金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年1月31日

出血傾向(7):医師国家試験対策 (紫斑、胆石)

出血傾向(6):医師国家試験対策 (鼻出血、出産時大量出血)より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【臨床問題(2)】

48歳女性。2週間前から右季肋骨部痛が出現するようになり、近医にて抗生剤を含む投薬を受けた。5日前から四肢、胸腹部などに紫斑がみられるようになった。本朝から紫斑が広範囲(びまん性出血)となり、血尿、歯肉出血もみられるようになったため来院。



既往歴:特記すべきことなし。



家族歴:特記すべきことなし。



現症:意識は清明。身長158cm、体重52kg。四肢、胸腹部に紫斑が広範囲にみられる。右季肋骨部痛あり。

検査所見:

赤血球383万、Hb11.8g/dl、白血球12,700、血小板21.1万

PT 23.6秒(基準10〜14)、APTT 39.2秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン450 mg/dl(基準200〜400)、FDP 6μg/ml(基準10以下)

ALT 35単位、LDH 239単位(基準176〜353)、クレアチニン 0.7 mg/dl 、CRP 8.2 mg/dl(基準0.3以下)。

出血時間正常、PIVKA II陽性。

腹部エコー検査で胆石が確認された。



まず行うべきことは何か。

a. 内服薬の確認
b. 造影腹部CT
c. 第VII因子の測定
d. ビタミンK製剤の点滴
e. トラネキサム酸の内服


(症例)
・全身皮膚の紫斑、血尿、歯肉出血。出血傾向は明らかに悪化しています。
・右季肋骨部痛は、胆石のためと考えられます。


(解説)

紫斑、血尿、歯肉出血という全身性の出血傾向がみられます(出血傾向は悪化しているようです)。

・胆石のためと思われる右季肋骨部痛があり、胆道感染症を合併したのでしょうか、抗生剤の投与が行われています。

・血液検査では、炎症反応のため、白血球数増加、CRP上昇、フィブリノゲン上昇の所見がみられています。

・凝固検査では、PTの著しい延長がみられており、 PIVKA II(ビタミンK欠乏状態で誘導されるプロトロンビン)が陽性です(PIVKA IIは、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても知られていますが、ビタミンK欠乏でも陽性となります)。

・ビタミンK欠乏症と考えられます。ビタミンK依存性凝固因子として、半減期の短い順番に、VII、IX、X、IIの4因子が知られています(凝固阻止因子で あるプロテインC、プロテインSもビタミンK依存性)。

・ビタミンK欠乏症では、半減期が最も短いビタミンK依存性凝固因子である第VII因子が最も早く低 下するため、まずPT(第VII因子も反映)が延長し、さらに進行するとAPTT も延長します。


(最初に行うべきこと)

・本症例は出血傾向が悪化しており、脳出血などの致命的な出血をきたすことのないように一刻も早い治療が行われるべきです。出血傾向と関連した内服薬としてはNSAIDが有名ですが、本症例では関係ありません(参考:出血傾向(血液検査):医学コアカリ対応)。

・造影腹部CTにより胆石の再確認を行うことができて、血尿の原因もみつかるかも知れませんが、即刻行うべき検査ではありません。

ビタミンK欠乏症に伴う第VII因子活性の低下が予想されますが、診断や治療方針に影響を与えることはないです。また、凝固因子活性は即日結果の出ない病院の方が多く、この結果を待っていては早期治療を逸してしまいます。

・ビタミンK製剤の点滴をまず行うべきです。PTは半日後には正常化するために、治療診断としての意義も大きいです。

・なお、ビタミンKは脂溶性ビタミンであ るため、その吸収には胆汁が必要です。本症例は閉塞性黄疸を合併している可能性があり、ビタミンKは経口投与ではなく、経静脈的に投与するのが肝要です。

トラネキサム酸(トランサミン)は出血症状に対してしばしば処方されますが、血尿が有る症例に対して用いると、尿路での凝血塊が溶解せず腎後性腎不全をきたす可能性がるため、勧められません。


(考察)

1)家族歴、現病歴:先天性出血性素因は否定的(参考:先天性凝固因子異常症)。

2)身体所見(症状):全身の各部からの出血がみられます。紫斑はびまん性出血であり、血小板の問題ではなく凝固異常と考えられます

3)検査:血小板数も出血時間も正常です。血小板機能にも問題ありません。PTは著明に延長していますが、APTTは軽度延長に留まっています。ビタミンK欠乏症の特徴的なパターンです。

4)出血症状が悪化しているため、早々に治療を開始する必要があります。ビタミンK製剤の点滴により、PTは速やかに正常化して出血傾向も消退することが期待されます。出血傾向が無くなったあとは、胆石の治療が必要になるでしょう。

 

(正答) d

(続く)出血傾向(8):医師国家試験対策 (抜歯時異常出血、紫斑)

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43 | 医師国家試験・専門医試験対策

2013年1月30日

出血傾向(6):医師国家試験対策 (鼻出血、出産時大量出血)

出血傾向(5):医師国家試験対策 (凝固異常と血液検査)より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【臨床問題(1)】

20歳女性。幼少時よりしばしば鼻出血を認めていた。2ヶ月前の出産時に大量出血をきたし止血が困難であった(一週間持続後、止血)。出血性素因の精査目的に、近医産婦人科より紹介された。

現症:意識清明、紫斑なし、貧血なし、ほか異常所見なし。

血液学的検査:白血球 7,100、赤血球 358万、Hb 12.9g/dl、血小板 24.5万、PT 11.0秒(基準10〜14)、APTT 71.2秒(基準対照32.2)、FDP 3μg/ml(基準10以下)、出血時間は著明に延長。

妹も、幼少時よりしばしば鼻出血を認めていた。
    
この時点で、行うべきことは何か。
a. 内服薬の確認
b. 関節腫脹の有無を確認
c. von Willebrand因子の測定
d. DDAVPの点滴
e. 血漿由来第VIII因子製剤の輸注


(症例)
女性患者で出産時の大出血。幼少時からの出血傾向があることと、妹にも出血症状がみられます。


(解説)

・既往歴(鼻出血という粘膜出血)および家族歴(妹にも粘膜出血がみられる)より先天性出血性疾患と考えられます。

・今回は出産時の大出血(粘膜出血)をきっかけに精査目的の受診となりました。設問内容のみでも、von Willebrand病が強く疑われます(女性であるため血友病は速やかに否定されます)。

・また、APTT(凝固検査)と出血時間(血小板関連検査)の延長という、von Willebrand病に特有の検査所見になっています。


(最初に行うべきこと)

・出産時の大出血が受診のきっかけではありますが、受診時点では止血しており、しかも貧血はみられていません。DDAVP(デスモプレシン)や血漿由来第VIII因子製剤は、von Willebrand病の止血治療に用いられていますが、特に出血していない時には必要ありません。まず、診断を確定することが最も重要です。

・内服薬では、NSAID(血小板機能を抑制する)による出血傾向が有名ですが、先天性出血性素因が強く疑われている本症例で早々に確認する必要はありません。関節腫脹は、血友病(伴性劣性遺伝)でみられる出血症状です。本例は女性であるため、血友病は考えられません。

・von Willebrand病の確定診断のためには、少なくともvon Willebrand因子(VWF)活性、VWF抗原の測定が最も優先されます。その他には、血小板凝集能のうちリストセチン凝集の欠如、第VIII因子活性の低下も確認しておきたいです。VWFは、第VIII因子のコファクターであるため、von Willebrand病では第VIII因子活性も低下します。


(考察)

1)家族歴、現病歴:先天性出血性素因を疑います。国試で問われる先天性出血性素因は、血友病A&B、von Willebrand病、血小板無力症、Bernard-Soulier症候群の5疾患を知っていれば充分です。

2)身体所見(症状):出産時出血、鼻出血ともに、粘膜出血です。

3)検査:血小板数が正常ですが、出血時間が延長していますので、血小板機能低下があると考えられます。加えてAPTTが延長していますので、von Willebrand病が強く疑われます。確定診断のために、VWFの測定を行えば良いです。

4)今現在出血している訳ではありませんので、止血治療は現在は必要ないです。ただし、将来の外傷、抜歯時の異常出血や、手術時の止血管理目的には、血漿由来第VIII因子製剤(商品名:コンファクトF、血漿由来であるため、第VIII因子のみでなくVWFも含有されます)が必要となります。

出血が軽度であれば、DDAVPでも良いです(DDAVPは血管内皮からVWFを遊離させる作用があります)。

なお、遺伝子組換え第VIII因子製剤(VWFは含有されない)は、von Willebrand病に対して無効です。

参考:止血剤の種類と疾患

 

(正答) c


(続く)出血傾向(7):医師国家試験対策 (紫斑、胆石)

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55 | 医師国家試験・専門医試験対策

2013年1月29日

出血傾向(5):医師国家試験対策 (凝固異常と血液検査)

出血傾向(4):医師国家試験対策 (血液検査)より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【代表的な出血性疾患・病態と血液検査】

疾患名 PLT 出血時間
PT APTT Fbg FDP
血友病A&B N N N 延長 N N
von Willebrand病 N 延長 N 延長 N N
血小板無力症
N 延長 N N N N
ビタミンK欠乏症 N N 延長 延長 N N
DIC(典型例) 低下 延長 延長 延長 低下 上昇
先天性第VII因子欠損症 N N 延長 N N N
肝硬変
低下 延長 延長 延長 低下 N
老人性紫斑病 N N N N N N
ワルファリン内服 N N 延長 延長 N N
アスピリン内服 N 延長 N N N N

PLT:血小板数、Fbg:フィブリノゲン


【診断に参考となる所見】

・ 先行する感染症の有無:急性ITP、アレルギー性紫斑病では、しばしば先行感染症がみられる。

・ 血友病は伴性劣性遺伝のために男性のみに発症(母親がキャリアー)。

・ von Willebrand病は常染色体優性遺伝するため、男女ともに発症。

・ NSAID服薬の有無。

・ ビタミンK欠乏症:食事摂取量の低下、閉塞性黄疸、抗生剤の投与は危険因子。


(続く)出血傾向(6):医師国家試験対策 (鼻出血、出産時大量出血)

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08 | 医師国家試験・専門医試験対策 | トラックバック(0)

2013年1月28日

出血傾向(4):医師国家試験対策(血液検査)

出血傾向(3):医師国家試験対策 より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【検査所見からのアプローチ】
出血傾向では最も重要。参考:出血傾向の血液検査

1)    血小板数数の低下:血球計算(血小板数)で確認。

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、再生不良性貧血、急性白血病、肝硬変(3の要素もある)、播種性血管内凝固症候群(DIC)(3、4の要素もある)など。


2)    血小板機能の低下:出血時間、血小板凝集能で確認。

血小板無力症(Glanzmann病)、von Willebrand病(3の要素<APTT延長>もある)、Bernard-Soulier症候群、NSAID(アスピリンなど)内服、尿毒症など。


3)    凝固異常PTAPTTフィブリノゲンで確認。

血友病A、血友病BビタミンK欠乏症など。


4)    線溶過剰亢進FDPで確認。

線溶亢進型DIC(1、3の要素もある)など。


5)    血管壁の異常:出血時間や、全ての血液凝固検査は正常

アレルギー性紫斑病(Schoenlein-Henoch紫斑病)、単純性紫斑老人性紫斑など。


(続く)出血傾向(5):医師国家試験対策 (凝固異常と血液検査)

 

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2013年1月27日

出血傾向(3):医師国家試験対策 (出血部位)

出血傾向(2):医師国家試験対策 より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【出血部位からのアプローチ】

1)    関節内出血血友病A&B

2)    筋肉内出血血友病A&B後天性血友病(第VIII因子インヒビター)。

3)    粘膜出血(鼻出血、歯肉・口腔粘膜出血、消化管出血、血尿、女性性器出血など):特に、幼少時から鼻出血がみられやすい場合は、von Willebrand病を疑う。

4)    四肢末梢(特に下肢)の左右対照性紫斑アレルギー性紫斑病。腹痛、関節痛、腎障害(IgA腎症)を伴うことがある。

5)    臍帯出血先天性第XIII因子欠損症

6)    前腕伸側、手背の紫斑(高齢者)赤紫色で境界明瞭、部位を変えて出没(全ての凝血学的検査は正常):老人性紫斑

7)    タール便(黒色便):上部消化管(胃、十二指腸など)からの出血。

8)    紫斑
・ 点状出血(petechiae、径1〜5mm):血小板や血管が原因の出血傾向。
・ 斑状出血(ecchymosis、径数cm以内):凝固異常が原因の出血傾向。
・ びまん性出血(suggillation、面積の比較的大きな皮下出血):凝固異常が原因の出血傾向。

 

 (続く)出血傾向(4):医師国家試験対策(血液検査)


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2013年1月26日

出血傾向(2):医師国家試験対策(先天性/後天性)

出血傾向(1):医師国家試験対策 より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【先天性/後天性からのアプローチ】

1)    先天性出血傾向

<ポイント>

・ 外傷時、手術時、抜歯時の異常出血の既往。
・ 幼少時からの出血。
・ 血縁者で出血しやすい者がいる。

<代表的疾患>

血友病A、血友病Bvon Willebrand病血小板無力症(Glanzmann病)、Bernard-Soulier症候群など。

2)    後天性出血傾向:上記のポイントがない。国試レベル疾患では、上記疾患以外は全て後天性

 

 (続く)出血傾向(3):医師国家試験対策 (出血部位)


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2013年1月25日

出血傾向(1):医師国家試験対策


出血傾向のアルゴリズム

(多少無理がある部分もあるのですが、国試レベルということで割り切っていただければと思います)

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)

 

家族歴、現病歴の聴取 → 先天性かどうかの推測可能。

身体所見 → 特徴的な出血部位があれば疾患の推測可能。

検査(※)


(※)検査(最重要)

血小板数低下 → 有:血小板数低下をきたす疾患
↓無
血小板機能低下 → 有:血小板機能低下をきたす疾患
↓無
凝固異常、線溶亢進(PT,APTT,フィブリノゲン,FDP)→ 有:凝固線溶異常疾患
↓無
血管壁の異常の疾患

(続く)出血傾向(2):医師国家試験対策(先天性/後天性)


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2013年1月24日

可溶性フィブリン(SF/FMC)、F1+2とは

可溶性フィブリン(SF/FMC)、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)

 参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【基準値】

SF:<5μg/mL
FMC:<6μg/mL
F1+2:70-230 pM/L

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン プロトロンビン時間とは

APTT(ヘパリンのモニタリング)トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とはプロトロンビン時間(PT/INR)とはフィブリノゲントロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)とは


【測定法】
SF/FMC、F1+2ともにモノクローナル抗体を用いた測定原理です。


【検査の意義】

F1+2:活性型第X因子(FXa)によって、プロトロンビンがトロンビンに転換する際に、プロトロンビンから遊離するペプチドがF1+2です。トロンビン産生量を反映しており、凝固活性化マーカーです。

SF/FMC:トロンビンの作用を受けて、フィブリノゲンがフィブリンに転換していく過程で形成される中間産物です。トロンビンが確実にフィブリノゲンに作用したことを意味しています。F1+2やトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)よりもさらに凝固が進行したことになります。


【異常値となる疾患・病態】

上昇:播種性血管内凝固症候群(DIC)、DIC準備状態
、深部静脈血栓症、肺塞栓
、その他の血栓症急性期、心房細動の一部など。

低値:ワルファリンなどの抗凝固療法中にはコントロール良好であれば正常下限になります(F1+2は、しばしば正常下限よりも更に低値となります)。


【異常値となる機序】
トロンビン産生量が亢進すれば(凝固活性化状態になれば)、SFやF1+2は上昇する点は、TATと同じです。

 
【注意点】
TAT、SF、F1+2、Dダイマーは採血困難者などではこの順番にartifactが出やすいです。

Dダイマーが全く正常であるにもかかわらずSFやF1+2が異常高値である場合は、artifactの可能性も考えて再検するのが望ましいです。


【検査プラン】

F1+2、TAT、SFはお互いに正相関して良いはずですが、相関から外れることも少なくないです。

その理由としては半減期や代謝経路の差異のみならず病態を反映している可能性があります。

すなわち、DICにおいてTATが著増するにもかかわらずSFが軽度上昇に留まる例は軽症であり、TATが軽度上昇に留まるにもかかわらずSFが著増する例は重症である印象を持っています。

この点は、今後の重要な検討課題です。


【備考】
 
TAT、SF:DIC、各種血栓症のマーカーとして期待されています。
SF新規経口抗凝固薬の効果判定マーカーとして期待されています。
F1+2:Wa内服時に、F1+2は効果判定、PT-INRは副作用チェック目的と異なった意義を有していると思います。



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37 | 凝固検査

2013年1月23日

トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)とは

トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)

 参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【基準値】

<3〜4ng/mL

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン プロトロンビン時間とは

APTT(ヘパリンのモニタリング)トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とはプロトロンビン時間(PT/INR)とはフィブリノゲン


【測定法】
何種類かの測定法がありますが、トロンビンに対する抗体とアンチトロンビン(AT)に対する抗体の両者共に反応する蛋白質を検出する測定原理となっています(サンドイッチEIAなど)。


【検査の意義】

トロンビンとその代表的な阻止因子であるATが1:1結合した複合体がトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)です。

トロンビン産生量、すなわち凝固活性化の程度を間接的に評価するこ とができます。

トロンビンの血中半減期は極めて短いため直接測定は不可能ですが、TATの血中半減期は3〜数分ですので測定することが可能です。


【異常値となる疾患・病態】

上昇:播種性血管内凝固症候群(DIC)、DIC準備状態
、深部静脈血栓症、肺塞栓、その他の血栓症急性期、心房細動の一部、僧房弁狭窄症に合併した心房細動など。

低値:ワルファリンなどの抗凝固療法中にはコントロール良好であれば正常下限になります。


【異常値となる機序】
トロンビン産生量が亢進すれば(凝固活性化状態になれば)、ATと結合するトロンビンが増加して、TATは上昇します。

 
【注意点】
凝固活性化を反映するマーカーとして、TAT可溶性フィブリン(SF)、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)Dダイマーなどが知られてい ますが、採血困難者などではこの順番にartifactが出やすいです。

Dダイマーではまずartifactが出ないのに対して、TATでは最も artifactが出やすいです。

Dダイマーが全く正常であるにもかかわらずTATが異常高値である場合は、artifactの可能性も考えて再検するのが望ましいです(参考論文)。


【検査プラン】

DICや各種血栓症を疑った場合の診断や、治療効果の判定・経過観察を目的として測定されることが多いです。

TATのみが単独で測定されることは例外的で、FDP、Dダイマー、AT、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)などとセットで測定 されることが多いです。

DIC診断&病型分類を行うためには、グローバルマーカー以外に少なくともTAT、PIC両者の測定は不可欠です。  


【備考】
 
TATの明らかな高値が確認されたDICや血栓症急性期の患者では、へパリン類などによる抗凝固療法が行われます。

治療効果の判定は、血小板数や、FDP&Dダイマーのみでは誤判断することがあります。

DICにおいて血小板数低下やFDP&Dダイマー上昇が遷延していても、TATが確実に低下している場合は治療法の変更を行わずに、同じ治療を継続することでDICより離脱できることをしばしば経験します。


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2013年1月22日

フィブリノゲン(Fbg)とは

フィブリノゲン(Fbg)


【基準値】

200〜400mg/dL

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン プロトロンビン時間とは

APTT(ヘパリンのモニタリング)トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とはプロトロンビン時間(PT/INR)とは


【測定法】
クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、トロンビンを添加して、フィブリン析出するまでの時間を測定し、フィブリノゲン濃度既知の検体による標準線からフィブリノゲン量を求めます(トロンビン時間法)。

フィブリン析出を検出する方法は、検査機器によって異なります。


【検査の意義】

血中フィブリノゲン濃度(通常のトロンビン時間法であれば活性を測定しています)を測定します。


【異常値となる疾患・病態】

高値:炎症反応時(感染症、膠原病、悪性腫瘍など)、妊娠、血栓症急性期など。

低値播種性血管内凝固症候群(DIC)、一次線溶亢進(線溶療法時、u-PA産生腫瘍など)、異常(・低・無)フィブリノゲン血症、肝不全(肝硬変、慢性感性など)、L-アスパラギナーゼ投与、巨大血栓症、大量出血など。


【異常値となる機序】
高値:肝での産生が亢進するためです。

低値:肝不全、L-アスパラギナーゼ投与は肝での産生低下によります。DIC、一次線溶亢進、巨大血栓症、大量出血は消費によります。

 
【注意点】
1)    新規経口抗凝固薬の一つであるダビガトラン(商品名:プラザキサ)内服中の患者でフィブリノゲンが著減と測定されることがあります。これは、ダビガトランの抗トロンビン効果に伴うartifactであす(プラザキサとフィブリノゲン)。DICと誤診してはいけないです。

2)    DICの中でも線溶亢進型DIC(APL、大動脈瘤、巨大血管腫、前立腺癌、血管関連腫瘍など)ではフィブリノゲンが低下しやすいですが、線溶抑制型DIC (敗血症など)ではフィブリノゲン低下は稀です。フィブリノゲン低下がないからと言って、DICを否定できません。


【検査プラン】

1)    炎症反応の有無をチェックする目的に、CRPとともに赤沈値が頻用されています。

赤沈亢進は、1)ヘマトクリット低下、2)γグロブリン上昇、3)フィブリ ノゲン上昇(3所見ともに炎症時にみられます)を総合的に反映しています。赤沈亢進の一因としてフィブリノゲン上昇を知っておきたいところです。

2)    患者の重篤化にもかかわらず赤沈が遅延した場合、DICを疑うべきと言われた歴史があります。DICではフィブリノゲンが低下するためです(現在は直接フィブリノゲンを測定するためこのような赤沈の利用はしていません)。

3)    フィブリノゲン低下でDICを疑った場合は、FDPDダイマーTATPIC、α2PI、可溶性フィブリン(SF)などで診断を確定します。


【備考】

凝固線溶関連疾患で「異常」の用語が登場する疾患がいくつかありますが、タンパク量(抗原量)は正常であるにもかかわらず、アミノ酸配列に問題があるため活性が低下している疾患・病態を意味しています。

異常フィブリノゲン血症は、トロンビン時間法(通常はこの方法を用いています)によるフィブリノゲン値は低値ですが、抗原量を測定すると正常です(血栓止血エキスパートにコンサルトするのが良いです)(先天性凝固因子異常症1先天性凝固因子異常症2)。



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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2013年1月21日

活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)とは

活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)


【基準値】

通常30〜40秒位(試薬により異なります)

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン プロトロンビン時間とは

APTT(ヘパリンのモニタリング)トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは


【測定法】
クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、APTT試薬(カオリン、エラジン酸、セライトなどの接触因子活性化剤(異物)およびリン脂質が含まれる)、およびカルシウムイオンを添加して、凝固するまでの時間を計測します。


【検査の意義】

血液が凝固する機序としては、TFまたは異物(陰性荷電)による凝固の2種類が知られています(それぞれ、外因系&内因系凝固活性化機序)。

APTTは、このうち異物による凝固を反映した検査です。


APTTは、凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の活性低下で延長します。


【異常値となる疾患・病態】

APTT延長時に病的意義があり、以下は代表的疾患・病態です。

血友病A、血友病B、von Willebrand病(VWD)、後天性血友病A(B)、ループスアンチコアグラント(LA)、凝固第XII・XI・X・V・II・I因子因子の欠損症 またはこれらの凝固因子に対するインヒビター、へパリン投与時、ダビガトラン内服時(PTも軽度延長)など。

ワルファリン内服中、ビタミンK(VK)欠乏症、肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など)でも延長することがありますが、PT延長よりも目立ちません(PTの項を参照)。

凝固活性化状態、高脂血症、妊娠などによりAPTTが短縮する場合がありますが、通常は病的意味を持たせません。


【異常値となる機序】
1)血友病A、後天性血友病A、VWD:第VIII因子活性の低下によります。VWFは第VIII因子のキャリアー蛋白でありVWDでは、VWFのみならず第VIII因子活性も低下します。

2)血友病B、後天性血友病B:第VIII因子活性の低下によります。

3)LA:リン脂質依存性凝固時間が延長します。PTよりもAPTTの方が延長しやすいです。

 

【注意点】
採血量不十分の場合や多血症患者では、上清血漿中のクエン酸ナトリウム濃度が高くなり、artifactで凝固時間が延長します。

透析回路やヘパリンロック部位からの採血などでへパリン混入によってもAPTTは延長します。 


【検査プラン】

APTT延長がみられた場合には、凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子の活性低下(複数凝固因子のこともあります)、またはLAの存在 を意味します。

血友病A&B(後天性も含め)、VWD、LAのいずれでもない場合には、凝固XII、XI、X、V、II、I因子の欠損症である可能性があ ります。

希少疾患ですが、高分子キニノゲンやカリクレインの欠損症でもAPTTが延長します。

APTT延長時、PTが正常であれば第XII、XI、IX、VIII因子活性の低下(またはLA)が予想され、PTも延長している場合には凝固第X・V・II・I因子のいずれか一つ以上の凝固因子活性低下が予想されます。



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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53 | 凝固検査

2013年1月20日

トロンボテスト(TT)&ヘパプラスチンテスト(HPT)とは

トロンボテスト(TT)& ヘパプラスチンテスト(HPT)


【基準値】

TT:>70%、HPT:70〜130%

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン プロトロンビン時間とは


【測定法】

いずれもPT検査の亜系であり、組織因子による凝固時間を測定しています。

ただし、試薬に弱力価の組織因子、第V因子、フイブリノゲン(I)が含まれているため、外因系凝固活性化機序のうちVとIの影響が除かれます。

すなわち、第VII、X、II因子の減少で、測定値(%)は低下します(秒は延長しており、秒を%に換算しています)。


【検査の意義】

TTは低値での精度が良く、PIVKA(ビタミンK(VK)欠乏状態で誘導される蛋白)凝固因子の影響を受けやすいです。もっぱらワルファリン(Wa)コントロール目的に使用されます。

HPTは、正常〜正常下限レベルでの定量性が高く、PIVKAの影響を受けにくいです。肝予備能のマーカーとして用いられます。ただし、PTでも同目的を果たせるため、検査件数が低下しています。

【異常値となる疾患・病態】
ワルファリン内服中、VK欠乏症、第VII・X・II因子活性の低下、肝不全、(ループスアンチコアグラントの一部)など。


【異常値となる機序】
1)    ワルファリン内服中、VK欠乏症:VK依存性凝固因子である第VII・X・II因子活性が低下するため。ワルファリン内服中は、通常TT10〜10数%でコントロールします。なお、INR 2.0 はTT 17%、INR 3.0はTT 9%に相当します。

2)    肝不全:第VIII因子を除く全凝固因子が低下するため(VK依存性凝固因子も低下)、異常値となります。

【注意点】
1)    Wa関連でEBM根拠となる大規模臨床試験の多くがPT-INRで評価されているため、TTは検査件数が低下しています。しかし、純粋にVK依存性凝固3因子(VII、X、II)のみを評価する点で、本来はTTの方が優れています。たとえば炎症反応でフィブリノゲン(I)が上昇している場合、PT-INRでは実際のコントロールよりも弱いと誤判断される可能性があります

2)    Wa内服中のHPT測定は通常行ないませんが、誤って測定して異常低値を見ても当然ながら肝予備能低下を意味しません。

3)    Wa関連のピットフォール:PIVKA IIはVK欠乏状態で血中に出現しますが、肝細胞癌の腫瘍マーカーとしても知られています。Wa内服中は当然PIVKA IIは著増しますが、肝細胞癌ではありません(PIVKA IIの測定自体がナンセンスです)。

【検査プラン】
1)    PT、APTTが正常であるにもかかわらず、TTやHPTが低下する場合があります。TTやHPT試薬中のリン脂質がPT試薬よりも低濃度であることに起因するループスアンチコアグラントの存在を意味することがあります(参考:抗リン脂質抗体症候群)。

2)    TTやHPTが正常であるにもかかわらずPTが延長している場合には、フィブリノゲンも正常であれば、第V因子欠損症(またはインヒビター)の可能性が高いです。


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32 | 凝固検査

2013年1月19日

プロトロンビン時間(PT/INR)とは

プロトロンビン時間(PT)/PT-INR


【基準値】

通常10〜12秒位(試薬により異なります)
PT-INR:1.0

関連記事:PT-INRとは(ワーファリン)?PT(PT-INR)正常値プラザキサ vs ワーファリン


【測定法】

クエン酸ナトリウム入りの凝固専用採血管から得た血漿検体に対して、組織因子(tissue factor:TF)およびカルシウムイオンを添加して、凝固するまでの時間を計測します。

PTの値から、INR(international normalized ratio、国際標準比)は以下の式によって算出されます。

INR

ISI:PT試薬ごとにISI(International Sensitivity Index、国際感受性指標)が設定されています。

1.0に近い試薬が理想的とされています。


【検査の意義】

血液が凝固する機序としては、TFまたは異物(陰性荷電)による凝固の2種類が知られています(それぞれ、外因系&内因系凝固活性化機序)。

PTは、このうちTFによる凝固を反映した検査です。


PTは、凝固VII、X、V、II(プロトロンビン)、I(フィブリノゲン)因子の活性低下で延長(INRは上昇)します。



【異常値となる疾患・病態】

PT延長(INR上昇)時に病的意義があります。以下が代表的疾患・病態です。

ワルファリン内服中、ビタミンK(VK)欠乏症、肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、凝固第VII・X・V・II・I因子の欠損症またはこれらの凝固因子に対するインヒビター、低栄養状態、リバーロキサバン内服時(APTTも軽度延長)など。


【異常値となる機序】
1)ワルファリン内服中:ワルファリンはVK拮抗薬でありVK 依存性凝固因子であるVII、IX、X、II因子がこの順番で低下します(半減期の短い順番)。特に、VII因子は最も半減期が短く最初に低下します(VK欠乏状態では、APTTよりもPTの方が先に延長します)。

2)VK欠乏症:同上。


3)肝不全、低栄養状態:凝固因子は肝臓で産生されるため、肝不全や低栄養状態ではPTやAPTTが延長します。特にPTは延長しやすいです。




【注意点】
採血量不十分の場合や多血症患者では、上清血漿中のクエン酸ナトリウム濃度が高くなり、artifactで凝固時間が延長します。


【検査プラン】

PT延長がみられた場合には、凝固VII、X、II、I因子のいずれか(複数凝固因子のこともある)の活性が低下していることを意味します。

ワルファリン内服中、VK欠乏症、肝疾患、低栄養状態のいずれでもない場合には、凝固第VII・X・V・II・I因子の欠損症である可能性がありますから、上記凝固因子を個々に測定します(先天性凝固因子異常症)。


【備考】

PT延長時、APTTが正常であれば第VII因子活性の低下が予想され(参考:第VII因子欠損症)、APTTも延長している場合には凝固第X・V・II・I因子のいずれか一つ以上の凝固因子活性低下が予想されます。



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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52 | 凝固検査

2013年1月18日

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(インデックス)

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(4)より続く


血栓止血研究室(血管診療グループ)紹介(インデックス)


1)リコモジュリン・プラザキサ・イグザレルト

2)新規経口抗凝固薬

3)播種性血管内凝固症候群(DIC)

4)APS・凝固異常・動脈瘤



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2013年1月17日

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(4)

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(3)より続く


血栓止血研究室(血管診療グループ)紹介(4)

抗リン脂質抗体症候群(APS)
に対しても精力的にとり組んできました。

当科の「血栓止血外来」で診療を受けられる患者さんの過半数はAPS関連の疾患を持っておられますので、臨床的にも比重の大きい重要疾患であり,外来担当者全員で診療にあっております。

現在、森下が名古屋市立大学産科の杉浦先生を中心とした抗リン脂質抗体陽性の「不育症における原因遺伝子のゲノムワイド関連解析」の共同研究に参加しております。

APSはいまだ不明の部分も多い疾患群ですが、徐々に解明され、コントロール可能となっていくことを,大いに期待して研究に取り組んでおります。


先天性凝固障害の分子病態に関する研究としては、森下および保健学科の学生らを中心に、凝固因子および凝固阻止因子の分子異常について幅広く研究しています。

一般的には先天性凝固因子欠損症では出血傾向を、凝固阻止因子欠損症では血栓傾向を呈することが知られています。そのような異常を呈する症例について家族を含めて遺伝子解析を行い、その変異部位の同定を行っています。

さらに、組み換えDNAの手法を用いて異常分子を作成し、その機能解析を行っております。

今までに,世界でも報告のない新たな変異部位を次々と明らかにしました。

現在,血栓傾向をきたす先天性第V因子欠損症というきわめてアジア系人種ではまれな家系に遭遇し,その血栓形成メカニズムの解明に取り組んでおり,第V因子の新たな機能が明らかになるかもしれません。

ヘムの分解酵素であるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1) ならびにその分解産物である一酸化炭素(CO)の抗血栓作用についての研究を大学院生丸山が明らかにし、Trombosis Reserchにacceptされました。

HO-1ならびにCOは血栓傾向に対する治療戦略の一つとして利用できる可能があると考えております。


また、林らは大動脈瘤に合併するDICの病態に迫るべく大動脈瘤のラット動物モデルを作成し、線溶作用を有するアネキシンIIが高発現していることを免疫組織学的染色およびreal-time RT-PCR法を用いて明らかにしました。

また臨床的には、大動脈瘤手術症例の切除標本と血中分子マーカーを用いた検討を、心肺・総合外科の血管グループと共同研究で行っております。

最近、大動脈瘤壁組織の免疫組織学的検討においてアネキシンIIが濃染することを明らかにし、瘤形成における線溶系の関与を示唆しました。

以上、血栓止血研究室は、生体の最も基本的な生理反応である止血と、人類が克服すべき血栓症を扱っています。また、この領域は追求する程に味わいのある深淵な学問であると思っています。志を同じくする同志が一人でも増えることを願ってやみません。                      

(続く)血栓止血研究室(血管診療G)紹介(インデックス)


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25 | 血栓止血(血管診療)

2013年1月16日

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(3)

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(2)より続く


血栓止血研究室(血管診療グループ)紹介(3)

さて、当研究室の医局員スタッフは学内外を合わせて計10人で、大学には、朝倉、森下、林、門平(敬称略)の計4人が在籍しています。

またこれまでに、薬学部修士課程大学院生13人との共同研究を行ってきました。

保健学科、検査部との共同研究も継続されています。

研究助手の穴田は、長きにわたり研究室のため縁の下の力者として活躍してもらっており、彼女なしでは研究室は運営できないという状況にあります。


当研究室は、一貫して「血栓症の克服」に向けて研究を進めています。特に、播種性血管内凝固症候群(DIC)病態解析と治療法の改善、抗リン脂質抗体症候群(APS)の病態解析・臨床、血栓性疾患の病態解析、凝固異常症の遺伝子解析は、私達が最も力を入れているところです。


DIC研究に関しては、ラットDICモデルを用いた検討を行ってきましたが、LPS誘発DICモデルと組織因子(TF)誘発DICモデルでは全く病態が異なり、前者は臨床の線溶抑制型DICに後者は線溶亢進型DICに類似した病態であることを指摘しました。

また、TFモデルは元来臓器障害を来しにくいモデルですが抗線溶薬を投与すると臓器障害が悪化すること、LPSモデルに対する抗線溶薬の投与は臓器障害をさらに悪化させること、LPSモデルに対するウロキナーゼの投与は臓器障害の進展を阻止することなどの事実から、DICにおける線溶活性化が病態と密接に関連することを報告してきました。

最近では、本来は他疾患に用いられている種々の薬剤が、DIC病態を軽快させるという興味深い結果が蓄積されています。


なお、日本血栓止血学会 学術標準化委員会(SSC)の「DIC部会」の部会長として朝倉が任ぜられ、また、森下、林は部会員に任ぜられています。

金沢大学としては日本におけるDICの臨床&研究における責任の重大さを感じているところです。

現在、DIC診断基準の改訂作業が最重要なテーマになっており、大御所の先生が多数参画されて「DIC診断基準作成委員会」も新たに設置されました。

DIC部会と委員会が協力しあって、診断基準の改訂作業を行っています。

(続く)血栓止血研究室(血管診療G)紹介(4)


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18 | 血栓止血(血管診療)

2013年1月15日

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(2)

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(1)より続く


血栓止血研究室(血管診療グループ)紹介(2)


リバーロキサバンとダビガトランは、共通点としては適応疾患(非弁膜症性心房細動:NVAF)、分子量が小さいこと、半減期(半日)などを挙げることができますが、相違点も少なくありません。


代謝経路はダビガトランは腎臓主体(80%)ですが、リバーロキサバンは活性体の腎排泄は30数%(非活性体も含めると65%)のため、腎障害を有する症例ではリバーロキサバンを使用しやすく、肝障害を有する症例ではダビガトランを使用しやすいと考えられます(腎・肝障害ともに高度の場合はどちらも使用できませんが)。

今後は、これらの新規経口抗凝固薬の使い分けが議論されるようになっていくと思います。


ワルファリンしか使用できなかったごく最近までの時代を思いますと、治療選択肢が大きく広がりました。

他施設や他科からの紹介でも、本症例は新規経口抗凝固薬の適応があるかどうかというコンサルトも増えました。

また、紹介状を拝見しますと、新規経口抗凝固薬はあまり厳格な制限なく弾力的に処方されている印象を持っています。ただし、これらの新薬が順調に成長するためには、やはり今後の慎重な検討が必要だと思っています。


深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓
に関する臨床各科からのコンサルトも相変わらず多いです。

いろんな要素がありますが、下肢静脈エコー検査が普及してきたため、今までよりも診断率が格段にアップしたことも大きいと思います。

(続く)血栓止血研究室(血管診療G)紹介(3)


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2013年1月14日

血栓止血研究室(血管診療G)紹介(1)

血栓止血研究室(血管診療グループ)紹介(1)

血栓止血研究室は、血栓止血学を臨床・研究・教育のテーマとしています。

内科系、外科系あるいは臨床検査医学など、多くの他領域と関連が深いのが特徴です。

血栓止血学は血液内科の領域の一つと思われがちですが、個人的には「血管内科」と言った方がよりわかりやすいと思っています。


遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM、リコモジュリン)は、保険適応は播種性血管内凝固症候群(DIC)のみですが、その強い抗炎症効果(LPSやHMGB-1の吸着作用、炎症性サイトカイン抑制作用)が注目されて、多くの病態での応用が期待されています。

昨年は、某焼き肉チェーン店の食中毒で有名になった溶血性尿毒症症候群(HUS)でもrTMが多用されたことを紹介しました。

最近は、移植後の合併症であるSOS、TMA、生着症候群にも有効であるとする欧文論文が続々出るようになりました。

rTMは、今後とも目の離せない夢のあるお薬ではないかと思います。


昨年は、次世代のワルファリンとも言える新薬ダビガトラン(商品名:プラザキサ)を紹介させていただきましたが、今回は新薬リバーロキサバン(商品名:イグザレルト)を紹介いたします。

リバーロキサバンは、ダビガトランから1年遅れで臨床の場に登場しました。

ともに処方量が増加しているようです。

 

(続く)血栓止血研究室(血管診療G)紹介(2)


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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51 | 血栓止血(血管診療)

2013年1月13日

血友病Bと遺伝子組換えFIX&アルブミン融合蛋白

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


「血友病B患者に対する遺伝子組換えFIX&アルブミン融合蛋白の安全性と薬物動態

著者名:Santagostino E, et al.
雑誌名:Blood 20: 2405-2411, 2012.


<論文の要旨>

遺伝子組換え第IX因子&ヒトアルブミン融合蛋白(rIX-FP)は、血友病B患者に対する製剤投与回数を減らす目的で開発されました。


治療歴のある血友病B25症例(FIX≦2IU/dL)に対して、rIX-FP25,50,75IU/kgを投与して安全性と薬物動態を評価しました(ヒトに対する最初の用量漸増試験です)。

また、用量50IU/kgにおいて、以前のFIX製剤(血漿由来または遺伝子組換え)使用時と比較しました。


その結果、アレルギー反応やインヒビター発症をきたした症例はありませんでした。

おそらく治療と関連した4つの軽症有害事象がみられました。


rIX-FP50IU/kgの投与された13例での検討では、rIX-FPの平均半減期は92時間であり、以前に使用されていたFIX製剤の5倍以上でした。


rIX-FP25または50IU/kgにより、Day7におけるFIXの基礎値はそれぞれ7.4IU/kg、13.4IU/dLであり、Day14ではそれぞれ2.5IU/dL、5.5IU/dLでした。

rIX-FP、遺伝子組換え製剤、血漿製剤回収率増加は、それぞれ1.4、0.95、1.1IU/dLでした。


以上、rIX-FPは安全性に問題なく、すぐれた薬物動態を有するものと考えられました。

本薬は血友病B患者における輸注回数を減らす上で有用と考えられた。



<リンク>

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2013年1月12日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)新年互礼会

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の新年互礼会が行われました。

平成25年1月4日の夕刻です。

今年も医局員が一致団結して、臨床、研究、教育に全力を尽くしたいと思います。

互礼会


<リンク>

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2013年1月11日

小児血友病における運動と出血リスク

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


「小児血友病における運動と出血リスクの関連

著者名:Broderick CR, et al.
雑誌名:JAMA 308: 1452-1459, 2012.


<論文の要旨>

小児血友病患者において激しい運動は出血のリスクを増やすと考えられていますが、その程度は不明です。

著者らは運動に伴う一過性の出血リスクの増加を定量しました。


オーストラリアの3つの血友病治療センター(2008.7.〜2010.10)における中等症〜重症小児血友病A&B男児(4〜18才)を対象に、出血イベントを一年間調査しました。

出血後に、患者または親より、出血前の運動状況について確認しました。

運動に伴う衝撃の頻度や強さにより運動種を分類しました。


その結果、4839人•週の観察期間中に、436回の出血が見られました。

このうち336回の出血は、前回出血後2週間以上経過して発生しており、リスクの一次解析に用いられました。

運動無しおよび運動分類1(水泳など)と比較して、分類2(バスケットボールなど)では一過性に出血リスクが増加しました(OR 2.7, P<0.001)。

分類3(レスリングなど)ではさらに出血リスクが増加しました(OR 3.7, P<0.001)。


1年間に5回出血し、週に2回の分類2の運動および週に1回の分類3の運動を行っている小児患者では、出血が運動と関連していたのは年5回中1回のみでした。

凝固因子活性が1%上昇する毎に、出血発生率は約2%低下しました。


以上、小児血友病では激しい運動に伴い出血リスクは若干増加しましたが、このリスク増加は一過性であり運動と出血の関連は小さいと考えられました。


<リンク>

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2013年1月10日

石川県合同輸血療法委員会講演会のご案内

石川県合同輸血療法委員会講演会


日時:平成25年2月11日(月)14:00〜17:00
場所:石川県地場産業振興センター新館1階  コンベンションホール
金沢市鞍月2丁目1番地 電話 076-268-2010

I. 石川県合同輸血療法委員会活動報告など
(アンケート発表、小規模医療機関向けマニュアル作成について)

II【特別講演】16:00 開始予定

『TMA病態に対する新鮮凍結血漿由来ADAMTS13の治療効果』

講師:奈良県立医科大学 輸血部  教授  藤村 吉博 先生


<リンク>

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2013年1月9日

プロトロンビン複合体製剤:ワルファリンとダビガトラン中和

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


プロトロンビン複合体製剤はワルファリンによる凝固異常に伴う出血を減少させるがダビガトランに伴う出血には無効である

著者名:Lambourne MD, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 1830-1840, 2012.


<論文の要旨>

ワルファリンや新規経口抗凝固薬であるダビガトラン(DE)は血栓塞栓症を予防するが、出血の副作用の懸念があります。

しかし、これらの薬剤の中和と出血症状に関する臨床的な検討はほとんどありません(検査データで評価した報告はありますが)。

著者らは、マウスの尾切断法により、プロトロンビン複合体剤(PCC)、活性型PCC(APCC) 、遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)、マウス新鮮凍結血漿(FFP)の効果を評価しました。

CD1マウスがワルファリンまたはDEを投与され、凝固検査、出血量、出血時間を測定しました。


マウスにワルファリンを投与した凝固異常状態(PT比:4.3または24の2種類を作成)で、PCC(14.3IU/kg)は出血量および出血時間を正常化しましたが、rFVIIa(3mg/kg)やFFPは無効でした。

PCC単剤、rFVIIa単剤、PCC&rFVIIa併用、APCC(100U/kg)はいずれも、DE60mg/kgに伴う凝固異常の出血量を減少させませんでした。

PCC&rFVIIa併用、APCCはDE投与マウスの出血時間を短縮させました。


以上、PCCは、DEよりもワルファリン伴う凝固異常に伴う出血の方をはるかに有効に阻止すると考えられました。




 

<リンク>

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2013年1月8日

プロトロンビン複合体製剤(PCC)によるダビガトラン中和

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


PCCによるダビガトランの中和

著者名:Pragst I, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 1841-1848, 2012.


<論文の要旨>

直接トロンビン阻害薬であるダビガトラン(DE)の問題点の一つは、出血時や緊急の観血的処置時の中和剤がないことです。

プロトロンビン複合体製剤(PCCs)は、クマリン系抗凝固薬の標準的中和薬です。


著者らは、DEの効果がPCCs(Beriplex P/N)で中和されるかどうか動物モデルを用いて検討しました。

また、DEによる出血症状を評価するマーカーを検討しました。

ラットにDE0.4mg/kgを投与して、その後にPCC20、35、50(+プラセボ)IU/kgを投与しました。

標準的方法により腎切開を行い、出血量、出血時間を測定しました。


その結果、出血量29mLが、PCC10IU/kg増加させる毎に出血量が5.44mL低下しました。

PCC50IU/kgでは出血量は完全に正常化しました。


PCCの増量に伴い出血時間は20.0分から5.7分に短縮しました。

PCC投与量を10IU/kg増加させる毎に、出血時間は1/3になりました。


以上、著者らの動物モデルによる検討では、PCCはDEの中和剤として有効と考えられ、今後の検討を進めるべきと考えられました。



 

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2013年1月7日

血友病と深部静脈血栓症/肺塞栓

論文紹介です。

参考:血友病後天性血友病rFVIIa


血友病患者における静脈血栓症

著者名:Hermans C.
雑誌名:Thromb Res 130 Suppl 1: S50-S52, 2012.


<論文の要旨>

血友病患者に対する血液凝固因子製剤補充療法が有効かつ安全に行われるようになったため、血友病性関節症の関節形成術が行われることが多くなってきました。

ただし、血友病患者にこのような手術を行った場合の血栓塞栓症の発症頻度や危険因子、予防法などに関する報告はほとんどありません。


血友病患者では凝固因子欠損があるために股関節形成術や膝関節形成術の血栓症発症は低頻度ではないかと考えられていますが、一方で血友病患者の深部静脈血栓症や肺塞栓の症例報告もあります。


整形外科術後の血栓塞栓症予防がガイドラインは一般患者を対象としたものは存在しますが、血友病患者を対象としたガイドラインは存在しません。

本論文では血友病患者の整形外科手術後の血栓塞栓症予防のあり方について論じています。


(参考)
欧州や米国においては、半数の医療期間で血友病患者の整形外科手術後に予防的抗凝固療法(低分子ヘパリンまたはフォンダパリヌクス)を行っているという実状を示した報告があります。


 

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2013年1月6日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):病棟クリスマス

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)

病棟クリスマスコンサートが行われました(平成24年12月20日)。

今年で3回目になります。患者さん方の回復を祈念した、祈りのコンサートにさせていただきました。

クリスマス1
 
 
 
クリスマス2
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2013年1月5日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)忘年会(2)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の忘年会(2)

忘年会3
 
忘年会4
 
 
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2013年1月4日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)忘年会(1)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の忘年会が行われました。

平成24年12月15日(土)(於:ANAクラウンプラザホテル金沢)


第三内科らしいとても楽しい会になりました。
 
忘年会2
忘年会1
 

 

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2013年1月3日

ASHレポート(インデックス)金沢大学血液内科より

ASHレポート(インデックス) 

 

 

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2013年1月2日

ASHレポート(8)Fight 4 HEMATOLOGY

ASHレポート(8)  by 高見昭良

ASH8
 
ASH9
 
 
今年の米国血液学会のテーマは、「Fight 4 HEMATOLOGY」でした。

「4」と「for」をかけているようですが、それぞれ「Advocate」、「Tell your story」、「Donate」、「Spread the world」とのことです。

直訳すると、「主張しなさい」、「あなたの話をしなさい」、「貢献しなさい」、「世界を切り開きなさい」になります。


血液学会という近しい研究者同士のなれ合いや内向きになりがちな現状を打破し、もっと世間や世界に目を向けよ、専門家として何が出来るか示しなさ いということでしょうか。

筆者はケネディ大統領の「アクティブシチズン」演説を連想しました。

米国血液学会参加を物見遊山とせず、知識を共有し、有言実行すべしとのメッセージも込められていそうです。
 

 

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2013年1月1日

ASHレポート(7)CNNセンター

ASHレポート(7)by 高見昭良

 
ASH7
 
 
 
学会会場がCNNセンターと隣接していたため、少し覗いてみました。

ちなみに、CNNと言えば、筆者は未だに山口美江のイメージから抜けられません。
 

 

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