金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2014年5月31日

第36回 日本血栓止血学会学術集会のご案内

第36回 日本血栓止血学会学術集会が近づいてきました(大阪での開催です)。

本年も大変に充実したプログラムになっています。

一般会員の参加費は、10,000円ですが、学生さんはなんと、1,000円です。

以下の書類(所属長の署名&印の欄があります)と学生証が必要ですので、あらかじめご用意いただければと思います。

http://www.congre.co.jp/jsth2014/pdf/sankatouroku.pdf

 

学会2



 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38 | 血栓止血(血管診療)

2014年5月30日

第36回 日本血栓止血学会学術集会(シンポジウム)

第36回 日本血栓止血学会学術集会(大阪)。

本年も大変に充実したプログラムになっています。

シンポジウムもたくさん組まれていますが、ディベートセッションはドキドキです。

特別プログラム

 

プログラム
 


<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03 | 血栓止血(血管診療)

2014年5月29日

血液疾患セミナーの御案内

血液疾患セミナー

日時:平成26年6月26日(木) 19時00分より
場所:金沢大学附属病院 外来診療棟4F 「宝ホール」



<プログラム>
ミニレクチャー(19:00 〜 19:20)
座長:NTT西日本金沢病院 院長 上田 幹夫 先生
「造血器悪性腫瘍に合併したDICに対するトロンボモジュリン製剤の意義」

金沢大学附属病院  高密度無菌治療部 准教授  朝倉 英策 


特別講演(19:20 〜 20:20)
座長:金沢大学 血液内科・呼吸器内科 教授 中尾 眞二 

『救急医療・ICUにおける凝固異常管理』
1)血液疾患
2)外傷直後の凝固障害 
〜金沢で得た知見から〜 

北海道大学病院 先進急性期医療センター
助教 早川 峰司 先生


主催:旭化成ファーマ株式会社

DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28 | 研究会・セミナー案内

2014年5月28日

北陸後天性血友病研究会のご案内

北陸後天性血友病研究会のご案内

日時 : 2014年6月7日(土)  17:00〜
場所 : 金沢都ホテル

                                                                       
【情報提供】「ノボエイト静注用」              ノボ ノルディスクファーマ
【開会挨拶】金沢大学医薬保健研究域血液病態検査学  森下 英理子
【一般演題】17:15〜17:45
                                                                       
座長 :金沢大学附属病院 高密度無菌治療部   朝倉 英策
                                                                       
1 慢性腎臓病にて近医通院中に後天性血友病を発症した93歳の1例
                 福井赤十字病院 内科 今村 信  先生
                                                                       
2 当院における第VIII因子インヒビター測定の試み
    金沢大学附属病院 血液内科      林 朋恵 
                                                                       
〜コーヒーブレイク〜
                                                                       
【特別講演】18:00〜19:00
座長 :金沢大学附属病院 高密度無菌治療部   朝倉 英策
                                                                       

「後天性血友病Aと北海道診療ネットワークの取り組み 」
    北海道医療大学歯学部内科学講座 教授   家子 正裕  先生
                                                                       
【閉会挨拶】 NTT西日本金沢病院 院長  上田 幹夫  先生
   
主催 :ノボ ノルディスク ファーマ株式会社                                                                               

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30 | 研究会・セミナー案内

2014年5月27日

新しいDIC診断基準へ(9)改訂へ

新しいDIC診断基準へ(8)アンチトロンビン(AT)より続く

新しいDIC診断基準へ(9)改訂へ

新しいDIC診断基準に求められるものは何でしょうか?

全ての基礎疾患に用いることができて、旧厚生省基準の不具合を解消した基準が求められると思います。

この記事を書いている時点で、日本血栓止血学会ではDIC診断基準作成委員会により新しいDIC診断基準の作成が行われています。

既述の問題点をクリアした診断基準の登場を待ちたいと思います。

新しいDIC診断基準に求められるものを、以下に列記しました。


<新しいDIC診断基準に求められる条件>


1.    全ての基礎疾患に適用できること。ただし、もし適用できない領域があれば明記すること。

2.    基礎病態により診断基準を使いわけること。
・    血小板数を使用しない病態(造血障害)
・    フィブリノゲンを使用しない病態(感染症)

3.    基礎疾患、臨床症状をスコアリングから外すこと。

4.    血小板数の経時的低下に配慮すること。

5.    凝固活性化関連の分子マーカーを採用すること。

6.    アンチトロンビン活性の扱いをどうするか。

7.    肝不全症例での誤診対策が万全であること。

8.    血小板数、FDP、フィブリノゲン、PT、AT、凝固活性化関連分子マーカーはDICに特異的マーカーではないことの注意喚起があること。


DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 
<リンク>
「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52 | DIC

2014年5月26日

敗血症セミナーのご案内

敗血症セミナー

日時:平成26年5月26日(月) 19時00分より
場所:金沢大学附属病院
 外来診療棟4F 「宝ホール」   

<プログラム>

製品関連情報(19:00〜19:10)

「DIC治療薬 リコモジュリン最新情報」

旭化成ファーマ株式会社 学術担当



特別講演(19:10〜20:10)

座長:金沢大学消化器・乳腺・移植再生外科教授 太田 哲生 先生

『敗血症性DICの新たな治療戦略
−トロンボモジュリン製剤の可能性−』


福岡大学医学部 救命救急医学講座
教授 石倉 宏恭 先生


主催:旭化成ファーマ株式会社

DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55 | 研究会・セミナー案内

2014年5月25日

新しいDIC診断基準へ(8)アンチトロンビン(AT)

新しいDIC診断基準へ(7)血小板数より続く

新しいDIC診断基準へ(8)アンチトロンビン(AT)

アンチトロンビン(AT)の低下はDICにおける特徴的所見と考えられてきた歴史があります。

確かに、敗血症に合併したDICではATが低下しやすいです。

一方で、急性前骨髄球性白血病(APL)のように、著明な凝固活性化がみられるにもかかわらず(TATが著増するにもかかわらず)、全くATが低下しない基礎疾患もあります。

APL以外の急性白血病でも低下しないことが多いですし、固形癌でも低栄養や肝不全の合併がなければ比較的ATは低下しません。


ATが低下している場合であっても、肝予備能低下、血管外への漏出、顆粒球エラスターゼによる分解など、DIC以外の要素で低下していることの方が多いです。

また、ATは本来DICと無関係であるはずの血清アルブミンと相関しやすいことが数々の報告で知られています。

補足:AT濃縮製剤の適応を判断するためにAT活性を測定しますが、即日結果がでない場合でもアルブミンが著減している例では、ほぼ間違いなくAT活性も低下しています。


一方で、ATを測定しやすい環境をつくることで治療法選択に直結する(DICに対するAT濃縮製剤の使用は日本ではAT70%以下で認められています)、感染症においてはATを採用することでDIC診断の感度が向上するといったメリットもあります。

また、ATがDICの予後を反映するという論文が多数報告されています。

もし、診断基準から臨床症状(臓器障害)の項目を削除する場合は臓器障害を反映するマーカー(AT, PT)を組込んだ方が良いという考えもあるでしょう。

確かにAT低下はDICに特異的なマーカーではないかもしれませんが、DIC以外の原因により変動するマーカーはATのみでなくほとんどのマーカーが該当します。


DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 
<リンク>
「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30 | DIC

2014年5月24日

新しいDIC診断基準へ(7)血小板数

新しいDIC診断基準へ(6)フィブリノゲンより続く

新しいDIC診断基準へ(7)血小板数

前述のように、造血障害症例では血小板数を診断基準に用いることはできません。

造血障害症例以外においては、血小板数はFDPやDダイマーと同様にDIC診断に重要な検査所見です。

ただし、DIC以外の原因で血小板数が低下する疾患も多数ありますので、十分に鑑別する必要があります(表のある記事へ)。

つまり、血小板数低下は、DIC診断上、感度は高いが特異度は低いと言えます。

また、血小板数の経時的変化は重要です。

急性期基準でもこの考え方が採用されています。

血小板数がさほど低下していないタイミングであっても血小板数が経時的に減少している場合にはDICの可能性があります。


なお、血小板マーカーに、平均血小板容積(MPV)と血小板分布幅(PDW)があります。

全症例で自動算出されています。

両マーカー共に、血小板産生の亢進例では上昇し、抑制例では低下します。


DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30 | DIC

2014年5月23日

新しいDIC診断基準へ(6)フィブリノゲン

新しいDIC診断基準へ(5)FDP/D-ダイマーより続く

新しいDIC診断基準へ(6)フィブリノゲン

フィブリノゲンはDIC診断に有用かどうかは議論になるところです。

感染症に合併したDICでは、フィブリノゲンが低下するのは例外的です。

DIC症例であっても炎症反応によりフィブリノゲンはむしろ上昇していることも少なくありません。

フィブリノゲンを診断基準から外すことで感染症におけるDIC診断の感度を向上させることが可能です。


急性期基準は、当初作成された基準にはフィブリノゲンが採用されていましたが、その後の検討でフィブリノゲンが削除されました。

これは、急性期基準の検証に登録された症例が、感染症に起因する例が多かったためと考えられます。


しかし、フィブリノゲンがマーカーとして価値が高い基礎疾患も多数あります。

例えば、固形癌、造血器悪性腫瘍、産科合併症、頭部外傷、動脈瘤などではフィブリノゲン低下がみられやすく、DIC診断上、大変重要な所見です。


このような背景のもと、基礎疾患別に適用する診断基準を変える場合には、感染症を基礎疾患とする場合のみ、フィブリノゲンをスコアから除くのが望ましいと考えられます。



DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25 | DIC

2014年5月22日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)BBQ(2)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)BBQ(1)より続く。

平成26年5月26日(日)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)のバーベキュー

4114
 
4132
 
4126
 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42 | その他

2014年5月21日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)BBQ(1)

平成26年5月26日(日)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)のバーベキューが行われました。

画像を紹介させていただきます。

4113
 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」


投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24 | その他

2014年5月20日

新しいDIC診断基準へ(5)FDP/D-ダイマー

新しいDIC診断基準へ(4)分子マーカー:TAT・SF・F1+2より続く

新しいDIC診断基準へ(5)FDP/D-ダイマー

DIC診断におけるFDPやD-ダイマーの意義は大きく、実際ほとんどのDIC診断基準において重要検査項目として採用されています。


ただし、FDPやD-ダイマーは、感度は高いですが特異度は低い点に注意が必要です。

例えば、深部静脈血栓症、肺塞栓、大量胸腹水、大皮下血腫などでもしばしば上昇します。


FDPとD-ダイマーは対象とする分子種が必ずしも一致しませんので、両者を測定する医学的意義があります。

例えば、高度な線溶活性化を伴うDICにおいてはフィブリンのみならずフィブリノゲンも分解するために、FDPは著明に上昇しますがD-ダイマーは中等度の上昇にとどまりFDPとD-ダイマーの間に乖離現象を生じます(D-ダイマー/FDP比が低下します)。

ただし、同時測定を行うと保険査定される地域がありますので、漫然とFDPとD-ダイマーの両者を測定するのは控えるべきでしょう。

FDPについてですが、線溶亢進型DICでは、FDPが著増するのに対してD-ダイマーが中等度上昇に留まるために、FDPとD-ダイマーの間に乖離現象をきたします。


急性期基準においてはFDPとD-ダイマーの換算表が作成されていますが、問題があります。

つまり、日本で使用されている全ての試薬が取り上げられていない、複数試薬を持っているメーカーもあるが配慮されていない、同じ母集団での換算表ではなく科学的でない、DIC症例での換算表でない、DIC症例であったとしても基礎疾患によっても換算式が変わってくる、などです。

FDPとD-ダイマーの換算表の作成は科学的には不可能と考えられます。


最近のFDPは、血清FDPから血漿FDPに切り替わってきていますが、血漿FDPは試薬間差が大きくなっています。

特に、線溶活性化が高度でフィブリン/フィブリノゲン分解が進行した場合には、血漿FDPでは検出しにくくなる試薬もあります。

D-ダイマーは、血漿FDPよりも更に試薬間差が大きくなります。

このような背景のもと、まずはD-ダイマーではなくFDPでDIC疑い症例の拾い上げをすべきではないかと考えられます。


DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」

 



投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59 | DIC

2014年5月19日

新しいDIC診断基準へ(4)分子マーカー:TAT・SF・F1+2

新しいDIC診断基準へ(3)プロトロンビン時間(PT)より続く

新しいDIC診断基準へ(4)分子マーカー:TAT・SF・F1+2

DICの本態は全身性持続性の著明な凝固活性化です。

このDICの本態を反映する分子マーカーを是非とも採用すべきと考えられます。

具体的には、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、可溶性フィブリン(SF)、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)といったマーカーです(図:TAT・SF・F1+2)。


これらの分子マーカーを即日測定可能な施設が少ないという意見も聞かれますが、この状況を何年も続けることは問題でしょう。

むしろ、これらの分子マーカーを診断基準に組み込むことによって、有用なマーカーの普及に向けて原動力にすべきではないかと考えられます。


ただし、これらの分子マーカーは採血困難者では偽高値となる場合がありますので、FDPやD-ダイマーの上昇度に比較してTATやSFが著増している場合には再検するなどの配慮が必要と考えられます。

また、即日の結果が間に合わない場合でもDICの本態を評価するこれらのマーカーを確認して、DIC診断の感度と特異度を上げたいものです。


我が国では、TATは一社のみですが、SFは複数社から発売されています。

また正確には、SF(可溶性フィブリン)とFMC(フィブリンモノマー複合体)は異なったマーカーです。

今回は、SFとFMを合わせて、SFMC(可溶性フィブリンモノマー複合体)とします。

SFMC測定試薬として、日本ではFMC(ロッシュ)とSF(三菱化学メディエンス、積水メディカル)があります。

FMCはFDP分画も測りこんでいますのでFMC とFDPの同時測定は意味がないのに対して、SFは純粋に凝固活性化を評価していますのでFDPとの同時測定の意義があります。

ただし、SFとFMCが必ずしも意識して区別されていない現在の臨床環境を考えますと、現時点では両者を厳密に区別して扱わなくてもよいかもしれません。


なお、TATとSFは併行して変動して良いはずですが、しばしば乖離します。

TATが軽度上昇にとどまるにもかかわらずSFが著増する場合もありますし、一方TATが明らかに上昇しているにもかかわらずSFの上昇度が軽度である場合もあります。

このあたりは興味ある臨床研究テーマと考えられます。


なお、予後不良例では、TAT上昇が軽度でもSFが著増する印象です。

ATが十分に機能せずに、ATによる補足をすり抜けたトロンビンがフィブリノゲンに作用するのかも知れません。

DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」

 



投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47 | DIC

2014年5月18日

新しいDIC診断基準へ(3)プロトロンビン時間(PT)

新しいDIC診断基準へ(2)基礎疾患/臨床症状より続く

新しいDIC診断基準へ(3)プロトロンビン時間(PT)

プロトロンビン時間(PT)は、DIC以外の多くの要素によって延長します。

例えば、肝不全やビタミンK欠乏症でも容易に延長しますので、決してDICに特異的なマーカーではありません。

むしろ、臨床の現場ではDICよりも肝不全やビタミンK欠乏症によってPTが延長することの方が多いかもしれません。

PTに対する依存度が高いことはDICの誤診につながる懸念すらあります。


一方で、PTは臓器障害を反映したマーカーですし、感染症症例ではPT延長の症例は予後不良という報告が多数あります。

DIC診断基準はいかにあるべきかという考え方にもよりますが、DIC診断基準に予後判断の意義を持たせたい場合には、PTは組込むべきマーカーとも言えます。


現在世界中に存在するDIC診断基準のほとんどが予後も反映していることが知られています。

PTの扱いは賛否両論だと思いますが、予後判断という観点から組込んでおきたいと思います。

肝不全ではPTが組込まれていると誤診につながるという懸念に対しては、それに対して明確に対応できる診断基準が望まれます。


なお、ワルファリンコントロール時にはPT-INRが用いられますが、DICでPT-INRは不適当です。

肝疾患でも通常のPT-INRは不可ですが、近年PT-INR Liverが登場しました(ただし一般的ではありません)。


DIC の病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014


<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」

 



投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16 | DIC

2014年5月17日

新しいDIC診断基準へ(2)基礎疾患/臨床症状

新しいDIC診断基準へ(1)現行基準の問題点より続く

新しいDIC診断基準へ(2)基礎疾患/臨床症状

基礎疾患のないDICは存在しないため、基礎疾患でのスコアリングはナンセンスであるという指摘がなされてきました。

基礎疾患の存在は必須として、スコアリングから外すべきと考えられます。


ただし、基礎疾患あるいは基礎病態ごとにDIC病態に差異が存在します。

それに伴い、診断に有用な検査項目が異なってきます。

基礎疾患や基礎病態を分別して、病態別の診断基準を用いる方向性が適切ではないかと考えられます。

特に、血小板数の低下がDICのみに起因しない(造血障害をきたした)症例などでは血小板数でスコアリングができないため、必ず区別することが重要です。


出血症状や臓器症状といったDICの臨床症状ですが、これらが出現しないとDICと診断されないようでは、DICの早期診断に悪影響ですし、予後改善にはつながりません。

加えて、臨床症状がDICによるものか、基礎疾患やその他の合併症によるものかどうかの鑑別はほとんど不可能です。

臨床症状をスコアリングから削除すべきとの指摘がなされてきました。

ただし、臨床症状をDIC診断基準に組込まない場合には、臨床症状を反映する血栓止血学的マーカーを新たに組込むという考え方はあるかも知れません。


なお、DICの出血症状ですが、消費性凝固障害よりも、高度な線溶活性化の要素の方が大きいです。

線溶亢進型DICでは、血小板数が保たれていても致命的な出血をきたします。

DICの病型分類: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」

 



投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42 | DIC

2014年5月16日

新しいDIC診断基準へ(1)現行基準の問題点

新しいDIC診断基準へ(1)現行基準の問題点

新しいDIC診断基準へ:インデックス

我が国でよく知られているDICの診断基準としては、旧厚生省DIC診断基準(旧厚生省基準)、国際血栓止血学会(ISTH)DIC診断基準(ISTH基準)、日本救急医学会急性期DIC診断基準(急性期基準)があります。

ISTH基準は2001年に公開ですので、旧厚生省基準(原型は1980年)から約20年も遅れています。

しかも、旧厚生省基準を模倣したものでした。

日本のDIC臨床/研究は世界に先駆けていると言えるでしょう。


ISTH基準は日本の旧厚生省基準を模倣して作成されたものですが、感度が悪いと指摘されている旧厚生省基準よりもさらに感度が悪いことが指摘されています。

DIC患者さんの救命という観点からは最も使用しにくい基準と考えられます。

日本の臨床現場ではほとんど使用されていません。


急性期基準は、救急領域を中心に浸透してきています。

実際、救急領域で遭遇しやすい敗血症に合併したDICに対しては診断能力が高く、救急領域の臨床現場で威力を発揮する基準と言えます。

しかし、造血障害、すなわち骨髄抑制をきたした症例、骨髄不全、末梢循環における血小板破壊や凝集など、DIC以外にも血小板数低下の原因が存在する場合には使用することができません。


<血小板数低下をきたす疾患・病態>

 1. 血小板破壊や凝集の亢進

・    血栓性微小血管障害症(TMA):血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、HELLP症候群、造血幹細胞移植後TMA

・ ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)

・    特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群(APS)

・    体外循環 など


2. 骨髄抑制/骨髄不全をきたす病態

・    造血器悪性腫瘍(急性白血病、慢性骨髄性白血病の急性転化、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫の骨髄浸潤など)

・    血球貪食症候群

・    固形癌(骨髄浸潤あり)

・    骨髄抑制を伴う化学療法あるいは放射線療法中

・    薬物に伴う骨髄抑制

・    一部のウイルス感染症

・    造血器悪性腫瘍以外の一部の血液疾患(再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、巨赤芽球性貧血など)


3. 肝不全、肝硬変、脾機能亢進症

4. 敗血症

5. Bernard-Soulier症候群、MYH9異常症(May-Hegglin異常症など)、Wiskott-Aldrich症候群

6. 希釈
・ 大量出血
・ 大量輸血、大量輸液
・ 妊娠性血小板減少症 など


7. 偽性血小板減少症


旧厚生省基準はすべての基礎疾患に適用することができて、日本の臨床現場で長年にわたり使用されてきました。

また多くのDIC治療薬の臨床試験もこの基準で行われてきたことからも、最も評価の定まった基準です。

しかし、旧厚生省基準にも数々の問題点が指摘されてきました。

特に感染症に感度が悪い、分子マーカーが採用されていない、誤診されることがあるなどが大きな問題点として指摘されています。

このような背景のもと、旧厚生省基準の改訂が急務と指摘されてきました。 

より良いDIC診断基準の登場は、日本におけるDICの臨床と研究を向上させる上で大きな意義を有すると考えられます。

新しいDIC診断基準へ:インデックス

Asakura H: Classifying types of disseminated intravascular coagulation: Clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2:20, 2014

 


<リンク>
「臨床に直結する血栓止血学」

 



投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08 | DIC

2014年5月15日

石川呼吸器フェローシップセミナー(募集要項)

石川呼吸器フェローシップセミナー(研修医/医学生対象)より続く。

../upload/2185362d960c03ae.pdf

募集要項


<リンク>
「臨床に直結する血栓止血学」

 



投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25 | 研修医の広場

2014年5月14日

石川呼吸器フェローシップセミナー(研修医/医学生対象)

呼吸器内科に興味を持つ 研修医のためのセミナーをご紹介させていただきます。
呼吸器内科の醍醐味を体験することができます。

石川呼吸器フェローシップセミナー
日時:2014年6月14(土)〜15日(日)
場所:石川県青少年総合研修センター

ポスター1


対象は、研修医(前期・後期)のみならず学生も可です。
参加費:5000円(一泊二食付き)
金沢大学呼吸器内科/石川呼吸器フェローシップ事務局へお問い合わせくださいませ。
ぽすたー2
セミナー概要:
肺癌、NPPV(人口呼吸管理)、閉塞生肺疾患(喘息・COPD)、吸入実習などについて、充実した内容になっています。
 
ポスター3


6月14日と、6月15日のプログラムです。
ポスター4


石川呼吸器フェローシップセミナー申込書です。
FAX送信先;076-234-4252
石川県外の前期/後期研修医も参加できます。
../upload/53453244e0be6b82.pdf
ポスター5

 

リンク:石川呼吸器フェローシップセミナー 募集要項 へ

 

<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」

 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53 | 研修医の広場

2014年5月13日

金沢大学呼吸器グループ紹介:インデックス

金沢大学呼吸器グループ紹介(4)気道疾患グループより続く。

呼吸器グループ紹介(インデックス)

1)スタッフ

2)肺癌グループ

3)間質性肺炎グループ

4)気道疾患グループ

 
 
血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
金沢大学血液内科・呼吸器内科HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35 | 呼吸器内科

2014年5月12日

金沢大学第三内科新人歓迎会:インデックス

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)新人歓迎会(10)より続く。

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)新人歓迎会

平成26年4月12日(土)(ホテル金沢)

<インデックス>

1)新人歓迎会
2)スピーチ
3)ほのぼのとした会
4)ファミリアルなところ
5)血液内科の中尾科長と、呼吸器内科の笠原科長
6)話に花が咲いています
7)交流を持てる良い機会
8)いつもありがとうございます
9)近藤医局長の3連発
10)インパクトファクターはネイチャーに匹敵

 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57 | その他

2014年5月11日

北陸後天性血友病研究会のご案内

北陸後天性血友病研究会のご案内

日時:2014年6月7日(土)17:00〜20:30(情報交換会を含む)
会場:金沢都ホテル「加賀の間」


特別講演

北海道医療大学歯学部内科学講座 教授     家子 正裕  先生

「後天性血友病Aと北海道診療ネットワークの取り組み」


日時 : 2014年6月7日(土) 17:00〜20:30
会場 : 金沢都ホテル  「加賀の間」
住所 : 金沢市此花町6-10

 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29 | 研究会・セミナー案内

2014年5月10日

北陸ヘモフィリア懇話会の御案内

第7回 北陸ヘモフィリア懇話会
    
日時:2014年5月24日(土)16時〜18時
場所:金沢都ホテル
 5階 「兼六の間」


プログラム(案)

16:00〜    開会

16:00〜16:15 ファイバ製品説明                     バクスター株式会社

16:15〜17:00
【症例発表】
座長:林 朋恵   金沢大学附属病院 血液内科 

症例発表1:「再出血を繰り返した後天性血友病Aの1例」

演者:清木 ゆう 先生  厚生連高岡病院 血液内科 

症例発表2:「過去に経験した後天性血友病のまとめ」

演者:門平 靖子   金沢大学附属病院 血液内科


17:00〜18:00
【特別講演】
座長 朝倉 英策  金沢大学附属病院 高密度無菌治療部
                                                            
「後天性血友病の診断と治療(仮)」
   
演者:松下 正 先生  名古屋大学医学部附属病院 輸血部
 

18:00    閉会

主催:バクスター株式会社
バイオサイエンス事業部
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52 | 研究会・セミナー案内

2014年5月9日

L-アスパラギナーゼと血栓症(インデックス)

L-アスパラギナーゼと血栓症(3)抗凝固療法より続く。

 

L-アスパラギナーゼと血栓症(インデックス)

1)部位と発症頻度

2)副腎皮質ステロイド

3)抗凝固療法

 リンク:L-アスパラギナーゼと血栓症:スライドインデックス
 
 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56 | 血栓性疾患

2014年5月8日

L-アスパラギナーゼと血栓症(3)抗凝固療法

L-アスパラギナーゼと血栓症(2)副腎皮質ステロイドより続く。


L-アスパラギナーゼと血栓症(3)抗凝固療法

L-アスパラギナーゼに伴う血栓症予防目的に、理論的には低下したアンチトロンビンを是正するためにアンチトロンビン濃縮製剤が有効ではないかと考えられますが、臨床的意義を有意差を持って実証した報告はありません。

Gugliotta L, et al. Hypercoagulability during L-asparaginase treatment: the effect of antithrombin III supplementation in vivo. Br J Haematol. 1990; 74: 465–470.

Nowak-Gottl U, et al. Inhibition of hypercoagulation by antithrombin substitution in E. coli L-asparaginase-treated children. Eur J Haematol. 1996; 56: 35–38.

Mitchell L, et al. Trend to efficacy and safety using antithrombin concentrate in prevention of thrombosis in children receiving L-asparaginase for acute lymphoblastic leukemia. Results of the PAARKA study. Thromb Haemost. 2003; 90: 163–164.

また、アンチトロンビン濃縮製剤は高価な薬剤である点、保険適用はDICと先天性アンチトロンビン欠損症のみである(後天性アンチトロンビン欠損症には適用できない)点から、現在安易に処方できる環境にはありません。

 

前述の新鮮凍結血漿による予防は低下した凝固因子と凝固阻止因子の両者を補充する観点から理にかなっていますが、新鮮凍結血漿輸注によってアンチトロンビン活性やフィブリノゲン活性が是正されない輸注法であっても静脈血栓塞栓症の発症は有意に低下しています(6% vs. 19%)。

Lauw MN, et al. Venous thromboembolism in adults treated for acute lymphoblastic leukaemia: Effect of fresh frozen plasma supplementation. Thromb Haemost. 2013; 109: 633-642.

この点、単純にアンチトロンビン活性などの凝固阻止因子活性低下のみが血栓症発症に関与している訳ではないのかもしれません。

その他には、血栓症発症のリスクが高いと考えられる症例に対して血栓症の一次予防を目的としたヘパリン類(低分子ヘパリン)を投与する試みはあるものの、エビデンスレベルの高い臨床試験はありません。

Elhasid R, et al. Prophylactic therapy with enoxaparin during L-asparaginase treatment in children with acute lymphoblastic leukemia. Blood Coagul Fibribolysis. 2001; 12: 367–370.



血栓症の二次予防を目的とした場合には、ヘパリン類投与の有効性を示した報告もあります。

Qureshi A, et al. Asparaginase-related venous thrombosis in UKALL 2003- re-exposure to asparaginase is feasible and safe. Br J Haematol. 2010; 149: 410–413.

ただし、L-アスパラギナーゼによってアンチトロンビン活性が低下しているためにヘパリン類による抗凝固療法が最適とはいいがたいです(ヘパリン類の抗凝固活性はアンチトロンビン依存性です)。

我が国では現在心房細動に対して処方頻度が増加している新規経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)が有用である可能性があります。

朝倉英策. 新規経口抗凝固薬(NOAC). 朝倉英策編(編集). 臨床に直結する血栓止血学. 東京, 中外医学社; 2013: 321-329.

この点は、今後の検討課題です。

L-アスパラギナーゼに伴い血栓症を発症してしまった場合には、静脈血栓症であればヘパリン類による治療を行うことになりますが、アンチトロンビン活性が低下している場合には十分な効果を期待できない可能性が高いです。

治療の場合も、新規経口抗凝固薬が理論的には有効である可能性がありますが、今後の展開を期待したいと思います。

(続く)L-アスパラギナーゼと血栓症(インデックス)

 
 
 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38 | 血栓性疾患

2014年5月7日

L-アスパラギナーゼと血栓症(2)副腎皮質ステロイド

L-アスパラギナーゼと血栓症(1)部位と発症頻度より続く。


L-アスパラギナーゼと血栓症(2)副腎皮質ステロイド

ALLに対して多剤併用化学療法を行っても、L-アスパラギナーゼが組込まれていない治療であれば血栓症の発症はないことを考慮しますと、血栓症発症に及ぼすL-アスパラギナーゼの意義は大きいと考えられます。

Kantarjian HM, et al. Results of treatment with Hyper-CVAD, a dose-intensive regimen, in adult acute lymphocytic leukemia. J Clin Oncol. 2000; 18: 547–561.

凝固異常の程度が強い場合は、新鮮凍結血漿により、凝固因子、凝固阻止因子の両者を補充し、血栓止血のバランスを安定化させることで対応可能です。

特に、ALLのうちNCI(National Cancer Institute Criteria)基準で高リスク(High Risk:HR、白血球数が5万/μl以上または10歳以上)の症例では新鮮凍結血漿による予防の価値があります。

Abbott LS, et al. The impact of prophylactic fresh-frozen plasma and cryoprecipitate on the incidence of central nervous system thrombosis and hemorrhage in children with acute lymphoblastic leukemia receiving asparaginase. Blood. 2009; 114: 5146-5151.


リンパ性悪性疾患に対してL-アスパラギナーゼを投与する場合に、副腎皮質ステロイドが併用される治療プロトコールが多いです。

副腎皮質ステロイドは、向凝固、抗線溶に作用することが知られています。

Van Zaane B, et al. Systemic review on the effect of glucocorticoid use on procoagulant, anti-coagulant and fibrinolytic factors. J Thromb Heamost. 2010; 8: 2483–2493.


副腎皮質ステロイドは、L-アスパラギナーゼの血栓症を助長している可能性があります。

副腎皮質ステロイドの種類による差異を検討した報告では、プレドニゾロンよりもデキサメタゾンの方が血栓症発症頻度が少ないと報告されています。

Van Den Berg H. Asparaginase revisited. Leuk Lymphoma. 2011; 52: 168–178.

(続く)L-アスパラギナーゼと血栓症(3)抗凝固療法

 
 
 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28 | 血栓性疾患

2014年5月6日

L-アスパラギナーゼと血栓症(1)部位と発症頻度

L-アスパラギナーゼと血栓症(1)部位と発症頻度

アスパラ


L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase)は、リンパ性悪性疾患に対して使用される抗腫瘍薬です。

肝での蛋白合成抑制を反映して凝固第V、VII、VIII、IX、X、XI、フィブリノゲンといった凝固因子活性が低下しますが、凝固阻止因子であるアンチトロンビン、プロテインC、プロテインSも低下するため、出血・血栓のいずれにも傾斜しやすい不安定な血栓止血病態となります。

Payne JH, Vora AJ. Thrombosis and acute lymphoblastic leukaemia. Br J Haematol 2007; 138: 430-445.

Zakarija A, Kwaan HC. Adverse effects on hemostatic function of drugs used in hematologic malignancies. Semin Thromb Hemost. 2007; 33: 355-364.

Truelove E, Fielding AK, Hunt BJ. The coagulopathy and thrombotic risk associated with L-asparaginase treatment in adults with acute lymphoblastic leukaemia. Leukemia. 2013; 27:553-559.



ただし、臨床的に問題になるのは、ほとんどの場合出血ではなく血栓症です。


血栓症の部位としては、深部静脈血栓症、肺塞栓、脳静脈洞血栓症、中心静脈カテーテル関連血栓症、脳梗塞などの報告が見られます。

静脈血栓症の報告が多いものの、動脈血栓症の報告もみられます。


小児科の急性リンパ性白血病を対象としたメタ解析によると、血栓症の発症頻度は5.2%と報告されています(n=1,752)。

ほとんどの例で寛解導入療法時に血栓症を発症しており、また、L-アスパラギナーゼを少量長期間投与する場合に特に発症頻度が高くなっています。

Caruso V, et al. Thrombotic complications in childhood acute lymphoblastic leukemia: a meta-analysis of 17 prospective studies comprising 1752 pediatric patients. Blood. 2006; 108: 2216-2222.  


一方、成人ではL-アスパラギナーゼに関連した血栓症の発症頻度は3割を超えるという報告もあります


Grace RF, Dahlberg SE, Neuberg D, et al. The frequency and management of asparaginase-related thrombosis in paediatric and adult patients with acute lymphoblastic leukaemia treated on Dana-Farber Cancer Institute consortium protocols. Br J Haematol. 2011; 152: 452–459.

一旦血栓症を発症した症例は再発しやすい点にも注意が必要です。

(続く)L-アスパラギナーゼと血栓症(2)副腎皮質ステロイド

 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50 | 血栓性疾患

2014年5月5日

抗血栓療法の治療を考える会(ご案内)

抗血栓療法の治療を考える会〜エフィエント発売講演会〜

日 時 : 2014年5月22日(木) 19:15〜21:00 
場 所 : ホテル金沢
 2F 「ダイヤモンド」


《Opening Remarks 19:15〜》
金沢大学医薬保健研究域医学系 恒常性制御学 教授 金子 周一 先生  

《基調講演‐専門医の立場から‐ 19:20〜20:00》
座長 : 金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学 教授 中尾 眞二
「抗血栓療法の臨床と血液検査」
演者 : 金沢大学附属病院 高密度無菌治療部 准教授 朝倉 英策

特別講演 20:00〜21:00》
座長 : 金沢大学医薬保健研究域医学系 恒常性制御学 講師 高村 雅之先生  
「抗血栓療法に関する最新の話題」
演者 : 公益財団法人 三越厚生事業団 常務理事
        日本医科大学 名誉教授                  水野 杏一 先生


主催;第一三共株式会社

 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12 | 研究会・セミナー案内

2014年5月4日

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症:インデックス

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(3)より続く

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(インデックス)

1)血栓症の発症頻度

2)血栓症の機序

3)アスピリン・ワルファリン・低分子ヘパリン


骨髄腫と血栓症(スライドインデックス)

 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26 | 血栓性疾患

2014年5月3日

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(3)

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(2)より続く

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(3)

サリドマイド単独では血栓症を発症させることはありませんが、デキサメタゾンやアントラサイクリン系薬剤などの血管内皮を障害させる薬剤の使用とともにサリドマイドを使用するとサリドマイド特有の向血栓機序が作用するということかもしれません。この点については、なお検討すべき課題です。

Gieseler F. Pathophysiological considerations to thrombophilia in the treatment of multiple myeloma with thalidomide and derivates. Thromb Haemost. 2008; 99: 1001-1007.


さて、多発性骨髄腫におけるサリドマイド(誘導体)関連血栓症の予防ですが、静脈血栓塞栓症の予防のための抗血栓療法は、理論的には抗血小板療法ではなく抗凝固療法が有効と考えられます。

朝倉英策. 止血の生理と血栓の病態. 朝倉英策編(編集). 臨床に直結する血栓止血学. 東京, 中外医学社; 2013: 2-11.

しかし、この考え方は何故か実臨床でそのまま当てはまりません。


初発かつサリドマイドを含む治療を受ける骨髄腫659症例を対象として、アスピリン(100 mg/日)、固定用量の少量ワルファリン (1.25 mg/日)、 低分子ヘパリン (エノキサパリン 40 mg/日)のいずれかの抗血栓療法を行って比較試験を行った報告があります(明らかに抗血栓療法が必要な症例は除外されています)。

Palumbo A, et al. Aspirin, warfarin, or enoxaparin thromboprophylaxis in patients with multiple myeloma treated with thalidomide: A phase III, open-label, randomized trial. J Clin Oncol 2011; 29:986–993.

その結果、臨床試験期間の6ヶ月間で、43/659(6.5%)の症例で重症の血栓塞栓症、心血管血栓症、突然死が見られています。

アスピリン群では6.4%、ワルファリン群では8.2%、低分子ヘパリン群では5.0%であり、低分子ヘパリン群では若干予防効果が高いものの有意差とはなっていません。


骨髄腫


経口薬で血栓症の発症を予防できるメリットは大きいと考えられます。

なおこの報告では、ワルファリンは少量固定用量で設定されていますが、ワルファリン1.25 mg/日では全く抗凝固活性が期待できない症例がほとんどですから、INRでコントロールした場合にはさらに有効であったのではないかと推測されます。

管理人の私見ですが、少量ワルファリン固定用量1.25 mg/日はほとんどプラセボ群の近いのではないかと考えられます。

VTE予防の観点から、ワルファリンがINRで治療域にコントロールされて投与されれば、アスピリンよりも劣るとは到底思えません。


また、同様に初発かつレナリドマイドを含む治療を受ける骨髄腫342症例を対象として、アスピリン(100 mg/日)、低分子ヘパリン (エノキサパリン 40 mg/日)のいずれかの抗血栓療法を行って比較試験を行った報告もあるありますが、静脈血栓塞栓症の発症は、アスピリン群2.27%、低分子ヘパリン群1.20%と低分子ヘパリン群で若干有効ではあるものの、これも有意差となっていません。

Larocca A, et al. Aspirin or enoxaparin thromboprophylaxis for patients with newly diagnosed multiple myeloma treated with lenalidomide. Blood. 2012; 119: 933–939.

この報告でもINRでコントロールしたワーファリン群も設定して欲しかったところです。

さらに、サリドマイド、レナリドマイドともに今後は新規経口抗凝固薬の有用性についての検討も待たれます。

次回に登場するガイドラインでは、新規経口抗凝固薬について記載されたものを期待したいです。

Lyman GH, et al. Venous thromboembolism prophylaxis and treatment in patients with cancer: American Society of Clinical Oncology clinical practice guideline update. J Clin Oncol. 2013; 31: 2189-2204.

(続く)多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症:インデックス へ

 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31 | 血栓性疾患

2014年5月2日

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(2)

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(1)より続く

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(2)

なお、活性化プロテインC抵抗性に関しては、先天性Factor V Leidenではなく、多発性骨髄腫に一過性に合併する後天性のものが知られています(約10%の症例で出現)。

Jiménez-Zepeda VH, Domínguez-Martínez VJ. Acquired activated protein C resistance and thrombosis in multiple myeloma patients. Thromb J. 2006; 4: 11.

Elice F, et al. Acquired resistance to activated protein C (aAPCR) in multiple myeloma is a transitory abnormality associated with an increased risk of venous thromboembolism. Br J Haematol. 2006; 134: 399-405.



この活性化プロテインC抵抗性の合併した症例に対して、サリドマイドを含む治療を行いますと、静脈血栓塞栓症の発症頻度は、12%から66%に上昇するという報告が見られています。

多発性骨髄腫における活性化プロテインC抵抗性の機序としては、プロテインCに対する自己抗体産生の可能性を指摘する報告も見られています。

一方、アンチトロンビン・プロテインC・プロテインSのレベル、抗リン脂質抗体やFactor V Leidenの有無は、多発性骨髄腫に対するサリドマイド治療関連の血栓症とは無関係と考えられています。


多発性骨髄腫に対して他剤とともにサリドマイドやその誘導体を投与して血栓症を誘発しやすくなる理由ですが、その機序については不明な点が多いです。

ただし、いくつかの示唆に富む報告が見られています。

サリドマイドとデキサメタゾンの併用療法を行っている症例では、血中トロンボモジュリン濃度が半減以下に低下し、3ヶ月経過しても回復しない、血管内皮におけるprotease-activated receptor(PARs)の発現がドキソルビシン単独では低下しますが、サリドマイドと併用するとPARsの発現が上昇します、サリドマイド投与により、von Willebrand因子抗原量が上昇し、特に静脈血栓塞栓症症例での上昇が有意に高度です、などの報告があります。

Corso A, et al. Modification of thrombomodulin plasma levels in refractory myeloma patients during treatment with thalidomide and dexamethasone. Ann Hematol. 2004; 83: 588-591. 

Kaushal V, et al. Thalidomide protects endothelial cells from doxorubicin-induced apoptosis but alters cell morphology. J Thromb Haemost. 2004; 2: 327-334.

Minnema MC, et al: Extremely high levels of von Willebrand factor antigen and of procoagulant factor VIII found in multiple myeloma patients are associated with activity status but not with thalidomide treatment. J Thromb Haemost. 2003; 1: 445-449.



(続く) 多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(3)


 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18 | 血栓性疾患

2014年5月1日

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(1)

多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(1)

多発性骨髄腫は、M蛋白が上昇するため血液粘度が上昇し、易血栓状態になるものと指摘されてきましたが、それ以外にも血栓傾向となる機序がいくつか指摘されています。

M蛋白の向凝固作用やフィブリン構造への干渉、活性化プロテインC抵抗性、血管内皮障害、炎症性サイトカイン産生亢進による凝固活性化、von Willebrand因子の上昇、プロテインS活性の低下などです。

Zangari M, et al. The blood coagulation mechanism in multiple myeloma. Semin Thromb Hemost. 2003; 29: 275-282.

Auwerda JJ, et al. Prothrombotic coagulation abnormalities in patients with newly diagnosed multiple myeloma. Haematologica. 2007; 92: 279-280.



多発性骨髄腫症例での静脈血栓塞栓症の発症頻度は、報告によって幅はあるものの3〜10%とされています。

Srkalovic G, Cameron MG, Hussein MA, et al. Monoclonal gammopathy of undetermined significance and multiple myeloma are associated with an increased incidence of venothromboembolic disease. Cancer. 2004; 101: 558-566.

Facon T, Mary JY, Avet-Loiseau H, et al. Melphalan and prednisone plus thalidomide versus melphalan and prednisone alone or reduced-intensity autologous stem cell transplantation in elderly patients with multiple myeloma (IFM 99-06): a randomised trial. Lancet. 2007; 370(9594): 1209-1218.



ただし、これらは海外での成績であり、本邦での発症頻度はこの数字と同じかどうかは不明です。


近年、多発性骨髄腫に対して血管新生抑制作用も期待されているサリドマイドやその誘導体であるレナリドマイドが投与されることが多くなりました。

これらの薬剤は、単独で用いた場合には血栓症の発症を増加させることはありませんが、デキサメタゾンやアントラサイクリン系薬剤など他の薬剤を併用することで、静脈血栓塞栓症の頻度を有意に増加させることが知られています。

Palumbo A, et al. Prevention of thalidomide- and lenalidomide-associated thrombosis in myeloma. Leukemia. 2008; 22: 414-423.

Gieseler F. Pathophysiological considerations to thrombophilia in the treatment of multiple myeloma with thalidomide and derivates. Thromb Haemost. 2008; 99: 1001-1007.



この傾向は、特に新規診断症例において顕著となっています。

その他にも、サリドマイドおよび誘導体治療関連の静脈血栓塞栓症発症リスクを高めるのではないかと現在考えられている要因として、サリドマイドが高用量であること、デキサメタゾンが高用量であること、アントラサイクリン系薬物が併用されていること、エリスロポエチン製剤の使用、一般的な血栓症の危険因子を有していること(血栓症の既往、経口避妊薬の内服、Factor V Leiden、寝たきりなど)などが知られています。

(続く)多発性骨髄腫、サリドマイドと血栓症(2)

 
 
 
 
 
 

投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02 | 血栓性疾患

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