金沢大学・血液内科・呼吸器内科
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2013年2月28日

医師国家試験の問題紹介と解説(2)臀部の痛み

医師国家試験の問題紹介と解説(1)より続く。


13歳の男子.

左臀部の痛みを主訴に来院した.2日前,運動後に左殿部の痛みを自覚し,その後同部に腫れも出現した.同様のエピソードは過去に経験したことがないという.

意識は清明.体温36.2℃.脈拍84/分,整.血圧116/72mmHg.左殿部は硬く腫脹し,圧痛を認める.発赤と皮疹とを認めない.

血液所見:赤血球375万,Hb 11.2g/dl,Ht 35%,白血球6,800,血小板38万,PT 11.0秒(基準10〜14),APTT 56.0秒(基準対照32.2), フィブリノゲン220mg/dl(基準200〜400),血清FDP 12μg/dl(基準10以下).CRP 0.3mg/dl.


殿部痛の原因として最も考えられるのはどれか.

a 帯状疱疹
b 筋肉内出血
c 坐骨神経痛
d 腸腰筋膿瘍
e 大腿骨頭壊死

 

(解説)

左臀部の痛み・腫脹・圧痛は何を意味するのか、そしてAPTTの明らかな延長は何を意味するのかを問うています。左臀部の痛み・腫脹・圧痛は、筋肉内出血を疑います。運動が契機になっていることもヒントになっています。


筋肉内出血(深部出血)の原因が分かれば、さらに自信を持って解答することができるでしょう。

本症例では、PTが正常ですがAPTTが延長しています。

APTTが延長している出血性素因として有名なのは、血友病A、血友病Bvon Willebrand病です。

血友病は、関節内出血、筋肉内出血などの深部出血が特徴的です。von Willebrand病は、鼻出血などの粘膜出血が特徴的です。

診断は血友病です。


a 発赤と皮疹とを認めないと書かれていますので、否定的です。

b 正しいです。

c 坐骨神経痛では、腫脹はみられません。

d 腸腰筋膿瘍は、炎症反応(白血球やCRPの上昇)がないため否定的です。

e 大腿骨頭壊死では、左殿部の痛み・腫脹・圧痛はみられません。

「同様のエピソードは過去に経験したことがない」というのは、若干意地悪な記載にも感じられます。できれば「過去に関節内出血の既往がある」という記載にして欲しかったところです。


管理人は、高齢の男性で重症の筋肉内出血がみられ、紹介されたことがあります(関節内出血の既往なし、家族歴もなし)。第VIII因子活性が低下しており血友病Aが疑われますと紹介状に書かれていましたが、実際は後天性血友病でした。紹介医は、後天性血友病を知らなかったようです。

後天性血友病はまれな疾患と記載されてきましたが、意外と埋もれた症例が多いのかも知れません。


【第VIII因子インヒビター】



第VIII因子に対するインヒビター(抗体)が出現するのは、以下の2つの場合があります。



1)血友病A:
血友病Aに対して治療目的で第VIII因子製剤を投与することで、血中にインヒビター(同種抗体)が出現する場合(血友病A患者にとって第VIII因子は未知の蛋白である)。血友病A治療に伴う重要な合併症です。

2)後天性血友病:自己免疫性疾患、悪性腫瘍、妊娠、高齢などを背景に(はっきりとした背景がないこともあります)、第VIII因子に対する抗体(自己抗体)が出現します。まれな疾患ですが、この病気を知っているかどうかで、患者さんを救命できたり不幸な転帰になったりすることがあると考えられます。先天性の血友病とは無関係で、男性にも女性にも発症します。皮下出血や筋肉内出血がみられます。第VIII因子活性が低下する病態ですが、何故か関節内出血はほとんどありません。





<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27 | 医師国家試験・専門医試験対策

2013年2月27日

医師国家試験の問題紹介と解説(1)

本年の医師国家試験の問題紹介と解説です。

 

欠乏すると血栓傾向が生じるのはどれか.3つ選べ.

a アンチトロンビン
b フィブリノゲン
c プロテインC
d プロテインS
e プロトロンビン



(解説)
凝固因子、凝固阻止因子をそれぞれ知っていれば容易に解答できる基本的な設問です。落としたくない一問と言えるでしょう(参考:先天性血栓性素因と病態:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症)。

a かつては、アンチトロンビンIII(ATIII)と呼称されましたが、現在は単にアンチトロンビン(AT)と呼称することが多いです。トロンビンや活性型第X因子などの活性型凝固因子を阻止します。欠乏すると血栓傾向になります。

b 死語に近いですが血液凝固第I因子とも言います。欠乏すると出血傾向になります。

c プロテインC (PC)は、AT同様に、凝固阻止因子です。活性型PC(APC)は、活性型第V因子(FVa)と活性型第VIII因子(FVIIIa)を不活化します。欠乏すると血栓傾向になります。

d プロテインS (PS)は、APCの補酵素です。欠乏すると血栓傾向になります。

e 血液凝固第II因子とも言います。欠乏すると出血傾向になります。


(正解)

a、c、d

 

(備考)

生理的な凝固阻止因子としては、アンチトロンビン(AT)、プロテインC (PC)、プロテインS (PS)、組織因子経路インヒビター(TFPI)などが知られています(参考:先天性血栓性素因と病態:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症)。

先天性AT欠損症、先天性PC欠損症、先天性PS欠損症では、若年時より血栓傾向(特に静脈血栓症)をきたしやすいです。

いずれの先天性欠損症ともにホモ接合体はまず生存できず、通常は50%に低下したヘテロ接合体です。


これらの3つの凝固阻止因子の中で、PCとPSはビタミンK依存性(昨年の国家試験既出)のために、ワルファリン(ビタミン拮抗薬)内服に伴い活性が低下することも知っておきたいです。


ビタミンK依存性蛋白が連続して出題されています。

ビタミンK依存性蛋白はいくつも知られているが、医学生としては、以下は知っておきたいです。

・    ビタミンK依存性凝固因子:VII、IX、X、II(半減期の短い順、VIIが最も半減期が短い)
・    ビタミンK依存性凝固阻止因子:PC、PS
・    骨代謝関連蛋白:オステオカルシン


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2013年2月26日

金沢大学第三内科:石川県立中央病院(インデックス)

金沢大学第三内科  同門会報の原稿(病院紹介)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(3)より続く。

 

病院紹介

「石川県立中央病院」(インデックス) 

1)骨髄移植チーム、エイズ

2)エイズ拠点病院と診療協力病院

3)血液内科&呼吸器内科、連携


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2013年2月25日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(3)

金沢大学第三内科  同門会報の原稿(病院紹介)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(2)より続く。

 

病院紹介

「石川県立中央病院」(3) 

石川2

次に、当院の状況を紹介します。

現在、第3内科からは血液内科に5人(写真.1人は研修医)と呼吸器内科に5人(写真上.1人は研修医)が勤務しています。

厚労省病院情報局DPCデータバンク(2010年)によると、当院では、石川県内DPC導入病院で診療されたリンパ腫患者の17.1%、肺がん患者の21.6%を担当しています。

また、院内資料(平成23年度)では、のべ入院患者数の9.2%は血液内科で、9.3%は呼吸器内科でした。

石川県内の医療に一定の役割を果たしており、その結果病院経営にも貢献しています。

診療科としてのサービスは無論のことですが、血液内科はエイズ対策や院内の輸血療法、がん化学療法に中心的に参画しており、呼吸器内科は院内の感染予防対策やがん化学療法、内視鏡医療に指導的役割を担っています。

医局会活動においても、昨年度までは私が、今年度からは西先生が医局代表幹事に選出され担当しています。


当院は、数年後には新病院に建て替えられることになり、今は具体的な設計の段階です。

いろいろ制約がある中ですが、県民の要求に応えられるような病院を目指して工夫や努力をして行きたく思います。

新病院がスタートすれば、そこでの診療を望む患者が増えると思いますが、対応が困難な場合などには同門会の皆様との「連携」をお願いいたします。


(続く)金沢大学第三内科:石川県立中央病院(インデックス)


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2013年2月24日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(2)

金沢大学第三内科  同門会報の原稿(病院紹介)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(1)より続く。

 

病院紹介

「石川県立中央病院」(2) 

また、エイズ対策のうちエイズ予防やエイズに対する正しい理解の普及には社会的対応が求められ、保健所を含む行政、医師会・歯科医師会、教育関係者、エイズNPO、情報メディアなどとの連携が必要になります。

これら医療の枠を超えた連携は、初めての経験にもなりました。


北陸3県の連携も重要です。

エイズ拠点病院と診療協力病院は、富山県に3病院、石川県に8病院、福井県に6病院ありますが、病院間で患者さんの紹介やコンサルテーションなどを行っています。

当院への紹介は多く、北陸の患者の半数を診療させていただいていますが、複雑な精神疾患を合併している患者の場合は大学病院などに紹介しています。

エイズ患者は、自分のプライバシーを守るためにあえて遠方の病院を選ぶことも多く、その際にも病院間の連携がとれていることが必要です。

今後、より良質な医療が求められる中で、限られた社会・医療資源を有効に活用して行くためにも、医療、福祉、行政が連携して行くことが重要です。

第3内科同門会員としてそれぞれの立場から知恵を出し、互いに連携し、地域や社会のニーズに応えて行きたいものです。

(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(3)


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2013年2月23日

女性医師の生き方セミナー(ver.2)

 第3回女性医師の生き方セミナーの御案内(ver.2)です。

女性2
女性3
 

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20 | 女性医師(当科)からのメッセージ

2013年2月22日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(1)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿(病院紹介)からです。

 

病院紹介

「石川県立中央病院」(1) by 上田幹夫

石川1

私は石川県立中央病院に17年間勤務していますが、そこでの経験などを書かせていただきます。

昨年の同門会でお話しさせていただいた内容と重なる部分もありますが、ご容赦ください。


近年、私がとても重要だと感じていることは「連携」ということです。

以前から、病-診連携、病-病連携という言葉は何回も耳にしていましたが、当院に勤務しエイズ医療やエイズ対策に携わる中で、その必要性や重要性をまさに実感しています。


私は、骨髄移植チームを立ち上げて軌道に乗せるべく、平成8年に第3内科から当院へ異動しました。

骨髄移植を開始した平成9年、当院はエイズ北陸ブロック拠点病院にも指定され、上司で当同門会の会長を務めておられた河村洋一先生とエイズ診療の立ち上げや北陸のエイズ医療体制整備にも関わることになりました。

骨髄移植と同じように、エイズ医療も多職種によるチーム医療が欠かせません。

慢性感染症となったエイズに関わる診療科は、内科(肺炎、肝炎、代謝・血管病など)、歯科(歯周口腔病)、皮膚科、眼科、がん診療科(多い腫瘍併発)、産科(妊娠・出産時のHIV感染防止)など多岐にわたります。

薬剤の飲み忘れは、耐性ウイルスが出現して治療失敗につながるので、薬剤師、看護師、医師の服薬支援はとても大事です。

エイズ患者は、偏見による精神的抑圧に加え、経済・社会的問題を抱えていることもあり、精神科医、カウンセラー、ソーシャルワーカーの支えはより重要になります。


(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)石川県立中央病院(2)


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2013年2月21日

金沢大血液内科:2011年米国血液学会(インデックス)

金沢大血液内科:2011年米国血液学会(ASH)に参加して(3)より続く。


「2011年米国血液学会(ASH)に参加して」
(インデックス)


<リンク>
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2013年2月20日

金沢大血液内科:2011年米国血液学会(ASH)に参加して(3)

金沢大血液内科:2011年米国血液学会(ASH)に参加して(2)より続く。


「2011年米国血液学会(ASH)に参加して」
(3)

3

(「トップ・ガン」の舞台となった空母ミッドウェイ)

全体的な印象では、幹細胞レベルでの研究が進んでおり、とにかくどの分野もゲノム網羅的解析に関する発表が盛んで遺伝子異常による層別化と標的治療が主流となりつつあるのを実感しました。

実際にそれを利用したマウスでの実験成果が多数あることに、時代に取り残されているように感じるくらい大変驚きました。

そして今回のASHで、特に日本人として一番注目し盛り上がったことといえば京都大学江藤先生の教室の、ヒトiPS細胞から血小板を大量作製できる方法の発表であったに違いありません。

全演題から6題しか選ばれないプレナリーセッションに堂々と採択されたこの演題は、同大学の高山先生が気迫溢れる発表をされ盛大な拍手で会場が包まれました。

革新的な研究成果が世界に向けて発信される場に同席できることも国際学会の醍醐味であると思える瞬間でした。

ちなみにこの発表のfirst authorである中村壮さんはまだ20代の若い研究員であったということも驚きでした。

図々しくも、日本から出た誇り高き研究者の中村さんと一緒に写真を撮らせて頂き、自慢の思い出となりました。

ポスターセッションでは日本の学会とは違い、お酒を片手に気になる内容があればその場で発表者とディスカッションできるというスタイルで、世界中から集まった臨床医、研究者と交流を深める絶好の場でありました。

つたない英語ゆえ質問してみようと思っても消極的になってしまったのですが、次回からはさらに交流を深めなければ勿体ないと痛感しました。


たった4日間であったものの、想像をはるかに超える世界の研究内容、進捗を目の当たりにし、私自身の研究・臨床両方に良い刺激となりました。

日々の研究から不可能であったことが可能になることを知り、世界中から溢れるアイディアを一つでも多く吸収し自身からも世界に向けて発信できるようさらに精進していきたいと思います。

サンディエゴは途中雨で肌寒い日もありましたが、基本的には穏やかな気候で食べ物も美味しく(特にシーフード、ウニは最高でした!)、比較的安全な地域であったため珍道中も含めて楽しく過ごせた学会でした。

学会と関係なくても、また訪れたいところです。


最後になりましたが、このような充実した機会を設けて下さった中尾教授をはじめとする第三内科の諸先生方、関係者の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。

 


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2013年2月19日

金沢大血液内科:2011年米国血液学会(ASH)に参加して(2)

金沢大血液内科:2011年米国血液学会(ASH)に参加して(1)より続く。


「2011年米国血液学会(ASH)に参加して」
(2)

2

(受賞した京大の中村壮さんと一緒に)

私たちの教室からは中尾教授、大竹教授を始め総勢10名で参加しました。

本年度は保健学科修士・博士課程の学生さんの演題も採択され、教室からは高見先生、Luis先生(2題)、森下先生、山崎宏人先生、高松先生(2題)、片桐先生、細川先生、保健学科博士課程の丸山さん(2題)、同修士課程の中田さんら、計12題ものポスター発表を携えての参加となりました。

私は自身の発表はなかったものの、仕事の都合で参加できなかった山崎宏人先生の演題の第二演者として当日はご協力させて頂きました。


今回のASH、私自身は初めての国際学会であり世界の血液内科診療・研究の進歩を間近で見る事が出来ることをうれしく感じながらの参加でした。

初日から最終日の「Best of ASH」の発表まで参加できましたが、振り返ると、規模の大きさと無数とも思えるくらいの研究内容、臨床試験の発表にただただ驚いていた4日間でした。

私は主に教育講演、プレナリーセッションを中心に聴講していましたが、ASHでは各セッションともまさにその世界の第一人者が生でレクチャーして下さり、疾患の基礎から最新の研究結果までを一気に吸収できました。

GVHD関連のセッションではNK細胞による研究内容が多く、理解を深める良い機会となりました。

さらに一般演題では、自分が携わっている研究内容である骨髄不全の分野を網羅していきましたが、自分達の注目しているのとは違った視点の内容も多く、今後の参考になる情報もあり大変勉強になりました。


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2013年2月18日

金沢大血液内科:2011年米国血液学会(ASH)に参加して(1)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)の同門会報原稿からです。

先取りでアップさせていただきます。

 

「2011年米国血液学会(ASH)に参加して」 by  斉藤千鶴

1


平成20年度入局の斉藤千鶴です。

後期研修期間を終え、大学院2年目にあたる平成23年度から研究期間に入っています。

基礎実験は学生時代の実習以来で右も左もわからない状態ながら、中尾教授ご指導のもと、先に研究期間に入っていた細川晃平先生に助けて頂きながら臨床とは違う側面の面白さを少しずつ実感している次第です。

この度、日本の学会とは規模も雰囲気も全く違うと多くの先輩方が目を輝かせて話して下さったASHに初めて参加させて頂きましたので、報告させて頂きます。


第53回米国血液学会は2011年12月10日から12月13日の4日間にわたって、アメリカのカルフォルニア州サンディエゴにて開催されました。

口演、ポスターによる発表はそれぞれ1000演題、3000演題を超え、2万人以上の参加者が全世界から集まったそうです。

この数字からも分かるように、本学会はあらゆる血液疾患を対象として米国内血液学会総会というよりも、全世界から血液臨床医・研究者が参加する一大国際学会であり、血液疾患の基礎研究、診断、治療に関する世界最先端の知見が得られる学会といっても過言ではないと思います。

会場はサンディエゴの中心街に位置するコンベンションセンターで海沿いに位置し青空と青い海、停泊している船といった眩しい景色が一望できるのですが、近隣のホテル会議場も学会会場となっており、多くのセッションが並列で同時進行するため聞きたい発表を網羅するのは到底不可能で、どの発表をいかにもれなく聞くか計画するだけでも一苦労でした。


(続く)金沢大血液内科:2011年米国血液学会(ASH)に参加して(2)


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2013年2月17日

金沢大学血液・呼吸器内科:富山赤十字病院(インデックス)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(3)より続く。


病院紹介

「富山赤十字病院」(インデックス)  

1)日赤病院として

2)立地条件、内科

3)血液内科の開設

 

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2013年2月16日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(3)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(2)より続く。


病院紹介

「富山赤十字病院」(3)  

血液内科は平成22年4月に開設しました。

最初の2年間は杉盛千春先生が立ち上げに尽力してくれました。

平成23年度は急性白血病13人、悪性リンパ腫28人、多発性骨髄腫7人、慢性骨髄性白血病6人が新たに診断され化学療法を受けました。

また平成23年10月に血液成分分離装置(COBE Specctra)が設置され末梢血幹細胞採取が可能になりました。

平成23年度の造血幹細胞移植は同種2例、自家2例が実施されました。

平成22年9月に富山リンパ腫の会を始めました。

複数の施設の血液内科医、病理医が参加して4か月毎に当院でリンパ腫の症例検討をしています。

また、平成22年10月に患者会(ライラックの会)も立ち上がり偶数月に定例会を開いています。


呼吸器内科の状況については、同門会報26号に岩佐先生が詳しく記載されていますので、参照してください。

呼吸器内科が当院の癌化学療法を牽引しています。

その後、平成22年5月に富山県がん診療地域連携拠点病院の指定を受けましたし、平成23年に日本臨床腫瘍学会の認定研修施設にもなりました。


最後に、平成15年に金大三内に入局させていただき10年目となりました。

現在まで無事にやってこれたのは中尾教授をはじめとして三内の皆さんの温かいサポートがあったからだと感謝しております。

今後ともよろしくお願い致します。


(続く)金沢大学血液・呼吸器内科:富山赤十字病院(インデックス)

 

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2013年2月15日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(2)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(1)より続く。


病院紹介

「富山赤十字病院」(2)  

富山駅から歩いて10分という立地は北陸新幹線があと2年余りで開業することを見据えても大変便利のよい病院といえます。

病棟からは東の立山連峰の雄大な眺めはもちろんですが、西の神通川の眺めも心にやすらぎを与えてくれます。

また病院のすぐ近くに環水公園があり市民の憩いの場となっています。

ここのスタバは雰囲気抜群ですし、散歩やジョギングのコースとしてもおすすめです。

当院における第三内科のスタッフは以前から呼吸器内科が2名派遣されていましたが、平成22年から血液内科も2名派遣されています。現在は呼吸器内科が岩佐桂一先生(H12.10〜)と田森俊一先生(H22.4〜)、血液内科が私(H22.4〜)と望月果奈子先生(H24.4〜)です。

4人とも自分の専門領域の疾患に集中したいところですが、輪番当直や内科一般外来の初診・再診などのdutyに苦しめられています。

というのは当院では内科一般入院の患者は最初に見た人が受け持つことになっているからです。

輪番当直をすると、当直明けに早く帰れる制度もなく、入院患者も増えて激しく消耗します。

内科の他の分野は循環器、内分泌、腎臓が金大二内、消化器が富大三内から派遣されています。

外科は金大一外、泌尿器科、皮膚科は金大、整形外科、小児科、脳外科、耳鼻科、眼科、麻酔科、精神科は富大、産婦人科は新潟大という混成部隊です。


(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(3)

 

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2013年2月14日

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(1)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿を、ブログでもアップさせていただきます。

病院紹介

「富山赤十字病院」(1)  by 黒川敏郎 (平成15年入局)

黒川先生

富山赤十字病院は富山駅の北西1km、神通川沿いに位置しています。

今から100年以上前の明治40年に富山県で最初の病院として、全国に92ある日赤病院の中で6番目に開設されました。

初代院長は東大から派遣されましたが宿舎から病院まで馬に乗って通勤したという話です。


435床で常勤医師数は68(研修医除く)、内科は22です。

その中規模さゆえに横の連携がよくて小回りのきく病院です。

平成23年度の一日当たり患者数は入院386人(病床利用率88.7%)、外来1001人でした。

平成23年11月に日本医療機能評価機構の病院機能評価(Ver. 6.0)の認定を受けました。

平成16年に電子カルテが導入されています。

富山医療圏の二次輪番病院の一つのため救急車は年間3500台来ます。

また日赤の使命としての災害救助活動があり、昨年の東日本大震災の際は地震の2時間後に第一陣の救護班が病院を出発しています。

日赤病院はどこも独立採算で、自治体や日本赤十字社から補助がないため経営には大変シビアですが、平成23年度の決算が7年ぶりに黒字に転じて雰囲気は明るくなっています。


研修医は少数ではありますが繋がっており、平成24年度は1年目、2年目とも単独型で3人ずついます(たすきも少数います)。

初期臨床研修の目的はcommon diseaseを見れるようになることですから、そういう点では研修に向いた病院といえます。

まず研修医がたくさん来る病院にして、将来的に誰かを血液内科に勧誘できれば…というのが私の強い願いです。

(続く)金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科):富山赤十字病院(2)

 

<リンク>

血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33 | その他

2013年2月13日

金沢大学呼吸器内科:学会便り(インデックス)

金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(3)より続く。


「American Thoracic Societyに参加して」(インデックス)


1)IgG4関連疾患

2)IgG4関連肺疾患

3)会場はサンフランシスコ

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19 | 呼吸器内科

2013年2月12日

金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(3)

金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(2)より続く。

ATS2
(ATS玄関)
ATS3
(路面電車から見たアルカトラズ島)

「American Thoracic Societyに参加して」(3)

発表自体は症例数も検討内容もひけを取らないものでしたが、同時にMayoクリニックから3演題、1つは症例報告でしたが、のこり2つは、IgG4関連疾患の頻度と障害臓器についてと、IgG4関連疾患は気道病変が稀ではない、という発表でした。

やはりアメリカは検討数の規模が違います。

特に昔からのデータベースのあるMayoクリニックでは、データベースから引っ張ってくるだけでこのような検討が出来てしまうのがすごくもあり、脅威でもありました。

しかしながら、日本は日本独特だと思いますが、詳細まで検討し、評価に関してはかなり細かいところまで出来ているという自負はあります。

本疾患は国際シンポジウム後Stone博士らにより疾患概念がNEJMに掲載されたこともあり、世界的にも疾患概念が認められる様になりました。


今後、さらなる発展をすべく、特に日本人らしい発展の仕方を持って世界に対抗できるような発展に協力出来るように頑張って行きたいと思った今回の学会でした。


真面目な文章ばかり書きましたが、会場はサンフランシスコです。

初日に時間があったのでWGの先生とアルカトラズ島に行くことになっていました。

学会前にその話をしていたら、医局のとある先生から、映画ザ・ロックを見てから行った方がいい、と勧められ、慌ててパソコンにザ・ロックをレンタルして機内で見てから、アルカトラズ島に向かいました。

おかげで映画で見たところも多数あり、大変面白かったです。

ここでとらわれた囚人で脱獄して帰って来れたものはいない、と言われる通りまさに孤独の島でした。

しかし、その孤独とは裏腹に、アルカトラズ島から見たサンフランシスコの風景はまた格別なものがありました。

自由な世界を海の向こうに見た囚人は限りなく羨望のまなざしで向こう岸を見ていたにすぎません。

私達は今同じようにアメリカを羨望のまなざしで見ているのでしょうか?

いや、そんなことはないはずです。

同じ島でも、日本という島から世界に向かって行かねばならない、と心に誓った瞬間でした。


今回のATSで得たもの、それはたくさんの同士と日本からどんどん外国に向かって行かねばならない、という思いでした。

今回のATS参加に対して、一週間もの間大学を留守にしてしまい、ご迷惑をおかけした多くの先生方、ならびに小学校に入学したばかりの息子の面倒を見てくれた私の家族にこの場を借りて感謝申し上げます。


(続く)金沢大学呼吸器内科:学会便り(インデックス)

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09 | 呼吸器内科

2013年2月11日

金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(2)

金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(1)より続く。

ATS1

(アルカトラズから見たサンフランシスコ)


「American Thoracic Societyに参加して」(2)

そういう中、IgG4関連疾患に注目したのがアメリカであり、2011年10月にはマサチューセッツ総合病院のJohn Stone博士による第1回IgG4関連疾患国際シンポジウムが開催されることが決定したため、研究班としてはそれに先立ち包括的診断基準を慌てて出すに至りました。

また、その頃東京びまん性肺疾患研究会という、びまん性肺疾患の画像、病理、臨床に関して3回の事前検討会(病理のみ、画像のみ、病理+画像+臨床)を経て全国から一つのテーマの疾患を集め、検討するという会があり、偶然にもテーマがIgG4関連肺疾患でした。

そこで集まった症例をもとに自己免疫性膵炎やミクリッツ病など誰が見ても典型的なIgG4関連疾患に合併した肺病変で病理、画像、臨床が典型的と思われるもの13例が集まり、IgG4関連肺疾患のコア症例と決定しました。


前置きが長くなりましたが、ここからが本当の学会便りになります。

典型的なIgG4関連肺疾患に関するコア症例13例をまずは2012年4月の日本呼吸器学会で発表、続いて一番の目的であった、5月にサンフランシスコで開催された、American Thoracic Society(ATS)にてIgG4関連呼吸器WGとして発表しました。


私自身、国際学会は3回目でしたが、ATS参加は初めてであり、さらに金沢大学から私だけの参加、ということもあり、最初はとても緊張していました。

しかし、WGのメンバーや、メンバーの大学の方々、さらには現地で一緒になった先生方(海外の方と言いたいところですが、日本人ばかりなのが反省すべき点です)とご一緒する機会に恵まれ、非常に楽しい毎日を過ごすことが出来、それを契機に全国に同じびまん性肺疾患を勉強しているたくさんの先生方と知り合うことが出来ました。

肝心の発表ですが、今回の目的は先ほども書きましたが、日本発の疾患、特に呼吸器領域での検討をまずはアメリカでいち早く示すことでした。


(続く)金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(3)

 

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播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2013年2月10日

金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(1)

金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。

学会便りです。同門会報はまだ発刊されていませんので、先行してのアップになります。


「American Thoracic Societyに参加して」(1)

金沢大学医薬保健研究域医学系呼吸器内科 早稲田優子

平成22年より、IgG4関連疾患に関する厚生労働省の研究班のうち、「新規疾患、IgG4関連多臓器リンパ増殖性疾患(IgG4+MOLPS)の確立のための研究班厚労省研究班:梅原班」に研究協力者として参加させていただくこととなりました。

平成24年度より梅原班ともう一つの研究班である岡崎班が合併し、「IgG4関連疾患に関する調査研究班:千葉班」となり引き続き、研究協力者として参加させていただいております。


IgG4関連疾患と言っても聞き慣れない先生方も多いかと存じます。

簡単にIgG4関連疾患について説明しますと、2000年以降、これまで自己免疫性膵炎や両側の涙腺、唾液腺の腫脹をきたす、ミクリッツ病などはそれぞれ別の疾患と思われていましたが、いずれも、IgG4陽性形質細胞の浸潤を伴う硬化性病変だということが判明しました。

その後、膵臓や涙腺、唾液腺以外にも同様にIgG4陽性形質細胞の浸潤をきたす臓器が多数見られ、それらを総称してIgG4関連疾患として新たな疾患が提唱されました。


肺もIgG4陽性形質細胞が浸潤する臓器として注目されましたが、生検組織が得にくく、また外界からの刺激を容易に受けてしまうという特性ゆえ、他疾患との鑑別または合併の判断が難しいことより、診断が困難となっております。


そこで、研究班の班員の中から呼吸器内科医を中心に、呼吸器ワーキンググループ(WG)を結成し、IgG4関連肺疾患に関してこれまで検討を進めて参りました。

本疾患で、特に重要な意味を持つと思われるのは日本発の疾患概念だということです。

つまり、日本人が気づき提唱したものであるということであり、これを日本から世界に発信しなければならない、という使命が私たちにはありました。


(続く)金沢大学第三内科(呼吸器内科)学会便り(2)

 

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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06 | 呼吸器内科

2013年2月9日

女性医師の生き方セミナー

第3回女性医師の生き方セミナーの御案内です。

女性

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2013年2月8日

金沢大学第三内科:血液・移植研究室紹介(インデックス)

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(5)より続く。

 
血液・移植グループ(インデックス)

1)新メンバーの紹介、人事異動

2)教官の動向

3)再不貧のゲノム解析、HLAアレル欠失血球

4)TPO値、トランスクリプトーム解析

5)自家移植片中微小残存病変 (MRD)と多発性骨髄腫

 

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解シリーズ)
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2013年2月7日

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(5)

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(4)より続く。

 
血液・移植グループ(5)

研究

【高松博幸】

図

 

症例特異的プライマーを用いたPCR法による自家移植片中微小残存病変 (MRD)の有無が多発性骨髄腫の予後に大きく関わること(図1A)と、molecular CR (mCR)症例では長期無増悪生存が可能であること(図1B)を報告しました(2011年米国血液学会)。


その結果に基づいて「症例特異的プライマーを用いた多発性骨髄腫微小残存病変検出と予後に関する検討(北陸造血器腫瘍研究会、JMSG0901附随研究、JSCT-MM12臨床研究)」と「次世代シークエンサーを用いた多発性骨髄腫微小残存病変の検出と予後に関する検討」という二つの重要な臨床研究を遂行しています。 

 

平成25年3月7日〜9日に中尾眞二教授が第35回日本造血細胞移植学会総会を開催されます。

OBの先生方も是非ご参加ください。


(文責:山崎宏人)

 

(続く)金沢大学第三内科:血液・移植研究室紹介(インデックス)

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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2013年2月6日

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(4)

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(3)より続く。

 

血液・移植グループ(4)

研究

【齊藤千鶴】

自己免疫が関与した骨髄不全例で遺伝子変異解析を行い、これまで造血系での報告が少なかったSLIT1という分子の遺伝子変異に注目し、これが造血抑制性因子として働くメカニズムについて研究しています。

また骨髄不全の診断時におけるTPO値の有用性と予後予測について清木先生から引き継ぎ、PNH陰性例での免疫抑制療法の適応を考えるのに良い指標となるか検討しています。


【吉田晶代】
今春より中尾教授や皆様方に諸所ご指導頂き、更に中尾教授の寛大なご指示を賜り今秋より、がん進展制御研究所腫瘍分子生物学 高橋教授のもとで勉強させて頂ける事となりました。

まず高橋教授等が取り組んでこられた、ヒト乳癌細胞株(P53のWT・null各々でRbのKOの有・無を作成)を接種したマウス由来のMEFのsecondary細胞のトランスクリプトーム解析に携わらせていただき、抽出したターゲット遺伝子の生物学的・臨床的意義について研究させて頂く予定です。

今後、その技術・手法論を以て造血器腫瘍にも研究テーマを展開したいと夢を描いています。

頂いた機会を大事にし勉強して参ります。


(続く)金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(5)

 

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2013年2月5日

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(3)

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(2)より続く。

 

血液・移植グループ(3)

研究

今回は学内在籍メンバーの研究内容をそれぞれから紹介してもらいます。

【細川晃平】

2年間の研究生活を終え、4月から病棟に復帰しました。

久々の臨床で慣れない部分もありますが、研修中の先生達と一緒に学びながら、病棟を盛り上げたいと思っています。

研究では9月に無事博士号を取得する事ができました。

再不貧のゲノム解析やsHLAペプチドームを用いた再不貧関連ペプチド解析、TDM症例における遺伝子発現解析を用いた巨核球抑制性サイトカインの同定などをテーマに研究を続けています。

今後は一血液内科医として研鑽を積みつつ、骨髄不全を中心に研究を続け、臨床に役立つ新しい知見を発見していけたらと思っています。


【丸山裕之】

再生不良性貧血患者(AA)の約15%では、片側のHLAクラスIアレルを欠失した白血球が検出されます。

このHLAアレル欠失血球の存在は、造血幹細胞が自己抗原を介したCTLからの攻撃から逃れ、造血に寄与するようになった結果と考えられ、免疫病態の関与する骨髄不全の証拠と考えられます。

AAを含む骨髄不全患者におけるHLAアレル欠失血球の検出頻度や検出血球、検出サイズなどを検討することにより、骨髄不全の免疫抑制療法への反応性を予測する有用なスクリーニング検査を開発することをめざし、検討を進めています。

今後は、多数の新規骨髄不全患者を対象に、臨床研究にて調査を行っていく予定です。

(続く)金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(4)

 

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2013年2月4日

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(2)

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(1)より続く。

 

血液・移植グループ(2)

教官の動向

外来医長3年目の近藤は、この8月に中尾教授が主宰される「第4回造血器腫瘍免疫療法研究会学術集会」の事務局を務めており、その準備に追われています(追記:盛会裏に終わりました)。

小谷は病棟の血液内科領域の責任者として、研修医の指導にあたっています。

高松はBSL係として5年生の教育を担当するとともに、本教室に多発性骨髄腫の研究チームを立ち上げるべく、活発に活動しています。

大畑は日本成人白血病研究グループ(JALSG)の当院副運営委員として、臨床研究の試験責任者も担うようになりました。

高見は「移植細胞源を異にする非血縁造血細胞移植の組織適合性に基づく成績向上と移植選択アルゴリズムの確立に関する研究(研究代表者 森島 泰雄)班」の一員として、博士研究員のLuis先生と精力的に研究をすすめ、2011年は4報の論文報告をしました(Espinoza J Luis先生は2012年10月にアメリカに留学されました)。

(続く)金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(3)

 

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血液凝固検査入門(図解シリーズ)
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2013年2月3日

金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(1)

金沢大学第三内科:血液・移植グループの研究室紹介です。

この原稿は、金沢大学第三内科同門会報からです。

同門会報はまだ発刊されていませんので、先行してのアップになります。

 

血液・移植グループ(1)

新メンバーの紹介

平成24年度の新メンバーは、2年間の初期研修を終えた井美達也先生、嶋有希子先生、松浦絵里香先生、初期研修1年目の中川紀温先生(内科専門コース)、鎧高武志先生、更に、即戦力が期待される本宮佳奈先生、岩間幹一先生の7名です。

中川先生は、当院研修プログラ内科専門コース(血液内科)を選択しており、恵寿総合病院で9か月間の研修を終えた後、2013年1月から血液内科での研修を重点的に行うことになっています。

鎧高先生は福井県立病院との「たすきがけ研修」を選択していますが、最初の3か月間を血液内科で研修し、「自分の進むべき道は血液内科」だと確信して早々に入局宣言してくれました。

 

人事異動

吉田晶代、岩城憲子、丸山裕之の3名が研究期間に入りました。

岩城は、当教室にリンパ腫研究グループを立ち上げるという使命のもと、岡山大学病理学(腫瘍病理)教室に出向し、吉野正教授に師事しています。

佐々木祐美さんは、2年間の医学系修士課程を修了し、4月から出身地静岡の病院で検査技師として働いています。また、共同研究者であった保健学系修士課程の中田勝也さんも研究を終え、有名企業に就職されました。

かわって、この4月から保健学科修士課程1年の杉浦美里さんが抄読会に参加してくれており、ベトナム出身の留学生Dao Thi Thanh An(アン)先生が基礎研究チームの新戦力として新たに加わりました。


学外では、子育て真っ最中の望月果奈子、亀遊(清木)ゆうがそれぞれ富山赤十字病院、厚生連高岡病院に赴任いたしました。

黒川先生、経田先生のバックアップはもちろん、病院全体のご理解のおかげで順調な滑り出しのようです。

(続く)金沢大学第三内科:血液・移植グループ研究室紹介(2)

 

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2013年2月2日

出血傾向(インデックス):医師国家試験対策

出血傾向(8):医師国家試験対策 (抜歯時異常出血、紫斑)より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


出血傾向(医師国家試験対策)インデックス

1)出血傾向のアルゴリズム

2)先天性/後天性

3)出血部位

4)血液検査

5)凝固異常と血液検査

6)鼻出血、出産時大量出血

7)紫斑、胆石

8)抜歯時異常出血、紫斑

 

 

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2013年2月1日

出血傾向(8):医師国家試験対策 (抜歯時異常出血、紫斑)

出血傾向(7):医師国家試験対策 (紫斑、胆石)より続く

参考:血栓止血の臨床日本血栓止血学会HPへ)


【臨床問題(3)】

78歳の男性。抜歯時に止血困難をきたしたため、精査目的に来院した。

既往歴:特記すべき事なし。

家族歴:特記すべき事なし。

身体所見:腹部に拍動性腫瘤を触知し、bruitを聴取した。また、抜歯部位からの出血が持続していた。全身皮膚に斑状出血が散在していた。

血液学的検査:

白血球 6,800、赤血球 387万、Hb 10.6g/dl、血小板 5.6万、ALT 32単位(基準35以下)、クレアチニン 0.8mg/dl、LDH 235単位(基準115〜245)

PT 16.3秒(基準10〜14)、APTT 35.8秒(基準対照32.2)、フィブリノゲン128 mg/dl(基準200〜400)、CRP 0.2 mg/dl(基準0.3以下)、PIVKA-IIは陰性。


まず行うべき検査は何か。

a. 下肢静脈エコー
b. 血管造影検査
c. Dダイマー
d. 骨髄穿刺
e. ADAMTS 13活性


(症例)
・抜歯時に止血困難
・全身皮膚の斑状出血


(解説)

・抜歯をきっかけに明瞭化した出血傾向です。紫斑もみられています。
・ 身体所見が特徴的で、腹部に拍動性腫瘤を触知、bruitを聴取しており、腹部大動脈瘤の存在が疑われます。
・腹部大動脈瘤の患者で出血傾向がみられたら、まず播種性血管内凝固症候群(DIC)線溶亢進型DIC)を疑います。血小板数低下、PT延長、フィブリノゲン低下は、いずれもDICに伴う所見です。あとは、DIC診断にもっとも重要な検査であるFDP、Dダイマーの測定を行えば良いことになります。


(最初に行うべきこと)

・本症例は、線溶亢進型DICが原因となった出血傾向と考えられます。FDP、Dダイマーの測定を行ってDIC診断を確定することが最も重要です。

・線溶活性化が強いタイプのDICの基礎疾患としては、急性前骨髄球性白血病(APL)、大動脈瘤、巨大血管腫、前立腺癌、常位胎盤早期剥離、羊水塞栓などが知られています。血小板数が比較的保たれていても出血症状が強いことが特徴ですが、臓器症状はあまりみられません。

深部静脈血栓症(DVT)(下肢静脈エコー検査で診断されます)でも、FDP、Dダイマーの上昇がみられますが、本症例ではまず行うべき検査ではないです。

・血管造影検査によりも、非観血的検査である造影CTの方が優先されます。

・骨髄穿刺は行っても、特に新たな情報は得られません。しかも、充分に注意しないと穿刺部位に血腫を形成する可能性があります。

・ADAMTS 13活性は、TTPの診断に重要ですが、DICでは敢えて測定しません。

・FDP、Dダイマーの測定を行ってDIC診断を確定した後は、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、プラスミン-α2プラスミンインヒビター 複合体(PIC)、α2プラスミンインヒビター(α2PI)などの測定を行い、DICの病型が線溶亢進型であることを確認したいです。DICの病型により、治 療方針が変わってきます。

(考察)
1)家族歴、現病歴:先天性出血性素因は否定的(参考:先天性凝固因子異常症)。

2)身体所見(症状):紫斑は斑状出血であり、血小板の問題ではなく凝固異常と考えられます。

3)検査:血小板数は低下しています。加えて、フィブリノゲンの低下が著しいです。FDP、Dダイマーの上昇が予想されます。また、TATPICは上昇して、α2PIは低下していることが予想されます(動脈瘤に合併した線溶亢進型DIC)。

参考:線溶関連マーカー

4)FDP、Dダイマーの確定診断、線溶亢進型DICの病型診断の後は、メシル酸ナファモスタット(商品名:フサン)などによるDICの加療を行います。また血管外科へ手術適応についてコンサルトします。


(正答)
c

 

(続く)出血傾向(インデックス):医師国家試験対策

 

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