金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(1)
10月23日に恒例の血液・呼吸器内科医局旅行が開催されました。今回の医局旅行は飛騨高山!
去年は台風の影響で残念ながら中止となったため、2年ぶりの医局旅行となりました。
金沢を出発する時は小雨で天気が心配でしたが、現地に着くと雨もあがり、過ごしやすい気温で気持ちよく観光する事ができました。
最初に向かった先は「飛騨の里」。
ここは飛騨の古い民家が移築復元されており、懐かしい風景とともに鮮やかな紅葉が広がっていました。
竹馬やけん玉もあり、小さな子供達も大喜びでした。
お昼はやっぱり飛騨牛!しゃぶしゃぶです。口の中に広がる甘い飛騨牛の味わいに、至福の時間を過ごしました。
食後は自由散策です。まずは高山の古い町並へ。テイクアウトできるお店がたくさん連なっており、食べながら趣ある町並をそぞろ歩きしました。市内は日曜日という事もあり、たくさんの観光客であふれていました。
「高山陣屋」で歴史を感じた後、恋愛のパワースポットとも呼ばれる「テディベアエコビレッジ」へ。
1000体以上ある可愛いベアに癒されたら、ビッグベアのキルト君と記念撮影。
このキルト君の右手を持ちながら写真を撮ると、なんと恋愛が成就するという言い伝えがあります。
旅行から戻ると素敵な出会いが・・キルト君と写真を撮った女性陣のみなさん、いい報告を待っています!
帰りの集合時間までゆっくり温泉につかったり市内観光したりと、みなさん思い思いの時間を過ごしていました。
最後はお土産を両手いっぱいに買い込んで、楽しかった思い出を胸に帰路につきました。
病院での多忙な時間を忘れさせてくれる貴重な一日となりました。
(続く)この後、お宝画像を連載していきたいと思います、乞うご期待です!
金沢大学第三内科医局旅行:飛騨高山(2)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
| その他
北陸血栓研究会のご案内
第9回 北陸血栓研究会
日 時:平成23年10月29日(土)16:00〜18:00
場 所:宝ホール(金沢大学附属病院 内 外来棟4階)
会費:500円(学生を除く)
代表世話人 金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学 中尾 眞二
当番世話人 福井県立病院 血液・腫瘍内科 羽場 利博
プログラム
学術情報提供(16:00 〜 16:10) CSLベーリング株式会社
開会の挨拶 福井県立病院 血液・腫瘍内科 部長 羽場 利博先生
一般演題 (16:10 〜 16:50)
1. 2度の流産の後、へパリン自己注射管理にて出産した真性多血症の35歳女性
福井県立病院 血液・腫瘍内科 ○山田健太 羽場利博
福井県立病院 産婦人科 加藤三典
2. COの抗血栓作用
金沢大学大学院医学系研究科保険学専攻病態検査学講座
○丸山慶子 森下英理子 丸山慶子 関谷暁子 大竹茂樹
3. 溶血性尿毒素症候群に対するトロンボモジュリン製剤の使用経験
富山県立中央病院 血液内科 ○熊野 義久、本宮 佳奈、彼谷 裕康、奥村 廣和
富山県立中央病院 腎臓内科 舟本 智章、掛下 幸太、山端 潤也、川端 雅彦、飯田博行
− 休 憩 − (16:50 〜 17:00)
特別講演 (17:00 〜 18:00)
座長 福井県立病院 血液・腫瘍内科 部長 羽場 利博 先生
「DICの病態−血栓溶解機構を把握する臨床的意義−」
自治医科大学分子病態研究部
自治医科大学附属病院血液内科 講師 窓岩 清治 先生
共催:北陸血栓研究会、CSLベーリング株式会社、社団法人 石川県臨床衛生検査技師会
後援:石川県病院薬剤師会、一般社団法人 福井県臨床検査技師会
※ 本研究会は、石川県病院薬剤師会生涯教育制度の1単位に該当しますので、会場で研修シールを受け手帳に貼付して下さい。
※ 本研究会は、日本臨床衛生検査技師会生涯教育研修制度 専門教科20点に該当します。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 研究会・セミナー案内
輸血の副作用とその対策 <インデックス>
輸血後鉄過剰症:輸血の副作用とその対策(6)より続く。
輸血の副作用とその対策 <インデックス>
1)副作用頻度(表1)
2)重篤副作用の診断(表2)
3)溶血性副作用
4)アレルギー/アナフィラキシー
5)TRALI/TACO
6)輸血後鉄過剰症
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10
| 輸血学
輸血後鉄過剰症:輸血の副作用とその対策(6)
TRALI/TACO:輸血の副作用とその対策(5)より続く。
<輸血後鉄過剰症治療アルゴリズム>
輸血後鉄過剰症
赤血球輸血を繰り返しますと早晩鉄過剰症となります。
輸血後鉄過剰症は、鉄キレート剤デフェラキシロクス(商品名エクジェイド)の服用で、予後改善が期待できます。
藤井靖彦(研究代表者): 輸血副作用対応ガイド. 日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会, 2011
小澤敬也(研究代表者): 輸血後鉄過剰症の診療ガイド. 厚労省特発性造血障害に関する調査研究班, 2008
血液学的改善効果も報告されています。
Gattermann N, Finelli C, Porta MD, et al: Hematologic Responses In Myelodysplastic Syndromes (MDS) Patients Treated with Deferasirox: An EPIC Post-Hoc Analysis Using International Working Group (IWG) 2006 Criteria. ASH Annual Meeting Abstracts 116:2912-, 2010
厚労省研究班ガイドラインは、1年以上の余命が期待できる患者を鉄キレート剤治療の対象と定めています(上図)。
骨髄異形成症候群の場合、International Prognostic Scoring System(IPSS)上、高リスクグループの平均生存期間は0.4年です。
ですから、これよりリスクの低い3グループ(中間リスク2 [平均生存期間1.2年]、中間リスク1 [平均生存期間3.5年] 、低リスク [平均生存期間5.7年])が治療対象となります。
輸血後鉄過剰症のサロゲートマーカーである血清フェリチン値が500-1,000 ng/mLになるようにデフェラシロクスを調整します。
まとめ
1)最も重要な輸血副作用は、ABO不適合輸血とアナフィラキシーショックです。
2)輸血後肺水腫症状がみられれば、輸血関連急性肺障害と輸血関連循環過負荷を第一に考えます。
3)輸血後鉄過剰症は、デフェラシロクス内服により予後改善が期待できます。
(続く)輸血の副作用とその対策 <インデックス> へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50
| 輸血学
TRALI/TACO:輸血の副作用とその対策(5)
アレルギー/アナフィラキシー:輸血の副作用とその対策(4)より続く。
TRALI(transfusion-related acute lung injury、輸血関連急性肺障害)
輸血後6時間までに起こる輸血による非心原性肺水腫であり、治療も急性肺障害に準じます(重篤副作用の診断)。
輸血副作用死亡の約半数を占めます。
外来輸血の場合、離院後発症する恐れもあります。
診断を確定するために、日本赤十字血液センターに依頼し、血液製剤と患者血清中の抗白血球抗体を調べます。
国内は輸血2-5千件に1件程度とされますが(副作用頻度)、過少評価されているかもしれません。
輸血関連循環過負荷(transfusion-associate circulatory overload: TACO)との鑑別が問題になります。
TACO(transfusion-associated circulatory overload、輸血関連循環過負荷)
輸血の容量負荷により起こる心不全です(重篤副作用の診断)。TRALIと鑑別困難な場合が多いです。
GVHD(graft-versus-host disease、移植片対宿主病)
輸血に含まれるリンパ球が、HLA一方向不適合などにより生着し、患者の骨髄や皮膚、肝、消化管を攻撃する致死的疾患です(重篤副作用の診断)。
放射線照射で完全に予防できます。
未照射血の購入は、リスク管理の観点からも勧められません。
高カリウム血症
赤血球製剤2単位中のカリウム量は1-3 mmol程度であり、輸血で高カリウム血症を来すことは少ないです。
ただし、大量輸血や腎不全、新生児では注意します。
輸血感染症
日本赤十字血液センターは、全輸血用血液の、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトTリンパ球向性ウイルス-1(HTLV-1)、ヒト免疫不全ウイルス-1/2(HIV-1/2)、ヒトパルボウイルスB19、サイトメガロウイルス(CMV)、梅毒の血清スクリーニング検査を行っています(HBV、HCV、HIVは核酸増幅スクリーニング検査も実施しています)。
また、E型肝炎(HEV)好発地域の北海道は、HEV核酸増幅スクリーニング検査も施行しています。
その結果、輸血感染症は近年激減しています(副作用頻度)。
なお、平成16年4月1日以降使用の生物由来製品を介した感染等で健康被害が生じた場合、生物由来製品感染症等救済制度による医療費・障害年金等の給付が受けられます。
(続く)輸血後鉄過剰症:輸血の副作用とその対策(6)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17
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アレルギー/アナフィラキシー:輸血の副作用とその対策(4)
溶血性副作用:輸血の副作用とその対策(3)より続く。
発熱性非溶血性輸血副作用・アレルギー反応
発熱や尋麻疹の報告は約1%ですが、実際は血小板輸血後頻発します(副作用頻度)。
アセトアミノフェン(血小板機能に影響しません)や少量ステロイド(ヒドロコルチゾンナトリウム100-300 mg程度)、抗ヒスタミン剤(発熱のみには不要)を治療や予防に用います。
アナフィラキシーショックなど重症アレルギー反応の可能性があれば(重篤副作用の診断)、ただちに輸血を中止します。
アナフィラキシーショック
通常輸血後10分以内に起きます。
血圧低下や呼吸困難など(重篤副作用の診断)からアナフィラキシーショックが疑われれば、輸血を中止し、アドレナリン0.3 mgを筋注します。
アレルギー症状が軽いと、輸血関連急性肺障害(tranfusion-related acute lung injury:TRALI)とまぎらわしいことがあります。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
| 輸血学
溶血性副作用:輸血の副作用とその対策(3)
重篤副作用の診断:輸血の副作用とその対策(2)より続く。
はじめに
輸血副作用(表:
副作用頻度)の多くは軽症にとどまりますが、重篤な副作用(表:
重篤副作用の診断)への備えも必要です。
特に、
ABO不適合輸血による急性溶血と
アナフィラキシーショックは通常輸血後10分以内に起こり、迅速かつ適切な治療が求められます。
輸血を実施する病棟や外来では、目立つ場所への緊急対応マニュアル掲示が望ましいです。
また、以下の
輸血事故防止の基本事項も含め、平素のスタッフ教育も必要です。
・1患者1回毎の輸血準備・実施
・患者、血液製剤、製剤伝票、交差適合票間のダブルチェック
・輸血開始後5分間の患者観察、15分後・終了後の患者確認
本シリーズでは、代表的な輸血副作用と対応をまとめました。
急性溶血性副作用
輸血後24時間以内に起こる溶血反応を指しますが、大半はABO不適合輸血直後の血管内溶血です(表:
重篤副作用の診断)。
死亡率は約20%ですが、ABO不適合輸血量50 mL以下なら回復が期待できます。
・Janatpour KA, Kalmin ND, Jensen HM, et al: Clinical outcomes of ABO-incompatible RBC transfusions. Am J Clin Pathol 129:276-81, 2008
・藤井靖彦(研究代表者): 輸血副作用対応ガイド. 日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会, 2011
ABO不適合輸血が疑われれば直ちに輸血を中止しますが、急速輸液に備え、静脈留置針は抜去しません(下表)。原則としてICU管理とします。
表:ABO不適合輸血への対応
1)輸血中止
・看護師は医師の指示を待たない
・輸血セットは交換するが静脈留置針は残す
・可能なら残存血を注射器で吸引除去
・乳酸または酢酸リンゲル液(すぐ用意できなければ生食も可)を急速静注(目安は1,500ml/時)
2)バイタルサイン監視
3)次に起こるショック状態や播種性血管内凝固症候群、急性腎不全に備える
4)ICU管理
5)輸血によってのみ救命しうる病態なら、適合血のみを慎重に輸血
6)輸血していた製剤は、血液型と輸血量再確認のため保存
遅発性溶血性副作用
輸血後24時間以降に起こる溶血反応を指します。
主に不規則抗体による血管外溶血で、輸血5-10日後に発熱や黄疸、溶血を来たします。
過去の輸血や妊娠で前感作を受けていることが多いです。
通常無治療で良いですが、腎障害や重症溶血に至ることもあります。
(続く)アレルギー/アナフィラキシー:輸血の副作用とその対策(4)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07
| 輸血学
重篤副作用の診断:輸血の副作用とその対策(2)
副作用頻度:輸血の副作用とその対策(1)より続く。
<重篤な輸血副作用と診断>
検査項目(参照)
(A)Hb 2 g/dL以上低下、LDH 1.5倍以上上昇、Hp値低下、間接Bil1.5倍以上上昇、直接グロブリン試験陽性、交差適合試験陽性
(B)血液培養陽性
※ 診断基準に準拠
TRALI:transfusion-related acute lung injury(輸血関連急性肺障害)
TACO:transfusion-associated circulatory overload(輸血関連循環過負荷)
GVHD:graft-versus-host disease(移植片対宿主病)
PTP:post-transfusion purpura(輸血後紫斑)
藤井靖彦(研究代表者): 輸血副作用対応ガイド. 日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会, 2011
(続く) 溶血性副作用:輸血の副作用とその対策(3)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| 輸血学
副作用頻度:輸血の副作用とその対策(1)
<主な輸血副作用と頻度>
(続く)重篤副作用の診断:輸血の副作用とその対策(2)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36
| 輸血学
血液専門医テキスト:日本血液学会(編)
日本血液学会から、血液専門医テキストが発刊されました。
2011年10月の発刊で、まだ湯気がでている新刊です。
血液専門医を目指す人のみならず、臨床に携わる多くの医療関係者にとって必携の1冊ではないかと思います。
関連図書:分かりやすい血栓と止血の臨床:日本血栓止血学会(編)www.3nai.jp/weblog/entry/47498.html
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03
| 血液内科
トロンボモジュリン製剤(インデックス)
造血幹細胞移植後合併症:トロンボモジュリン製剤(8)より続く。
参考:リコモジュリン
【リンク】
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
| DIC
造血幹細胞移植後合併症:トロンボモジュリン製剤(8)
DICの治療:トロンボモジュリン製剤(7)より続く。
造血幹細胞移植後合併症に対するrTM療法
造血幹細胞移植後に発症する
血栓性微小血管症候群(thrombotic microangiopathy:
TMA)や、
類洞閉塞症候群(sinusoidal obstructive syndrome:
SOS)は、凝固異常も伴い致死率の高い合併症です。
近年、造血幹細胞移植後のSOSや生着症候群(engraftment syndrome)症例にrTM(
リコモジュリン)を投与し、凝固異常の改善や体重増加抑制効果を認めたとの報告があります。
Ikezoe, T. et al.: Bone Marrow Transplant., 45:783-785, 2010.
Ikezoe, T. et al.: Bone Marrow Transplant., 46:616-618, 2011.
造血幹細胞移植後は高サイトカイン状態にあります。
Nomura, S. et al.: Transplant. Immunol., 15:115-121, 2007.
そのため、内皮障害も顕著であるため、内皮細胞上のTM発現量が著減していることは容易に想像できます。
補充されたrTMによる抗凝固、抗炎症などの多面的効果が、SOSの進展あるいは予防効果を発揮するかどうかについては、今後の詳細な検討が必要と思われますが、大いに期待したい治療法です。
rTM製剤(
リコモジュリン)のように、抗凝固作用のみでなく抗炎症作用を兼ね備えたDIC治療薬は今までになく、非常に画期的な薬剤といえます。
造血器悪性腫瘍に合併したDICに対して使用しても、出血の助長も認めずDIC離脱率も良好です。今後、造血幹細胞移植の合併症にrTMが有効であるかどうの検討がなされることを期待したいと思います。
参考:リコモジュリン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13
| DIC
DICの治療:トロンボモジュリン製剤(7)
TM製剤の臨床試験:トロンボモジュリン製剤(6) より続く。
DICの三大基礎疾患は重症感染症、造血器悪性腫瘍、固形癌ですが、絶対数は圧倒的に敗血症が多く、次に造血器悪性腫瘍が続きます。
一方、DIC発症頻度は造血器悪性腫瘍が高く、特に急性前骨髄球性白血病(APL)では約7割の症例がDICを合併します。
DICの発症機序や病態は、基礎疾患によって異なります。
敗血症性DICでは、高HMGB1血症ならびに高サイトカイン血症をきたし、血管内皮細胞上のTMの発現は抑制され、さらに内皮細胞傷害によって血中に遊離した可溶性TMは好中球エラスターゼによって分解されます(関連記事:敗血症性DIC)
したがって、rTMの循環血液中への補充は抗凝固・抗炎症効果を発揮し、臨床試験でも証明された様にrTMは敗血症DICの第一選択薬として期待できます。
一方、造血器悪性腫瘍のDIC発症機序は上記とは異なっています。
急性前骨髄球性白血病(APL)のように白血病細胞表面上のアネキシンIIの高発現により線溶系が過剰に亢進する機序や、化学療法により組織因子を大量に含んだ腫瘍細胞が崩壊し血中に流入し凝固が活性化される機序などが考えられています。
造血器腫瘍DICでは、特に治療が繰り返されている場合は、抗癌剤による内皮細胞傷害が引き起こされているため、TMの発現低下や切断などが予測され、rTM(リコモジュリン)の補充はDIC治療に有効であると考えられます。
また、rTMはその作用機序や臨床試験結果からも出血の助長が少ない薬剤です。造血器悪性腫瘍DIC症例に対しても使用しやすい薬剤と考えられます。
造血器悪性腫瘍DICに対するrTM療法の実際
rTMの投与方法は、半減期が20時間と長いため1日1回380U/kgを30分程度で点滴静注します。
ただし、腎排泄であるため重篤な腎機能障害例には130U/kgに減量する必要があり、また、投与時点で明らかな出血を認める場合は慎重投与とすべきです。
血中のPC濃度が10%以下に低下している患者では、rTMの薬効が減じる可能性がありますので、改善がみられない場合は他剤への変更を考慮します。
第III相臨床試験でPC濃度が10%以下の患者4例は、いずれもDICから非離脱でした。
参考:リコモジュリン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36
| DIC
TM製剤の臨床試験:トロンボモジュリン製剤(6)
抗炎症作用:トロンボモジュリン製剤(5)より続く。
遺伝子工学的手法で作製された遺伝子組換えTM製剤(recombinant thrombomodulin:rTM) は、TMの活性部位を含む細胞外部分の全ての領域を含んでいます。
したがって、rTM(リコモジュリン)はTMの持つ抗凝固作用、抗炎症作用両者を有しているわけで、この多面的な作用を利用してDICの新たな治療戦略の一つとして登場したわけです。
rTMの第III相臨床試験(Saito, H. et al.: J. Thromb. Haemost., 5:31-41, 2007)は、造血器悪性腫瘍および重症感染症を基礎疾患としたDIC(n=234)を対象として、rTM(0.06 mg//kg/日)または低用量未分画ヘパリン(8 U/kg/時間)を6日間投与し、二重盲検無作為にて行われました。
その結果、rTM投与群でのDIC離脱率が66.1%であったのに対して、ヘパリン投与群でのDIC離脱率は49.9%と、ヘパリン群に対して初めて非劣性が検証されました。
また、rTM投与群では出血症状の改善が有意に高率でした(p=0.0271)。
出血症状に関連する有害事象は、rTM投与群では43.1%に対して、ヘパリン投与群では56.5%と有意差を認めています(p<0.0487)。
TMは、トロンビンの存在下で初めて有効な抗凝固活性を示すため、出血の副作用が少ないと考えられます。
このように、DICに対するrTMの投与は、DIC離脱率そして出血の軽減の観点から優れた効果を発揮することが示されたわけです。
参考:リコモジュリン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44
| DIC
抗炎症作用:トロンボモジュリン製剤(5)
TMの線溶系への作用:トロンボモジュリン製剤(4)より続く。
APC/EPCR/PAR-1システムによる抗炎症・細胞保護作用
活性化プロテインC(APC)は血管内皮のendothelial PC receptor(EPCR)に結合しますと、プロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptor-1: PAR-1)を活性化し、抗炎症効果・細胞保護効果を示します。
PAR-1の活性化により、血管内皮細胞での接着分子(E-selectin、VCAM-1、ICAM-1)などの発現阻害、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-8、TNFαなど)の産生阻害、好中球の活性化阻害を示します。
Macias, WL. et al.: Crit. Care, 9 Suppl 4:S38-S45, 2005.
Toltl, LJ. et al.: J. Immunol., 181:2165-2173, 2008.
また、炎症による障害から壊死におちいった細胞はヒストンを遊離し血管内皮細胞を障害しますが、APCはヒストンを分解することで抗炎症作用を発揮するという報告もあります(参考:凝固と炎症(ヒストン・敗血症・トロンボモジュリン・プロテインC))。
Xu, J. et al.: Nat. Med., 15:1318-21, 2009.
さらに、APC/EPCR/PAR-1システムは細胞内におけるsphingosine kinase 1(SphK1)を活性化し、生成されたsphingosine-1-phosphate(S1P)の細胞外への遊離を介してSIP受容体1(S1P1)が活性化され、血管内皮細胞の抗アポトーシス、抗炎症作用を発揮し、細胞保護作用へとつながっていきます(参考:敗血症と凝固・DIC/抗炎症効果)。
Danese, S. et al.: Blood, 115:1121-1130, 2010.
TMによる直接的な抗炎症作用
high mobility group box-1 protein 1 (HMGB1)の循環血液中への放出は臓器障害を引き起こし、致死性因子として注目されています。
TMはレクチン様ドメインにこのHMGB1を吸着・中和させ、さらにEGF様ドメイン4-6に結合したトロンビンによって分解・失活します。
Abeyama, K. et al.: J. Clin. Invest., 105:1267-1274, 2005.
Ito, T. et al.: Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 28:1825-1830, 2008.
また、リポポリサッカライド(LPS)もこのレクチン様ドメインに吸着されるとの報告があり、TMは直接的に抗炎症作用を示します。
Shi, CS. et al.: Blood, 112:3361-3670, 2008.
参考:リコモジュリン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
| DIC
TMの線溶系への作用:トロンボモジュリン製剤(4)
TM/APCによる凝固阻害作用:トロンボモジュリン製剤(3)より続く。
線溶系への作用—線溶促進、抗線溶作用
活性化プロテインC(activated protein C:APC)は、プラスミノゲンアクチベータ・インヒビター-1(PAI-1)を抑制し、線溶促進作用を示します。
一方、トロンビン—TM複合体は、線溶阻止因子thrombin activatable fibrinolytic inhibitor (TAFI)を活性化して過剰な線溶亢進状態を制御する方向にも作用します。
ただし、APCによるFVaとFVIIIaの失活によりトロンビン形成量が低下しますと、TAFIの活性化は抑制されます。
参考:リコモジュリン
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
| DIC
TM/APCによる凝固阻害作用:トロンボモジュリン製剤(3)
TMと血管内皮細胞:トロンボモジュリン製剤(2) より続く。
TM/APCによる凝固阻害作用
トロンビンはトロンボモジュリン(TM)のEGF様ドメイン5-6に結合し、直接不活化されます。
TMに結合したトロンビンは複合体を形成し、EGF様ドメイン4に結合しているPCを活性化して活性化PC(activated protein C:APC)に転換します。
APCの一部はendothelial PC receptor(EPCR)から遊離してリン脂質膜に結合し、活性化第V因子(FVa)と活性化第VIII因子(FVIIIa)を失活化して凝固反応を制御します。
(続く) TMの線溶系への作用:トロンボモジュリン製剤(4)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18
| DIC
TMと血管内皮細胞:トロンボモジュリン製剤(2)
DICの治療:トロンボモジュリン製剤(1)より続く。
上図に示しますように、トロンボモジュリン(thrombomofdulin: TM)は血管内皮細胞上に発現している糖蛋白質で、以下の5つの領域から構成されています(参考:リコモジュリン)。
・NH2末端レクチン様ドメイン
・EGF様ドメイン1-6
・O型糖鎖結合ドメイン
・細胞膜貫通ドメイン
・細胞質内ドメイン
1) Gomi, K. et al.: Blood, 75:1396-1399, 1990.
2) Hayashi, T. et al.: J. Biochem.,108:874-878, 1990.
3) Hayashi, T. et al.: J. Biol. Chem., 265:20156-20159, 1990.
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08
| DIC
DICの治療:トロンボモジュリン製剤(1)
現在使用可能なDICの治療としては、以下に示すような薬剤があります(<DICの治療>)。
今回シリーズのテーマであるトロンボモジュリンの遺伝子組換え型製剤(リコモジュリン)の臨床現場への登場は、DICによる死亡率の低下に寄与するものと期待されます。
本シリーズでは、内科領域、特に造血器関連疾患に合併したDICを含めて、遺伝子組換えトロンボモジュリン(recombinant thrombomodulin:rTM)製剤治療について紹介したいと思います。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03
| DIC
寺崎靖先生(近況報告):富山市立富山市民病院 血液内科
富山市立富山市民病院の外観です。奥に見える茶色の外壁の建物が新設された富山市・医師会 急患センターです。
富山市・医師会 急患センターの外観です。富山市立富山市民病院とは別の建物になりますが、通路によって同院と接続されており、風雨を気にせず当院へレントゲンなどの検査に行くことができます。
金沢大学第三内科(血液内科)出身で、現在、富山市立富山市民病院 の血液内科部長の寺崎靖先生から、同門会報用の原稿をいただきました。
近況報告(富山市立富山市民病院 血液内科 寺崎靖先生<平成5年入局>より)
富山市は、平成17年4月に(旧)富山市、大沢野町、大山町、八尾町、婦中町、山田村、細入村の7市町村が合併し、新しい「富山市」が誕生、人口421,890人となり、また、全国の都道府県庁所在地の中では2番目に広い総面積を持つようになりました。
富山県の約1/3の面積を占め、1つの市町村が県に占める面積の割合としては全国一となっています。平成18年4月には、全国初の本格的LRT「富山ライトレール」が開業し、平成20年7月には、国の「環境モデル都市」(当時は全国で6都市の1つ<現在は13都市>)に選定されました。
さらに、平成21年12月には、駅前と中心部を巡回する「富山市内電車環状線(愛称セントラム)」が開業するなど、ここ数年は激変とは言わないまでも、着実に変化してきていることは間違いありません。
富山市立富山市民病院は、昭和21年、富山市大手町に産声を上げました。昭和58年に現在の今泉に新病院が完成し、ヘリポートも開港しています。以前は五福という所にも分院がありましたが、今は閉院となっています。
また、平成18年には五福から当院の近くに富山市立看護専門学校が移転してきました。
病床数は595床(一般病床539床、精神病床50床、感染病床6床)で、平成21年4月には緩和ケア病棟も開設しました。これは富山県内では4番目の規模となっており、富山県東部の中核的な医療機関の1つを担っています。
平成20年には売店も一新し、新たにコーヒーショップもオープンするなどアメニティーも充実してきています。
平成23年9月現在の医師数は、研修医も含め90人で、うち内科医師数は健康管理科も含め23人となっています。
平成22年度の延患者数は、外来が260,493人(前年度比1.06倍)、入院が169,804人(前年度比1.02倍)といずれも前年度より増加しています。
また、平成14年4月に臨床研修病院、平成19年1月に地域がん診療連携拠点病院、平成20年6月に日本医療機能評価機構認定病院(一般500床以上Ver.5)、平成20年10月には富山県初の地域医療支援病院に承認され、さらにこの4月から地方公営企業法の全部適用病院となりました。
特筆すべきは、平成22年度の病院事業収益と病院事業費用の収支差額が、前年度比9億7百万円増となり、当院経営改善計画の目標を大きく上回る3億8千万円余りの単年度黒字を達成したことです。診療報酬改定の影響もあったとは言え、それ以上にわれわれが努力した成果と考えています。
院内の診療システムに関しては、平成18年1月には電子カルテシステムが本稼動、平成20年7月にはDPCが導入、同年12月には7対1看護が実施されました。
特にDPCの導入により、各種クリニカルパスがさらに充実してきています。
また、「病院の総合力」とも言うべきDPCの機能評価係数IIのランキングが今年度は、1449病院中141位であり、これは、北陸三県では3県立病院に次ぐ4番目、県内で2番目という好位置につけています。
当院は、富山医療圏での二次救急医療機関として輪番救急にも当たっています。しかし、患者が軽症であっても、二次救急医療機関を受診する「コンビニ受診」患者が増え、われわれ勤務医の勤務環境の悪化を招いています。
富山市には富山市が富山市医師会に委託している「富山市救急医療センター」があり、開業医の先生方が一次救急にあたっておられますが、施設の老朽化と市民の要望に応えるには医療機器が不十分であることがネックとなっていました。
そこで、当院の医療機器を活用して検査体制の充実を図ることにより、二次救急医療機関への直接来院を減らすとともに、富山医療圏における二次救急医療機関との的確迅速な連携を構築する目的で「富山市・医師会 急患センター」と名称を変更し当院敷地内に併設され、10月1日に開設いたしました。
これにより、一次救急と二次・三次救急との役割が明確化され、われわれの負担も軽減されることが期待されています。しかし、当院に併設されるとは言え、輪番制度は堅持されるため(例えば、当院が非輪番日であった場合、急患センターからの紹介患者さんは当院には紹介されず、当日の輪番病院に紹介されることとなります)、体制が円滑に運営されるためには、市民の皆さんの理解と協力が今まで以上に必要となってきます。現在も富山市医師会が中心となってポスターなどで市民の皆さんに啓蒙活動を行っているところです。
さて、最近の嬉しいニュースと言えば、何と言っても研修医に関することに尽きます。新臨床研修医制度が始まった平成16年度からそれほど多くはないものの、継続して研修医に来ていただいていましたが、平成20年度には何と0人という不名誉な事態に陥ってしまいました。
しかし、臨床研修センターのスタッフの頑張りで、平成22年度は2人、そして今年度は何と5人もの研修医に来ていただきました。「そんなに少ないんけ〜」との声も聞こえてきそうですが、われわれとしては十分に満足しています。
現在、6人の研修医が一生懸命働いており、皆さん、明るく元気でまじめ(?)、そして飲み会には必ず出席、巷でよく耳にする「もう、最近の研修医は・・・」という不満は全くありません。このうちの多くが第三内科に入局してくれることを大いに期待しています。
当院の内科は、消化器内科(4人)、循環器内科(5人)、内分泌代謝内科(3人)、腎臓内科(4人)、神経内科(2人)、呼吸器内科(3人)、血液内科(1人)、健康管理科(1人)で構成されています(計23人)。毎週火曜日に内科カンファレンスがあり、また第2火曜日には内科CPCを行っており、活発に議論しています。
第三内科のメンバーですが、呼吸器内科は、中村裕行先生(昭和55年5月19日〜現在)、石浦嘉久先生(平成14年4月1日〜現在)、山本宏樹先生(平成19年4月1日〜現在)、血液内科は、寺崎(平成13年4月1日〜現在)の計4人が常勤として働いています。
医局長の山崎宏人先生には毎週水曜日の血液内科外来を手伝っていただいており、とても助かっています。
病棟は呼吸器内科・血液内科ともに西病棟7階で、大学病院と同じ構成となっています。全員が病棟・外来・救急業務などに多忙を極めています。
中村先生は、塵肺検診や「とやまレントゲン読影会」も担当されています。温厚な性格でいらっしゃいますが、内科カンファレンスの時には鋭い質問をされ、主治医が答えに窮することもしばしばです。われわれ第三内科のメンバーがまとまっていけるのは先生のお陰だと常々思っています。
石浦先生は、平成17年5月から開設された外来治療室をまとめられています。先生およびスタッフのご努力により、その延患者数は年々増加、平成22年度は2,200人超にまで増加しました。また、先般の東日本大震災では3月21日から26日までの6日間、岩手県釜石市に行かれ現地で活躍されました。その時の様子を内科カンファレンスで報告されたのですが、とても生々しく、報道で知るよりその何十倍、いや何百倍悲惨な状況であったかを思い知らされました。
山本先生は、気さくで真面目な性格から他の内科医師からはもちろん、他科の医師からの相談が絶えません。また、研修医の指導にも非常に熱心で、私も研修医であれば先生に指導してもらいたいと思わせるほどです。重症な呼吸器疾患患者を診ることが多く、時々先生の身体が心配になるほど頑張っています。
さて、私はというと、何とか1人で血液内科をやっていますが、困難な症例は、なるべく複数の先生方のご意見も伺いながら治療に反映したいと考えており、他の病院の先生方のご協力が不可欠となっています(特に金沢大学、富山県立中央病院、富山赤十字病院の血液内科の先生方にはとても感謝しています)。また、内科のなかでは剖検・CPC係と福利厚生係を担当しています。
平成22年度の内科剖検体数は4体でしたので、日本内科学会認定教育病院を維持していくためには、今年度は何としても認定基準の1つである10体以上を取らなければならず、気合が入っています(ご存じのように2年連続認定基準を満たさない病院は認定保留、認定取消の対象となります)。福利厚生係(要するに宴会係)は、まあ、得意とするところですので何の問題もありません。
病院紹介と言うより、後半は当院の第三内科のメンバーの近況報告となってしまいました。ご容赦ください。
今後も第三内科同門会の先生方にはお世話になることと思います。その際には何卒よろしくお願いいたします。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08
| その他
胎児期および新生児期の血友病治療ガイドライン(後半)
論文紹介を続けさせていただきます。
Br J Haematol に報告された胎児期および新生児期の血友病治療ガイドライン(前半)の続きです。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「胎児期および新生児期の血友病治療ガイドライン(後半)」
著者名:Chalmers E, et al.
雑誌名:Br J Haematol 154: 208-215, 2011.
<論文の要旨>
6.頭蓋内出血と頭蓋外出血の早期診断・予防
• 臨床的に頭蓋内出血(または他の出血)が強く疑われた場合には、凝固因子製剤を速やかに投与すべきである(画像診断による確認まで保留してはいけない(1C)。
7.頭蓋内出血の放射線学的診断
• 全ての重症および中等症血友病において、娩出前に頭蓋超音波検査を行うべきである(2C)。
• 超音波検査は硬膜下血腫の検出感度が低いために、超音波検査が正常であっても症状のある新生児では脳MRIまたはCTを行うべきである(1C)。
8.凝固因子製剤による新生児の予防治療
• 血友病確診後に、出血リスクの高い新生児では短期間の予防補充療法を行うべきである。例えば、出産児に損傷があった場合、機器(とくに吸引分娩や鉗子分娩)を用いた分娩、娩出に時間を要した場合などである(1C)。
• 早産の場合も短期間の予防補充療法を行うべきである(1C)。
9.診断の情報開示
• 血友病新生児の両親に対して、診断や出血症状の特徴などについて、退院前に情報提供すべきである(2C)。
• 退院前に血友病専門家による経過観察がなされるように手配すべきである(2C)。
10. 女性新生児のキャリアー
• 血友病キャリアまたはキャリアの可能性のある新生女児では出血の心配はなく、通常の産科的および新生児の対処法でよい(1C)。
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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
| 出血性疾患
胎児期および新生児期の血友病治療ガイドライン(前半)
論文紹介を続けさせていただきます。
胎児期および新生児期の血友病治療ガイドライン(前半)を紹介させていただきます。
Br J Haematol に報告されたガイドラインです。このブログ記事ではポイントのみを紹介させていただきます。
是非とも、原文にあたっていただければと思います。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「胎児期および新生児期の血友病治療ガイドライン(前半)」
著者名:Chalmers E, et al.
雑誌名:Br J Haematol 154: 208-215, 2011.
<論文の要旨>
1.出生前の注意
• 血友病センターと密接に連絡をとり合って血友病胎児または可能性のある胎児であることに注意を払う(1C)。
• 文書で治療計画書を準備する。この計画書は、熟練したチームからの情報を反映すべきであるし、母体および新生児の止血管理について記載されるべきである(1C)。
2.遺伝子スクリーニングと胎児の性別
• 妊娠10週時の母体採血(Y染色体特異的なDNAシークエンスをチェック可能)または18〜20週時の超音波検査により、性別を確認すべきである(1C)。
• 血友病男性胎児であるかどうかにより出産時の対処法が変わると予想される場合には、妊娠後期に羊水穿刺が考慮されることもある(2C)。
3.出産時の注意
• 産科的および止血学的要因により出産法の情報を提供する。血友病胎児であること自体は経膣分娩を適応外とはならない(1C)。
• 新生児の頭蓋内出血のリスクを低下させるために帝王切開が考慮されることがある。この場合、胎児の血友病の状態と母体の状態を考えて、個々の症例毎に検討する(2C)。
• 吸引分娩や鉗子分娩は出血のリスクを上昇させるので避けるべきである(1A)。
• 観血的な分娩モニタリングは避けるべきである(1C)。
• 分娩の対処法は、必ず専門家にコンサルトすべきである(1C)。
4. 新生児の血友病診断
• 出産後できるだけ早く臍帯血を用いて血友病の診断を行う(1C)。
• 結果は、年齢(妊娠週)の一致した基準値と比較して判断されるべきである(1B)。
• APTTの結果の如何にかかわらず、臍帯血を用いてFVIII/IX活性の測定を行うべきである(IC)。
• 血友病が否定されるまでは、ビタミンKの筋注を保留する。診断が遅れたり、血友病が確診された場合には、経口的にビタミンKを投与する(1C)。
5.血友病新生児の止血治療
• 血友病A/Bに対して遺伝子組換えFVIII/IX因子製剤が治療選択肢となるため、スタンバイすべきである(1C)。
• 新生児の凝固因子活性が理想値に達するために高用量の凝固因子製剤を必要とするかどうか、血中半減期が短いかどうかについて、新生児期間中に補充療法のモニタリングが行われるべきである(2B)。
• 血友病の確定診断前に止血治療が必要になった場合には、FFP15〜25ml/kgが考慮される(1C)。
• 血友病新生児の治療としてデスモプレシンは投与されるべきでない(1C)。
• 他の新生児疾患スクリーニングのための足踵からの採血や静脈採血を省略すべきではない(1C)。
(続く)胎児期および新生児期の血友病治療ガイドライン(後半)へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
| 出血性疾患
糖ペグ化遺伝子組換え第IX因子製剤(血友病Bに対して)
論文紹介を続けさせていただきます。
今回の論文は、Blood に報告された、糖ペグ化遺伝子組換え第IX因子製剤の薬理動態」(血友病B患者に対する最初の臨床試験)に関するものです。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「糖ペグ化遺伝子組換え第IX因子製剤の薬理動態」(血友病B患者に対する最初の臨床試験)
著者名:Negrier C, et al.
雑誌名:Blood 118: 2695-2701, 2011.
<論文の要旨>
血友病Bに対しては第IX因子(FIX)製剤による補充療法が推奨されています。
N9-GPは、糖ペグ化することで半減期を長くした遺伝子組換え第IX因子製剤です。
治療歴のある血友病B16例において、従来使用しているFIX製剤1回投与し、その後N9-GPが1回同用量(25、50 or 100U/kg)で投与されました。
その結果、インヒビター出現は0例でした。
1例ではN9-GP投与中に過敏症状が出現したために薬理動態の解析から除外しました。
血中半減期は93時間と従来の製剤の約5倍でした。
N9-GPの生体内回収率は従来の遺伝子組換え製剤や血漿由来製剤と比較して、それぞれ94%、20%高い結果でした。
以上、N9-GPは1回の輸注により出血エピソードに対して有効であり、輸注投与回数を減らすものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06
| 出血性疾患
後天性血友病Aの治療(総説)
論文紹介を続けさせていただきます。
今回の論文は、J Thromb Haemost に報告された、後天性血友病に関するreview論文です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「後天性血友病Aの治療」
著者名:Collins PW.
雑誌名: J Thromb Haemost 9 Suppl 1: 226-235, 2011.
<論文の要旨>
後天性血友病は、第VIII因子に対する自己抗体が出現する自己免疫性疾患です。
出血症状の出現の仕方は様々ですが、患者はインヒビターが消失するまでは致命的な出血をきたす危険性があります。
治療の基本は、以下の通りです。
(1)迅速で適格な診断
(2)止血管理
(3)基礎疾患の有無の精査
(4)免疫抑制療法によるインヒビターの除去
仮に出血症状がない場合であっても必ず専門家のもとで治療されるべきです。
本疾患に関する文献は多数あるものの、エビデンスとなるような臨床試験はほとんどなく、治療ガイドラインも専門家の意見に依存しているのが現状です。
止血治療目的には、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)や活性型プロトロンビン複合体製剤が同程度に有効であり、第VIII因子濃縮製剤やデスモプレシンよりも有効です。
診断後には速やかに免疫抑制療法を行う必要があります。
通常、ステロイド単独治療またはステロイド&エンドキサン併用療法がよく行われます。
近年、リツキサンの使用頻度が増えていますが、効果、副作用の面で従来の治療よりも優れているかどうかはエビデンスがありません。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45
| 出血性疾患
外傷(凝固異常)へのプロトロンビン複合体製剤とDIC
論文紹介を続けさせていただきます。
出血性凝固異常の病態に対してプロトロンビン複合体製剤(PCC)の頻用頻度は増加していますが、外傷に対するPCC使用に関する臨床試験はほとんどなく、特に安全性に関する情報は欠落してます。
今回紹介させていただく論文は、鈍的肝損傷と凝固異常を有するブタモデルに対して、プロトロンビン複合体製剤を投与した場合の、効果、副作用に関して検討しています。
Bloodからの論文です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「高用量プロトロンビン複合体製剤は、鈍的肝損傷と凝固異常を有するブタモデルにおいて DICを誘発する」
著者名:Grottke O, et al.
雑誌名:Blood 118: 1943-1951, 2011.
<論文の要旨>
出血性凝固異常の病態に対してプロトロンビン複合体製剤(PCC)の頻用頻度は増加していますが、外傷に対するPCC使用に関する臨床試験はほとんどなく、特に安全性に関する情報は欠落してます。
著者らは純的肝外傷と凝固異常を有するブタモデルを用いて検討しました。
麻酔されたブタ27頭において、70%の血液をhydroxyethyl starch 130/0.4とリンゲル乳酸溶解液で置換することで凝固異常が誘発されました。
赤血球は回収されて再度輸注しました。
外傷10分後に、ブタモデルはPCC(35 or 50 IU/kg)または生食の投与を受けました。
トロンボエラストメトリー、トロンビン形成試験を含む凝血学的パラメーターが、2時間追跡されました。
塞栓や肝障害の有無につき、肉眼的、病理学的に評価されました。
その結果、出血量および死亡率はPCC投与群で有意に低い結果でした(ただし用量依存性はありませんでした)。
PCC 50IU/kg投与群では全てのブタに血栓塞栓症がみられ、44%ではDICの所見がみられました。肝障害は全頭において同程度でした。
以上、PCC 35IU/kgであれば安全に凝固異常および失血を軽快させますが、高用量(50IU/kg)は血栓塞栓症およびDICのリスクを増加させるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44
| 出血性疾患
血友病A & von willebrand病とデスモプレシン(DDAVP)
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、血友病Aおよび von willebrand病に対するデスモプレシン(DDAVP)の安全性と有効性を調査しょた結果の報告です(参考:止血剤の種類と疾患)。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「軽症・中等症血友病AおよびType1・Type2A von willebrand病に対するデスモプレシン注4協和の使用成績調査」
著者名:中目暢彦、他。
雑誌名:日本血栓止血学会誌 22: 194-201, 2011.
<論文の要旨>
軽症・中等症血友病AおよびType1・Type2A von willebrand病患者を対象に、デスモプレシン注4協和の市販後使用実態下における安全性と有効性を確認することを目的として、レトロスペクティブに国内使用成績調査を実施しました。
10年間の調査期間中に全国83施設より234例が本調査にエントリーされました。
安全性解析対象症例212例中、副作用は66例(31.13%)、139件に認められた。
頻度順に顔面潮紅39件(18.4%)が最も高く、次いで熱感27件(12.7%)、のぼせ(感)18件(8.5%)、頭痛13件(6.1%)、乏尿12件(5.7%)、嘔気7件(3.3%)、口渇7件(3.3%)等でした。
その他、痙攣が2件に認められました。そのうち1件は、輸液療法が適切に行われていれば痙攣発作に至らなかった可能性があり、本剤投与前後の輸液療法及び飲水摂取に十分注意する必要があると考えられた。
止血効果(有効率)は、血友病Aの軽症で65.2%、中等症で62.5%でした。
また、von Willebrand病のType1で93.1%、Type2Aで94.7%でした。
凝血学的検査改善度(改善率)は、血友病Aで76.5%、von Willebrand病のType1で85.7%、Type2で100%でした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 出血性疾患
インヒビター中和療法で手術の血友病B:活性型第VII因子製剤へ
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、インヒビター保有の血友病Bに対して、大手術が行われた症例の報告です。
第IX因子製剤による中和療法が行われていましたが、免疫応答反応により、第IX因子製剤が無効となったため、活性型第VII因子製剤(rFVIIa)に切り替えられています。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「インヒビター中和療法を用いて、左股関節全置換術を施行したハイレスポンダー血友病B」
著者名:小川吉彦、他。
雑誌名:臨床血液 52: 713-717, 2011.
<論文の要旨>
インヒビターを保有する血友病Bの患者に対して、左股関節全置換術を施行した症例の報告です。
症例は26歳男性。ハイレスポンダーの抗体を保有する血友病B患者です。左股関節の血友病性関節症に対して左股関節全置換術を施行しました。
術前の抗体価は、長年にわたり第IX因子製剤を使用していなかったため、入院時には1BU/mlと低下していました。
そのため手術時には第IX因子製剤による中和療法を行い、術中•術後の維持療法にも第IX因子製剤を使用しました。
術後7日目よりAPTTの延長を認め、免疫応答反応(anamnestic response)により、第IX因子製剤が無効となったと判断し、活性型第VII因子製剤に切り替えました。
術後の止血コントロールは良好であり、抗体保有の血友病B患者であっても、安全に大手術を行うことができることが示唆されました。
【リンク】
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07
| 出血性疾患
ロミプロスチム(トロンボポエチン受容体作動薬、ロミプレート)
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、ロミプロスチム(トロンボポエチン受容体作動薬、商品名ロミプレート)に関する論文の紹介です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「慢性ITP(成人日本人)に対するロミプロスチム治療(二重盲見無作為第3相臨床治験)」
著者名:Shirasugi Y, et al.
雑誌名:Int J Hematol 94: 71-80, 2011.
<論文の要旨>
ロミプロスチム(トロンボポエチン受容体作動薬、商品名ロミプレート)の、慢性ITP(成人日本人)に対する二重盲見無作為臨床治験が行われました。
ITP34例に対して、ロミプロスチム(n=22)またはプラセボ(n=12)が12週間投与されたました。
ロミプロスチムの投与は3μg/kg(1週間に1回)から開始されました。
主要評価項目は、血小板数の反応(血小板数5万/μL以上となるまでの週)としました。
対象となった症例では、過去に中央値4種類(1〜19種類)の治療を受けていました(摘脾術施行例44%を含む)。68%の症例では複数の併用療法が行われていました。
その結果、血小板数の反応がみられた中央値はロミプロスチム投与群では11週であったのに対し、プラセボ投与群では反応はみられませんでした。
ロミプロスチム投与のほとんどの症例(95%)で血小板数の反応がみられました。
救済治療が必要であったのは、ロミプロスチム投与群では9%に対して、プラセボ投与群では17%でした。
有害事象出現率は、ロミプロスチム投与群91%、プラセボ投与群92%と同程度でした。
ロミプロスチム投与群で高頻度(>10%)にみられた有害事象は、咽頭喉頭炎、頭蓋、末梢浮腫、背部痛、四肢痛でした。
以上、ロミプロスチムは日本人ITP症例に対して血小板数を有意に上昇させるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:44
| 出血性疾患
出産時出血
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、出産時出血に関する論文の紹介です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「出産時出血」
著者名:McLintock C, et al.
雑誌名: J Thromb Haemost 9: 1441-1451, 2011.
<論文の要旨>
出産前後の産科的出血が知られていますが、80%以上は出産後に起こります。
世界的には、産科的大量出血に伴う母体死は年間358,000人ですが、その25%は、産科的止血、観血的および全身的止血治療の失敗が原因です。
ほとんどの女性では明らかな出血危険因子を持っていないかも知れませんが、出産後出血(PPH)診療の第1歩は、危険因子のチェックです。
PPHの危険が高いと診断された場合には、熟練したスタッフがおり、緊急輸血が可能なセンターで出産すべきです。
産科における大出血の原因として多いのは播種性血管内凝固症候群(DIC)です。
PPHにおける大出血に対する輸血法は、他の病態に対する輸血法と同様ではありますが、症例によっては赤血球輸血量と血漿(フィブリノゲン製剤を含む)輸注量との比に留意が必要です。
PPHに対する遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)(商品名:ノボセブン)投与のタイミングにも注意する必要があります。
胎盤剥離や子宮破裂に起因する大出血時には子宮摘出術が推奨されます。
しかし、出血が持続する子宮弛緩では、子宮摘出術を行う前にrFVIIaを考慮すべきと考えられます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29
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成人血友病患者における心血管疾患の危険因子
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、成人血友病患者における心血管疾患の危険因子に関する論文の紹介です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「成人血友病患者における心血管疾患の危険因子」
著者名:Lim MY, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 22: 402-406, 2011.
<論文の要旨>
長寿化に伴って、血友病患者における心血管疾患(CVD)危険因子が増加するものと考えられています。
しかし、エビデンスに基づいた治療ガイドラインはありません。
著者らは、血友病患者におけるCVD危険因子の頻度および治療法について調査しました。
Mayo血友病センターに通院する成人血友病(35歳以上)58症例(2006.1.〜2009.10.15)が調査対象となりました。
CVD危険因子を有する頻度は、高血圧65.5%、糖尿病10.3%、喫煙12.5%、肥満19.6%でした。31%の症例では脂質に関する血液検査が行われていませんでした。
危険因子に対する治療としては、降圧剤が84.2%、高脂血症治療薬が12.1%で処方されていました。
喫煙者7人のうち4人は禁煙カウンセリングを受けており、肥満の11人のうち4人が生活改善指導を受けていました。
8症例(13.8%)がCVDを経験していました(心筋梗塞<MI>3例、冠動脈疾患2例、MIと脳梗塞の合併1例、脳出血2例)。
この8例のうちアスピリン治療が行われていたのは5例でしたが、1例では内服後に血友病の診断がなされ中止されました。
1例ではステント治療後に2剤の抗血小板療法が行われていましたが、鼻出血がみられたためクロピドグレルが中止されました。
このように、血友病患者では、年齢の一致した一般男性と同程度にCVD危険因子を有していました。
血友病患者においても、CVD危険因子のスクリーニングを行い、食事療法や薬物治療を行うことは重要であり、開業医、循環器専門家、血友病センター専門医の協力関係が必須と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19
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後天性第XIII因子欠損症(第XIII因子インヒビター)
論文紹介を続けさせていただきます。
今回は、後天性第XIII因子欠損症(第XIII因子インヒビター)に関する論文の紹介です。
関連記事:
先天性血栓性素因と病態、血友病、後天性血友病、抗リン脂質抗体症候群、止血剤の種類、臨床検査からみた血栓症、血液凝固検査入門、深部静脈血栓症/肺塞栓、rFVIIa
「出血性後天性第XIII因子欠損症(後天性血友病13)」
著者名:Ichinose A.
雑誌名:Semin Thromb Hemost 37: 382-388, 2011.
<論文の要旨>
血液凝固第XIII因子(FXIII)は、サブユニットAとサブユニットBからなる四量体として血中を循環しています。
FXIIIはトロンビンによって活性化され、フィブリンモノマーを架橋結合します。
先天性第XIII因子欠損症では、生涯にわたる出血傾向、創傷治癒遅延、習慣性流産、出産時の臍帯出血などがみらます。
一方、DIC、大手術、肝疾患、その他の疾患に起因する第XIIIの消費および産生低下はより高頻度にみられますが、出血症状をきたすことはほとんどありません。
日本では、最近FXIIIに対する抗体が出現して出血性FXIII欠損症(後天性血友病13)をきたす症例のコンサルトが増えています。
著者らは、厚労省研究班の活動を通して、FXIIIに対する抗体が出現した日本人21症例を確認しています。
この病態では凝固時間の延長はなく、血小板数の低下もないために、見逃されている症例も多いと考えられます。
臨床医は、出血症状を有する症例に遭遇した場合には、後天性血友病13の可能性も考えてFXIII活性の測定も行うべきと思われます。
後天性血友病13に対しては、通常FXIII濃縮製剤が有効です。
また、抗FXIII抗体を消失させるために免疫抑制療法を開始する必要があります。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:06
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