血栓性素因診断の流れ:臨床検査からみた血栓症(2)
深部静脈血栓症/肺塞栓の関連記事
臨床検査からみた血栓症(インデックスページ)
【血栓性素因の診断の流れ】
後の記事で血栓性素因の診断の大まかな流れを示したいと思いますが、まずは臨床症状と詳細な問診により、血栓性素因の可能性を予測し(以下の表)、さらにスクリーニング検査の結果を総合して診断を行います。
ーーーーーーーーーー
1. 年齢 : 40歳代以下の若年性発症か
2. 血栓症の種類 : 動脈血栓症か、静脈血栓症か
3. 発症部位 : 好発部位か、まれな部位か
4. 発症状況 : 術後、外傷後、長期臥床、ロングフライト、妊娠
5. 既往歴 : 血栓症を繰り返しているか(再発性)、習慣性胎児死亡などの既往があるか
6. 家族歴 : 若年性の血栓症があるか
7. 生活歴 : 薬剤(経口避妊薬、ホルモン補充療法)、喫煙
ーーーーーーーーーー
先天性血栓性素因の成因は多数提唱されていますが、その意義が確立されているものはそれ程多くはありません。
実際の臨床現場では、凝固制御因子であるアンチトロンビン(AT)、プロテインC(PC)、プロテインS(PS)の活性を測定しています。
これらの因子活性が正常の50%以下に低下した場合に、先天性欠損症を疑いますが、後天性に低下する要因をできる限り除外する必要があります。
たとえば、プロテインCは、半減期の短いビタミンK依存性凝固因子であるために、肝予備能低下やビタミンK欠乏症において、容易に血中活性が低下してしまいます。
最終的に遺伝子検査まで行い確定診断をする場合もありますが、遺伝子解析については他の記事(先天性血栓性素因)を参照していただければと思います。
一方、後天性血栓性素因の代表である抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断には、抗リン脂質抗体の検査が必須です。
その他、高ホモシステイン血症や高リポ蛋白(a)(Lp(a))血症も、血栓症との関連性が知られています。
また、悪性腫瘍患者では、静脈血栓塞栓症(VTE)(深部静脈血栓症/肺塞栓)を合併しやすく、中でも膵癌、卵巣癌、原発性肝癌、脳腫瘍などは発症頻度が高い腫瘍といわれています。したがって、血液検査のほかに内視鏡検査、画像学的検査を施行し、悪性腫瘍の検索を行う必要があります。
なお、糖尿病、高脂血症、高血圧などの動脈硬化性病変を基盤として発症した血栓症は、本シリーズでは血栓性素因には含めないものとしたいと思います。
【関連記事】
・血液凝固検査入門(図解シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
・播種性血管内凝固(DIC )治療
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血栓性素因:臨床検査からみた血栓症(1)
深部静脈血栓症/肺塞栓の関連記事は、こちらから。。
http://www.3nai.jp/weblog/entry/29524.html
臨床検査からみた血栓症(インデックスページ)
臨床現場において行う血栓性素因の検査の意義としては、以下の点が挙げられると思います。
1)若年性あるいは再発性血栓症の原因検索として行う。
2)術中・術後の静脈血栓塞栓症の発症予防のための術前検査として行う。
特に、2004年に「肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドライン」が発表されて以降、術前における血栓性素因の検査依頼は急増し、その重要性が認識されつつあります。
そこで、今回のシリーズでは、血栓性素因の原因検索を行う上での血液検査の注意点や臨床上の問題点などについて、記事にしてみたいと思います。
【関連記事】
・血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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大倉徳幸Dr(金沢大学 呼吸器内科)が奨励賞を受賞!
2009年11月14日
第11回日本咳嗽研究会(名古屋市)において、
当科(金沢大学 呼吸器内科)の大倉Drが奨励賞を受賞しました。
タイトル:
モルモットを用いたC線維およびAδ線維を介した咳感受性亢進機序に関する検討
【リンク1】
病棟医長の新企画:一言お願いいたします!<←クリック:シリーズ進行中です>
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気管支呼吸音、特発性肺線維症:金沢大学統合卒業試験
金沢大学 統合卒業試験問題のなかで、当科と関連のある問題解説を続けたいと思います。
今回は、呼吸器内科の領域です。
設問
右背部に気管支呼吸音が聴取されるのはどれか。
a 気胸
b 胸膜炎
c 肺嚢胞症
d 気管支肺炎
e 大葉性肺炎
【解説】
肺の聴診の基本事項になります。
【正答】 e
設問
特発性肺線維症患者で認められない所見はどれか。
a ばち指
b ビア樽状胸郭
c 肝肺境界の上昇
d 吸気時のfine crackles
e 労作時酸素飽和度の低下
【解説】
疾患から想定される身体所見の知識になります。
【正答】 b
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慢性咳嗽の診療
非小細胞肺癌治療の最前線
肺がんに気づくサイン
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びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫:金沢大学統合卒業試験
金沢大学医学部で、先日、統合卒業試験が行われました。
そのなかで、当科と関連のある血液内科、呼吸器内科領域の問題解説を続けたいと思います。
設問
鼡径部リンパ節生検の結果、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫と診断された患者に対する治療前検査のうち、必要度の低いものはどれか。
a 全身の造影CT
b 下部消化管内視鏡検査
c FDG-PET
d 骨髄生検
e 可能性インターロイキン2レセプターの測定
【解説】
非ホジキンリンパ腫患者に対して治療開始前に行うべき検査を問う問題である。
a, c, d, eはリンパ腫の広がりを決定するためにいずれも必須の検査である。
一方、下部消化管検索については、腹部症状や便潜血反応がない限り行う必要はない。特にFDG-PETが普及してからは、消化管検索の必要性は低下している。
【正答】 b
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血液凝固検査入門(インデックスページ)ー図解ー
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:14
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蛋白漏出性腸症、しびれ:金沢大学統合卒業試験
金沢大学統合卒業試験問題のなかで、当科と関連のある血液内科、呼吸器内科領域の問題解説を続けたいと思います。
設問
60才女性。末梢のしびれ感のため来院した。
現病歴:
2年前に原因不明の蛋白漏出性腸症と診断されて以来、中心静脈栄養と低残渣食の少量摂取を続けている。3か月前より両膝から靴下型のしびれ感が出現。1か月前から両手首から末梢のしびれ感も出現したため、来院。
既往歴・家族歴:
特記すべきことなし。
現症:
意識は清明。身長155 cm、体重45 kg。体温36.1℃。脈拍78/分、整。血圧110/60 mmHg。眼瞼結膜は貧血様、眼球結膜に黄染なし。心音・呼吸音異常なし。腹部は平坦軟で肝・脾・腎を触知しない。下肢に浮腫を認めない。両側Babinski反射陽性で、振動覚低下と末梢の感覚鈍麻を認める。
検査所見:
赤血球数170万/μL、ヘモグロビン8.0 g/dL、ヘマトクリット24%、白血球数2800/μL、血小板数25万/μL、網赤血球2.8万/μL、血清鉄70μg/dL(女性基準60-173)、総鉄結合能250(女性基準246-410)、フェリチン80 ng/mL(女性基準5-120)、葉酸4.2 ng/mL(基準3.1以上)、ビタミンB12 84 pg/mL(基準180-914)、血清銅80 μg/dL(基準70-155)、総ビリルビン0.7 mg/dL、AST 9 IU/L、ALT 11 IU/L、LDH 320 IU/L(基準115-245)、クレアチニン0.3 mg/dL、総蛋白4.2 g/dL、CRP 0.1 mg/dL(基準0.3以下)。上部消化管内視鏡検査上異常はなかった。
1)本症例で認められる所見として不適切なものはどれか。
a 大球性貧血
b 末梢神経障害
c 舌炎・舌乳頭萎縮
d 過分葉好中球増加
e 内因子抗体陽性
2) 本症例に対するビタミンB12補充療法に関して、誤っているものはどれか。
a ビタミンB12補充療法開始数か月後から網赤血球が増加し始める。
b ビタミンB12補充療法開始後鉄欠乏になりやすい。
c ビタミンB12補充療法開始後白血球数の回復が期待できる。
d ビタミンB12補充療法開始後LDHの回復が期待できる。
e ビタミンB12補充療法開始後しびれ感の回復が期待できる。
【解説】
蛋白漏出性腸症に伴う吸収不良症候群とビタミンB12の補充不足により、ビタミンB12欠乏症を合併した症例です。ビタミンB12欠乏症は日常診療上比較的遭遇しやすく、診断および治療に関して理解を深めておく必要があります。
1) に関して、a) b) c) d)はいずれもビタミンB12欠乏症に伴う所見です。
内因子抗体は、悪性貧血によるビタミンB12欠乏症の場合にみられます。
2)に関して、ビタミンB12補充療法開始後造血は速やかに回復し、3-5日程度で網赤血球が増加し始めます。ですから、a) は誤りです。
赤血球造血が回復しますと、鉄利用が亢進し、鉄欠乏になりやすくなります。
したがって、ビタミンB12補充療法開始後は鉄剤の併用を考慮します。
ビタミンB12補充療法開始後、白血球数や、LDH(増加は主に無効造血を反映)の回復も期待できます。
しびれ感は一般にかなり回復が見込めます。ただし、神経障害や脊髄症状が長期間存在した場合は残存しやすいです。
【正答】
1)e
2)a
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:06
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血栓止血の臨床ー研修医のためにー(日本血栓止血学会より)
日本血栓止血学会では、「血栓止血の臨床ー研修医のためにー」が学会雑誌に連載されてきました。
文字通り、研修医のために書かれたシリーズです。
このシリーズの原稿は、学会ホームページ(HP)にもその都度アップされてきました。
しかも、学会員でなくても無料、パスワード不要でダウンロードすることができます。
研修医、医学生の皆さんも、私たちのサイトにご訪問いただいているのではないかと思います。
是非とも一度、以下サイトを訪れていただければと思います。
http://www.jsth.org/publications/index3.html
なお、以下のような目次になっています。
将来、単行本化される可能性があるとお聞きしています。とても楽しみにしているところです。
はじめに 池田康夫
1 臨床血栓止血学オーバービュー 斎藤英彦
2 出血傾向の鑑別 家子正裕
3 紫斑の種類と病因 冨山佳昭
4 術前検査としての凝血学的検査 - 出血と血栓症の対策 左近賢人
5 血友病の診断と治療 田中一郎、ほか
6 von Willebrand病の診断と治療 高橋芳右
7 後天性血友病・後天性von Willebrand病の診断と治療 嶋 緑倫
8 血友病症例の手術と止血管理 竹谷英之
9 ビタミンK欠乏症の臨床 白幡 聡
10 脳血管障害と抗血栓療法 内山真一郎
11 心疾患における抗血栓療法 後藤信哉
12 静脈血栓塞栓症の予防・治療ガイドラインについて 小林隆夫
13 DVTの病態と臨床 - DVTの診断, 治療について - 川崎富夫
14 DVT/PEの診断・治療マーカー(フィブリン関連マーカーを中心に) 松本剛史、ほか
15 整形外科領域におけるDVT 藤田 悟
16 肺血栓塞栓症の診断と治療 山田典一
17 頸動脈エコーの実際 尾崎俊也
18 下肢静脈エコーの実際 榛沢和彦
19 末梢動脈疾患(PAD)の診断と治療 鳥畠康充
20 抗血小板療法の実際 山本啓二
21 経口抗凝固薬の適正使用 笠井宏樹、ほか
22 ヘパリン類の適正使用 辻 肇
23 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断 松尾武文
24 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の治療 宮田茂樹、ほか
25 ITPの診断と治療 桑名正隆
26 ITPと妊娠中の問題点 山田秀人
27 本態性血小板血症の診断と治療 柏木浩和
28 HPSの病態・診断・治療 熊倉俊一
29 抗リン脂質抗体症候群の診断 渥美達也
30 抗リン脂質抗体症候群の治療 山崎雅英
31 抗リン脂質抗体症候群と不育症 杉浦真弓
32 血栓止血異常と皮疹の種類・鑑別 佐藤伸一、ほか
33 DICの病態・診断 朝倉英策、ほか
34 DICの治療 和田英夫
35 救急領域におけるDICの診断と治療 丸藤哲
36 TTPの診断と治療 藤村吉博
37 造血幹細胞移植後TMAの診断と治療 松本雅則
38 HELLP症候群 水上尚典
39 血小板数の低下する疾患・病態の鑑別 尾崎由基男
40 小児科で遭遇する出血性/血栓性疾患 瀧 正志
41 血小板と臨床検査 大森 司
42 網血小板/幼若血小板比率の臨床応用 小池由佳子、ほか
43 凝固・線溶と臨床検査 北島 勲
44 血液凝固異常症の臨床と検査 - 血栓性素因の診断 - 森下英理子
45 血栓止血関連マーカーの標準化 阪田敏幸
46 臨床検査室から臨床へ(データとともに情報を) 小宮山 豊
47 抗血栓療法と内視鏡下観血的処置(消化器内科の立場より) 和田伸一、ほか
48 抗血栓療法と観血的処置(循環器内科の立場より) 筒井 洋
49 産科領域における抗血栓療法の特殊性(産婦人科の立場より) 杉村 基
50 抗血栓療法と観血的処置(歯科の立場より) 杉易裕樹
51 血液凝固因子製剤(vWF, fibrinogen, factor XIII) 鈴木隆史
52 血液凝固因子製剤(AT, APC) 和田英夫
53 トロンボモジュリン製剤:リコモジュリン 鈴木宏治
54 血液凝固因子製剤(免疫グロブリン) 冨山佳昭
55 血管強化薬と局所止血薬 早川峰司、ほか
56 凝固促進薬(ビタミンK, プロタミン) 森 美貴、ほか
57 抗線溶薬 朝倉英策、ほか
58 DDAVP 柴田 優
59 線溶療法の考え方と治療薬剤 浦野哲盟
60 血栓性疾患を診た時の考え方 山崎雅英
61 先天性凝固阻止因子欠乏症 小嶋哲人
62 血小板機能異常症の診断と対応 金子 誠、ほか
63 血小板製剤 半田 誠
64 新鮮凍結血漿 高松純樹
【関連記事】
・血栓止血の臨床ー研修医のためにー
・播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
・播種性血管内凝固(DIC )治療
・血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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肺小細胞癌:金沢大学統合卒業試験
金沢大学統合卒業試験問題のなかで、当科と関連のある血液内科、呼吸器内科領域の問題解説を続けたいと思います。
今回は、呼吸器内科です。
設問
62歳の女性。
現病歴:
2ヶ月前から乾性咳嗽が出現するようになり、近医で鎮咳薬の投与を受けたが軽快しなかった。胸部単純X線写真で異常を指摘されたため、紹介、受診した。喫煙歴は、20本40年。
特記すべき既往歴はない。
現症:
意識は清明、身長156 cm、体重45 kg、体温35.8℃、脈拍84/分、整、血圧 140/82 mmHg、心音と呼吸音に異常はない。鎖骨上窩に直径3 cmの表面平滑で硬いリンパ節を触知した。
検査所見:
尿所見:蛋白(-)、糖(-)。
血液所見:赤血球414万/µl、Hb 13.9 g/dl、血小板27.3万/µl、白血球6,900/µl。
血清生化学所見:総蛋白6.8 g/dl、アルブミン4.2 g/dl、クレアチニン0.6 mg/dl、AST 21単位(基準40以下)、ALT 15単位(基準35以下)、LDH 192単位(正常176〜353)。
入院後の喀痰細胞診検査で小細胞癌と診断されたが、遠隔転移は認めなかった。全身状態は良好である。胸部CT写真を以下に示す。
1)この症例にもっとも有用と考えられる腫瘍マーカーはどれか。
a AFP
b 可溶性IL-2受容体
c ProGRP
d CYFRA
e PSA
2)この症例の治療法として最も適切なものはどれか。
a 気管支拡張剤
b 外科治療
c 放射線治療単独
d 抗癌剤治療単独
e 抗癌剤治療・放射線治療併用
【解説】
小細胞肺癌の診療に関する設問です。
小細胞肺がんは進行の早い癌として知られていますので、早急に検査を進め治療方針を立てる必要に迫られている状態です。
必要な検査を選択できること、治療方針が立てられることを目的とした設問となっています。
【正答】
1)c
2)e
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血清ナトリウム(Na)が低値:金沢大学統合卒業試験
先日行われました金沢大学医学部統合卒業試験のうち、当科と関連のある血液内科・呼吸器内科領域の問題(今回は呼吸器内科)の紹介と解説を続けたいと思います。
設問
73歳の男性。
全身倦怠を主訴に来院した。喫煙歴30本X 50年間。喀痰細胞診で小細胞肺癌を検出した。
入院時の検査所見で血清Na値が125 mEq/Lと低値を示した。食欲はあり、下痢、嘔吐などもなかったという。発熱はない。
この病態の診断に必須なものはどれか。3つ選べ。
a 尿たんぱく定量
b 尿中浸透圧
c 尿中Na濃度
d 血漿浸透圧
e クレアチニンクリアランス
【解説】
小細胞肺癌の症例で、ADH分泌不適切症候群(SIADH)が疑われます。
悪性疾患では、摂取不足やparaneoplastic syndromeなどで低Na血症がみられることは稀ではありませんが、その鑑別には注意が必要です。
この症例では全身状態が良好で、他の疾患を疑う所見がないことから、SIADHを疑うことは容易であろうと思われます。
その診断確立のために必要な検査を列記できるような設問となっています。
【正答】b, c, d
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慢性咳嗽の診療
非小細胞肺癌治療の最前線
肺がんに気づくサイン
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(13)
【病棟医長の新企画:一言お願いします(13)】
先日、医学部5年生K・L・M班のBSL打ち上げが催されました。血液内科・呼吸器内科のアフター5の雰囲気を少しでも感じてもらおうと、BSL担当の西辻先生が毎回セッティングしてくれます。
今回も大いに盛り上がりました。なんと、杉森先生のファンクラブが結成されたのです。
外来実習での鏡検指導に感激したのがきっかけらしいのですが、このまま、血液内科にも関心を寄せてもらえればと思います。
さて、今日の一言は、本年度クリクラ参加者のラストバッター、井美君です。
井美君は早くから血液内科領域に興味を抱いてくれていたようで、スタッフ一同、大変期待しています。
井美君、お待たせしました。一言お願いします!
ーーーーーーーーーーー
血液内科クリクラ
金沢大学医学部医学科6年 井美達也
クリクラの第三タームを血液内科で実習をさせていただきました。
もともと興味があったものの5年時には内科のBSLで血液内科を回れず、ずっと実習をしたいなと思っていました。そのため、今回のクリクラはとてもはりきっていたのですが、いざ始まってみると化学療法や感染症管理など馴染みがなく、正直わからないことだらけで・・・はじめはまったくついてゆけず6階までの階段を上るのがずいぶんしんどく感じられました。
実習中の日課としては、朝のクリクラミーティングと患者さんとお話+診察といったところで時間はたくさんありました。クリクラミーティングでもその日その場で持ち上がった内容を自由に調べ、その次のミーティングに発表するというものなので、調べるレベルも学生次第。
こんな感じなので空き時間にこそこそと図書館に行き、わからないことを調べては病棟までの階段を駆け上る、そんな毎日でした。そうしているうちに実習の最後のほうにはなんとなく自分のペースがみえてきて、朝のミーティングでも自分の受け持ったCMLと成人T細胞白血病のレビューを発表できました。また、BSLに回っていた後輩に彼の症例について質問を受けたりときに、さらっと知ったかぶりできました。
反省として積極的に文献を探したり、論文を読んだりというのはできなかったのですが、細川先生が担当の症例についていろいろな論文を検索して治療プランを立てているのをみて、絶対に必要な能力だし今後研修などをしてゆく中で良い目標だと感じています。
実習全体を通じてですが、先生がたの雰囲気がよく、とても話しやすい先生ばかりで非常に居心地がよかったです。3年目の細川先生はとくに身近で相談しやすかったですし、また宏人先生はもちろん、杉森先生や高見先生にもとても親しくしていただいてうれしかったです。
正直勉強不足であまり積極的な質問などはできませんでしたが、先生方といろいろと話ができて楽しく4週間を過ごすことができました。本当にありがとうございました。
ーーーーーーーーーーー
井美君、ありがとうございました。
スタッフ一同、首を長くして待っていますので、2年間の初期研修をしっかり頑張ってきてください。
ところで、前回のブログ記事はご覧いただけましたでしょうか。トップに載った写真について、「あれは誰の誕生日?」という問い合わせがありました。そういえば、写真の説明を忘れていました。
本年度のクリクラでは、細川先生をはじめとした当科のスタッフだけではなく、初期研修医の先生方もかかわってくれたので、クリクラ終了時には毎回みんなで打ち上げをしました。ところが、第3タームでは、病院見学の関係で島田さんが1週間早くクリクラを切り上げたため、一人だけ打ち上げに参加できないのはかわいそうだということになり、医局でミニ打ち上げを行いました。その時の記念写真です。
さて、今回でクリクラメンバーの一言メッセージが全て終了しました。次回は誰にお願いしようかな。
【関連記事】
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 03:06
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咳嗽、発熱、全身倦怠:金沢大学統合卒業試験
金沢大学医学部で先日行われた統合試験(卒業試験)のなかで、当科と関連のある血液内科、呼吸器内科領域の問題について問題紹介と解説を続けたいと思います。
【設問】
61歳、女性。
咳嗽、発熱および全身倦怠の精査のため、他院から紹介され受診した。
現病歴:
患者は、5月末から咳嗽が出現し、37℃台前半の発熱を認め、近医を受診した。感冒と診断され、感冒剤を処方されたが症状の軽快なく、マクロライド系の抗菌薬も処方されたが症状改善なく、全身倦怠もあり、食事がとれないとのことで近医に入院となった。
点滴にて抗菌薬投与などが行われ、数日で症状が軽快したため退院となったが、帰宅翌日に再び咳嗽と38.1℃の発熱を認め、呼吸困難も出現したために再入院となった。入院翌日には症状はすでに軽快していたが、精査を希望し、当院に紹介となった。
特に今まで病気の既往はないが、昨年も梅雨時期から8月末まで風邪気味ですっきりしなかったとのことであった。自宅は、木造築40年で、犬を飼っている。鳥の飼育歴はない。縫製の仕事を30年していたが、10年前に辞めており、以後は無職。夫と息子夫婦、孫と同居しているが、同様の症状の者はいない。
現症:
意識は清明。身長 156 cm、体重 58 kg。体温 36.5℃。呼吸数18回/分、SpO2 96%。脈拍 70回/分、血圧120 / 78 mmHg。
心音に異常なし。
呼吸音も正常で、副雑音は聴取しない。
腹部は平坦で圧痛や叩打痛はなく、肝・脾は触診しない。
下肢に浮腫を認めない。ばち指は認めない
入院時検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)。
血液所見:WBC 8,900 /μl (Neu 57 %, Eos 1 %, Bas 0 %, Mon 10 %, Lym 32 %), RBC 398x104 /μl, Hb 12.8 g/dl, Ht 38.5 %, Plt 29.5x104 /μl。
血清生化学所見:総蛋白7.3 g/dl (alb 48.4 %, α1-gl 3.4 %, α2-gl 10.4%, β-gl 7.7 %, γ-gl 30.1 %)、BUN 12 mg/dl, Cr 0.7 mg/dl, AST 26 単位(基準40以下)、ALT 28 単位(基準35以下)、LDH 420 単位(正常176〜353)、ALP 167 単位(基準330以下), γ-GTP 18 単位(基準40以下), T-Cho 201 mg/dl, TG 144 mg/dl, Na 132 mEq/l, K 3.9 mEq/l, Cl 106 mEq/l, 赤沈(1時間値) 68 mm, CRP 1.7 mg/dl, FBS 112 mg/dl,フィブリノゲン 384 mg/dl、IgG 2,760 mg/dl、IgM 110 mg/dl、IgA 514 mg/dl、総IgE値 56 IU/ml、KL-6 2,820 U/L(基準 500以下)、SP-D 480 ng/ml(基準 110以下)、抗核抗体 <40倍、抗マイコプラズマ抗体 <40倍。
動脈血ガス分析所見: pH 7.41,Pco2 39.8 torr, Po2 71.2 torr,HCO3- 24.2 mmol/l。
喀痰検査:細菌培養 常在菌のみ、細胞診 陰性,結核菌の塗抹、培養、核酸増幅法ともに陰性、ツ反:陰性。
胸部X線写真および胸部CT像を以下に示す。
1)最も考えられるのはどれか。
a 塵肺症
b 異型肺炎
c 粟粒結核
d 夏型過敏性肺臓炎
e サルコイドーシス
2)診断のために追加の血液検査と気管支鏡検査を施行した。予想される結果はどれか。2つ選べ。
a 血清ACE値が上昇する。
b 抗トリコスポロン抗体が陽性となる。
c 気管支肺胞洗浄液にてリンパ球が増加する。
d 気管支肺胞洗浄液にてCD4/CD8比が上昇する。
e 経気管支肺生検にて乾酪性肉芽腫を認める。
【解説】
教科書的な症例です。基本的な知識があれば、病歴の把握のみで、ほぼ診断が可能です。
また、画像も過敏性肺臓炎に特徴的なものであり、画像診断の能力も問われます。
あとは、疾患の基本的な知識を問うています。
設問1については、画像や一部の情報での思い込みがない限りは、ある程度正解することが可能と思われます。設問2については、語句やデータの正確な理解が必要な内容です。
【正答】
1)d
2)b、c
【リンク】
慢性咳嗽の診療
非小細胞肺癌治療の最前線
肺がんに気づくサイン
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(12)
病棟医長の新企画:一言お願いいたします! <←クリック:シリーズ進行中です>
【病棟医長の新企画:一言お願いします(12)】
先日、「最近は一言シリーズが全然更新されていませんね」という、うれしいクレームをいただきました。実は、夏季休暇突入後、そのままになっていました。すみません。
9月に入り、東病棟6階にも大きな変化がありました。
また、当科での初期研修目的で、9月に内藤暢茂先生(呼吸器内科)、10月から奥村健一朗先生(血液内科・呼吸器内科に3ヵ月間の予定)、11月から田中良男先生(血液内科)・島孝佑先生(血液内科)が加わり、再びにぎやかさを取り戻しました。
さて、実は春のクリクラシリーズで予告しておきながら、掲載がすっかり遅れてしまったメッセージがあります。
最近5年生から、「血液内科・呼吸器内科のクリクラはどんな感じですか」 という問い合わせも時々ありますので、今日こそはご紹介したいと思います。
大変お待たせしました。島田さん、一言お願いします。
ーーーーーーーーーーーーー
血液内科クリニカルクラークシップを終えて(第3ターム)
島田 摩耶
第1、2タームですでに回っていた同級生からの評判通り、血液内科のクリクラはとても充実していて、楽しかった!と心から言えます。
その理由はいくつかありますが、やはり何よりも、望めば何でも勉強できる、「完全オーダーメイド」であるということです。
主に月、水、金の朝から行われるクリクラミーティングで出たふとした疑問や、先生からこれは勉強した方がいいと教わった事項を、各自次のミーティングまでに勉強し、みんなで共有する、というもので、自分の抱いた疑問を中心に勉強できるので、やっていてすごく楽しいし、わかった時の達成感があります。
またそれを発表することで、プレゼンの練習にもなるし、まとめのプリントをつくることでわかりやすいレジュメをつくる特訓にもなります。
さらに自分の発表に対する先生からのフィードバックや学生から出た質問で、もっともっと追究することができます。
第3タームでは、末梢血液像、骨髄像の読み方をみんなで学びました。お忙しい中、山崎宏人先生がスライドを作って下さり、それを元に勉強し、実際の標本を見るという風に進みました。まだまだ難しいですが、以前よりはかなり読めるようになったのではないかと思います。
病棟では私は患者さんを2人担当させて頂いたのですが、主治医の先生方が議論を交わす時間を作って下さり、といってもほぼ教えて頂く場でしたが、時に検査値の根拠を一緒に考えたり、自分の考えを聞いて下さることがあり、主治医グループの一員であるという実感が持て、気が引き締まり、責任感もうまれました。
どの先生に質問しても必ず、質問以上のことが返ってきてとても勉強になりますし、血液内科に限らず呼吸器内科の先生も質問に対し詳しく、わかりやすく教えて下さいました。
また教授自ら論文の読み方講座を開いて下さったり、教室全体で教育体制が整っており、学生が学ぶのにすごくいい環境です。
このようにたくさんの良いことがある3内のクリクラは自信を持っておすすめできます!
いろんな面で、自分が少しでも成長できた、と感じられるクリクラは最高だと思います。
ただ1つ心残りとしては、これは自分の責任であり、自分の反省なのですが、第3タームということで、マッチング試験の準備で完全にクリクラに集中できなかったことです。
もっとたくさんの疑問に対して勉強したかった、できれば第1か2タームに選んでもっともっと打ち込みたかったと少し悔やまれる思いでいます。
ただ、第3タームだからといって十分に学べないというわけでは決してなく、自分次第でどんな時間にすることも出来ると思います。
要は自分次第、「完全オーダーメイド」です。
第3内科の先生方、本当にお世話になりました。ありがとうございました。
ーーーーーーーーーーーーー
島田さん、どうもありがとうございました。そして、せっかく早くにメッセージをいただいていたのに、病棟医長(私のこと)の怠慢で掲載が遅くなって申し訳ありませんでした。
6年生の皆さんは、今日が卒業試験の最終日だったのかな。それぞれの進路目指して頑張ってください。
次回は、今回の写真を撮ってくれた井美君です。乞うご期待。
【関連記事】
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JAK2遺伝子変異、血栓症、脳梗塞:金沢大学統合卒業試験
金沢大学統合卒業試験に出題された問題のなかで、当科の専門領域と関連のある血液内科、呼吸器内科関連の問題についての解説を続けたいと思います。
関連記事:真性赤血球増加症(真性多血症)と血栓症
設問
68歳の男性。左半身不全麻痺を訴えて来院した。
現病歴:40年来タバコを1日20本。65歳頃から時々ロレツが回らなくなって自然に軽快することが数回あった。昨日農作業のあと左手に力が入らなくなった。
現症:意識は清明。身長164 cm、体重60 kg。体温36.6℃。脈拍72/分、整。血圧142/90 mmHg。眼瞼結膜に充血、眼球結膜に黄染なし。心音・呼吸音異常なし。肝1横指、脾1横指触知。左上下肢の腱反射亢進。
検査所見:赤血球643万,Hb 18.7 g/dl、Ht 56%、白血球12,300(分画は正常)、血小板30.2万、総蛋白6.4 g/dl、総コレステロール210 mg/dl。
1)この患者の血液異常を診断するための検査として不要なものはどれか。
a JAK2遺伝子変異の検出
b 血中エリスロポエチン測定
c 動脈血ガス分析
d 骨髄の染色体分析
e メトヘモグロビンの測定
2)この患者に対する治療方針として適切なものはどれか。
a メシル酸イマチニブ
b 瀉血
c 無治療経過観察
d 骨髄非破壊的造血幹細胞移植
e シトシンアラビノシド少量療法
【解説】
<前半>
多血症に対するプライマリーケアを問う問題です。
脳梗塞を疑わせる病歴、眼瞼結膜の充血・肝脾腫などの身体所見から真性赤血球増加症(真性多血症)を疑って検査を勧める必要があります。
aのJAK2遺伝子変異の検出は、どの病院でも実施できるという訳ではありませんが、最近では真性赤血球増加症を積極的に診断するための最も簡便で確実な検査法となっています。
b, cは相対的赤血球増加を除外するために行われます。
dは、慢性骨髄性白血病や、真性赤血球増加症以外の骨髄異形成症候群/骨髄増殖性疾患を否定するために必要です。
eのメトヘモグロビンはヘム鉄が酸化されて3価になったもので、後天的には局所麻酔薬やフェナセチンなどの投与によって増加し、チアノーゼや神経症状を引き起こします。多血症とは無関係です。
したがって正解はeです。
<後半>
aは慢性骨髄性白血病に対する治療薬です。
cは、すでに脳梗塞らしき症状を合併していることから不適切です。
この状態の真性赤血球増加症に対しては、治療関連死亡の高いdは適応されません。
eは高齢者の急性骨髄性白血病に対する治療法です。
したがってこの選択肢の中では、正解はbの瀉血となります。
【正答】
1)e
2)b
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:25
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汎血球減少と出血:金沢大学統合卒業試験
金沢大学医学部医学科6年生対象の統合卒業試験問題のなかで、当科と関連のある血液内科、呼吸器内科領域の問題解説を続けたいと思います。
今回は、画像もついています。
設問
45才女性。1ヶ月前の検診で汎血球減少を指摘され精査のため受診した。1週間前から歯肉出血、下肢の紫斑を認めるようになったが、その他の症状はない。
検査では、WBC 12,000/μl、Hb 11.3 g/dl、血小板 2.1万/μl、PT 22.5秒(基準10〜14) 、APTT 35.0秒 (基準対照32.2)、Fibrinogen 78mg/dl(基準200〜400)、FDP 250 μg/ml (基準10以下)、Dダイマー 82 μg/ml(基準5以下)であった。
紹介当日に骨髄穿刺による検査(特殊染色、染色体分析、免疫抗原検索)を実施した。May-Giemsa染色による骨髄穿刺所見を図に示す。今後の診療手順について最も適切なものはどれか。
a 入院の上、可能な限り当日より原疾患の治療を開始する。
b 入院の上、DICの治療を行い、DICが軽快した後、原疾患の治療を開始する。
c まずDICの治療を行い、染色体検査の結果が判明した後(約2週間)、原疾患の治療を開始する。
d 入院予約の上、外来で経過を見る。染色体検査による確定診断がつき次第原疾患の治療を行う。
e 原疾患に対する薬物療法には効果が期待できないため、DICの治療を行いつつ、直ちに同胞のHLA検査を行う。
【解説】
急性前骨髄球性白血病(APL)の緊急性と治療薬であるレチノイン酸の効果・有効性に対する理解を問う問題です。
Faggot小体と播種性血管内凝固症候群(DIC)より急性前骨髄球性白血病(APL)と推測することは容易です。
著明な播種性血管内凝固症候群(DIC)をともなっており、緊急に治療を要する状態と判断できればc, dを否定することができます。
レチノイン酸の奏効率やDICに対しても有効なことを理解していれば、eを否定し、bも不適切であることを判断できます。
【正答】 a
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:09
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出血症状、腹部大動脈瘤:金沢大学統合卒業試験
金沢大学医学部医学科では6年生対象に、先日、統合卒業試験が行われました(2009年11月12日)。
プレ医師国家試験的な意味合いと、卒業試験的な意味合いがあるのだと思っています。
統合卒業試験では、当科(金沢大学第三内科)と関連のある血液内科&呼吸器内科の問題も出題されていますので、それらの問題の紹介と簡単な解説を加えたいと思います。
設問
72歳男性。抜歯時に止血困難をきたしたため、精査目的に来院した。身体所見では、腹部に拍動性腫瘤を触知し、bruitを聴取した。また、抜歯部位からの出血が持続していた。
血液学的検査:白血球 5,200、赤血球 416万、Hb 14.1g/dl、血小板 6.2万、ALT 36単位、クレアチニン 0.9mg/dl、LDH 205単位(基準115-245)、PT 16.8秒(基準10〜14)、APTT 34.1秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン87 mg/dl(基準200〜400)、FDP 68μg/ml(基準10以下)、CRP 0.1 mg/dl(基準0.3以下)、PIVKA-IIは陰性。
本症例における血液検査所見として誤ったものはどれか。
a プラスミノゲンの上昇
b 架橋化フィブリン分解産物(Dダイマー)の上昇
c プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)の上昇
d トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)の上昇
e プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)の上昇
【解説】
腹部大動脈瘤に合併した播種性血管内凝固症候群(DIC)(線溶亢進型DIC)の症例と考えられます。DICでは、Dダイマー、F1+2、TAT、PICの上昇がみられます。一方、プラスミノゲンは低下します。
【正答】 a
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:07
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日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム (プログラム)
第4回日本血栓止血学会学術標準化委員会シンポジウム
Scientific Standardization Committee(SSC)2009シンポジウム
http://www.jsth.org/news/0063.html
プログラムの最終版を掲載させていただきます。学会員でなくても参加できますので、研修医の皆さん、医学生の皆さんのご参加を、心よりお待ちしています。
日 時:平成21年11月21日(土) 9:30〜16:00
会 場:慶應義塾大学医学部構内(東京都新宿区信濃町35)
世話人:福武 勝幸(東京医科大学 臨床検査医学講座)
参加費:無料(資料代 2,000円)
VWD/TTP部会 9:40 〜 12:00
「VWFと疾患 −止血と血栓における二面性の理解と日常診療への応用− 」
【1部:VWFの二面性と病態】
座長: 西尾健治(奈良県立医科大学 救急医学教室)、松井太衛(藤田保健衛生大学 医療科学部生物学)
1. VWFの産生と消化
松下 正(名古屋大学 血液・腫瘍内科)
2. ADAMTS13によるVWFの認識機構
小亀浩市(国立循環器病センター研究所 脈管生理部)
3. 本邦におけるTMAの解析状況
松本雅則、藤村吉博(奈良県立医科大学 輸血部)
4. 本邦における後天性vWSの実態
毛利 博(藤枝市立総合病院)
5. Type2B vWDと巨大血小板症
國島伸治(国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
【2部:VWDの日常診療】
座長: 松下 正(名古屋大学 血液・腫瘍内科) 、日笠 聡(兵庫医科大学 血液内科)
6. 本邦における先天性von Willebrand病患者の診療実態と問題点 〜アンケート調査から〜
西野正人(奈良県立三室病院 小児科)
7. 欧米の現況(ISTH、NIHガイドラインなど)
松下 正(名古屋大学 血液・腫瘍内科)
8. オープンディスカッション(15分間)
凝固線溶検査部会 (パネルディスカッション) 9:40 〜 12:00
座長: 山 哲(聖マリアンナ医科大学病院 臨床検査部)、福武勝幸(東京医科大学 臨床検査医学講座)
1. 凝固線溶検査の標準化に向けて、今、だれが何をしたらよいのか
福武勝幸(東京医科大学 臨床検査医学講座)
抗リン脂質抗体部会 9:40 〜 12:00
「抗リン脂質症候群診断に向けた新展開」
座長: 家子正裕(北海道医療大学 内科)、山崎雅英(金沢大学大学院医学系研究科 細胞移植学)
1. Opening remarks
山�雅英(金沢大学大学院医学系研究科 細胞移植学)
2. 抗リン脂質抗体症候群におけるフォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体(aPS/PT)
の臨床的意義
保田晋助、渥美達也(北海道大学大学院医学系研究科 内科学講座・第2内科)
3. 抗カルジオリピン抗体、抗プロトロンビン抗体 (aPS/PT) 測定の問題点
:我が国における99パーセンタイルはいくつか?
野島順三(山口大学大学院医学系研究科・生体情報検査学)
4. ISTH-SSC ループスアンチコアグラント(LA) 診断ガイドライン改訂版とその問題点
山�雅英(金沢大学大学院医学系研究科 細胞移植学)
5. LA測定用サンプルの調整法に関する検討
−二重遠心処理血漿とフィルター処理血漿の利点と欠点−
吉田美香、内藤澄悦、家子正裕(北海道医療大学 内科)、森 悠丞、山�雅英、渥美達也
血友病部会 13:30 〜 15:50
「わが国における血友病治療センター構想」
座長: 嶋 緑倫(奈良県立医科大学 小児科)、岡 敏明(札幌徳洲会病院 小児科)
1. 血友病治療センターの意義と我が国の現状
白幡 聡(北九州総合病院)
2. Hemophilia Network in Korea
Ki-Young Yoo(Korea Hemophilia Foundation)
3. アメリカにおける血友病関連医薬品の取り扱いについて
角田博道(明治薬科大学 医療経済学教室)
4. 厚労科研補助金による「血友病患者データベース構築に関する研究」
吉岡 章(奈良県立医科大学)
5. 患者会からの見解
松本剛史(三重大学医学部附属病院 輸血部・血液内科)
6. 血友病への行政的対応について
大竹輝臣(厚生労働省健康局 疾病対策課)
DIC部会 13:30 〜 15:50
「DIC研究の最前線 −病態・診断・治療−」
【I部】
座長: 朝倉英策(金沢大学附属病院 高密度無菌治療部)、岡本好司(産業医科大学 第一外科学)
1. 外傷急性期凝固異常をどう捉えるか
久志本成樹(日本医科大学 救急医学)
2. DICと線溶病態
内場光浩(熊本大学医学部附属病院 輸血部)
3. 新たなDICの診断基準作成のためのプロスペクテイブスタデイの結果
川杉和夫(帝京大学医学部 内科学講座)
4. 感染症DICを考慮した現厚生労働省DIC診断基準の検討
窓岩清治(自治医科大学分子病態治療研究センター分子病態研究部)
【II 部】
座長: 関 義信(新潟県立新発田病院 内科)、窓岩清治(自治医科大学分子病態治療研究センター分子病態研究部)
5. DIC診断に関する部会員アンケート調査結果について(その1)
森下英理子(金沢大学大学院医学系研究科 病態検査学)
6. 敗血症DIC・臓器障害に対する治療機序解明の試み −HMGB1制御の可能性−
岡本好司(産業医科大学 第一外科学)
7. アンチトロンビンを軸とする併用療法に関する基礎的検討
射場敏明(順天堂大学医学部附属順天堂医院 救急災害医学)
血栓性素因部会 13:30 〜 15:50
「血栓性素因・プロテインS欠乏症/欠損症をめぐる最近の話題」
座長: 小嶋哲人(名古屋大学医学部 保健学科)
宮田敏行(国立循環器病センター 研究所病因部)
1. 先天性および後天性プロテインS欠損症の臨床
森下英理子(金沢大学大学院医学系研究科 病態検査学)
2. プロテインS欠損症:国立循環器病センターでの研究
宮田敏行1、根木玲子2(国立循環器病センター 1研究所病因部、2周産期治療部)
3. 食品成分によるプロテインS発現調節
津田博子(中村学園大学 栄養科学部)
4. 女性ホルモンとプロテインS欠乏症
鈴木敦夫、小嶋哲人(名古屋大学医学部 保健学科)
5. 敗血症とプロテインS低下症
林 辰弥1,2、岸和田昌之3、西岡淳二4、鈴木宏治2(1三重県立看護大学看護学部 生化学、
2三重大学大学院医学系研究科 分子病態学、3同 肝胆膵外科学、4三重大学医学部附属病院 中央検査部)
ランチョンセミナー 1 12:10 〜 13:10
座長: 瀧 正志(聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 小児科)
演者: 血友病Aに対する自己血管内皮前駆細胞を用いた細胞療法
−より安全でかつ効果的な治療法の確立を目指して−
松井英人(奈良県立医科大学 血栓制御医学講座)
後援:バイエル薬品株式会社
ランチョンセミナー 2 12:10 〜 13:10
座長: 坂田洋一 (自治医科大学 分子病態治療研究センター)
演者: 悪性腫瘍 (造血器を含む)におけるDICの病態と臨床
朝倉英策(金沢大学附属病院 高密度無菌治療部)
後援:旭化成ファーマ株式会社
ランチョンセミナー3 12:10 〜 13:10
座長: 和田英夫(三重大学大学院医学系研究科 病態解明医学講座)
演者:静脈血栓塞栓症の予防と治療 −フォンダパリヌクスの導入と今後の展望−
山田典一(三重大学大学院医学系研究科 循環器内科学)
後援:グラクソ・スミスクライン株式会社
【関連記事】
・播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
・播種性血管内凝固(DIC )治療
・血液凝固検査入門(図解シリーズ)
【リンク】
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ブログ
研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 21:57
| 血栓止血(血管診療)
| コメント(0)
日本血栓止血学会ホームページの用語集:全面刷新
日本血栓止血学会HPの用語集が新しく充実したものに全面刷新されました。
http://www.jsth.org/term/index.html
今までのものに比べまして、大幅に項目数が増えています。
今後、何かとお役にたつのではないかと思いますので、お気に入りに入れておいていただければ幸いです。
追伸:
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)ホームページ&ブログもお役にたつのではないかと思いますので、同じくお気に入りに登録していただければととても嬉しいです。
【関連記事】
・播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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・血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
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研修医・入局者募集
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:59
| 血栓止血(血管診療)
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金沢大学医学部第三内科(血液・呼吸器内科):ブログ記事の捜し方
いつも金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)ホームページ(HP)&ブログをご利用いただきありがとうございます。昨年の9月にリニューアルさせていただいて、1年以上が経過いたしました。今日にいたるまでに、多くの皆様にご支持いただき大変有り難く思っています。
1年以上が経過して、記事数も多くなってきていますので、なかなか自分の見たい記事に到達できない、見たい記事を捜せないという方もおられるのではないかと思います。以下の2つの方法で捜していただくと良いのではないかと思っていますので、御案内申しあげます。
【金沢大学第三内科ブログ記事の捜し方】
1)このブログの右サイドに記事カテゴリがあります。その中から、御自分の捜したい記事がありそうなカテゴリーをクリックしていただき、目的の記事を捜していただく方法です。
2)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)ホームページのトップページにまずジャンプしていただきます。その後、右上にある「サイト内検索」の窓で、調べたい内容のキーワードを入力していただく方法です。この方法は、かなり有効ではないかと思います。
【リンク】
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播種性血管内凝固症候群(図解)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 21:24
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ダウンロードの多いページ:金沢大学第三内科HP&ブログ
今までも定期的にご紹介させていただいていますが、ダウンロードの多いページベスト20です。
最近1ヶ月の集計です。
多くの皆様にご利用いただきありがとうございます。
【リンク】
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【推薦記事】
血液凝固検査入門(インデックスページ)ー図解ー
播種性血管内凝固症候群(インデックスページ)ー図解ー
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:27
| その他
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ブラウザ:金沢大学血液内科・呼吸器内科
医学記事ではないものを続けて恐縮です。
私たちのサイトを訪問される方が使用されているブラウザです。Internet Explorerの一人勝ちのようです。ただし、6.0が最も多かったのが意外に感じました。
1 |
Internet Explorer 6.0 |
31.7% |
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2 |
Internet Explorer 8.0 |
23.3% |
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3 |
Internet Explorer 7.0 |
22.1% |
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4 |
Firefox 3.5 |
3.6% |
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5 |
Safari 4.0 |
3.1% |
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6 |
Safari 3.1 |
2.9% |
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携帯: i-mode |
2.1% |
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8 |
携帯: jig browser |
1.9% |
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9 |
携帯: ezweb |
1.6% |
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10 |
Firefox 3.0 |
1.5% |
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OS(機種):金沢大学血液内科・呼吸器内科
私たちのサイトにご訪問いただく方がインターネットで使用されているOS(機種)です。
医学記事でなくすいません。
休日用の記事ということでお許しいただければと思います。
最近1ヶ月の集計です。Macの4.7%は少ないと感じられたでしょうか、それとも意外と多いと感じられたでしょうか?
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Windows 2000 |
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第1回 Ph白血病/TKIセミナーのご案内
Ph白血病/TKIセミナー
<プログラム:敬称略>
日時: 2009年11月6日(金) 19:00〜
場所: 金沢都ホテル 5階 「加賀(西)の間」
Opening Remarks
金沢医科大学血液免疫制御学 准教授 福島俊洋
Lecture
座長:NTT西日本金沢病院 内科部長 澤崎愛子
「 やさしい CMLガイドライン活用法 」
金沢大学輸血部 准教授 高見昭良
Discussion
司会:金沢大学 輸血部 准教授 高見 昭良
1) 「イマチニブ治療中にdouble Ph陽性が出現しニロチニブに変更した1例」
石川県立中央病院血液内科 山口正木、笠田篤郎、宗本早織、村田了一、上田幹夫
2)「第2世代TKIへの変更を考慮したCML症例ーその後の経過について」
金沢医科大学血液免疫制御学 福島俊洋、中村拓路、岩男悠、中島章夫、三木美由貴、坂井知之、澤木俊興、藤田義正、田中真生、正木康史、廣瀬優子、梅原久範
3)「未定」
金沢大学附属病院血液内科 山崎 宏人
4)「イマチニブ不応、ダサチニブで重篤な消化管出血を来したためニロチニブに切り替えたCML-AP例」
NTT西日本金沢病院内科 高松博幸、山下剛史、熊野義久、尾崎淳、小谷岳春、澤崎愛子
主催 : ノバルティス ファーマ株式会社
【NETセミナー】
汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について
急性骨髄性白血病の治療
悪性リンパ腫の診断
造血幹細胞移植
移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断
ドナーリンパ球の威力 −ドナーリンパ球輸注(DLI)−
貧血患者へのアプローチ
輸血後鉄過剰症と鉄キレート療法
血液内科に関する研修医からのQ&A
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 03:55
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悪性腫瘍(癌)とDIC:治療
悪性腫瘍(癌)とDIC:線溶亢進型DICの診断指針から続く
【悪性腫瘍DICの治療】
1)固形癌に線溶均衡型DICを合併した場合は、基礎疾患としての固形癌は相当に進行していることが多く、しばしば全身転移を伴っています。そのため、基礎疾患の治癒は期待できないことが多いです。
ただし、化学療法や免疫学的に抗腫瘍効果を期待できる治療法の開発などに伴い、進行癌であっても治療成績の向上が見込まれる時代となっている点については、以前の記事で書かせていただいた通りです。
良好にDICのコントロールを行うことによって、生命予後の大幅な改善を期待できる場合があります。
DIC経過が長く慢性DICの病態をとる場合には、24時間持続点滴で患者を拘束したくないことが多いため、管理人らはダナパロイド(商品名はオルガラン:半減期が約20時間と長いヘパリン類)による治療を行って有用であった症例を蓄積しています。
2)固形癌や造血器悪性腫瘍(APLを除く)に線溶亢進型DICを合併した場合には、ヘパリン類単独で加療を行うと反って出血を助長することもありますが、凝固活性化のみならず線溶活性化も同時に十分阻止するような治療は、出血症状に対してしばしば著効します。
具体的には、メシル酸ナファモスタット(FUT<フサン>:抗トロンビン作用のみならず抗プラスミン作用も強力な合成プロテアーゼインヒビター)や、ヘパリン類&トラネキサム酸併用療法は、線溶亢進型DICの出血症状に対して極めて有効です。
ただし、DICに対するトラネキサム酸(商品名:トランサミン)などの抗線溶療法は、血栓症の合併や、臓器障害の報告があり、適応や使用方法を誤ると重大な合併症をきたすことになります(死亡例の報告もあります)。線溶亢進型DICの病態診断指針は誤った抗線溶療法の適応を避ける上でも重要と考えられます(線溶亢進型DICの病態診断)。線溶亢進型DICの病型診断に確信を持てない場合には、メシル酸ナファモスタット(フサン)による加療が無難です。
3)線溶亢進型DICを合併したAPLに対しては、ATRA(APL)による分化誘導療法がDIC治療を兼ねています。ATRAは、APL細胞における組織因子の発現を抑制したり、トロンボモジュリンの発現を亢進することによって凝固阻止的に作用するばかりでなく、アネキシンIIの発現を抑制することによって線溶阻止的にも作用します。
ただし、ATRA症候群の合併や化学療法の追加により線溶亢進型DIC(DICの病型分類)が再燃することもあります。その場合にはメシル酸ナファモスタット(フサン)による加療が必要となります。
昨年より、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(製品名:リコモジュリン)の使用が可能になりました。
Saito H, Maruyama I, Shimazaki S, Yamamoto Y, Aikawa N, Ohno R, Hirayama A, Matsuda T, Asakura H, Nakashima M, Aoki N: Efficacy and safety of recombinant human soluble thrombomodulin (ART-123) in disseminated intravascular coagulation: results of a phase III, randomized, double-blind clinical trial. J Thromb Haemost 5: 31-41, 2007.
本薬は、重症感染症(線溶抑制型DIC)、造血器悪性腫瘍(線溶亢進型DIC)のいずれに合併したDICに対しても有効であり、固形癌(線溶均衡型DIC)に合併したDICに対しても有効であることが期待されています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:36
| DIC
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悪性腫瘍(癌)とDIC:線溶亢進型DICの診断指針
悪性腫瘍(癌)とDIC:病型分類から続く
【線溶亢進型DICの診断指針】
線溶亢進型DICにおいては、出血症状が特に著しくてコントロールに苦慮する場合には、DICに対して通常禁忌とされている抗線溶療法(トラネキサム酸、商品名:トランサミン)が適応となりうる場合がありますので(必ずヘパリン類の併用下に)、適応を誤らないためにも明確な定義が必要と考えられます。
Ontachi Y, Asakura H, Nakao S: Effect of combined therapy of danaparoid sodium and tranexamic acid on chronic disseminated intravascular coagulation associated with abdominal aortic aneurysm. Circ J 69: 1150-1153, 2005.
Ontachi Y, Asakura H, Omote M, Yoshida T, Matsui O, Nakao S: Kasabach-Merritt syndrome associated with giant liver hemangioma: the effect of combined therapy with danaparoid sodium and tranexamic acid. Haematologica 90 Suppl: ECR29, 2005.
Koseki M, Asada N, Uryu H, Takeuchi M, Asakura H, Matsue K: Successful combined use of tranexamic acid and unfractionated heparin for life-threatening bleeding associated with intravascular coagulation in a patient with chronic myelogenous leukemia in blast crisis. Int J Hematol 86: 403-406, 2007.
Kimura S, Odawara J, Aoki T, Yamakura M, Takeuchi M, Watanabe Y, Matsue K: Use of tranexamic acid for disseminated intravascular coagulation with excessive fibrinolysis associated with aortic dissection in a patient with chronic renal failure. Int J Hematol 89: 549-552, 2009.
線溶亢進型DICにおいては、出血症状が重症であり、特に、脳出血、肺出血、吐・下血、手術部位・創部からの大量出血などの致命的出血をきたす可能性があります。また、このタイプのDICにおいては、血小板数の低下がそれほど高度でなくても(このため臨床家の注意が充分でない場合がありえます)、致命的な出血をきたす可能性がある点で注意が必要です。
上記に線溶亢進型DICの病態診断を行うための指針を記載しています。
TATおよびPICは、線溶亢進型DICの代表的基礎疾患であるAPLの平均的な値(以上)が採用されています。
著しい線溶活性化に伴い、FDPは著増しますが(同じくAPLの平均的な値以上)、フィブリノゲン分解(fibrinogenolysis)も進行するためフィブリン分解産物のみを反映するD-dimerとの間に乖離現象を生じます。そのため、FDP/D-dimer比は大きくなります(D-dimer/FDP比は小さくなります)。フィブリノゲン分解および消費性凝固障害の両者の影響によりフィブリノゲンは著減します。
線溶亢進型DICにおける出血症状は、消費性凝固障害よりもむしろ著明な線溶活性化に伴う止血血栓の溶解の要素が大きいと考えられますが、血小板数低下が進行しているとさらに出血症状は重症化しやすいです。過剰なプラスミン形成に伴い、α2PIはしばしば著減します。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 13:18
| DIC
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悪性腫瘍(癌)とDIC:病型分類
悪性腫瘍(癌)とDIC:APL、アネキシンIIから続く
DIC病型分類に関する欧文論文:Classifying types of disseminated intravascular coagulation: clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2014, 2: 20.
【DIC病型分類と悪性腫瘍】
DIC病態を理解する上で、
DICの病型分類の概念は重要です。著しい凝固活性化はDICの主病態であり全症例に共通していますが、その他の点については基礎疾患により病態(特に線溶活性化の程度)が相当異なっています。
凝固活性化は高度であるものの線溶活性化が軽度に留まるDICは、
敗血症に合併した例に代表されます。
線溶阻止因子PAIが著増するために強い線溶抑制状態となり、多発した微小血栓が溶解されにくく微小循環障害による臓器障害が高度になりやすいのですが、出血症状は意外と軽度です。
このような病型のDICを「
線溶抑制型DIC」と称しています。検査所見としては、凝固活性化マーカーである
TATは上昇するものの、線溶活性化マーカーである
PICは軽度上昇に留まります。また、微小血栓の溶解を反映する
FDPやDダイマーも軽度上昇に留まるのが特徴です。
一方、凝固活性化に見合う以上の著しい線溶活性化を伴うDICは
APL、腹部大動脈瘤、前立腺癌などに合併した例に代表されます。
PAIはほとんど上昇せずに線溶活性化が強く、止血血栓が溶解されやすいことと関連して、出血症状が高度になりやすいけれども臓器障害はほとんどみられません。
このような病型のDICを「
線溶亢進型DIC」と称しています。検査所見としては、
TAT、PIC両者とも著増し、FDPやDダイマーも上昇します。フィブリノゲン分解も進行するためにFDP/DD比は上昇(DD/FDP比で表現する場合は低下)しやすいのも特徴です。
凝固・線溶活性化のバランスがとれており上記両病型の中間的病態を示すもの(固形癌に合併したDICなど)を「
線溶均衡型DIC」と称しています。進行例を除くと、出血症状や臓器症状は意外とみられにくいです。
固形癌に合併したDICの多くは線溶均衡型DICの病態となり、比較的慢性の経過をとりやすいです。
ただし、
固形癌においても一部は線溶亢進型DICとなる場合があります。例えば、前立腺癌、悪性黒色腫、大腸癌、膵癌などにおいて全身転移を伴った進行癌の場合に線溶亢進型DICとなり、しばしば高度の出血症状のコントロールに難渋します。
造血器悪性腫瘍に合併したDICのうち、APLは線溶亢進型DICを併発しやすいですが、APL以外の急性白血病においても線溶亢進型DICの病態になりやすく、出血のコントロールがDIC治療の中心となります。悪性リンパ腫などその他の
造血器悪性腫瘍においては、線溶均衡型〜線溶亢進型DICの病態となります。
DIC病型分類の概念は、DICの早期診断、治療方針の決定の上でも重要です。
たとえば、FDP 、DダイマーはDIC診断の最も重要なマーカーと信じられてきましたが、線溶抑制型DICではその上昇は軽度にとどまることも少なくなく、これらのマーカーを過度に重用視するとDICの診断が遅れる懸念があります(血中
TAT、SFの上昇や、血小板数の経時的低下に着目することにより早期診断が可能です)。
治療面においても、線溶亢進型DICに対して、
ヘパリン類のみを投与すると出血を助長することも少なくありません。なお、悪性腫瘍に合併したDICの治療関連の記事は後日になります。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 11:10
| DIC
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悪性腫瘍(癌)とDIC:APL、アネキシンII
悪性腫瘍(癌)とDIC:発症機序から続く
【悪性腫瘍、APLとアネキシンII】
急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICにおいて線溶活性化が著しい理由として、APL細胞表面上に存在するアネキシンII(annexin II)の果たす役割が大きいことが知られています。
Menell JS, Cesarman GM, Jacovina AT, McLaughlin MA, Lev EA, Hajjar KA: Annexin II and bleeding in acute promyelocytic leukemia. N Engl J Med 340, 994-1004. 1999.
アネキシンIIは、血管内皮細胞、マクロファージ、いくつかの腫瘍細胞などの表面に発現しているCa
++/リン脂質結合性の細胞表面膜受容体です。
アネキシンIIは、組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)およびプラスミノゲンの両者と結合し、このことによりt-PAによるプラスミノゲンの活性化が飛躍的に亢進するために線溶活性化を増強することが知られています。
急性前骨髄球性白血病(APL)における著しい線溶活性化の原因として、従来、
線溶阻止因子PAIの発現があまりみられないことや、顆粒球エラスターゼによるPAI、α2PI、フィブリン、フィブリノゲンの分解が指摘されてきましたが、これらに加えてアネキシンIIの果たす役割は極めて大きいと考えられます。
アネキシンIIは、APL以外にもいくつかの他の癌細胞にも発現していることが知られており、癌の浸潤、転移、血管新生との関連が注目されています。
Madoiwa S, Someya T, Hironaka M, Kobayashi H, Ohmori T, Mimuro J, Sugiyama Y, Morita T, Nishimura Y, Tarumoto T, Ozawa K, Saito K, Sakata Y: Annexin 2 and hemorrhagic disorder in vascular intimal carcinomatosis. Thromb Res 119: 229-240, 2007.
Ohno Y, Izumi M, Kawamura T, Nishimura T, Mukai K, Tachibana M: Annexin II represents metastatic potential in clear-cell renal cell carcinoma. Br J Cancer 101: 287-294, 2009.
Shiozawa Y, Havens AM, Jung Y, Ziegler AM, Pedersen EA, Wang J, Wang J, Lu G, Roodman GD, Loberg RD, Pienta KJ, Taichman RS: Annexin II/annexin II receptor axis regulates adhesion, migration, homing, and growth of prostate cancer. J Cell Biochem 105: 370-380, 2008.
固形癌に合併したDIC症例において著しい線溶活性化に伴い高度な出血傾向をきたす症例を時に経験しますが、このような症例において高頻度にアネキシンIIの発現がみられるかどうか興味のあるところです。
また、
急性前骨髄球性白血病(APL)に対する全トランスレチノイン酸(ATRA)によりアネキシンIIの発現が強く抑制されるように、アネキシンIIを制御するような治療が可能になれば、線溶活性化と癌浸潤の両者を調節できる治療法が登場することになるかも知れません。
なお、アネキシンIIは腹部大動脈瘤の進展とも関連しており、腹部大動脈瘤に合併することで知られる線溶亢進型DICとの関連も興味ある研究課題ではないかと思われます。
Hayashi T, Morishita E, Ohtake H, Oda Y, Ohta K, Arahata M, Kadohira Y, Maekawa M, Ontachi Y, Yamazaki M, Asakura H, Takami A, Nakao S: Expression of annexin II in human atherosclerotic abdominal aortic aneurysms. Thromb Res 123: 274-280, 2008.
Hayashi T, Morishita E, Ohtake H, Oda Y, Asakura H, Nakao S: Expression of annexin II in experimental abdominal aortic aneurysms. Int J Hematol. 2009 Sep 16. [Epub ahead of print]
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 08:55
| DIC
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悪性腫瘍(癌)とDIC:発症機序
【DIC発症機序:悪性腫瘍】
悪性腫瘍における播種性血管内凝固症候群(DIC)発症の主因は、腫瘍細胞表面および腫瘍細胞中に含まれる組織因子による外因系凝固機序の活性化と考えられています。
その他には、腫瘍細胞に対する免疫反応により単球/マクロファージが刺激され、単球/マクロファージより組織因子が産生される機序や(この際、リンパ球が介在してサイトカインの働きにより組織因子産生が増幅される可能性があります)、悪性腫瘍患者において誘導されるTNF、IL-1と言ったサイトカインが血管内皮細胞に作用し、血管内皮細胞における組織因子が産生が亢進したり、トロンボモジュリンの発現が抑制されることにより、血管内皮細胞の性格が抗凝固から向凝固にシフトされることなどが考えられています。
ただし、このような腫瘍に対する免疫反応やサイトカイン産生などに伴う凝固活性化の機序(単核球や血管内皮細胞を巻き込んだ凝固活性化の機序)は、敗血症に合併したDICと比較するとはるかにそのグレードは小さいものと考えられています。
腫瘍細胞からは、組織因子のみならずcancer procoagulant(第X因子を直接活性化するシステインプロテアーゼであり、VIIa、IXaなどのセリンプロテアーゼとは第X因子の切断部位が異なります)も放出されています。cancer procoagulantは、ヒト胎盤、肺癌、大腸癌、白血病細胞に存在し、癌特異性が比較的高いとされていますが、実際の臨床症例においてどの程度凝固活性化に関与しているかどうかについては議論の余地があります。
固形癌症例においては、血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)やプロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)は高値で、組織因子は2/3例、活性型第VII因子(FVIIa)は半数例で異常高値であったのに対し、内因系凝固活性化のマーカーである活性型第XII因子(FXIIa)はごく一部の症例でのみ高値であったとする報告がみられています。
Kakkar AK, DeRuvo N, Chinswangwatanakul V, Tebbutt S, Williamson RC:Extrinsic-pathway activation in cancer with high factor VIIa and tissue factor. Lancet 346(8981):1004-1005, 1995.
この報告からも、固形癌における凝固活性化機序は、組織因子の関与する外因系凝固活性化が主体であろうと考えられます。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:13
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