ASHレポート(6)レスベラトロール
ASHレポート(6)by 高見昭良
今回、抗酸化物質であるレスベラトロールが、リンパ腫に対する抗腫瘍効果を高める素晴らしい研究成果を発表しました。
注目度も高く、ポスター会場で多くの質問を受けていました。
ご発表お疲れ様でした。
<リンク>
ASHレポート(6)by 高見昭良
<リンク>
ASHレポート(5)by 高見昭良
<リンク>
ASHレポート(4)by 高見昭良
<リンク>
ASHレポート(3)by 高見昭良
<リンク>
ASHレポート(2)by 高見昭良
斎藤千鶴先生は、再生不良貧血発症機序解明の鍵となる重要な研究成果を口演発表し、大いに注目を集めました。
発表が学会4日目と遅く、3日間プレッシャーにさらされていたはずですが、それを感じさせない堂々とした発表でした。
画像内左上は、質疑応答中の写真です。
ちなみに、左側の座長は米国国立衛生研究所のヤング教授です。
再生不良性貧血など造血不全の世界的権威であるだけでなく、中尾教授の元ボスでもあります。
教室からは他に2人が留学し、1人は今もスタッフとして活躍中です。
なお、ヤング教授が日本を訪れた際、電車移動中の短い停車時間に駅のキオスクへ猛ダッシュし、日本の鉄道模型(Nゲージ)を買いあさる姿を目撃し たことがあります。
国内外を問わずこの業界に鉄道オタクが多いことを示唆する重要な所見と思います。
<リンク>
ASHレポート(1) by 高見昭良
今回は、金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の同門会報の原稿ですが、ブログで先行して記事にさせていただきます。
<HP&ブログ便り>
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)のホームページ(HP)は、2008年8月にリニューアルされました。1年間で365記事(1日平均1記事)がアップされています。
おかげさまで、多くの皆様にご利用いただくようになり、現在週日は1日に8,000〜10,000程度のアクセスをいただいています(上図)。
学会、研究会、講演会などでも、当科のHP&ブログを見ていますと声をかけていただくことがあり、嬉しく思うとともに責任ある記事を発信できるようにと身の引き締まる思いです。
国別では、もちろん日本からのアクセスが最も多いのですが、平成24年1月1日〜12月11日までの集計(上表)では、パキスタン、ウクライナなどからのアクセスも少なくありません。
米国教育機関でもお役立ていただいているのでしょうか。
上記の約1年間では、特にアクセスの多かった記事は、以下でした。
1) PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
2) PT(PT-INR)とは? 正常値、ワーファリン、ビタミンK欠乏症
私たちのサイトは、血液内科や呼吸器内科の医師のみならず、研修医、コメディカル、医療関係学生など多くの皆様にとって有用な情報を発信することを目標にしています。
また、一般の方にご覧いただいても有用な記事も少なくないのではないかと思っています。
なお、広く同門の先生方からの原稿をお待ちしています。
内容は、病院紹介、研修医や医学部生へのメッセージ、医の倫理、研究会やセミナーの広報など何でも結構です。
原稿は以下に送信していただければと思います(画像がある場合には、JPEGでお願いできるでしょうか)。
これまでの同門の先生方、およびこのサイトに訪問いただいた多くの皆様の御支援に深く感謝しています。
今後ともどうかよろしくお願いいたします。
<リンク>
論文紹介です。
「血友病患者における非致死的心血管疾患の既往」
著者名van de Putte DE, et al.
雑誌名:Eur J Haematol 89: 336-339, 2012.
<論文の要旨>
血友病患者では一般男性人と比較して心血管疾患(CVD)死亡率が低いとの報告がみられますが、非致死的CVDの発症率に関する情報はありません。
著者らは、生存している血友病患者におけるCVD既往について調査しました。
30歳以上の血友病患者709症例(オランダ人&英国人)において、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞の発症歴に関する情報を収集しました。
重症血友病と一般人男性における既往歴は、それぞれ心筋梗塞1.7%、4.0%、脳梗塞0%、1.5%と、血友病患者で低率の傾向にありました。
一方、狭心症は3.2%、3.7%と、ほぼ同率でした。
予想通り、頭蓋内出血は、血友病1.6%と一般人男性0.4%よりも高率でした。
以上、重症血友病であることは、急性虚血性CVDに対して阻止的に作用するものと考えられました。
<リンク>
論文紹介です。
「血友病患者では高血圧症の発症率が高い」
著者名:Fransen van de Putte DE, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 108: 750-755, 2012.
<論文の要旨>
血友病患者では高血圧症の発症頻度が高いと指摘されてきましたが、バイアスのかかっていない大規模試験はありませんでした。
著者らは血友病701症例での検討を行いました。
30才以上血友病のオランダ人386例、英国人315例で血圧(BP)の測定を行い、年齢の一致した一般人男性と比較しました。
BP140/90mmHg以上および降圧剤内服中の症例を高血圧症と診断しました。
49%の症例は重症の血友病でした。平均年齢は49.8歳でした。
その結果、血友病患者での高血圧症罹患は49%であり、一般人男性40%と比較して有意に高率でした。
血友病重症例においては、非重症例と比較して高血圧症の罹患率は高かったですが、血友病のタイプ別、国別の差はみられませんでした。
70%の症例では複数回の血圧測定が行われたが、同様の結果でした。
高血圧症と、腎不全、腎出血率、HCVやHIVの感染との関連はみられませんでしたが、肥満や年齢との関連はみられました。
以上、血友病患者における高血圧症発症率は一般人男性よりも高いものと考えられました。この理由については不明でした。
30歳以上の血友病患者においては、血圧測定を標準的診療内に含めるべきと考えられました。
<リンク>
論文紹介です。
「軽症〜中等症血友病A患者における第VIII因子インヒビターの除去」
著者名:Kempton CL, et al.
雑誌名:Am J Hematol 87: 933-936, 2012.
<論文の要旨>
軽症〜中等症血友病A患者においては25%の症例において第VIII因子インヒビターを発症します。
一旦インヒビターが発症した場合には、その後の治療選択肢としては、経過観察、免疫抑制療法、免疫寛容導入療法(ITI)の選択肢があります。
現時点では、臨床医がどの選択肢にするかを決めるための指針はありません。
著者らの施設では、インヒビターを発症した軽症〜中等症血友病A26症例のうち、8症例ではITIが行われました。
2例では成功し、2例では失敗し、4例では部分的に成功した。
文献のsystematic reviewでは、インヒビター保有の軽症〜中等症血友病A患16症例のうち12例では、リツキシマブによる治療に反応しました。
インヒビター保有の軽症〜中等症血友病A36症例で、臨床所見と治療成績の二次解析を行いました。
多変量解析では、リツキシマブ薬剤(n=6)および他の免疫抑制療法単独(n=2)は、有意にインヒビター除去に成功しました(HR4.4、10.21)。
一方、ITI単独(n=9)では有意な除去はみられませんでした(HR=1.35)。
<リンク>
論文紹介です。
「異常フィブリノゲン血症の妊娠管理におけるジレンマ」
著者名:Munoz J, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 775-777, 2012.
<論文の要旨>
先天性の異常フィブリノゲン血症はフィブリノゲン遺伝子変異をきたした稀な疾患であり、現在までに約400家系の報告があります。
参考:先天性凝固因子異常症1、先天性凝固因子異常症2(インデックス)
著者らは20才の異常フィブリノゲン血症(妊娠7週)の報告を行っています。
この症例は、妊娠初期に2回の自然流産歴があり、血栓症の家族歴もありました。
血液内科、産婦人科、周産期センター、輸血部、麻酔科の協力のもとで診療が行われました。
妊娠中は、フィブリノゲン製剤の輸注(フィブリノゲン値を100mg/dl以上に維持するように)と、低分子ヘパリンによる抗凝固療法が行われました。
患者はとくに問題なく満期出産となり、出産後6週間はフィブリノゲン製剤輸注と抗凝固療法が継続されました。
補充療法と抗凝固療法を併用することで、妊娠期間中出血と凝固バランスが良好に維持されたものと考えられました。
以上、異常フィブリノゲン血症患者の妊娠管理にあたっては、多くの診療各科の協力が大切と考えられました。
(参考)
異常フィブリノゲン血症:
・約50%が無症状、約25%が異常出血、約15%が血栓傾向をきたします。
・出血症状と血栓症の両者がみられる症例もあります。
・女性では自然流産をきたすことがあります(参考:抗リン脂質抗体症候群)。
<リンク>
論文紹介です。
「先天性第VII因子欠損症(当院での経験)」
著者名:Salcioglu Z, et al.
雑誌名: Clin Appl Thromb Hemost 18: 588-593, 2012.
<論文の要旨>
先天性第VII因子欠損症は、稀な先天性凝固因子欠損症のなかでは最も多い疾患です。
参考:先天性凝固因子異常症1、先天性凝固因子異常症2(インデックス)
著者らは自施設で経験した先天性第VII因子欠損症73例の報告を行っています。
内訳は、男性48例と女性25例であり、年齢は2ヶ月〜19才でした。
31症例(42.5%)では無症状でした。
症状のみられた症例のうち、17例では重症であり、8例は中等症、17例は軽症でした。
出血症状は、鼻出血、点状出血、溢血斑、紫斑、口腔内出血などでした。
8症例では遺伝子検査が行われていました。
2002年以降は、8症例の49回の出血イベントに対して遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)が使用されました。
2症例では中枢神経系への出血を繰り返していたため、rFVIIaの予防投与が行われました。
rFVIIaによる治療、予防投与のいずれの場合であってもアレルギー反応や血栓症の有害事象はみられませんでした。また、同種抗体が出現した症例もありませんでした。
<リンク>
論文紹介です。
「軽症の出血性素因を有した小児患者の一般的治療」
著者名:O’Brien SH.
雑誌名:Semin Thromb Hemost 38: 720-726, 2012.
<論文の要旨>
小児血液専門医にとって、出血性素因のなかではvon Willbrand病(type I)と軽症の血小板機能異常症は最も遭遇しやすいです。
これらの患者に対する止血治療や予防には一定のコンセンサスがある訳ではありません(臨床に役立つ報告や無作為臨床試験はほとんどありません)。
デスモプレシン(DDAVP)や抗線溶薬はこれらの患者でしばしば使用されますが、出血の予防や治療を目的とした場合のこれらの薬剤の至適用量や回数は不明のことがあります。
手術を行う出血性小児患者に対してDDAVPを投与すると、低ナトリウム血栓をきたすことがありますが、過少評価されているようです。
臨床医としては、鼻出血や観血的処置時の出血のように、局所の出血症状に対しても注意を払うべきです。
この総説では小児の出血性素因において、軽症の出血症状(鼻出血、過多月経、抜歯、扁桃腺摘出術)に対する一般的治療法について論じています。
<リンク>
論文紹介です。
「出血性素因の臨床検査」
著者名:Hayward CP, et al.
雑誌名: Semin Thromb Hemost 38: 742-757, 2012.
<論文の要旨>
出血性素因の検査には、しばしばPT(INR)、APTT、フィブリノゲン、トロンビン時間(TT)が含まれています。
著者らは出血傾向の精査目的で受診した患者が、これらの検査でどの程度が診断されるか検討しました。
出血症状のために血液専門医を受診した者のうちで凝固異常は稀であり、またAPTTとTTは臨床的意義を有さない異常を多く検出しました。
各検査の特異度は88〜100%と高かったですが、臨床的意義を有する異常検出の感度は1.0〜2.1%と低かったです。
一方、von Willbrand病(VWD)スクリーニングのための検査の感度は67%、光透過血小板凝集能(LTA)の検査感度は26%でした。
以上、PT(INR)、APTT、フィブリノゲン、トロンビン時間(TT)からなる凝固検査の出血性素因診断感度は3.7%であり、VWDスクリーニングまた含めた検査セット8.5%、VWDスクリーニングとLTAまで含めた検査セット30%と比較して低いものと考えられました。
出血性素因の診断にあたっては上記の点を念頭におくべきと考えられた。
<リンク>
論文紹介です。
「腹腔内出血を契機に診断された軽症血友病Aの13歳男児例」
著者名:寺尾陽子 他。
雑誌名:臨床血液 53: 765-769, 2012.
<論文の要旨>
著者らは、過去に出血のエピソードがなく、明らかな受傷機転がないにもかかわらず腹腔内出血を来した13歳男児例を報告しています。
新鮮凍結血漿を含む輸血と止血剤による保存的治療に反応せず、外科的止血術を施行しました。
出血源は肝左葉下面と判明しました。
家族歴聴取で母方男性のみの出血傾向が判明し、治療前の第VIII凝固因子活性が22%であったことにより血友病A軽症型と診断しました。
血友病軽症型は日常生活においては出血症状をほとんど認めず、偶然の受傷や手術時止血困難で発見されることが多いこと、血友病の家族歴が明らかでない場合があること、さらに凝固系検査異常が軽微なことにより診断に苦慮することが多いです。
軽症型でも重大出血の場合には生命予後は重症血友病と同等であり、迅速な診断と十分な凝固因子補充による治療が重要です。
Darbyらによると、1977〜1998年に6018人の血友病患者についての解析では、HIV感染を除いた血友病での死亡は予期しない重症出血がもっとも多く、次いで頭蓋内出血が原因と報告しています。
死亡率は重症型18.9%、中等症12.0%、軽症型13.5%であり、軽症型においても重症出血には十分な注意を払う必要を示唆しています。
本症例のように血友病の家族歴が明らかではなく、凝固系検査値の異常が軽度であっても、説明のつかない重大出血を来した男性においては、血友病軽症型の可能性を考えて、精細かつ迅速な凝固因子活性の測定を行うことが重要です。
<リンク>
論文紹介です。
「第IX因子インヒビター」著者名:鈴木隆史
雑誌名:日本血栓止血学会誌 23: 494-505, 2012.
<論文の要旨>
第IX因子インヒビターは、先天性第IX因子欠乏症(血友病B)患者に発生する同種抗体としての、いわゆる血友病Bインヒビターと、自己抗体として非血友病者に発生するインヒビター(後天性血友病B)に分けられます。
先天性第IX因子欠乏症(血友病B)は第IX因子製剤の補充療法中の血友病B患者の1.5〜3%に発生しますが、これは血友病Aの20〜30%の発生率にくらべて極めて低いです。
その発生と時期を同じくして第IX因子タンパクに対するアレルギー、アナフィラキシー反応がみられることも血友病Bインヒビターの特徴です。
第IX因子インヒビター発生の基礎ならびに臨床研究は、第VIII因子インヒビターに比べてその症例数の少なさゆえに遅れている印象があります。
この総説論文では第IX因子インヒビターの臨床とインヒビター発生におけるさまざまな危険因子と治療(止血療法、免疫寛容療法など)について、最近の知見を交えながら解説されています。
優れた総説論文ですので、是非とも直接に論文を見ていただきたいと思います。
<リンク>
論文紹介です。
「先天性出血性素因を有した女性における妊娠中および分娩後出血」
著者名:Shahbazi S, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 603-607, 2012.
<論文の要旨>
先天性出血性素因は、止血に関与する蛋白の先天性欠損を特徴としています。
女性患者またはキャリアーは、生涯を通して出血のリスクに直面しています。
特に、妊娠中や分娩後は、母体、胎児の両者に対して影響があります。
著者らは、先天性出血性素因を有した妊娠前・中・後期、産褥前・後期の5期の出血状況を検討しました。
患者は、血友病キャリア、von Willebrand病 (VWD)、まれな出血性疾患の3群に分類されました。
健常女性と比較して、患者では全5期において有意に出血は高度でした。
VWDでは、妊娠前期の出血は高頻度でしたが、流産は低率でした。
血友病キャリアでは妊娠中の出血は高頻度でしたが、産褥期の出血も最も高頻度でした。
著者らの検討結果によると、全3群の症例ともに膣出血が最も深刻であり、特に妊娠前期と産褥期に有意でした。
<リンク>
論文紹介です。
「後天性血友病はしばしば見過ごされる(ハンガリーの三次医療機関での経験)」
著者名:Arokszallasi A, et, al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 584-589, 2012.
<論文の要旨>
後天性血友病は致命的な出血をきたすことで知られており、早期診断、早期治療が重要です。
著者らは、1999〜2011年の間に経験した後天性血友病の出血症状出現から正しい診断に至るまでに費やした時間を調査しました。
後天性血友病13症例の臨床&検査所見が解析されました。
11症例では第VIII因子に対するインヒビターを有しており、1例では第XIII因子に対する自己抗体、1例では第V因子に対する自己抗体を有していました。
出血症状が出現してから正しい診断までに費やした期間は、中央値1.5ヶ月(3日〜9ヶ月)でした。
4症例では診断までに4.0〜8.0ヶ月も要していました。
診断が遅れた原因は、一次医療機関および一部の二次医療機関では止血検査としてPTのみが行われていたためでした。
あるいは、出血症状がありAPTTが延長していたにもかかわらず、APTTが見逃されていた症例もありました。
以上、原因不明の出血症状をきたす症例に遭遇した場合には、すみやかにしかるべき医療機関に紹介することが重要と考えられました。
<リンク>
本邦では、4.2%であり、静脈血栓が6割、動脈血栓が4割と報告されています。
Eltrombopagによる血小板増加を期待した治療を行って、なぜ、動脈血栓症(血小板活性化が主病態)ではなく静脈血栓症(凝固活性化が主病態)が多いのかについての理由は不明です(参考:血栓症の分類)。
エルトロンボパグ投与時には、動脈血栓症も静脈血栓症も起こす可能性があるため、この一次予防目的として、どのような薬剤を用いるのが良いのかは非常に難しい問題です。
また、血栓予防は抗リン脂質抗体陽性例のみでよいのか、血小板数がどのくらいから予防薬を投与すべきかなど、今後検討すべき課題は多いと思われます。
(続く)
<リンク>
抗リン脂質抗体症候群(APS)合併ITPの血栓症対策はどのようにしたらよいのでしょうか。
上図のような報告があります。
1)APS合併ITP症例で脾摘術後の血小板数上昇に対し、アスピリンによる抗血小板療法を行い血栓症を予防したという報告があります(参考:抗血栓療法)。
2)一方、APS合併ITPで脾摘後にヘパリンによる抗凝固療法を行っていたものの、肺塞栓を合併したという報告も認められ、抗凝固療法の有効性は明らかとはなっておりません。
この二つの報告のみからは、アスピリンによる抗血小板療法がAPS合併ITP症例の血小板上昇時の血栓症対策に有効そうに感じます。
しかし、管理人らは以下のような経験があります。
APS合併ITP症例で、エルトロンボパグ使用に伴う血小板数増加に対してアスピリン予防投与を行いましたが、静脈血栓塞栓症の発症を予防できませんでした。
現時点では、APS合併ITP症例に対してどのような抗血栓療法が有効かといった明らかなエビデンスはなく、大規模臨床スタディもないのが現状であり、今後の検討課題と思われます。
<リンク>
上図は、本邦における特発性血小板減少性紫斑病(ITP)患者の抗リン脂質(aPL)抗体測定状況ですが、7割以上でaPL抗体が未測定という現状があります。
ITPであったとしても大多数の症例で抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピン-β2GPI複合体、ループスアンチコアグラントなど)が測定されていないということは、多くの抗リン脂質抗体症候群見逃し症例の存在を意味しています。
もう一つ、注意すべき点があります。
抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピン-β2GPI複合体は定量測定のため施設間差はありませんが、ループスアンチコアグラントは大きな施設間差が予想されます。
ループスアンチコアグラントの測定にあたっては、注意すべき点が多々あります。この注意点を行わなかった場合には、本当は陽性であるにもかかわらず、全て陰性と誤って判断されてしまいます(偽陰性判定される懸念)。
上図によると、抗リン脂質抗体の測定がされた症例では、陽性:陰性は、おおよそ1:10となっていますが、管理人らは、そんなことはないだろうと思っています。
ループスアンチコアグラントが偽陰性判定されているのではないかと思われます。
<リンク>
ITPと抗リン脂質抗体症候群(APS)(2)からとくにループスアンチコアグラント(LA)陽性のITPでは診断から5年の間に6-7割に血栓症を発症します。
一方で抗リン脂質抗体陰性例では血栓症は5%未満です。
この検討結果より、ITP診断時の抗リン脂質抗体のスクリーニングは重要と考えられます。
<リンク>
この図は新規に診断された特発性血小板減少性紫斑病(ITP)について、抗リン脂質抗体の有無によりその後の血栓症の発症について血栓未発症率を表したものです。
抗リン脂質抗体(aPL)が陽性のITP症例で、5年間の血栓未発症率が39.9%となっており、6割になんらかの血栓症を生じています。
一方でaPLが陰性のITP症例では、血栓の発症はわずか2.3%となっております。
また抗リン脂質抗体(aPL)の中でも特にループスアンチコアグラント(LA)陽性例では5年間で血栓症を発症する症例が66%にみられ、血栓症のリスクとしてLA陽性が重要と考えられます。
<リンク>
金沢大学血液内科送別会の画像を続けさせていただきます。
金沢大学血液内科送別会の画像を続けさせていただきます。
金沢大学血液内科送別会の画像を続けさせていただきます。
金沢大学血液内科送別会の画像を続けさせていただきます。
金沢大学血液内科送別会の画像を続けさせていただきます。
これだけの人があつまる送別会は、当科ではあまりないのではないかと思います。
平成24年11月21日(水)に、徳島から金沢大学血液内科に内地留学にきておられた別宮先生の送別会がありました。
別宮先生のお人柄もあり、多く方にお集りいただき、とても盛り上がった会になりました。
別宮先生の益々のご活躍を祈念しています。ありがとうございました。
<リンク>