JD, Rhinehart E, Jackson M, Chiarello L. 2007 Guideline for Isolation Precautions: Preventing Transmission of Infectious Agents in Health Care Settings. Am J Infect Control. 2007 Dec;35(10 Suppl 2):S65-164.
自家造血幹細胞移植患者も、LAF使用は推奨されていません。
Dadd G, McMinn P, Monterosso L. Protective isolation in hemopoietic stem cell transplants: a review of the literature and single institution experience. J Pediatr Oncol Nurs. 2003 Nov-Dec;20(6):293-300.
以上から、AML患者が入院してきた際、LAFが無くても化学療法は可能と考えられます。
とは言え、LAFが空いていれば、積極的に使うべきです。
AML患者の多くがLAFを用いているため、検証は難しいですが、欧米と異なり高温多湿地域が多い日本では、LAFが有効に作用している可能性があります。
(続く)
病院工事とアスペルギルス感染症:HEPAフィルター&LAFの効果 へ
【関連記事】
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
ラミナエアフロー(laminar air flow: LAF)とHEPAフィルター
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)HPでは、血液内科に関する研修医からのQ&Aが掲載されていますが、今回からのシリーズでは、血液内科診療における注意点について、記事にしておきたいと思います。
Q:無菌室がない病院に急性骨髄性白血病(AML)の患者が入院したが、一般の個室でも化学療法は大丈夫かどうか、ラミナエアフローは本当に効果あるのかどうか、について考察したいと思います。
A:結論から言うと、一般の個室で化学療法を行っても問題はありません。ラミナエアフロー(laminar air flow: LAF)の効果は、アスペルギルス感染症予防に限定されます。
Q:LAFとは何か。
A:LAFとは、高い空気清浄度を確保し、外部からの塵埃侵入を防ぐため、超高性能エアフィルター(HEPAフィルター)を通した空気を一方向で層状に送り込むシステムです。
1つの壁にHEPAフィルターを取り付け、反対側の壁に向かって空気を送り出し部屋ごとLAF化したものがLAF室(バイオクリーンルーム)です。LAF室の室内気圧は陽圧になっています。
LAF室の空気清浄度は、1立方フィート(1 ft3)あたりの粒径0.5μm以上粒子(塵埃)の個数であらわされます。
臨床に用いられている中で最も空気清浄度が高いクラス100のLAF室は、粒径0.5μm以上の粒子が100個/ ft3以下の状態です。なお、晴天時の外気は、クラス100万程度です。
最近は、血液科病棟全体をクラス10,000に保っている病院も多いです。
その場合、血液科に入院すればLAF室に入っていることになります。通常の病室に移動可能な水性層流式無菌装置(ベッドアイソレーター)を設置し、ベッド頭側からHEPAフィルターで濾過した空気をLAFで送り込む場合もあります。この場合、ベッド上の空気清浄度が確保されます。
(続く)
ラミナエアフロー(LAF)の効果/アスペルギルス感染症の危険因子 へ
【関連記事】
・造血幹細胞移植
・移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
・血球貪食症候群(HPS)(8回シリーズ)
・溶血性貧血(PNH、AIHAほか) (8回シリーズ)
・造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
・造血幹細胞移植前処置としてのATG(6回シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC:図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 13:01
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臍帯血移植後HPS/HLHと骨髄GVHD:血球貪食症候群(HPS)(8)
成人HPS/HLHの治療:血球貪食症候群(HPS)(7) より続く。
虎の門病院からの報告によりますと、臍帯血ミニ移植119例中20例(17%)において、HPS/HLHがみられました。
Takagi S, et al: High incidence of haemophagocytic syndrome following umbilical cord blood transplantation for adults. British Journal of Haematology 147:543-553, 2009.
多くは移植後3週以内に発症し、血液回復しないまま致死的経過をたどりました。
大半はドナー型キメラであったことから、HPS/HLHを起こす免疫担当細胞は主にドナー由来と考えられました。
同グループは、GVHD方向のHLA不一致と臍帯血移植後生着不全の関連も明らかにし(Matsuno: Blood 2009)、GVHD 機序が移植後HPS/HLHを起こす可能性に言及しました。
最近、東大の松島らは「骨髄GVHD」の概念を提唱し、MHC不一致移植後造血nicheが早期に破壊されることを動物モデルで明らかにしました(Blood 2010, in press)。
このような「骨髄GVHD」が、移植後早期のHPS/HLHなど、実際に臨床で起こっているかどうか興味深いところです。
(続く)血球貪食症候群(HPS/HLH):インデックス へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
成人HPS/HLHの治療:血球貪食症候群(HPS)(7)
小児HPS/HLHの治療と予後:血球貪食症候群(HPS)(6) より続く。
成人HPS/HLHの治療と予後
成人HPS/HLHは二次性に起こるため、原因疾患の診断・治療がより重要となります。
薬剤性が疑われる場合には、原因薬剤を中止します。
腫瘍関連HPS/HLHは原疾患の治療を優先します。
急激に進行する場合(特にEBVAHS)などには、小児HPS/HLHに準じた化学療法を行っても良いです。
EBV以外の感染症や自己免疫疾患など非腫瘍性の場合、全身状態が落ち着いていれば、原因疾患の治療のみで改善することも多いです。
高サイトカイン血症による臓器傷害予防に、ステロイドの先行投与や血漿交換などが試みられていますが、有効性は不明です。
T/NK細胞性は比較的若年層に多く(一次性・二次性HPS/HLHの診断:血球貪食症候群(HPS)(5))、全体に予後不良です(小児HPS/HLHの治療と予後:血球貪食症候群(HPS)(6))。
Ishii E, et al: Nationwide survey of hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan. Int J Hematol 86:58-65, 2007
LAHSが疑われ全身状態が急激に悪化する場合、組織診が得られる前に、臨床診断だけで抗がん剤治療を開始して良いです。
(続く)臍帯血移植後HPS/HLHと骨髄GVHD:血球貪食症候群(HPS)(8) へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
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小児HPS/HLHの治療と予後:血球貪食症候群(HPS)(6)
一次性・二次性HPS/HLHの診断:血球貪食症候群(HPS)(5) より続く。
小児HPS/HLHの治療と予後
HPS/HLH治療は、活性化マクロファージ/組織球対策(エトポシド、ステロイド、免疫グロブリン大量)と活性化T細胞対策(ステロイド、シクロスポリン、抗胸腺グロブリン)からなります。
二次性HPS/HLHの場合、感染症など原疾患の治療 も必要です。
中枢神経病変を有する場合、メトトレキサートの髄注を考慮します。
HPS/HLHは中枢神経病変を認めやすいので、血液脳関門の通過を考慮 し、プレドニゾロンよりデキサメタゾンを推奨する意見もあります。
Henter J-I, et al: HLH-2004: Diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Pediatric Blood & Cancer 48:124-131, 2007
化学療法不応か再発、またはFHLの場合、化学療法だけで長期生存は期待できませんので、引 き続き同種造血幹細胞移植を計画します(ドナーソース、血縁・非血縁は問いません)。
以前FHLは平均生存期間2か月以内でしたが、同種造血幹細胞移植を 積極的に行うことで改善しています(上図)。
Ishii E, et al: Nationwide survey of hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan. Int J Hematol 86:58-65, 2007.
大規模国際試験(HLH-94プロトコール:エトポシド+シクロスポリン+デキサメタゾン、症例によってはそ の後同種骨髄移植)の結果、全体の3年生存率は55%(骨髄移植例は62%)と良好でした。
HLH-94を改良したプロトコール研究(HLH- 2004)が現在進行中です。
なお、全身性若年性特発性関節炎(systemic form of juvenile idiopathic arthritis: sJIA)など自己免疫疾患に関連して起こるMASは、ステロイド単独療法で改善する場合も多いです。
(続く)
成人HPS/HLHの治療:血球貪食症候群(HPS)(7) へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08
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一次性・二次性HPS/HLHの診断:血球貪食症候群(HPS)(5)
診断基準:血球貪食症候群(HPS)(4) より続く。
一次性・二次性HPS/HLHの診断
臨床像や組織所見から一次性・二次性HPS/HLHを区別することは難しいです。
家族歴があれば一次性を疑いますが、FHLは常染色体劣性遺伝のため、家族歴が不明の場合も多いです。また、遺伝子検査は時間を要します。
そこで、発症年齢からある程度原疾患を推定します。全国調査によりますと、1歳未満のHPS/HLHはFHLと感染症関連HPS/HLH (IAHS)が多いです(上図)。
Ishii E, et al: Nationwide survey of hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan. Int J Hematol 86:58-65, 2007
若年例はEBVを中心にIAHSが多く、年齢が高まるにつれLAHSの割合が増加します。
一次性HPS/HLH
FHLの20-50%はperforin遺伝子PRF1 (10q21)変異が証明され、NK細胞・T細胞の細胞傷害活性が欠失します(分類:血球貪食症候群(HPS)(2) )。
FHLの10-20%はMUNC13-4遺伝子UNC13D (17q25)変異で起こり、約10%はsyntaxin 11遺伝子STX11(6q24)変異で起こります。
XLP患者の60-70%はSAP(SH2-DIA or DSHP)(Xq25)に変異がみられます。
Chediak-Higashi症候群はLYST1(1q42)に関連して起こります。
Griscelli症候群2型はRab27A遺伝子変異が関与しています。
EBV関連HPS/HLH (EBV-associated HPS/HLH: EBVAHS)
EBVAHSは全年齢層でみられます(上図)。
EBVAHSの一部は自然軽快しますが、急激に致死的経過をたどることもあります。
HPS/HLHに対しては、in situ hybridization法やPCR法、サザンブロット法(クロナリティの決定)などEBVゲノムの検索が必要です。
LAHS(lymphoma-associated HPS/HLH)
成人HPS/HLHの過半数はLAHSです。
特に血管内リンパ腫(アジア亜型)などB細胞性リンパ腫はリンパ節腫脹が無い場合も多く、診断に苦慮しやすいです。
骨髄や採取組織は、免疫グロブリン/T細胞レセプター遺伝子再構成、フローサイトメトリー解析などクロナリティの検索を積極的に行い、診断の補助とします。
診断のため、ランダム皮膚生検や経気管支肺生検を考慮しても良いです。
Asada N, et al: Use of random skin biopsy for diagnosis of intravascular large B-cell lymphoma. Mayo Clin Proc 82:1525-7, 2007.
(続く)小児HPS/HLHの治療と予後:血球貪食症候群(HPS)(6) へ
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造血幹細胞移植
移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
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【シリーズ】造血幹細胞移植後の再発(4回シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
診断基準:血球貪食症候群(HPS)(4)
症状&身体所見:血球貪食症候群(HPS)(3) より続く。
------------------------------------
HPS/HLH診断基準(HLH-2004)
以下のいずれかを満たせばHPS/HLHと診断される。
1. HPS/HLHに一致する分子診断が得られる。
2. 以下の8項目中5項目以上を満たす。
1)発熱
2)脾腫
3)2系統以上の血球減少
・ヘモグロビン9 g/dL未満(4週未満の乳児は10 g/dL未満)
・血小板数10万/μL未満
・好中球数1,000/μL未満
4)高トリグリセライド血症または/および低フィブリノゲン血症
空腹時トリグリセライド265 mg/dL以上
フィブリノゲン150 mg/dL以下
5)骨髄または脾臓またはリンパ節における血球貪食像、悪性腫瘍がない
6)NK細胞活性の低下または消失
7)フェリチン500 μg/L以上
8)可溶性IL-2レセプター2,400 U/mL以上
付記:
1) 発症時に血球貪食が明らかでなければ、さらに検索を進める。骨髄所見陰性の場合、他臓器の生検や経時的な骨髄穿刺検査を考慮する。
2) 以下の所見は診断を強く支持する:髄液細胞増加(単核球)および/または髄液蛋白増加、肝生検上慢性持続性肝炎に類似した組織所見。
3) 以下の所見は診断を支持する:脳・髄膜症状、リンパ節腫脹、黄疸、浮腫、皮疹、肝酵素異常、低蛋白血症、低ナトリウム血症、VLDL増加、HDL低下。
------------------------------------
【HPS/HLHの診断基準】
HPS/HLHの診断基準は、Histiocyte Society (http://www.histiocytesociety.org/)のHLH-2004(表:上)が最も有名です。
ただし、HLH-2004は小児HPS/HLH診断を主眼にしているため、以下のような問題がありました。
・悪性腫瘍関連HPS/HLHを想定していない
・高トリグリセライド血症・低フィブリノゲン血症は成人にほとんどみられない
・必要な項目数が多い
そこで、2009年にHLH-2004の改訂案(表:下)が発表されました。
Filipovich AH: Hemophagocytic lymphohistiocytosis (HLH) and related disorders. Hematology Am Soc Hematol Educ Program:127-31, 2009
------------------------------------
HPS/HLH診断基準(2009年のHLH-2004改訂案)
以下のいずれかを満たせばHPS/HLHと診断される。
1. HPS/HLHまたはXLPの分子診断が得られる。
2. Aの4項目中3項目以上、Bの4項目中1項目以上を満たす。C項目はHPS/HLH診断を支持する。
A項目
1)発熱
2)脾腫
3)2系統以上の血球減少
4)肝炎様所見
B項目
1)血球貪食像
2)フェリチン上昇
3)可溶性IL-2R上昇
4)NK細胞活性の低下または消失
C項目
1)高トリグリセライド血症
2)低フィブリノゲン血症
3)低ナトリウム血症
------------------------------------
この改訂案はHPS/HLHを速やかに診断できるので、臨床上利便性が高いです。
なお、HPS/HLH発症直後は診断項目が揃わず、発症後晩期に診断基準を満たす場合もあります。
診断の遅れによる治療失敗を避けるため、臨床所見上HPS/HLHが強く疑われれば、診断基準を満たさずとも治療開始を検討してよいと考えられます。
Henter J-I, et al: HLH-2004: Diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Pediatric Blood & Cancer 48:124-131, 2007.
(続く)
一次性・二次性HPS/HLHの診断:血球貪食症候群(HPS)(5) へ
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症状&身体所見:血球貪食症候群(HPS)(3)
分類:血球貪食症候群(HPS)(2) より続く。
【HPS/HLHの症状&身体所見】
HPS/HLHの一般的な症候・身体所見は、発熱(通常激烈かつ持続性)・肝脾腫・血球減少です。
さらに、以下の所見を伴うことがあります。
・高トリグリセライド血症(成人は稀)
・低フィブリノゲン血症(成人は稀)を伴う凝固異常
・トランスアミナーゼ上昇、LDH上昇
・高フェリチン血症
・可溶性IL-2レセプター高値
・神経症状(けいれん、失調、髄膜刺激症状、興奮、筋緊張亢進または低下、脳神経麻痺、意識障害など)
・リンパ節腫脹
・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
・皮疹、黄疸、浮腫
・低ナトリウム血症、低アルブミン血症
・NK活性の低下または消失、など。
二次性HPS/HLSはこれに原疾患によるものが加わります。
組織所見では、骨髄、肝臓、脾臓、リンパ節に血球貪食像を伴う成熟組織球増加やリンパ球・マクロファージの増加がみられます。
肝生検では、慢性持続性肝炎に類似した組織像がみられます。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
分類:血球貪食症候群(HPS)(2)
病態:血球貪食症候群(HPS)(1) より続く。
【HPS/HLHの分類】
1. 一次性(遺伝性)
1)家族性(familial HLH: FHL) 常染色体劣性遺伝 4%
・PRF1異常
・UNC13D異常
・STX11異常
2)X連鎖リンパ増殖性疾患(X-linked lymphoproliferative disorder: XLP) 伴性遺伝
3)2型Griscelli症候群 常染色体劣性遺伝 Rab27A異常
4)Chediak-Higashi症候群 常染色体劣性遺伝 LYST1異常
5)II型Hermansky-Pudlak症候群 常染色体劣性遺伝 AP3B1異常
6)その他
2. 二次性(反応性)
1)感染症によるHPS/HLH (infection-associated HPS/HLH: IAHS) 53%
1. ウイルス性(virus-associated HPS/HLH: VAHS)
・EBV (EBVAHS) 29%
・HSV
・コクサッキーB
・HHV6
・CMV
・Adenovirus
・Parvovirus B19
・VZV
・Hepatitis A
・HIV
・その他
2. 細菌性(bacterial-associated HPS/HLH: BAHS)(大腸菌、結核など)
3. 真菌性(Pneumocystis jiroveciなど)
4. その他(リケッチア、マラリアなど)
2)基礎疾患を有するHPS/HLH
1. 悪性腫瘍(malignancy-associated HPS/HLH: MAHS)
・悪性リンパ腫(lymphoma-associated HPS/HLH: LAHS) 19%
・その他 4%
2. 自己免疫疾患(autoimmune-associated HPS/HLH: AAHS) 9%
3. 薬剤性
3)造血幹細胞移植後(post-HSCT)HPS/HLH 2%
(続く)
症状&身体所見:血球貪食症候群(HPS)(3) へ
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研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
病態:血球貪食症候群(HPS)(1)
今回から、血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome: HPS)をシリーズでお届けしたいと思います。
【病態】
血球貪食症候群(HPS)は全身の炎症性疾患で、血球貪食リンパ組織球増多症(hemophagocytic lymphohistiocytosis: HLH)とも呼ばれます。
日本においては、年間80万人に1人が発症し、常染色体劣性遺伝病の家族性HPS/HLH (familial HPS/HLH: FHL)では、出生5万人から30万人あたり1人の頻度です。
Ishii E, et al: Nationwide survey of hemophagocytic lymphohistiocytosis in Japan. Int J Hematol 86:58-65, 2007.
1歳未満の発症が約50%を占め、1歳から29歳が25%、残りは30歳以上です。
遺伝性か遺伝子異常が証明できれば一次性(遺伝性)HPS/HLH、それ以外は二次性(反応性)HPS/HLHと診断されます(分類:血球貪食症候群(HPS)(2) )。
一次性HPS/HLHも、発症には感染症が契機になりやすいことが知られています。
現在同定されている原因遺伝子は、NK細胞・T細胞の細胞傷害活性に関連するものが多いです。少数の若年成人例や胎児期発症を除き、一次性HPS/HLHは小児期(多くは3か月以内)に起こります。
成人HPS/HLHは、通常二次性(反応性)です。
発症機序は、マクロファージや組織球などの抗原提示細胞とCD8陽性T細胞が持続性かつ過剰に活性化することで高サイトカイン血症が起こり、組織傷害や血球減少、凝固異常などが生じると考えられています。
Filipovich AH: Hemophagocytic lymphohistiocytosis (HLH) and related disorders. Hematology Am Soc Hematol Educ Program:127-31, 2009.
Henter J-I, et al: HLH-2004: Diagnostic and therapeutic guidelines for hemophagocytic lymphohistiocytosis. Pediatric Blood & Cancer 48:124-131, 2007.
最も重要なサイトカインはIFNγで、他にTNFα、M-CSF、IL-1、IL-2、IL-6、IL-8、IL-10の関与が示唆されています。
高ケモカイン血症の関与も推測されています。
また、一次性・二次性を問わず、HPS/HLHでは、NK細胞および細胞傷害性T細胞の機能異常が見られることが多いです。
二次性HPS/HLHのうち、主に自己免疫機序でマクロファージとT細胞の活性化がみられるものはマクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome: MAS)と呼ばれます。
なお以前、悪性組織球症(malignant histiocytosis: MH)と呼ばれていた疾患は、ほぼ全て悪性リンパ腫関連HPS/HLH (lymphoma-associated HPS/HLH: LAHS)であったと考えられています。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
血友病と創傷治癒遅延
血友病では止血機能に問題があります。
創傷時には出血を伴いますが、血友病のような止血機能の低下をきたす病態では、創傷治癒遅延にもつながっていくのでしょうか。
この点に関して、動物モデルを使用して検討した報告がありますので紹介させていただきます。
「血友病Bモデルにおける創傷治癒遅延」
著者名:Monroe DM, et al.
雑誌名:Thromb Res 125 Suppl 1: S74-S77, 2010.
<論文の要旨>
創傷治癒には、凝固、炎症、肉芽組織形成、組織再構成などの多数の生理的機序が含まれています。充分なトロンビン形成を伴う凝固活性化によってフィブリンが形成されることは、創傷治療に必要な条件です。
著者らは、凝固開始遅延(少ない組織因子発現)または凝固進展障害(血友病B)のあるマウスを用いて検討しました。
血友病Bマウスにおいては、皮膚の創傷治癒遅延がみられました(肉芽組織への出血を伴いました)。第IX因子製剤または遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)の投与によって、トロンビン形成能は改善しました。
もしも、創傷治癒における凝固の意義が、安定した初期段階における血小板/フィブリン塊を形成することであるとしますと、創傷作成前に補充療法を行えば創傷治癒遅延は回復するはずですが、実験結果はこの仮説を否定しました。
また、少ない組織因子発現を示すマウスを用いた実験においても、創傷治癒遅延および肉芽組織内への出血がみられました。
以上、創傷治癒が正常に進行するためには、凝固因子製剤投与による一時的な是正ではなく、正常な凝固能が「持続する」ことが重要と考えられました。
【リンク】
血液凝固検査入門(図解シリーズ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
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