金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(1)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便りをお届けしたいと思います。
当科の
中尾眞二教授からのメッセージです。
臨床医の研究と専門性(1)
大学で教員をしていることの楽しみの一つは、毎週ベッドサイドの実習にやって来る学生達と色々な話ができることです。
既に自分の子供たちよりもずっと若い世代に入っていますが、個性豊かな学生と話をしていると、刺激を受けることが少なくありません。
最近、ある熱心な学生から「大学病院で臨床をしながら、一流の研究を並行して行うことは可能なのでしょうか」と聞かれたことがありました。
どちらも中途半端な自分にとっては耳の痛い質問でしたが、自分なりの回答をしました。
その回答はのちに紹介するとして、丁度良い機会なので、
臨床医にとって研究とは何かというテーマを、自分の経験を紹介しながら考えてみたいと思います。
臨床家がなぜ基礎研究?
なぜ研究をするか、という動機は人によって様々です。
大学に長く残っている人にもっとも多いパターンは、元々サイエンスに関心があったが、臨床にも興味があるので、取り敢えず臨床の教室に入って研究を始めたところ、研究が面白くなったため、臨床と基礎研究の二足のわらじを履いている、というものではないかと思います。
その中には、臨床にかける時間が惜しくなって基礎に転向し、その結果成功している著明な研究者も沢山います。
しかし、臨床教室にいる医師の多くは、研究室にばかりいて病棟に来ない、とか、NatureやNew Engl J Medなどの一流雑誌に載るような仕事をしている訳でもないのに患者さんを診ない、などのような誹りを受けながら、二股をかけているのが実情ではないかと思われます。
なかには、完全な基礎研究志向でありながら、基礎だけの世界でやっていくよりも、臨床の教室に身を置いている方が、競争率が低くてアカデミアの世界に残りやすいからそうしている、と公言する研究者もいます。
私の場合は、元々科学的探究心は強い方ではなく、医学部を卒業する時に研究者になろうという気持ちはほとんどありませんでした。
ただ、私が専門としている
血液内科では、治らない悲惨な病気が数多くある一方で、一工夫すれば助けられるということが、しばしば起こり得ます。
血液内科が、研究的な仕事ができる環境に身を置くことによって良い臨床ができるという性格の診療科であったことが、あまり向いていない研究の道に自分を向かわせて来たようです。
(続く)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)教授便り(2)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36
| 血液内科
石川県済生会金沢病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(3)
石川県済生会金沢病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(2)より
石川県済生会金沢病院(病院紹介)
当院における呼吸器内科の位置づけ
石川県済生会金沢病院は、平成6年10月、現在の赤土町に移転新築された。
<消化器を中心とした癌疾患の診断から治療、緩和ケアまでの一貫した取り組み>
<糖尿病、リウマチ、透析を中心とした生活習慣病に対する総合的な取り組み>
<整形外科領域での脊椎関節に対する積極的治療と専門的リハビリによる社会復帰の促進>
が3本柱となっている。
このことは、我が
呼吸器内科が、残念ながら収益面でのシェアが期待されていないということでもあるが、ありがたいことに
<キラリと光る専門外来>との評価をいただき自由に臨床研究に取り組ませていただいている。
学会参加に関しても寛大で、学術的にも消極的ではない。
平成21年度の英文は医局全体で12件であった。
ライフワークとしては、金沢大学呼吸器内科臨床教授藤村政樹先生のご指導のもと、2007年に
環境真菌関連アレルギー性気道疾患研究会(FACS-JAPAN)を発足し、(
http://facs-japan.main.jp)、国内外の研究機関との共同研究に取り組んでいる。
呼吸器内科は、赴任以来14年間一人体制ではあるが、金沢大学呼吸器内科から週一回の外来と気管支鏡検査のアシストをいただいているため、心細いことはない。
難しい症例をご指導いただき、大学での出来事や最新の話題などを伝え聞く貴重な機会とさせていただいている。
隣接するリハビリセンターの若きマンパワーはたのもしく、呼吸器疾患の急性期リハビリにおいても積極的にかかわってもらえるため、人口呼吸器からの離脱なども安心である。
NSTやソーシャルワーカーも充実し、規模は小さいが理想的な環境が整っている。
また、近隣に腫瘍専門病院が充実しているため、肺癌に関しては、当院は一定のニーズしか内外から求められてこなかったが、呼吸器外科、放射線治療、緩和ケア病棟を持ち合わせる当院には、新しい展開形も想定できるのではないかと期待が膨らむ。
当院の展望
21年11月には、移転新築15周年式典が開催された。
エントランスホールでは、
コーラスグループ The Forestが記念コンサートの機会をいただいた。
また、今年のクリスマスコンサートには、金沢大学のアカペラグループ<ハモラ内科>の出演を予定しているらしく、公私にわたってよくしていただいている。
9代目現院長はもとより経営陣による積極的な経営改善、DPCの導入により、明るさが見えてきた近年、絶対にありえないだろうとさえ言われていた電子カルテがいよいよ来年導入される。
済生会金沢病院は、ソフトもハードも少しずつではあっても着実に進化を遂げているように思われる。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50
| その他
石川県済生会金沢病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(2)
石川県済生会金沢病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(1)より
石川県済生会金沢病院(病院紹介)
全国組織としての済生会
天皇皇后両陛下の行幸啓を仰ぎ、済生会創立100周年記念式典が5月30日、代々木の明治神宮会館で行われた。
式典には常陸宮同妃両殿下、本会総裁の寛仁親王殿下が御臨席、天皇陛下には、
「済生会の活動が人々の幸せに一層資するようになることを願う」とのおことばを賜った。
金沢にいると、済生会病院といえば、看護師不足のあおりをうけながらも医療崩壊の危機を生きながらえた、ありふれた中規模地域病院のイメージが強いかもしれないが、明治天皇の「済生勅語」、施薬救療の精神がいまなお受け継がれる全国組織としての済生会は、社会福祉法人としてひとつのブランドとなっているようである。
先日、大阪で開催された済生会独自の臨床研修指導医のためのワークショップに参加した。
参加者全員で済生会がめざす医療と医師像を共有する貴重な機会であった。
これまであまり関心をもってこなかったが、全国規模で済生会学会が毎年開催されていることを再認識した。
<済生びと>という言葉が自然に心に沸きあがり連帯感が強くなった。
(続く)石川県済生会金沢病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(3)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26
| その他
石川県済生会金沢病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(1)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)病院紹介を続けたいと思います。
今回は、石川県済生会金沢病院です。
呼吸器内科診療部長の小川晴彦先生(S63入局)の記事です。
関連記事:
芳珠記念病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(1)へ
石川県済生会金沢病院(病院紹介)
<なでしこ>の紋章と東日本大震災
勝利の女神は、個々の身体能力にではなく、<なでしこジャパン>の鍛え抜かれたチーム力と、極限の精神力に微笑んだ。かくして一躍メディアを騒がせることになった<なでしこ>は、秋の七草として知られるが、凛として清楚な日本女性を意味するとともに、私たち済生会病院の象徴でもある。
露にふす 末野の小草 いかにぞと
あさ夕かかる わがこころかな
初代総裁 伏見宮貞愛(さだなる)親王殿下は、創立当時、済生会の事業についてのお心をこのような「撫子の歌」としてお詠みになり、それにちなんで いつの世にもその趣旨を忘れないようにと、撫子の花に露をあしらったものが、済生会の紋章となっている。
医療救護チーム第2陣が石巻へ派遣されたのは、東日本大震災の発生から約1ヶ月後であった。
なぜ車が沼地に突き刺さっているのか。なぜ橋は途絶え、交差点の中に家があるのか。
街のすべてを押し流し、“なぜ”という言葉の意味さえ奪い去った青い海が、そ知らぬ顔をして遠くに見えた。無力という名の隠れ蓑。
もしも、<なでしこ>の精神を持ち合わせていなければ、自己嫌悪に甘えながら、むなしく任務を終えたかもしれない。
— 何かできるはずだ。納得できる何かを。私たちは済生会金沢病院の一員なのだ —
メンバーの強い思いにあと押しされて、避難所の人たちとまっすぐに向き合った。
長年取り組んできた
<アレルギー性呼吸器疾患における環境真菌の重要性>というテーマ。
そこから導かれた新しい診断と治療法が、いまここで通用しないのならば、ライフワークとしての価値などあるわけがない。被災地での喀痰採取と環境落下真菌調査は、まさに覚悟と祈りにも似た境地であった。
菜の花が揺れるありふれた春の風景。入り江を見下ろす高台の避難所。
一時の感傷でしかないと知りながらも、青い空はやがて滲んで見えなくなった。
かけがえのない時間を共有した5人の強い絆を誇りに、そして
<済生びと>としての自覚を胸に刻み、石巻をあとにした。
(続く)石川県済生会金沢病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(2)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19
| その他
北陸血栓止血検査懇話会:(特別講演)岡本好司先生
第8回 北陸血栓止血検査懇話会 のご案内
代表幹事 福井大学医学部附属病院 岡田 敏春
【日時】 平成23年11月26日(土) 15:10 〜 17:00
【場所】 金沢都ホテル 5階 能登の間
【研究会内容】
15:10 〜 15:40
<学術情報提供>
第4回コアプレスタコントロールサーベイの結果より
積水メディカル株式会社 検査事業部門 カスタマーサポートセンター学術グループ
須長 宏行
16:00 〜 17:00
<特別講演>
「 最近のDIC診断と治療 」
講師:産業医科大学 第一外科 准教授
(北九州市立八幡病院 消化器・肝臓病センター長、外科主任部長)
岡本 好司 先生
【その他】 受付にて参加費500円を徴収させて頂きます
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24
| 研究会・セミナー案内
芳珠記念病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(2)
職員と地域に日本一愛される病院を目指して(2)
当院の診療体制は常勤医29名、研修医3名、呼吸器内科、神経内科、呼吸器外科、形成外科、麻酔科、腫瘍内科、病理科などは非常勤医のみですが、その他にも多くの非常勤医師がいます。
常勤医同士は非常にat homeで気軽に相談し合っています。
現在内科常勤医は循環器2名、代謝内分泌3名、腎臓1名、血液1名の7名ですが、1月までは5名で80名前後の入院患者を診療していました。
血液疾患は入院も外来も私一人で診ています。
呼吸器疾患の入院患者は外来や当直で診た医師が主治医となり、適宜呼吸器内科に相談しているのが現状です。
私自身は高齢者の化学療法も多いため、常時15-20人前後の急性期、長期入院患者を受け持っています。
しかし、長期でも人工呼吸器(NPPVを含む)装着状態やTPNしながら感染症などの全身管理をする患者も多く、相変わらず重症患者での呼び出しは頻回です。
しかし、自宅が歩いて5分のところにあるので、何とか泊り込みは避けて自宅に帰ることが出来ています。
この7年間で血液疾患は増加し、毎年30名前後の新規患者を診療し既に250名にせまる勢いです。
その中で移植が必要な方や比較的若い方などは大学や県立中央病院、NTTなどにお願いしていますが、高齢者はなるべく当院で加療しています。
私自身は、輸血療法委員会、化学療法委員会(センター長)のチームリーダーであり、感染対策委員会の内科代表として日々標準的かつ安全な診療を推進しています。
2009年には北陸で2番目となる輸血学会のI&A認定施設となりましたが、これもチーム医療の賜物です。
また、当院は<意思確認書>(いわゆる事前指示書)や高齢者への皮下輸液など終末期医療についても積極的に取り組んでいます。
当院はまだ電子カルテではありませんが、2005年11月からオーダリングシステムが稼動し、院内メールなどのイントラネットの整備なども行い、業務の効率化と連携、情報発信に役立てています。
南加賀地区は金沢中央地区と比較して救急医療、がん診療の分野がやや弱い感があります。
しかし、当院は地域の総合病院としていつでも誰でも受け入れて、がんのみでなく寝たきりであっても人生の最期まで尊厳のある人生を送ることができるお手伝いができて地域から頼られ愛される病院を目指しています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
| その他
芳珠記念病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(1)
病院紹介の記事をアップさせていただきます。
今回は、
芳珠記念病院です。
青島敬二先生(平成4年入局、血栓止血研究室)に、執筆していただきました。
職員と地域に日本一愛される病院を目指して(1)
当院は1983年(昭和58年)に旧辰口町(現能美市緑が丘)に開設され今年で創立28年になりました。
近隣に総合病院はなく、当院の存在は新興住宅地となっていた辰口丘陵周辺の住民の方にとっては、かかりつけ医でもあり、いざという時に駆け込める救急病院となりました。
当初は地下1階地上9階の病院として、現在は血液浄化センター、救急センター、医療介護病棟などを増設し、辰口丘陵の地形を利用した地下3階のT字型の本館を中心としたやや複雑な建物になっています。
金沢、小松、川北から来られると高台に建つ当院がすぐに目に入りますが、近くにくると建物が見えなくなり初めて来院される場合には周辺で道を聞く方もいるようです。
現在はDPC病院として急性期200床、医療介護120床のケアミックス病院となっています。
日本医療機能評価機構の認定も2008年で3回目となり、
2010年からは基幹型臨床研修病院として研修医を受け入れています。
私は1993年に大学での研修を経て初めて赴任したのが芳珠記念病院であり、その時代は血液・呼吸器・感染症の若い医師が半年交代で赴任していました。
私が再度赴任した2004年まではしばらく呼吸器内科の常勤医でしたがその後呼吸器内科は週2回の非常勤体制となり、血液内科で第三内科出身の私には呼吸器疾患の相談もあります。
近隣には第3セクター方式の老健施設や小規模多機能型介護施設、訪問看護ステーションなどもあり、医療介護を統合した事業を展開しています。
また、病院経営において
北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科との共同研究によりMOT(management of technology)を取り入れ、病院の事業計画の策定や四画面思考による委員会などの活動計画などを作成して公開し院外他業種との交流もさかんです。
また、当院では栄養サポートチーム(NST)、感染対策チーム(ICT),糖尿病などの代謝内分泌の対策チーム(DoBest),緩和ケアチームなど多くのチームによる医療活動が盛んです。
また、
<重宝されるがん診療>をキャッチフレーズに2006年には外来化学療法センターが開設され、今年4月には石川県から地域がん連携推進病院に認定されました。
(続く)
芳珠記念病院:金沢大学第三内科 関連病院紹介(2)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03
| その他
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):HP&ブログについて
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)のホームページ(HP)は、2008年8月にリニューアルされました。
この際、ブログ「
血液・呼吸器内科のお役ち情報」が併設されています。
本記事を執筆時点で、リニューアル後3年以上が経過しました。
ブログの方は、HPと比較して更新するのが遥かに簡便ですので、1年間で365記事(
1日平均1記事)がアップされています。
おかげさまで、多くの皆様にご利用いただくようになり、現在は1日に7,000程度のアクセスがあります。
学会、研究会、講演会などでも、当科のHP&ブログを毎日見ていますと声をかけていただくことも多く、嬉しく思うとともに責任ある記事を発信できるようにと身の引き締まる思いでもあります。
私たちのサイトは、血液内科や呼吸器内科の医師のみならず、研修医、コメディカル、医療関係学生など多くの方にとって有用な情報を発信することを目標にしています。また、一般の方にご覧いただいても有用な記事も少なくないのではないかと思っています。
同門の先生方の周囲で、興味を持っていただけそうな方がおられましたら、是非とも私たちのサイトを紹介していただければと思います(アクセス方法は下記いたしました)。
また、学内からのみでなく、
広く同門の先生方からの原稿をお待ちしています。
内容は、病院紹介、研修医や医学部生へのメッセージ、医の倫理、研究会やセミナーの広報など何でも結構です。
原稿は以下に送信していただければと思います(画像がある場合には、JPEGでお願いできるでしょうか)。
info@3nai.jp
これまでの同門の先生方の御支援に深く感謝しています。
今後ともどうかよろしくお願いいたします。
(HPへのアクセス法)
1)「
金沢大学 第三内科」「
金沢大学 血液内科」「
金沢大学 呼吸器内科」:YahooまたはGoogleなどの検索でトップ検索されます。
2)「
3nai.jp」の入力でもアクセスできます。3ナイ.jpと覚え易いです。
(ブログへのアクセス法)
上記HPトップ画面の右下に「
血液・呼吸器内科のお役立ち情報(ブログ)」と書かれている部分をクリックしますと、ブログ画面にジャンプします。
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02
| その他
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群11
維持療法:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群10 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(11)
既述しましたように、現状では遷延性・慢性咳嗽の原因疾患の診断は、治療的に診断するに留まっています。
治療効果を判定する際には、自然軽快とプラセボ効果の問題が残り、さらにそれぞれの原因疾患が重症・難治性の場合には診断困難となる問題があります。
したがって将来的には、それぞれの原因疾患の病態に基づく「病態的診断」の開発と普及が望まれます。
また、現在使用可能な薬剤の効力および即効性は十分とはいえません。
それぞれの原因疾患の咳嗽発生機序のさらなる解明と、より有効な治療薬の開発が待たれます。
(続く)インデックス:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群 へ
【関連記事】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26
| 咳嗽ガイドライン
維持療法:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群10
導入治療:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群9 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(10):維持療法(長期管理)
治療薬を減量・中止するとすぐに再燃する場合、咳喘息からの喘息発症を予防する場合に実施します。
1)咳喘息
咳喘息は30%が典型的
喘息に移行しますが、長期吸入ステロイド療法はこの喘息への移行を予防します(
表)。
Fujimura M, et al: Comparison of atopic cough with cough variant asthma: Is atopic cough a precursor of asthma? Thorax 58: 14, 2003
したがって、上記導入療法によって咳嗽が軽快した後は、気管支拡張薬は減量・中止し、吸入ステロイド薬を長期に使用します。しかしながら、現時点では、その使用期間および使用量に関する詳細は不明です。
2)アトピー咳嗽
喘息への移行は認められませんので、治療によって咳嗽が軽快すれば治療薬を減量・中止します。
多くの患者では咳嗽の再燃がみられますが、同じ治療の繰り返しで対処できます。
3)副鼻腔気管支症候群
導入療法によって症状が軽快・消失すれば、治療薬を減量・中止できるので、維持療法は不要です。
かぜ症候群を契機に再燃しても、同じ治療で対処できます。ただし、重症例では膿性痰が消失せず、維持療法を余儀なくされる場合もあります。
(続く)咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群11 へ
【関連記事】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15
| 咳嗽ガイドライン
導入治療:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群9
治療的診断:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群8 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(9):導入治療
咳嗽の治療は、以下の3つから構成されます。
1)治療的診断を行うための診断的治療
2)咳嗽を軽快・消失させるための導入療法
3)維持療法(長期管理)
診断的治療:既述です(
治療的診断、
治療的診断【図】)。
導入療法
診断的治療によって原因疾患を一時的に診断した後に、咳嗽を軽快・消失させるために実施する治療です。
1)咳喘息
(1)軽症
塩酸クレンブテロール(商品名:スピロペント)(10 µg錠)4錠を分4で経口投与+硫酸サルブタモール(商品名:サルタノール)(100 µg/puff)2吸入を咳嗽時および咳嗽前屯用。
(2)中等症
塩酸クレンブテロール(10 µg錠)4錠を分4で経口投与+硫酸サルブタモール(100 µg/puff)2吸入を咳嗽時および咳嗽前屯用+プロピオン酸フルチカゾン(商品名:フルナーゼ)1回200 µgを1日2〜4回吸入+カルボシステイン(商品名:ムコダイン)(500 mg錠)3錠を分3で経口投与。
(3)重症
上記の中等症の治療にプレドニゾロン(商品名:プレドニン 5 mg錠)4錠を朝1回、短期(1〜3週間)経口投与を追加。
いずれの重症度においても、ロイコトリエン拮抗薬が有効性を示す症例があり、さらにロイコトリエン拮抗薬は咳喘息に特異的に有効である可能性を示唆する基礎的および臨床的成績も蓄積されつつあります。
Nishitsuji M, et al: Effect of montelukast in a guinea pig model of cough variant asthma. Pulm Pharmacol Ther 21:142-145, 2008.
Kita T, et al: Antitussive effects of the leukotriene receptor antagonist montelukast in patients with cough variant asthma and atopic cough. Allergol Int. 59: 185-192, 2010
2)アトピー咳嗽
(1)軽症
塩酸アゼラスチン(商品名:アゼプチン)(1 mg錠)4錠を分2で経口投与+カルボシステイン(500 mg錠)3錠を分3で経口投与。
カルボシステインには好酸球性気道炎症に伴う咳感受性亢進を抑制する作用を有することが基礎研究で示されています。
Katayama N, et al: Effect of carbocysteine on the antigen-induced increases in cough sensitivity and bronchial responsiveness in guinea-pigs. J Pharmacol Exp Ther 297: 975-980, 2001
(2)中等症
塩酸アゼラスチン(1 mg錠)4錠を分2で経口投与+プロピオン酸フルチカゾン 1回200 µgを1日2〜4回吸入+カルボシステイン(500 mg錠)3錠を分3で経口投与。
(3)重症
上記の中等症の治療+プレドニゾロン(プレドニンR5 mg錠)4錠を朝1回、短期(1〜3週間)経口投与。
3)副鼻腔気管支症候群
診断的治療(例えば、カルボシステイン1500 mg/日+クラリスロマイシン100 mg/日)をそのまま継続します。
(続く)維持療法:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群10 へ
【関連記事】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
| 咳嗽ガイドライン
治療的診断:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群8
治療的診断(図):咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群7 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(8):治療的診断
治療前の評価によって、
副鼻腔気管支症候群が湿性咳嗽の原因疾患であると一時的診断した場合、去痰薬(気道粘液修復薬)と14、15員環マクロライド薬による治療を開始し、遅くとも2か月後に治療効果の評価を行い、治療効果ありと判定すれば本疾患と臨床診断できます(
治療的診断(図))。
さらに4か月治療を継続し、咳嗽が消失すれば確定診断となります。
乾性咳嗽の場合、本邦では大部分が
咳喘息と
アトピー咳嗽ですので、この二つの疾患を念頭に「診断的治療」を開始します。
最初に、
「気管支拡張薬が有効な咳嗽は咳喘息だけである」ことに基づき、1〜2週間の気管支拡張療法を実施して、その効果を判定します。
気管支拡張療法が第一段階である理由は、以下の通りです。
1)気管支拡張薬は咳喘息にしか効きません(特異的)
2)効果の発現が早いです(即効性)
3)咳喘息が最も多いです
咳嗽が消失しないまでも、明らかに軽減(初診時の咳嗽の強度と頻度を総合した患者の感覚を10 cmとして、7 cm以下に軽減)すれば咳喘息と診断し、より十分な治療(導入療法)を開始します。
気管支拡張薬が無効な場合には、
アトピー咳嗽と一時的に診断し、ヒスタミンH1-拮抗薬およびステロイド薬を用いて治療します。
それぞれの治療によって咳嗽が完全に軽快すれば、それぞれの疾患の確定診断となります。
しかし、それぞれの治療によって咳嗽が完全に軽快しない場合には、
胃食道逆流による咳嗽、
心因性・習慣性咳嗽など、他の原因の併発を想定し、検査・治療を進めることになります。
種々の原因疾患を想定して治療を行っても咳嗽が軽快しない場合や残存する場合には、
中心型肺腫瘍、
気管・気管支結核、
気道内異物などが原因となることもあり、気管支鏡検査の絶対適応となります。
(続く)導入治療:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群9 へ
【関連記事】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
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| 咳嗽ガイドライン
治療前診断:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群6
SBS:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群5 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(6):治療前診断
湿性咳嗽ならば副鼻腔気管支症候群が大部分です。
副鼻腔異常(咳払い、後鼻漏、上顎洞X線写真にて粘液貯留像や粘膜肥厚像)に、喀痰中好中球増多を認めれば確率が高くなります。
さらに喀痰が膿性であり、喀痰中に慢性気道感染症の起因細菌が同定されれば、診断確率はさらに高くなります。
乾性咳嗽では、アトピー咳嗽と咳喘息の鑑別が問題となります。
治療前診断は、表(アトピー咳嗽と咳喘息)に示した病態を全て検査して行う「病態的診断」が理想的ですが、一般臨床ではこれらを全て実施して診断することは不可能です。
そこで日本咳嗽研究会および日本呼吸器学会では、臨床研究をする際の対象患者の選択基準としての「きびしい診断基準(診断基準)、病態的診断」と、日常臨床で患者を診療する際の手引きとしての「あまい診断基準(簡易診断基準)、治療的診断」を準備しました。
藤村政樹、亀井淳三、内田義之、新実彰男、内藤健晴、塩谷隆信、西耕一、藤森勝也. 慢性咳嗽の診断と治療に関する指針. 藤村政樹 監修、日本咳嗽研究会・アトピー咳嗽研究会発行、前田書店、金沢、2006.
咳嗽に関するガイドライン.日本呼吸器学会咳嗽に関するガイドライン作成委員会編、日本呼吸器学会、東京、2005.
(続く)治療的診断(図):咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群7 へ
【関連記事】 咳嗽の診断と治療
1)ガイドライン
2)咳嗽の定義 & 性状
3)急性咳嗽
4)遷延性咳嗽 & 慢性咳嗽
5)咳嗽の発症機序
6)診断フローチャート
7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
11)慢性咳嗽&ガイドライン
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SBS:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群5
アトピー咳嗽:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群4 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(5):副鼻腔気管支症候群
上気道と下気道に慢性好中球性気道炎症による過剰分泌を呈する病態です。
関連記事:副鼻腔気管支症候群(SBS):咳嗽の診断と治療(9)
上気道病変は慢性化膿性(好中球性)副鼻腔炎(原則として上顎洞炎)です。
一方、下気道病変はびまん性汎細気管支炎、びまん性気管支拡張症、非特異的な好中球性気管支炎です。
喫煙との関連はなく、狭義の慢性気管支炎(タバコ気管支炎)とは異なります。
上気道、下気道ともに線毛運動能の低下を認めます。
幸いにも、本疾患には長期少量マクロライド療法が奏効するため、本疾患の認識は重要です。
Fujimura M, et al. Addition of a 2-month low-dose course of levofloxacin to long-term erythromycin therapy in sinobronchial syndrome. Respirology 7: 317-324, 2002.
(続く)治療前診断:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群6 へ
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8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
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アトピー咳嗽:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群4
咳喘息:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群3 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(4):アトピー咳嗽
患者に何かしらのアトピー素因(過去、現在、未来にアレルギー疾患に罹った、罹っている、罹る可能性がある体質)ないし誘発喀痰中に好酸球がみられ、気管支拡張薬が全く無効な咳嗽を呈し、ヒスタミンH1-拮抗薬とステロイド薬(吸入、内服)が有効な病態(eosinophilic tracheobronchitis with cough hypersensitivity associated with atopic constitutionの略)です。
Fujimura M, et al: Comparison of atopic cough with cough variant asthma: Is atopic cough a precursor of asthma? Thorax 58: 14, 2003
Fujimura M, et al. Eosinophilic tracheobronchitis and airway cough hypersensitivity in chronic non-productive cough. Clin Exp Allergy 30: 41, 2000
病理学的所見は、誘発喀痰と生検した気管および気管支の粘膜に好酸球がみられますが、気管支肺胞洗浄液には好酸球がみられず、呼気中NO濃度の増加がみられないことです。
Fujimura M, et al: Detection of eosinophils in hypertonic saline-induced sputum in patients with chronic nonproductive cough. J Asthma 34: 119, 1997
Fujimura M, et al: Bronchial biopsy and sequential bronchoalveolar lavage in atopic cough: in view of effect of histamine H1-antagonists. Allergology International 49: 135, 2000
Fujimura M, et al: Exhaled nitric oxide (NO) levels in patients with atopic cough and cough variant asthma. Respirology 13: 359-364, 2008
すなわち、病理学的基本病態は、中枢気道に限局した好酸球性気管気管支炎(中枢気道の蕁麻疹)です。
生理学的所見は、咳感受性が亢進していることであり(上図:咳喘息患者とアトピー咳嗽患者の初診時および咳嗽軽快時のカプサイシン咳感受性。縦軸に最初に5回以上咳が誘発されたカプサイシン濃度(カプサイシン咳閾値)を示しています。シャドーは、正常者の95%信頼範囲です)、気道可逆性はなく、ピークフローの日内変動および気道過敏性は正常です。
喘息への移行は認めず、予後の点からも咳喘息とは異なります。
(続く)SBS:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群5 へ
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3)急性咳嗽
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咳喘息:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群3
咳嗽の発生機序:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群2 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(3):咳喘息
β2-刺激薬には、咳感受性や咳中枢の抑制作用がないことが最も重要な基本事項であり、咳嗽一般に対する鎮咳効果は期待できません。
Fujimura M, et al: Effects of methacholine-induced bronchoconstriction and procaterol-induced bronchodilation on cough receptor sensitivity to inhaled capsaicin and tartaric acid. Thorax 47: 441, 1992.
咳喘息は、喘鳴や呼吸困難発作がなく、喘息とは診断できない持続性咳嗽が唯一の症状であり、この咳嗽がβ2-刺激薬などの気管支拡張薬の全身投与によって軽快する病態として登場しました。
Corrao WM, Braman SS, Irwin RS: Chronic cough as the sole presenting manifestation of bronchial asthma. N Engl J Med 300: 633, 1979
このような患者では、気道過敏性は軽度(正常者と軽症喘息患者の中間)亢進していますが、気道過敏性亢進の有無によって咳喘息と診断することは誤りです。
実際に気道過敏性測定の結果が気管支拡張薬の効果を予測できないことが示されており、我々や他の研究グループも確認しています。
Irwin RS, et al: Interpretation of positive results of a methacholine inhalation challenge and 1 week of inhaled bronchodilator use in diagnosing and treating cough-variant asthma. Arch Intern Med 157:1981, 1997
咳喘息の病理学的所見は、高張食塩水吸入による誘発喀痰、気管支鏡による生検気管支粘膜および気管支肺胞洗浄液に好酸球が気管支喘息と同程度に出現し、呼気中の一酸化窒素(eNO)濃度も気管支喘息と同程度に高いことです。
Fujimura M, et al: Detection of eosinophils in hypertonic saline-induced sputum in patients with chronic nonproductive cough. J Asthma 34: 119, 1997
Niimi A, et al: Eosinophilic inflammation in cough variant asthma. Eur Respir J 11: 1064, 1998
Fujimura M, et al: Exhaled nitric oxide (NO) levels in patients with atopic cough and cough variant asthma. Respirology 13: 359-364, 2008
したがって病理学的基本病態は、中枢気道から末梢気道全体の好酸球性気管支細気管支炎であり、気管支喘息と全く同じです。
生理学的所見は、気道過敏性が軽度亢進、気管支平滑筋トーヌスが軽度亢進、咳感受性が正常です。
Fujimura M, et al: Cough receptor sensitivity and bronchial responsiveness in patients with only chronic nonproductive cough: In view of effect of bronchodilator therapy. J Asthma 31: 463, 1994.
咳嗽は、咳感受性とは関係なく、気管支平滑筋の軽度収縮がトリガーとなって発生すると考えられます。
数年の内に、約30%の患者が典型的な喘息に移行するため、喘息の前段階(prelude of asthma)と認識されています(表)。
表 アトピー咳嗽と咳喘息からの喘息発症(5年間の長期予後)
疾 患 |
喘息発症あり |
喘息発症なし |
アトピー咳嗽 |
1.2 % |
98.8 % |
咳喘息(長期吸入ステロイド療法あり) |
5.7 % |
94.3 % |
咳喘息(長期吸入ステロイド療法なし) |
30.0 % |
70.6 % |
Fujimura M, et al: Comparison of atopic cough with cough variant asthma: Is atopic cough a precursor of asthma? Thorax 58: 14, 2003
(続く)アトピー咳嗽:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群4 へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29
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咳嗽の発生機序:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群2
慢性咳嗽:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群1 より続く。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(2):咳嗽の発生機序
湿性咳嗽は、気道の過剰分泌によって気道内に貯留した喀痰を喀出するための生理的咳嗽です。
気道内に貯留した喀痰が気道壁表層に存在する咳受容体を直接的に刺激して咳嗽反応が惹起されます。
一方、乾性咳嗽は、咳嗽が一次的に発生する病的咳嗽です。
乾性咳嗽は、運動の始まり、運動の後、会話、空気の温度の変化、線香やタバコの煙、香水のにおい、などによって誘発されます。
また、咳嗽は就寝時や早朝に起こりやすく、重症となると一晩中咳込むため、睡眠が著しく障害されます。
また、女性では咳発作によって尿失禁するため、QOLが損なわれます。
乾性咳嗽の発生機序には少なくとも次の二つがあります。
一つは、気道壁表層に存在する咳受容体の感受性が亢進して咳嗽が発生する機序であり、アトピー咳嗽、胃食道逆流による咳嗽、アンジオテンシン変換酵素阻害薬による咳嗽が該当します。
もう一つは、気道壁深層に存在する気管支平滑筋の収縮によって、平滑筋の中あるいは周囲に存在する知覚神経終末が刺激されて咳嗽反応が惹起される機序であり、咳喘息と気管支喘息が該当します。
咳喘息では、気管支平滑筋収縮に対する知覚神経終末の反応性が亢進しており、平滑筋の弱い収縮によって咳嗽発作が惹起されます。
他方、気管支喘息では、この知覚神経終末の反応性は鈍化していますが、強い平滑筋収縮による過剰刺激によって咳嗽が惹起されます。
Ohkura N, et al. Bronchoconstriction-triggered cough is impaired in typical asthmatics J Asthma 47:51-54, 2010
(続く)咳喘息:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群3 へ
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9)副鼻腔気管支症候群(SBS)
10) 胃食道逆流症(GERD)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00
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慢性咳嗽:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群1
今回より、咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群を、連載でアップさせていただきます。
咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群(1):慢性咳嗽
8週間以上持続する咳嗽を慢性咳嗽と言います。
咳嗽に関するガイドライン:日本呼吸器学会咳嗽に関するガイドライン作成委員会編、日本呼吸器学会、東京、2005.
我が国では、慢性咳嗽の3大原因疾患は咳喘息(乾性咳嗽)、アトピー咳嗽(乾性咳嗽)および副鼻腔気管支症候群(湿性咳嗽)であり、これら3疾患で慢性咳嗽の90%程度を占めます(上図:本邦<北陸3県>における慢性咳嗽の原因疾患、以下文献より改変)
Fujimura M, et al. Importance of atopic cough, cough variant asthma and sinobronchial syndrome as causes of chronic cough in Hokuriku area of Japan. Respirology 10: 201-207, 2005
したがって、これらの3大原因疾患に熟知することは極めて重要です。
(続く)咳嗽の発生機序:咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群2 へ
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5)咳嗽の発症機序
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7)咳喘息
8)アトピー咳嗽 vs. 咳喘息
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
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兼六園切手など:金沢大学附属病院内にある郵便局
金沢大学附属病院内にある郵便局で、上記の切手を偶然に発見しました。
恥かしながら、このような切手があるとは知りませんでした。
県外の方へのお土産、研修医の先生(北陸以外の出身)が実家へ戻られる時のお土産になるかも知れませんね。
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
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第2回女性医師の生き方セミナー開催のお知らせ
第2回女性医師の生き方セミナー開催のお知らせ
多くの悩みを抱えながら日々の診療に従事している女性医師やこれからの世代を担う女医学生を中心に,医師としての生き方を考える機会として,下記のとおり標記セミナーを開催しますのでご参加ください。
日 時:平成23年11月19日(土)13:00〜15:00
場 所:附属病院外来診療棟4階 宝ホール
プログラム:
第1部 講演会
先輩女医の今日までの道のり,ファミリーサポート(育児援助)の利用経験談,女医である妻を支えている男性医師からのひと言などお聞きになってみませんか。
<講師>
・金沢大学大学院医学系研究科特任教授(外科医) 大 竹 裕 志 先生
・金沢大学附属病院小児科助教 岡 島 道 子 先生
・石川県立中央病院総合母子医療センター医員 松 岡 歩 先生
・金沢市ファミリーサポートセンターアドバイザー 宇 野 典 子 氏
・金沢市ファミリーサポート提供会員 吉 田 美 香 氏
・金沢大学医学部医学科5年 谷 真智子 さん
第2部 グループディスカッション
・先輩女医の方々や女性医師メンターに何でも聞いてみよう。
参加対象: 医学生,研修医,医師 *男性の方々の積極的な参加をお待ちしております。
託児所: 託児所を用意しておりますので,ご利用を希望される場合は,参加お申し込みの際にお子様のお名前,性別,年齢,アレルギーの有無をお知らせ願います。(託児所のご利用は,生後6カ月以上のお子様に限ります。なお,保育スペースの都合により先着15人までとさせていただきます。)
主 催:
金沢大学附属病院女性医師メンター
森下英理子(血液内科),東馬智子(小児科),中西清香(耳鼻咽喉科・頭頸部外科),小室明子(麻酔科蘇生科)
金沢大学附属病院
金沢大学男女共同参画キャリアデザインラボラトリー
石川県女性医師支援センター
石川県
石川県医師会
金沢市医師会
問合せ・申込み先
附属病院総務課(担当:村田)
電話265-2092, FAX 234-4320
E-mail: yasushi@adm.kanazawa-u.ac.jp
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
| 研究会・セミナー案内
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(9)
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(8)より
合成写真にしてみました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44
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金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(8)
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(7)より
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46
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金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(7)
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(6)より
(続く)金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(8)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31
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金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(6)
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(5)より
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16
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金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(5)
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(4)より
(続く)金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(6)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
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金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(4)
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(3)より
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金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(3)
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(2)より
(続く)金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(4)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
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金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(2)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10
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