第12回北陸血栓研究会
第12回北陸血栓研究会の御案内
日時:2014年11月29日(土)15:00〜17 :30
場所:金沢大学附属病院 4F 「CPD センター」
特別講演
『敗血症性 DIC の治療―臨床現場から』
ATIII製剤と遺伝子組換えトロンボモジュリンのエビデンスと本学の成績
滋賀医科大学 救急集中治療医学講座 教授
江口 豊 先生
主催:CSL ベーリング株式会社
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| 研究会・セミナー案内
第77回日本血液学会学術集会(金沢)に向けて
第76回 日本血液学会学術集会(大阪)が始まります。
来年の第77回日本血液学会学術集会(金沢;会長 中尾眞二)に向けて、大阪でプログラム企画委員会が開催されました。
北陸新幹線も開通されますので、多くの皆様にご参加いただけるものと期待しています。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
| 血液内科
第76回 日本血液学会学術集会
第76回 日本血液学会学術集会(大阪)が始まります。
当科からも多数の発表があります。
来年は、中尾教授のもと、金沢で開催されます!
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
| 血液内科
L-アスパラギナーゼの凝固異常とFFP:スライド7
スライド:L-アスパラギナーゼの凝固異常とFFP(新鮮凍結血漿)
<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20
| 血栓性疾患
L-アスパラギナーゼとVTE部位・再発:スライド5&6
リンク:L-アスパラギナーゼと血栓症(インデックス)
スライド:L-アスパラギナーゼとVTE部位・再発
<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 血栓性疾患
L-アスパラギナーゼと小児ALL:スライド4
<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08
| 血栓性疾患
L-アスパラギナーゼと凝固(阻止)因子:スライド3
リンク:L-アスパラギナーゼと血栓症(インデックス)
スライド:L-アスパラギナーゼと凝固因子&凝固阻止因子
<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04
| 血栓性疾患
L-アスパラギナーゼと血栓症(&出血):スライド1&2
L-アスパラギナーゼと血栓症につきましては、既に記事にさせていただいています。
リンク:L-アスパラギナーゼと血栓症(インデックス)
今回は、スライドをアップしたいと思います。
まず、L-アスパラギナーゼと血栓症(&出血)です。
<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| 血栓性疾患
病院紹介:恵寿総合病院
病院紹介
「恵寿総合病院の紹介」 内科医長 大倉 徳幸(平成13年入局)
恵寿総合病院は石川県七尾市の中心部から西寄りに位置し、七尾湾の海に面して建っています。
当院は標榜診療科が24科の総合病院であり、病院の規模は、426床(一般病棟292床、回復期リハビリテーション病棟47床、地域包括ケア病棟47床、障害者病棟40床)です。
第三内科からは真智俊彦先生、山崎雅英先生、谷まゆ子先生、佐伯啓吾先生、大倉徳幸(筆者)の5人が在籍しています。
谷先生、佐伯先生、大倉の3人は呼吸器内科医として2014年4月から新たに赴任しました。
能登地区はとりわけ高齢化が進んでおり、呼吸器疾患だけでなく一般内科、高齢者医療としても診療する場面が少なくなく、様々な専門医の先生方に相談させてもらっています。
気さくな先生方ばかりで、いろいろと相談しやすく、医局の雰囲気は非常に良いと思います。
一方で高度化する医療や多様化する医療需要は、この地域においても決して例外ではありません。
専門医として、医師として、同じ地域の住人として周囲と連携しながら日々精進していくことを心がけています。
<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09
| その他
しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編
関連書籍「臨床に直結する血栓止血学」
<リンク>
推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40
| 血栓止血(血管診療)
第1回 北陸血栓止血検査研究会
<第1回 北陸血栓止血検査研究会>
日時:2014年10月25日(土)15:00 〜 17:00
場所:石川県地場産業振興センター 第7研修室(本館1F)
◇ ご挨拶 15:00 ~ 15:10
研究会発足のご挨拶
金沢赤十字病院(研究会代表幹事)
川端 絵美子
◇ 演題1 15:10 ~ 15:40
凝固系分子マーカーSF「可溶性フィブリン」について
積水メディカル株式会社 カスタマーサポートセンター
金田 幸枝
◇ 演題2 16:00 ~ 17:00
<特別講演> DIC診断基準と血液検査の役割
金沢大学附属病院
朝倉 英策
備考:参加条件なし/参加費無料 (定員100名)
本研究会は「日臨技生涯教育研修制度 専門教科 20点」に該当します
主催: 北陸血栓止血検査研究会
共催:
富山県臨床検査技師会
石川県臨床衛生検査技師会
福井県臨床検査技師会
積水メディカル株式会社
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:41
| 研究会・セミナー案内
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(インデックス)
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(インデックス)
<インデックス>
1)血栓症の分類
2)治療の考え方
3)アスピリン
4)ワルファリン
5)モニタリング
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21
| 抗凝固療法
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):モニタリング
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(5)
がん患者と抗血栓療法のインデックス
<抗凝固療法のモニタリング>
抗凝固薬のうち経口薬であるワルファリン、注射薬であるヘパリンともにモニタリングを適切に行うことで安全かつ効果的な治療を継続できます。
その際、効果、安全性の両面からの評価は肝要です。
新規経口抗凝固薬はまだ定まったモニタリング法はないため、表では私案として記載しました。
薬 剤 |
効 果 |
副作用(出血) |
未分画へパリン |
FDP、Dダイマー、TAT、SFなど |
APTT(通常1.5〜2.0倍)(※1) |
低分子へパリン |
FDP、Dダイマー、TAT、SFなど |
APTT(常用量では延長しない) |
ダナパロイド |
FDP、Dダイマー、TAT、SFなど |
APTT(常用量では延長しない) |
ワルファリン |
F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど |
PT-INR(通常2.0〜3.0)(※1) |
新規経口抗凝固薬 |
F1+2、Dダイマー、TAT、SFなど |
PT、APTT(※2) |
アスピリン(※3)
|
な し |
な し |
TAT:thrombin-antithrombin complex(トロンビン-アンチトロンビン複合体)
SF:soluble fibrin(可溶性フィブリン)
F1+2:prothrombin fragment 1+2(プロトロンビンフラグメント1+2)
(※1)
APTTが1.5〜2.0倍に延長していても効果を発揮しているとはかぎらない。
APTTが過度に延長している場合には出血のリスクがあると考えるべきである。
APTTが1.5〜2.0倍の状態でかつ効果判断のマーカーをチェックしたい。
PT-INRについても同様に判断する。
(※2)
新規経口抗凝固薬(NOAC):
ダビガトランはAPTTの方が延長しやすい。
イグザレルト、エドキサバンはPTの方が延長しやすい。
アピキサバンはいずれも延長しにくい。
ただし、用いる試薬によって感受性が大きく異なるため注意を要する。
いずれのNOACともに内服2〜3時間後に血中濃度がピークとなるが、そのポイントでのPT、APTTの延長が想定範囲内であることを確認する。
万一、トラフでのPT、APTTが明らかに延長していれば出血のリスクがある。
(※3)
アスピリンなどの抗血小板薬のモニタリングは研究室レベルではいくつか試みられているが、臨床の場で簡便にチェックできるマーカーはない。
(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| 抗凝固療法
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):ワルファリン
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(4)
がん患者と抗血栓療法のインデックス
<がん患者におけるワルファリン治療>
がん患者でワルファリン(ビタミンK(VK)拮抗薬)治療が行われているのは、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)といった静脈血栓塞栓症(VTE)や心房細動などに罹患していたためにがん発症以前よりワルファリンを内服していた場合と、がんという血栓症の危険因子を発症したためにがん診断時または治療経過中にVTEを発症した場合があります。
いずれの場合であっても、がん化学療法とワルファリン治療が併行して行われている場合には次のような注意点があります。
1) 抗がん剤のなかには、ワルファリンの効果に影響を与えるものが少なくないため、その都度薬物相互作用の確認が必要です。
2) 抗がん剤治療に伴って食欲低下をきたすとVKの摂取も低下するため、ワルファリン過剰投与になります。
3) 抗がん剤治療により白血球数低下をきたし感染症を併発し抗生剤が投与されると、VK産生源である腸内細菌も死滅するため、ワルファリン過剰投与になります(NSAIDの併用があればさらに影響が大きいです)。
4) 肝胆膵悪性疾患(腫瘍)に伴う胆道閉塞やPTCD(経皮経肝胆管ドレナージ)のために胆汁排泄の低下をきたすと、ワルファリン過剰投与になります(VKは脂溶性ビタミンのために吸収のために胆汁が必要です)。
PT-INRを通常よりも頻回にチェックしてワルファリン用量を調整する必要があります。
化学療法に伴い食事摂取量が極端に低下することが予想される場合には、あらかじめ1週間程度ワルファリン用量を減量した上でPT-INRを追跡するのも一法です。
あるいは、入院中はヘパリンの皮下注または半減期の長いヘパリン類であるダナパロイドなどの注射薬で抗凝固療法を行い、外来移行の計画が決まった時点で退院2週間くらいまえからワルファリンへ移行するのも良いでしょう。
また、がん患者ではワルファリンの効果が不十分になりやすいことが知られているために、ワルファリンコントロール不良の如何にかかわらず入院中はヘパリン類でコントロールするという考え方もあります。
Prandoni P, et al. Recurrent venous thromboembolism and bleeding complications during anticoagulant treatment in patients with cancer and venous thrombosis. Blood. 2002; 100: 3484-88.
Akl EA, et al. Anticoagulation for the long-term treatment of venous thromboembolism in patients with cancer. Cochrane Database Syst Rev. 2014; 7: CD006650.
(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42
| 抗凝固療法
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):アスピリン
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(3)
がん患者と抗血栓療法のインデックス
<がん患者における抗血小板療法>
虚血性心疾患や脳梗塞などに対してアスピリンなどの抗血小板薬内服中のがん患者において問題になるのは、化学療法や放射線療法に伴い血小板数が低下した場合に、抗血小板薬を継続できるかどうかの判断です。
この問題点を解決するエビデンスとなるような臨床試験は存在しませんが、通常血小板数が3〜5万/μL以上であれば、抗血小板療法を継続できる場合が多いです。
一方、血小板数が3〜5万/μL未満となった場合には、抗血小板療法を継続することのメリット(動脈血栓症の予防)とデメリット(出血の副作用)を比較して慎重に判断することになります。
なお、一般的には、血栓症では致命的になることが少なくないですが、出血の副作用で致命症になるのは例外的です。
判断に迷った場合には、血栓症対策に比重をおく方が良い場合が多いです。
(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34
| 抗凝固療法
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):治療の考え方
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(2)
がん患者と抗血栓療法のインデックス
<血栓症の分類と治療の考え方>
------------------------------------------------------------
1. 動脈血栓症
・ 血流が速い環境下の血栓症。
・ 血小板活性化が主病態。
・ 血小板血栓。
・ 病理:白色血栓(血小板が白い)。血小板含有量の多い血栓。
・ 脳梗塞(心房細動を除く)(※1)、心筋梗塞、末梢動脈血栓症、腸間膜動脈血栓症など。
・ 抗血小板薬が有効(※2)。
2. 静脈血栓症
・ 血流が遅い環境下の血栓症。
・ 凝固活性化が主病態。
・ 凝固血栓。
・ 病理:赤色血栓(赤血球が赤い)。血流が遅い環境下で赤血球を巻き込んだフィブリン含有量の多い血栓。
・ 深部静脈血栓症、肺塞栓、門脈血栓症、腸間膜静脈血栓症、心房細動に起因する脳梗塞(心原性脳塞栓)(※1)など。
・ 抗凝固薬が有効(※3)。
------------------------------------------------------------
(※1)心房細動に起因する脳梗塞は血栓で閉塞する部位は脳動脈ですが、血栓形成機序は心内血液滞留であり、血流が遅い環境下の凝固血栓の性格です。
(※2)抗血小板薬:アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、シロスタゾール、ベラプロストナトリウム、サルポグレラートなど(シロスタゾール、ベラプロストナトリウム、サルポグレラートには血管拡張作用を合わせ持つ)。
(※3)抗凝固薬:ワルファリン、新規経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、エドキサバン、アピキサバン)、へパリン類(未分画へパリン、低分子へパリン、ダナパロイド、アリクストラ)★、アルガトロバン★、トロンボモジュリン★など(★は、注射薬、他は経口薬)。
(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
| 抗凝固療法
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法):血栓症の分類
がん患者と抗血栓療法(抗凝固/血小板療法)(1)
がん患者と抗血栓療法のインデックス
<血栓症の分類>
血栓症の分類は、治療法を考える上でも重要です。
血栓症発症を阻止する治療を「抗血栓療法」と言いますが、そのうち、血小板を抑制する治療を「抗血小板療法」、凝固を抑制する治療を「抗凝固療法」と言います。
形成された血栓を溶解する治療が、線溶療法(血栓溶解療法)です。
抗血小板療法と、抗凝固療法の使い分けは重要です。
使い分けを間違えますと、出血の副作用のみが前面に出て効果はないという最悪の事態になります。
動脈血栓症では、血流が速い環境下で活性化された血小板が血栓形成に関与するため、抗血小板療法が有効です。
一方、静脈血栓症では、血流が遅い環境下で凝固が活性化されるため、血栓形成には凝固因子の関与が大きいです。
このため、抗凝固療法が有効です。
心房細動は脳塞栓の重要な危険因子です。
脳動脈を血栓が閉塞しますが、血栓形成部位は心臓内です。
心房細動があると心臓が規則正しく収縮しないため、心内に血液滞留を生じます。
そのため、血栓の性格は、血流が遅い環境下の静脈血栓(凝固血栓)と類似しています。
有効な治療法は、抗血小板療法ではなく抗凝固療法です。
がんは、究極の血栓症とも言える播種性血管内凝固症候群(DIC)の基礎疾患としても重要です。
DICの病型分類にまで踏み込むことで適切な治療が可能です。
特に、線溶亢進型DICは原疾患が悪化していても高度な出血症状をコントロール可能です。
(続く)がん患者と抗血栓療法のインデックス
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 抗凝固療法
血友病A:インヒビター治療としてのリツキシマブ
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「血友病A患者におけるインヒビター治療としてのリツキシマブ(臨床第2相試験)」
著者名:Leissinger C, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 112: 445-458, 2014.
<論文の要旨>
血友病A患者に第VIII因子製剤を投与することによる第VIII因子抗体の出現は、出血症状を悪化させるために重大な合併症です。
免疫寛容療法に失敗した症例や免疫寛容療法の適応のない症例においては、抗体を消失させる治療はありませんでした。
インヒビター保有先天性血友病A症例に対するリツキシマブ臨床試験(The Rituximab for the Treatment of Inhibitor in Congenital Hemophilia A: RICH)は、第VIII因子インヒビター力価を低下させることができるかどうかを評価するための第2相臨床試験です。
対象は、重症血友病Aでインヒビター力価5BU以上を有する症例であり、リツキシマブ375mg/m2が毎週(1〜4Wまで)投与されました。
リツキシマブ投与後に、6〜22Wまでインヒビター力価が測定されました。
少なくともリツキシマブ1回以上が投与された16症例のうち3例(18.8%)ではmajor responseが得られました(major response : インヒビターが5BU未満となり、第VIII因子製剤を再投与しても力価の上昇がみられない場合)。
1例ではminor responseでした(minor response :インヒビター力価5BU未満となったが、第VIII因子製剤再投与後に5〜10BUまで再上昇。ただし、治療前力価の50%未満に留まる場合)。
以上、リツキシマブは、インヒビター保有先天性血友病A症例インヒビター力価を低下させるのに有用と考えられましたが、単剤治療としての効果は弱いと考えられました。
リツキシマブは、免疫寛容療法に対する補助的治療としての意義を今後検討すべきと考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16
| 出血性疾患
血友病:健康関連QOLに影響を与える要因
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「血友病患者における健康関連QOLに影響を与える要因」
著者名:後藤美和、他
雑誌名:日本血栓止血学会誌 25: 388-395, 2014.
<論文の要旨>
血友病患者のQOL(quality of life)には、関節内出血やインヒビター、感染症、関節症、日常生活活動(ADL)などの関与が推察されます。
本研究の目的は、血友病患者の健康関連QOL(HRQOL)に最も影響を及ぼす要因を明らかにすることです。
16歳以上の血友病患者を対象に、基礎情報と社会的背景、身体的•精神的サポート満足度、ADL、HRQOL(SF36)を調査しました。
有効回答は259名(37.5%)、平均40.9歳でした。
重症者が64.5%で、HCV(hepatitis C virus)陽性が78.8%、HIV(human immunodeficiency virus)陽性が35.5%、インヒビター保有は8.9%でした。
ロジスティック回帰分析にて、HRQOLに最も影響を与える要因は、身体的健康度はADLで、精神的健康度は職場からの身体的•精神的サポートの満足度でした。
血友病患者のHRQOL向上において包括的な介入が必要で、身体的健康にはADL向上が、精神的健康には就労支援が重要です。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09
| 出血性疾患
Factor VIIa製剤:第VII因子欠乏症/血小板無力症
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「Factor VIIa製剤の過去•現在」
著者名:桑原光弘
雑誌名:日本血栓止血学会誌 25: 475-481, 2014.
<論文の要旨>
インヒビターを保有する先天性あるいは後天性の血友病患者の止血治療には、第VIII因子/第IX因子をバイパス(迂回)する製剤が必要になります。
薬理学的濃度の遺伝子組換え活性型凝固第VII因子製剤(rFVIIa)は、活性化血小板膜上で、第VIII因子/第IX因子をバイパスして直接第X因子を活性することが出来ます。
血漿から精製された活性型凝固第VII因子が、インヒビターを保有する先天性血友病A患者に初めて投与され、1983年に報告されました。
その後rFVIIaは1996年に欧州で、2000年に日本で製剤として正式に承認されました。
また現在rFVIIaは、先天性第VII因子欠乏症や、グランツマン血小板無力症の出血抑制に対しても承認されています。
現在、rFVIIaの改良型製剤、あるいは別の作用機序によるrFVIIaの代替製剤の開発が、複数メーカーより行われています。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04
| 出血性疾患
血液凝固ヒトXII因子:XII因子阻害薬は理想的な抗血栓薬か
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「血液凝固ヒトXII因子を巡る最近の動向」
著者名:寺澤秀俊、他
雑誌名:日本血栓止血学会誌 25: 411-422, 2014.
<論文の要旨>
XII因子はin vitroにおいて内因系凝固経路の開始因子として必須の凝固因子です。
XII因子欠損患者は出血傾向を示さないこと、その活性化に必須の陰性荷電物質の生体内での存在が不明であることから、XII因子のin vivoの役割は長年謎に包まれていました。
近年、生体内物質によりXII因子が活性化し、内因系凝固経路やキニン-カリクレイン系が活性化することが明らかとなり、XII因子と病態との関連も示唆されています。
XII因子欠損型マウスが作製されたことを契機に、XII因子の生理的な意義が見直されつつあります。
XII因子欠損型マウスは血栓形成に抵抗性を示します。
XII因子活性を特異的に低下させることにより、出血を助長することなく病的血栓形成を防止できることから、XII因子阻害薬は理想的な抗血栓薬となる可能性を有しており、種々の薬剤候補が見出されています。
凝固異常や血栓傾向のスクリーニングとしてXII因子活性が測定された約9000人を活性値100%以上から10%以下まで10%ごとに11区分し、観察期間中の死亡率(死亡原因は特定しない)を調査したところ、XII因子活性の低下とともにその危険率はリニアに高まり、XII因子活性が10−20%の群では100%以上の群に比べて、危険率は4.7倍高かったです。
しかし、XII因子活性が10%以下になると100%以上と同等の危険率まで低下しました。
この傾向は、虚血性の心疾患による死亡に限っても同様でした。
XII因子活性と死亡リスクに関する大規模な免疫調査が待たれます。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
| 出血性疾患
ビタミンK欠損症:胆汁酸吸収不全症/コレスチラミン
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「89才男性におけるビタミンK欠損症に起因する出血 」
著者名:Seguna R, et al.
雑誌名:Lancet 384(9942): 556, 2014.
<論文の要旨>
89才の男性が自宅内で転倒し軽度の頭皮裂傷をきたしたところ、止血しないために来院しました。
1週間前には手根管開放術が行われていましたが、左手の腫脹と皮下出血が進行していました。
既往歴には、特発性胆汁酸吸収不全症がありました。
コレスチラミンとビタミンDを内服していましたが他薬の内服はありませんでした。
PT>180秒、APTT132.5秒と著しく延長していましたが、トロンビン時間は正常でした。
APTTの混合試験では、APTTの延長が補正され、インヒビターは否定されました。
4つのビタミンK依存性凝固因子は1〜6%に低下していました。
経静脈的にビタミンK10mgを投与を開始し、止血目的にプロトロンビン複合体製剤(30単位/kg)を投与したところ、20分後には、PT&APTTは正常化し、優れた止血効果がえられました。
ビタミンKは、ビタミンK依存性凝固因子(半減期の短い順に、VII、IX、X、II)の肝における産生に必要な回腸末端で吸収される脂溶性ビタミンです。
ビタミンKの吸収のためには、腸管絨毛が機能していること、胆汁酸の存在、脂肪の吸収が必要です。
コレスチラミンは胆汁酸の捕足剤であり、胆汁酸吸収不全とともにビタミンK欠乏症を伴うことがあります。
胆汁酸吸収不全症やコレスチラミン服用者では、脂溶性ビタミン(ビタミンK, A, D, E)欠乏症をきたしうることを考慮すべと考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
| 出血性疾患
妊婦合併特発性血小板減少紫斑病(ITP)診療の参照ガイド
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「妊婦合併特発性血小板減少紫斑病(ITP)診療の参照ガイド」
著者名:宮川義隆、他
雑誌名:臨床血液 55: 934-947, 2014.
<論文の要旨>
妊娠初期から中期の出血症状がない妊婦においては、血小板数を3万/μl以上に保つことを目標とします。
治療を要する場合には、副腎皮質ステロイド療法(プレドニゾロン)あるいは免疫グロブリン大量療法を行うべきです。
ヘリコバクター・ピロリ除菌療法は除菌成功例の約半数に血小板増加反応が認められ安全に行える治療法ですが、妊娠時には薬剤が胎児に及ぼす影響を考慮する必要があります。
妊娠中のトロンボポエチン受容体作動薬は、治療上どうしても必要な場合を除き投与すべきではありません。
非妊娠時の治療において、トロンボポエチン受容体作動薬を使用中の女性患者については妊婦を希望する際には中止し、副腎皮質ステロイド療法などによって血小板数が安定した時点で妊婦を許可することが望ましいです。
妊娠中の脾臓摘出術は、流産の危険性が高く避けたほうがよいです。
分娩時期は原則的に自然経過を観察しますが、頸管成熟との兼ね合いで妊婦37週以降であれば分娩のタイミングを計ります。
分娩時の血小板数について安全といえる血小板数の閾値は明確でありませんが、経膣分娩であれば5万/μl以上、区域麻酔下による帝王切開であれば8万/μl以上が目安となります。
治療は副腎皮質ステロイド療法(プレドニゾロン)か、免疫グロブリン大量療法が推奨されます。
副腎皮質ステロイドあるいは免疫グロブリン大量療法を受ける患者の授乳が児に与える影響は少なく、通常は授乳制限を必要としません。
新生児の血小板数が5万/μl未満に減少する頻度は約10%、頭蓋内出血を合併する頻度は1%と推定されます。
分娩前に新生児の血小板数を予測する方法として、前子と次子の血小板数の相関が高いことが有用です。
新生児の血小板減少の治療は、出血症状のない場合、血小板数3万/μl未満であれば免疫グロブリン大量療法あるいは副腎皮質ステロイド薬の投与を考慮します。
出血症状がある場合、血小板数3万/μl未満であれば免疫グロブリン大量療法あるいは副腎皮質ステロイド薬の投与とともに、血小板数5万/μl以上を目標に血小板濃厚液の輸血を考慮します。
【注意】
診療にあたっては、必ず「妊婦合併特発性血小板減少紫斑病診療の参照ガイド」の全文を熟読すること。
「妊婦合併特発性血小板減少紫斑病(ITP)診療の参照ガイド」
著者名:宮川義隆、他
雑誌名:臨床血液 55: 934-947, 2014.
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
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慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の深部静脈血栓症
論文紹介です。
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、クロスミキシングテスト
「TPO受容体作動薬を使用し抗凝固療法への移行が可能であった下肢深部静脈血栓症合併慢性ITP急性増悪」
著者名:河野宏樹、他
雑誌名:臨床血液 55: 697-702, 2014.
<論文の要旨>
症例は70歳と49歳の男性で、慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の経過中の下肢深部静脈血栓症を合併し急性増悪による出血症状を呈しました。
いずれもステロイド抵抗性を示し、トロンボポエチン受容体作動薬(eltrombopag, romiplostim)を使用しました。
当初出血症状があり抗凝固療法は施行不能でしたが、血小板造血の回復が得られ、ワーファリンの内服を開始することができました。
近年、ITPの易血栓性病態としての側面が注目されつつありますが、血栓症を合併したITP急性増悪の報告はほとんどなく、またITPと血栓症の関連や病態は不明です。
著者らの2症例ではトロンボポエチン受容体作動薬投与後に幼若血小板数の増加が確認され血小板造血不全の病態が示唆されました。
トロンボポエチン受容体作動薬による血栓症の明らかな増悪は確認されませんでしたが、血栓症への影響は不明な点が多く、血栓症をモニタリングしながら抗凝固療法のタイミングを図る必要があると考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
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成人ITP患者における20年間死亡率
論文紹介です。
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、クロスミキシングテスト
「成人ITP患者における20年間死亡率 」
著者名:Frederiksen H, et al.
雑誌名:Br J Haematol 166: 260-267, 2014.
<論文の要旨>
免疫性血小板減少症(ITP)患者では、一般人と比較して死亡率が1.3〜2.2倍高まると報告されています。
しかし、長期間の死亡率や死因別死亡率についてのデータはあまりない。
著者らは、新規に診断された成人ITP患者について、最長37年間まで追跡して、5年、10年、20年の死亡率を検討したところ、それぞれ22%、34%、49%でした。
この死亡率は一般人と比較して持続的高く、補正HRは1.5でした。
死因別の補正HRについては、心血管疾患、感染症、出血、造血系悪性腫瘍につして、それぞれ1.5、2.4、6.2、5.7でっした。
一方、固形癌や他の原因による死亡率はITPと一般人の間に差異はみらませんでした。
以上、ITP患者は一般人と比較して死亡率は高く、その原因疾患として、心血管管疾患、感染症、出血、造血器悪性腫瘍が挙げられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36
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トロンボポエチン受容体作動薬と寛解期間の延長
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「成人ITPに対するトロンボポエチン受容体作動薬の一時的な使用と寛解期間の延長」
著者名:Mahavas M, et al.
雑誌名:Br J Haematol 165: 865-869, 2014.
<論文の要旨>
トロンボポエチン受動態作動薬(TPO-RAs)は、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の優れた治療薬です。
最近、成人ITPにおいてTPO-RAsを中止した後も寛解が維持される症例が報告されています。
著者らは、TPO-RAを一時的に用いることで永続的な寛解を維持できるかどうか検討しました。
TPO-RAによる治療が少なくとも1日以上行われた成人ITP症例(n=54)を対象としました。
完全寛解となった28例中20例においてTPO-RAsは中止されました。
TPO-RA治療開始時点において前治療の影響があると考えられた6例は除外しました。
全体としては、慢性ITPの8例においては持続した反応がみられました(経過観察の中央値13.5M(5〜27M)。
反応が維持した場合の予知因子は発見することができませんでした。
以上、TPO-RAsによる治療をうけたITP症例のうち大部分の症例で、治療中止後も反応が継続されると考えられた。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31
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先天性凝固因子欠損症の消化管出血
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「先天性凝固因子欠損症(血友病、von Willebrand病)の消化管出血と大腸内視鏡検査を契機に発見された凝固因子欠損症3例の検討」
著者名:加藤忠、他
雑誌名:日本血栓止血学会誌 25: 504-511, 2014.
<論文の要旨>
(目的)
先天性凝固因子欠損症の消化管出血と大腸内視鏡検査時に偶然発見された先天性凝固因子欠損症の特徴を検討しました。
(方法)
愛知三の丸病院に消化管出血で受診した凝固因子欠損症34例81回の出血源と、新規発見例3例(血友病A、血友病B、von Willebrand病各1例)を検討しました。
(結果)
出血源は上部消化管病変65回、下部消化管病変8回、内視鏡処置後8回で、内視鏡診断した26例48回では、上部消化管病変32回(潰瘍21回、粘膜病変9回、癌2回)、下部消化管病変8回(腫瘍2回、大腸壁内血腫1回、肛門病変5回)、大腸内視鏡処置後8回でした。
新規発見例は全例軽症で出血歴はあるが自覚がなく、検査前診断例は1例のみでした。
(結語)
凝固因子欠損症では粘膜出血、大腸壁内血腫、ポリープ切除後2週間以上での出血が特徴的で、軽症例発見には出血歴の注意深い問診と出血関連検査の軽度異常の精密検査が必要です。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24
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von Willebrand病における胃腸粘膜の血管形成異常
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「von Willebrand病における胃腸粘膜の血管形成異常」
著者名:Franchini M, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 112: 427-431, 2014.
<論文の要旨>
von Willebrand病(VWD)(とくに2型、3型)における出血症状のうち胃腸管出血の対策は最も困難です。
解剖学的には、消化管粘膜に血管形成異常を伴うことが背景にあります。
補充療法が止血に有効ではあるものの、胃腸管出血は他部位の止血よりも難渋します。
予防的補充療法を継続することが治療の主体になりますが、費用を要すること、静注を繰り返すことの不便さがあり、しかも毎回有効とは限りません。
VWF含有第VIII因子製剤には、VWF高分子マルチマー分画(血管異形成部分のように高ずり応力下ではとくに重要)が欠如していることも、治療効果が得られない場合の原因となっています。
おそらく、今後登場する遺伝子組換えVWF製剤であればこの問題は解決されます。
VWDにおいて血管形成異常がみられる原因は長年不明でした。
最近の実験では、VWFに血管新生抑制作用があるとも報告されています(VWF欠損では異常な血管が新生されます)。
血管新生抑制作用を有する薬物が数多く知られていますが、臨床的に有用かどうかは不明です。
新しく異常血管が形成された場合にVWF含有製剤の定期補充療法の効果に期待したいですが、臨床経験上は定期補充療法を行っても血管新生は抑制されません。
おそらく、VWF含有製剤の補充療法を行うことで、血管内のVWF活性は上昇しても、血管内皮を含む細胞におけるVWFレベルは変わらないためでしょう。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17
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von Willebrand病の臨床検査診断と診断基準による差違
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
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「von Willebrand病(1型)の臨床検査診断と用いる診断基準による差違」
著者名:Quiroga T, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 1238-1243, 2014.
<論文の要旨>
著者らは、von Willebrand病(VWD)1型の診断に用いる診断基準の影響について評価しています。
5年間に臨床検査に提出された4,298例を対象としました。
(1) National Heart, Lung, and Blood Institute recommendationでは、VWF抗原とVWFリストセチンコファクター活性(VWF:RCo)<30IU/dLでVWD1型と診断され、VWF値30〜50 IU/dLでVWD疑いとされます。
(2) つ目の診断基準では、VWF抗原、VWF:RCo、VWFコラーゲン結合能(VWF:CB)の3パラメータのうち2つで≦2.5パーセントで診断され、同じくパーセンタイル設定でVWD疑いと診断されます。
(3) つ目の診断基準(EUVWD)では、VWF:RCo(またはVWB:CB)≦40 IU/dLで診断されます。
(4) つ目の診断基準(ZPMCBVWD)では、VWF抗原またはVWF:RCo≦40 IU/dLで診断されます。
3つの測定法は高い相関がみられ、<120 IU/dLでは優れた一致率を示しました。
(1) の診断基準では、122例(2.8%)がVWD1型と診断され、704例(16.4%)がVWD疑いと診断されました。
(2) の診断基準(パーセンタイルを使用)では、VWD1型は280例(6.5%)まで診断される者が増加し、169例(3.9%)がVWD疑いと診断されました。
(3) と(4) の診断基準では、VWDの診断がそれぞれ339例(7.9%)、357例(8.3%)まで増加しました。
同じデータを用いても診断基準に何を用いるかによってVWD(1型)診断率に3倍の開き(2.8〜8.3%)があるものと考えられました。
この理由は、VWF値のカットオフ値をどのレベルに設定(<30〜約40 IU/dL)するかに依存しているものと考えられました。
VWDの臨床検査診断については、更に診断基準を吟味することが重要と考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11
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von Willebrand病と加齢
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「von Willebrand病と加齢」
著者名:Sanders YV, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 12: 1066-1075, 2014.
<論文の要旨>
高齢のvon Willebrand病(VWD)の患者が増加しており、VWDの加齢の病態生理の検討が重要となっています。
著者らは、von Willebrand因子(VWF)と第VIII因子の加齢による変化と、出血症状との関連について検討しました。
対象は、VWF値≦30 U/dLのVWD患者です。
患者が出血エピソードやVWD治療内容について報告しました。
また、65才以上の高齢者(n=71)と、65才未満の若年者(16〜64才、n=593)に分類して比較しました。
その結果、VWD1型の高齢者では、10才年齢が増加するごとにVWF抗原は3.5 U/dL上昇し、FVIII活性は7.1 U/dL上昇しました。
この上昇する現象はVWD2型ではみられませんでした。
VWD2型においては、高齢者の方が若年者よりも出血症状は高度でした(VWD1型ではこの現象はありませんでした)。
以上、VWD1型ではVWFと第VIII因子活性は年齢とともに上昇したが出血症状が軽減することはありませんでした。
VWD2型においては、VWF関連マーカーは加齢で上昇することはなく、高齢者では出血が増加すると考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:04
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