血液内科試験:von Willebrand 病(VWD)
平成25年度 内科学卒業試験(BSL評価試験)血液内科学
平成25年9月10日(火)
23歳、女性。
1歳頃より皮下出血や鼻出血を高頻度に認めていた。
3歳時の予防接種後に接種部位の出血がなかなか止まらず、凝固学的精査を行った所、APTT 72.1秒(25.0-37.0)、PT11.5秒(10.0-11.8)、FVIII活性1.8%(70.0-130)、von Willebrand因子(VWF)活性6%未満、VWF抗原量5%未満であり、von Willebrand 病(VWD)と診断された。
またVWF マルチマー泳動においてバンドは全く見られなかった。
患児の妹もVWDと診断された。
治療経過として出血時に( )の投与を開始したが、約20回目の投与中に、呼吸困難などのアナフィラキシー症状が出現。
その時の採血検体から高力価の抗VWFインヒビターが検出された。
上記の( )に当てはまるものはどれか。1つ選べ。
a. 濃厚血小板
b. 新鮮凍結血漿
c. デスモプレシン(DDAVP)
d. 血漿由来第VIII因子製剤
e. 遺伝子組換え第VIII因子製剤
(解説)
この問題は、サービス問題です。
試験問題というよりも、von Willebrand 病(VWD)とはどういう病気なのか、試験時間中に勉強していただけます。
血漿由来第VIII因子製剤が、VWDの出血時の治療薬です(遺伝子組換え第VIII因子製剤は不可です)。
デスモプレシン(DDAVP)も、VWDの出血時の治療薬ですが、von Willebrand因子(VWF)活性6%未満の重症症例には無効です。加えて、アナフィラキシー症状の出現もありません。
(正答)d
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
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血液内科試験:播種性血管内凝固症候群(DIC)
平成25年度 内科学卒業試験(BSL評価試験)血液内科学
平成25年9月10日(火)
播種性血管内凝固症候群(DIC)に関する以下の記載を読み設問に答えよ。
凝固活性化は高度であるが線溶活性化が軽度に留まるDICは、敗血症に合併した例に代表される。
線溶阻止因子(1)が著増するために強い線溶抑制状態となり、多発した微小血栓が溶解されにくく微小循環障害による臓器障害が高度になりやすいが、出血症状は比較的軽度である。
このようなDICを「線溶抑制型DIC」と称している。検査所見としては、凝固活性化マーカーである(2)は上昇するものの、線溶活性化マーカーである(3)は軽度上昇に留まる。
また、微小血栓の溶解を反映する(4)やフィブリン分解産物の最小単位である(5)も軽度上昇に留まるのが特徴である。
上記のうち、「プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)」にあたるものはどれか。1つ選べ。
a. 1
b. 2
c. 3
d. 4
e. 5
(解説)
この問題はサービスです。試験というよりも、「線溶抑制型DIC」とはどういうDICなのかを、試験時間内に勉強していただけます。
1. プラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)
2. トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)
3. プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)
4. FDP
5. D-ダイマー
(正答)c
(参考)
・ 播種性血管内凝固症候群(DIC)
・ 血液凝固検査入門
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07
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血液内科試験:線溶機序
平成25年度 内科学卒業試験(BSL評価試験)血液内科学
平成25年9月10日(火)
線溶機序に関する以下の記載を読み設問に答えよ。
抗血栓機序はヒトでは不完全のようで、ヒトは血栓症を発症しやすい生き物ということができる。
一方、形成された血栓を溶解する働きが、線溶である。
具体的には、血管内皮から(1)が産生されると、これは、肝臓で産生されて血中に放出された(2)を(3)に転換する。
(3)は、血栓(フィブリン)を分解して(4)にする。
つまり、(4)の血中濃度が高いというのは、血栓が形成された後に溶解したことを意味する。
たとえば、播種性血管内凝固症候群(DIC)や深部静脈血栓症では、血栓が形成されてその一部が溶解されるため、(4)は上昇する。
なお、(1)や(2)は(5)親和性が高いために、血栓の存在する部位では効率よく線溶が進行する。
上記のうち、「組織プラスミノゲンアクチベータ」にあたるものはどれか。1つ選べ。
a. 1
b. 2
c. 3
d. 4
e. 5
(解説)
この問題は、サービスです。試験というよりも、線溶機序を試験時間内に勉強していただけます。
1. 組織プラスミノゲンアクチベータ
2. プラスミノゲン
3. プラスミン
4. FDP
5. フィブリン
(正答)a
(参考)
・線溶とt-PA&プラスミノゲン:血液凝固検査入門(10)
・線溶機序:医師国家試験対策
・強力な止血機序と血栓症:血液凝固検査入門(11)
・トランサミン(インデックスページ)
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27
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血液内科学試験:血小板数低下、ダビガトラン
平成25年度 内科学卒業試験(BSL評価試験)血液内科学
平成25年9月10日(火)試験時間14:00〜15:00(60分間)
正答を順次アップしてまいります。
血小板数低下をきたす疾患に関する記載として正しいものはどれか。1つ選べ。
a. HELLP症候群の3徴候は,溶血、腎不全、血小板数低下である。
b. 挙児を希望する抗リン脂質抗体症候群(APS)の女性患者に対しては、アスピリンとワルファリンの併用が有効である。
c. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)においては、血小板分布幅(platelet distribution width:PDW)が小さくなる。
d. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)ではADAMTS 13活性が上昇する。
e. Upshaw-Schulman症候群では、新鮮凍結血漿の定期輸注が有効である。
(解説)
a. HELLP症候群の3徴候は,溶血、肝酵素上昇、血小板数低下です。
b. 挙児を希望する抗リン脂質抗体症候群(APS)の女性患者に対しては、アスピリンとヘパリンの併用が有効です。ただし、ヘパリンは全例で使用する訳ではありません。
c. 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)においては、血小板分布幅(platelet distribution width:PDW)や平均血小板容積(mean platelet volume:MPV)が大きくなります。
d. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の典型例では、ADAMTS 13に対する自己抗体が出現して、ADAMTS 13活性が低下します。
e. Upshaw-Schulman症候群では、新鮮凍結血漿の定期輸注が有効です。
(正答)e
血栓止血の臨床に関する記載として正しいのはどれか。1つ選べ。
a. ビタミンKを内服すると、出血時間が短縮する。
b. ダビガトラン(プラザキサ)を内服すると、血中フィブリノゲンが上昇する。
c. 脳静脈洞血栓症の抗血栓療法としては、アスピリンが第一選択である。
d. ワルファリンを内服すると、血中プロテインC活性が低下する。
e. 心原性脳塞栓予防を目的とした抗血栓療法としては、アスピリンが第一選択である。
(解説)
a. ビタミンKを内服しても、出血時間には影響を与えません。
b. ダビガトラン(プラザキサ)を内服しても、血中フィブリノゲンは変化しません。
c. 脳静脈洞血栓症の抗血栓療法としては、慢性期にはワルファリンが第一選択です。
d. ワルファリンを内服すると、血中プロテインC活性が低下します(参考:ビタミンK依存性蛋白)。
e. 心原性脳塞栓予防を目的とした抗血栓療法としては、ワルファリンや新規経口抗凝固薬が第一選択です。
(正答)d
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59
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遺伝子出血性毛細血管拡張症(オスラー病)鼻出血とアバスチン
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「遺伝子出血性毛細血管拡張症(オスラー病)の鼻出血に対するベバシズマブ(アバスチン)」
著者名:Alderman C, et al.
雑誌名:Br J Haematol 162: 547-569, 2013.
<論文の要旨>
遺伝子出血性毛細血管拡張症(hereditary haemorrhagic telangiectasia : HHT、オスラー病)は、動静脈奇形や毛細血管拡張症を引きおこす常染色体慢性遺伝病であり、鼻出血は95%以上にみられます。
ベバシズマブ(アバスチン)はVEGFに対するモノクローナル抗体です。
鼻出血に対して静注したという報告が2009年にありますが、粘膜下注射や噴霧での投与でも有効な可能性があります。
著者らはHHT3例に対してベバシズマブの鼻腔内噴霧で、100mg(総量4ml)投与しました。
5分毎に100μLを両鼻腔に噴霧し、月に1回を3ヶ月間行いました。
その結果、鼻出血重症度スコアは有意に低下し、鼻出血持続時間は35±19分から、4±2分に短縮しました。
HHT3人中2人は治療前に間欠的に赤血球輸血が必要でしたが、治療後に輸血不要となりました。
ただし、レーザー焼灼術の必要回数は減りませんでした。
副作用はみられませんでした。
以上、HHTの鼻出血に対してベバシズマブ鼻腔内噴霧治療は試みられてよい治療と考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17
| 出血性疾患
遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)とベバシズマブ(アバスチン)
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)に対するベバシズマブ(アバスチン)治療」
著者名:Kanellopoulou T, et al.
雑誌名:Expert Opin Biol Ther 13: 1315-1323, 2013.
<論文の要旨>
遺伝性出血性毛細血管拡張症(hereditary haemorrhagic telangiectasia : HHT、オスラー病)は、鼻出血、粘膜皮膚の毛細血管拡張や臓器における動静脈奇形に起因するシャントや出血を特徴とする先天性出血性素因です。
HHTの病態には血管新生が意義を有していると考えられているため、血管新生インヒビターは魅力的な治療薬となる可能性があります。
著者らは、HHTとベバシズマブ(アバスチン:VEGFに対するモノクローナル抗体)に関する文献検索を行いました。
特にHHTの病態、薬物の作用機序、HHT関連症状への効果、安全性について注目しました。
ベバシズマブの経静脈的全身投与は、鼻出血、消化管出血、肝における動静脈奇形を改善しました。
安全面に関しては、一部高血圧症がみられましたが、他には問題ありませんでした。
ベバシズマブの鼻腔内局所投与も、鼻出血の頻度や出血量を減らし、輸血必要量も低下しました。
HHTの臨床試験がないため、患者選択基準や推奨度は提言できませんが、輸血を必要とするような致命的な鼻出血に対してはベバシズマブの局所投与は有用かも知れません。
また、内蔵器に病変を有して致命症となるような症例に対してはベバシズマブの全身投与が有用かも知れません。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:14
| 出血性疾患
血友病A&Bの動脈/静脈血栓症:第VII因子欠損症との比較
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「血友病A&Bにおける動脈または静脈血栓症:第VII因子欠損症との比較」
著者名:Girolanmi A, et al.
雑誌名:Eur J Haematol 91: 152-156, 2013.
<論文の要旨>
先天性出血性素因における血栓症疾患について近年関心が高まっています。
血友病やvon Willbrand病の患者、まれな凝固異常症患者においても時に血栓症を発症しますが、動脈血栓症と静脈血栓症を分類した上での検討はほとんどありません。
この目的で、著者らは文献検索を行いました。
血友病AまたはB患者85症例が動脈血栓症の既往があったと報告されていましたが、第VII因子欠損症では6例でした。
一方、静脈血栓症に関しては、血友病AまたはBでは34症例、第VII因子欠損症では32症例の報告がみられました。
動脈血栓症と静脈血栓症の比率は、血友病A、血友病B、血友病A&Bでそれぞれ3.72、1.13、2.50でした。
一方、第VII因子欠損症では0.19でした。
以上、血友病AまたはBは動脈血栓症になりにくい訳ではないが静脈血栓症にはなりにくいと考えられました。
一方、第VII因子欠損症では、動脈血栓症になりにくいが、静脈血栓症にはなりにくい訳ではないと考えられました(血友病と対照的)。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53
| 出血性疾患
小児von Willebrand病/血友病と扁桃腺摘出術後出血
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「von Willebrand病または血友病の小児における扁桃腺摘出術後の出血」
著者名:Sun GH, et al.
雑誌名:JAPM Otolaryngol Head Neck Surg 139: 245-249, 2013.
<論文の要旨>
出血性素因を有する小児が扁桃腺摘出術(扁摘)後に出血のリスクが高いかどうかは不明です。
著者らは、von Willebrand病(VWD)や血友病と診断されている小児(n=508)を対象に出血頻度や危険因子を検討しました。
主要評価項目は扁摘後の出血に対する治療の有無です。
平均年齢は7歳、ほとんどが男性症例、白人、個人保険をもった都会在住人であり、気道閉塞の治療目的に扁摘が行われました。
扁摘1日以内の出血率は1.6%であり、2日目以降の出血率は15%でした。
遅延性の出血は年齢と関連しており(P<0.001)、16歳以上では35%に達しました。
輸血が必要となった例は2.4%でした。
以上、VWDや血友病患者に扁摘を行った場合に早期出血は一般人と差異はみられませんでしたが、遅延性出血はとくに年齢の高い小児ほど有意に高いと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
| 出血性疾患
von Willebrand病と動脈血栓症
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「von Willebrand病における動脈血栓症の低い有病率」
著者名:Sanders YV, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 11: 845-854, 2013.
<論文の要旨>
von Willebrand因子(VWF)の高値は、冠動脈疾患や虚血性脳卒中といった動脈血栓症の危険因子として確立しています。
von Willebrand病(VWD)患者は動脈血栓症になりにくいという仮説がありますが、臨床試験での確認はありません。
著者らはVWF≦30U/dLの大人VWD患者 635人(16〜85歳)と、年齢、性を一致させた一般オランダ人との比較を行いました。
その結果、VWD21症例(3.3%)で29回の動脈血栓症発症が確認されました。
急性心筋梗塞5例、虚血性脳卒中3例での罹患がみられました。
また、不安定狭心症12回、一過性脳虚血性発作9回の発症が記録されました。
全ての動脈血栓症(急性心筋梗塞、虚血性脳卒中、冠動脈疾患)の有病率は、39%であり、対照の一般人よりも63%い伊結果でした。
VWDでの心血管症患有病率は、一般人よりも有意に低い結果でした。
以上、VWD患者においては動脈血栓症の有病率が有意に低く、動脈血栓症発症にVWFが重要な役割を演じているものと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
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血友病関節症の凝固因子補充療法とIL-6受容体拮抗薬
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「血友病患者における関節症に対する凝固因子補充療法と補助療法としてのIL-6受容体拮抗薬」
著者名:Narkbunnam N, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 11: 881-893, 2013.
<論文の要旨>
血友病患者において出血に起因する血友病性関節症(HA)を一旦発症しますと、凝固因子製剤の予防投与を行ってもその進行を完全に阻止することは困難です。
炎症性関節炎の治療に際して、IL-6受容体拮抗薬(抗IL-6R)などで炎症性サイトカインを抑制する治療が注目されています。
著者らは血友病Aマウスを用いて、MR16-1(マウスIL-6受容体に対するラットIgG抗体)と、FVIII補充療法の有用性を検討しました(各単独投与群と併用群を設定)。
FVIIIノックアウトマウスを用いて膝関節の出血モデルを作成しました。
初回出血から6週間後に、関節は病理学的に評価されました。
その結果、FVIIIと抗IL-6R併用群において最も関節腫脹が少なく、病理学的な滑膜や軟骨の変化も軽度でした。
抗IL-6Rを併用した場合には、滑膜の過形成、ヘモジデリン沈着、マクロファージの浸潤が抑制されたことも大きな利点でした。
以上、特異的炎症性サイトカインを短期間抑制することは、血友病の関節変形を抑制する上で、考慮すべき方法と考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30
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血友病Aと血友病Bの比較:関節症、出血、予防
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「血友病Aと血友病Bの比較:関節症、出血の重症度、予防の観点から」
著者名:Escobar M, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 11: 1449-1453, 2013.
<論文の要旨>
血友病A(HA)と血友病B(HB)は伴性劣性の遺伝性疾患です。
両者の臨床症状の区別は通常できませんが、HAの方が出血の重症度が高く、出血回数も多いと考えられています。
ただし、この点はなお議論の余地があります。
また、関節症に関してもHAの方がHBよりも障害が強いです。
血友病患者における出血の重症度を規定する因子を推測することは困難ですが、最近の検討では、他の凝固関連蛋白である組織因子経路インヒビター(TFPI)、凝固因子遺伝子の多型、凝固亢進状態の原因となる遺伝子異常などとの関連が指摘されています。
多くの臨床試験の結果より、凝固因子製剤の予防投与の有用性が指摘されています。
しかし、これらの臨床試験はHBではなくHAにおいて行われていることに注意すべきです。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21
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先天性第VII因子欠損症と出血症状
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「先天性第VII因子欠損症の診断時の出血症状とその後の出血の予知」
著者名:Di Minno MN, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 109: 1051-1059, 2013.
<論文の要旨>
先天性第VII因子欠損症における出血症状は軽症〜重症まで多様であり、30%の症例では無症候性(non-bleeding:NB)です。
著者らは、国際的なIF7登録とSTER登録のデータから、第VII因子欠損症626症例について検討しました。
診断時の出血のタイプと第VII因子活性(FVIIc)がその後の出血を予知するかどうか評価しました。
診断時に、272症例(43.5%)はNBであり、277症例(44.2%)は小出血がみられ、77症例(12.3%)は大出血がみられました。
中央値9年間の指標期間(IP)、診断時NBであった症例の87.9%ではNBのままであり、小出血がみられたうち75.1%では新たな小出血がみられ、大出血がみられた症例のうち83.1%が新たな大出血がみられました。
FVIIcや、その他の臨床条件を一致させてIP中の新たな出血の相対危険度(RR)は、大出血および小出血で診断された症例においてそれぞれ6.02(P<0.001)、5.87(P<0.001)でした。
逆に、NB症例と比較して診断時小出血および大出血のみられた症例においてIP中の大出血RRは、それぞれ10.95(P=0.001)、28.21(P<0.001)でした。
以上、先天性第VII因子欠損症においては最初の大出血がその後の大出血を予知する独立した危険因子と考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
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先天性アンチトロンビン(AT)欠損症の妊娠管理
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「先天性AT欠損症の妊娠管理」
著者名:Bramham K, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 110: 550-559, 2013.
<論文の要旨>
先天性アンチトロンビン(AT)欠損症妊娠に対して加療を行わないと、母体の静脈血栓塞栓症(VTE)をきたし、胎児死亡の原因ともなります。
妊娠中の血栓予防が重要ですが、用量については一定の見解がありません。
著者らは、先天性AT欠損症女性における血栓症発症と妊娠経過につき後方視的解析を行いました。
VTEの既往のない女性に対しては、16週までは低分子ヘパリンであるエノキサパリン40mg/日毎日投与し、その後は40mg x 2回/日としました(参考:ヘパリン類)。
VTEの既往のある症例ではエノキサパリン1mg/kg/日で開始し、16週からは1日2回に増量しました。
血栓予防治療は、陣痛開始時または帝王切開の12時間前に中止し、AT濃縮製剤50IU/kgが投与されました。
出産後に血栓予防が再開されました。
著者らは、AT欠損症の女性11例で18妊娠を経験しています。
17妊娠(94%)では成功しました。
妊娠期間の中央値39W(30〜41W)、出生児体重の中央値2995g(910〜4120g)でしたが、児の6/17(35%)は妊娠期間に比較して低体重でした。
4妊娠ではVTEの合併がありました。
以上、先天性AT欠損症妊娠に対しては妊娠期間中の低分子ヘパリンと、分娩前から産褥期間のAT濃縮製剤が有効で、VTE発症率は以前の報告よりも低いと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:00
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ハイド症候群:大動脈弁狭窄症と後天性von Willebrand病
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「大動脈弁狭窄症が引き起こす後天性von Willebrand病:ハイド症候群」
著者名:田村 俊寛。
雑誌名:日本血栓止血学会雑誌 24: 295-297, 2013.
<論文の要旨>
ハイド症候群は、大動脈弁狭窄症に合併した消化管血管異形性(gastrointestinal angiodysplasia)からの消化管出血であり、この貧血の原因は消化管粘膜に形成されたangiodysplasiaと後天性von Willebrand病2A型(フォンウィルブランド因子の高分子マルチマーの欠如)を併発していることによる消化管出血であると報告され、高度の大動脈狭窄症の約20%に発症するとも言われています。
大動脈弁狭窄症患者になぜangiodysplasiaを発症するかに関しては、1.大動脈弁の石灰化などと同様に、一連の加齢に伴う変化(形成)や、2.大動脈弁狭窄症により消化管粘膜が低潅流となり、これにより交感神経系が刺激され腸管血管の平滑筋細胞が弛緩し、局所の血管が拡張するのではないか、などが原因として推察されています。
大動脈弁狭窄症では、狭窄した大動脈弁により生じたhigh shear stressの影響下のおいては、von Willebrand因子が引き延ばされADAMTS13に切断されやすくなると考えられています。
著者らは高度大動脈弁狭窄症31例について、von Willebrand因子のマルチマー解析を行いました。
結果は19例(61%)に後天性von Willebrand病2A型を合併していました。
中等度から高度の大動脈弁狭窄に貧血を合併していれば、まず本疾患を疑うことが重要です。
最終的には血液検査でvon Willebrand因子のマルチマー解析を行い、高分子マルチマーの欠損を確認すれば診断できます。
根治術としては、大動脈弁狭窄症の解除すなわち大動脈弁置換術が有効とされています。
短時間で高分子マルチマーは正常化するといわれています。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 18:50
| 出血性疾患
エルトロンボパグと血栓症:抗リン脂質抗体関連血小板減少症
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「エルトロンボパグ投与中に血栓塞栓症を起こした抗リン脂質抗体関連血小板減少症」
著者名:神田 真聡 他。
雑誌名:日本内科学会雑誌 102: 1461-1463, 2013.
<論文の要旨>
抗リン脂質抗体関連血小板減少症は免疫性血小板減少症の約4割を占める血栓素因ですが、両者は区別されないことが多いです(参考:抗リン脂質抗体症候群)。
近年登場したトロンボポエチン受容体作動薬は、血栓塞栓症を起こし血栓性素因のある場合は慎重投与とされています。
著者らは抗リン脂質抗体関連血小板減少症に対し、エルトロンボパグを投与し、深部静脈血栓症と肺塞栓症を発症した1例を経験しています。
症例:77歳、女性。
2005年より免疫性血小板減少症(ITP)に対して、脾摘・セファランチン・ステロイド療法で加療され、安定して経過していました。
2011年4月血小板数が1万/μ以下になったため、近医でデキサメダゾン大量療法が行われましたが、抗リン脂質抗体が陽性であったため紹介されています。
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)59.5秒、ループスアンチコアグラント陽性、抗β2-GPI抗体13.8IU/ml。
ITPの増悪と考え、ステロイド中等量による治療を開始しましたが、治療反応性不良でありステロイド抵抗性と判断し、エルトロンボパグを開始しました。
血小板数は速やかに上昇しましたが、エルトロンボパグ開始44日目に呼吸困難が出現し、深部静脈血栓症・肺塞栓症を発症しました。
エルトロンボパグによる血小板数の増加が血栓塞栓症を誘発した可能性が推察されました。
血小板減少は抗リン脂質抗体症候群の初発症状といわれ、ITPの中に抗リン脂質抗体関連血小板減少症が混在している可能性があります。
ITPにおいてエルトロンボパグを投与する際には、抗リン脂質抗体の検索を検討し、慎重に投与すべきと考えれます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
| 出血性疾患
血液疾患セミナーの御案内
血液疾患セミナー
日時:平成25年11月21日(木)19時00分より
場所:金沢都ホテル 7F 「鳳凰の間」
特別講演
座長:金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学 教授 中尾 眞二
『造血幹細胞移植とサイト研究』
関西医科大学 内科学第一講座
主任教授 野村 昌作 先生
主催:旭化成ファーマ株式会社
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36
| 研究会・セミナー案内
北陸PNH研究会の御案内
第4回 北陸PNH研究会プログラム
日 時:2013年9月14日 土曜日 15:00〜17:00
場 所:金沢都ホテル(変更になっています!)
15:00〜15:20
講演「JPSG活動報告」
座 長 金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学 教授 中尾 眞二
演 者 大阪大学大学院医学系研究科 血液・腫瘍内科 講師
日本PNH研究会 事務局長 西村 純一 先 生
15:20〜15:50
症例報告
座 長 金沢医科大学医学研究科 血液免疫内科 准教授 福島 俊洋 先生
症例1 富山県立中央病院 内科 部長 彼谷 裕康 先生
症例2 金沢大学 血液内科 講師 山崎 宏人
15:50〜17:00
パネルディスカッション テーマ「PNHの病態と診断経路」
司会・基調講演 金沢大学 医薬保健研究域医学系 細胞移植学 教授 中尾 眞二
自験例紹介1 骨髄不全/血球減少症例
東京医科大学 内科学第一講座 血液内科学 講師 後藤 明彦 先生
自験例紹介2 血栓症例
京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 講師 川端 浩 先生
ディスカッサント
京都大学大学院 医学研究科 血液・腫瘍内科学 講師 川端 浩 先生
東京医科大学 内科学第一講座 血液内科学 講師 後藤 明彦 先生
大阪大学大学院 医学系研究科 血液・腫瘍内科学 講師 西村 純一 先生
金沢大学 医薬保健研究域 保健学系 検査科学 教授 森下 英理子
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
| 研究会・セミナー案内
血友病における心血管疾患の治療
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「血友病における心血管疾患の治療」
著者名:Cayla G, et al.
雑誌名:Thromb Res 132: 8-14, 2013.
<論文の要旨>
血友病患者の治療法が向上したことによって、血友病患者の平均寿命は有意に延長し、一般人男性に近付いてきました。
それに伴い、高齢化に起因する疾患とくに心血管疾患(CVD)が増加しています。
CVDの治療とくに冠動脈疾患(CAD)、急性冠症候群(ACS)、心房細動(AF)の治療が重要性を増しており、出血と血栓症のバランスを意識した注意深い管理が必要です。
しかし、専門的な推奨治療法や文献、データはほとんどありません。
このような背景の下、著者らは、入手可能な文献および著者らの経験に基づいてACS、安定狭心症、AFに対する治療法の提言を行っています。
全体的には、血友病患者のCVD治療は標準的ガイドラインに従って一般男性と同様に行えば良いですが、出血の副作用の少ない治療法があればそれを選択します。
血友病患者に推められる治療としては、抗血小板療法、ヘパリンやビバリルジンなどの抗トロンビン療法、GPIIb/IIIaインヒビター、心カテーテル治療、冠動脈ステントも含まれます。
抗血栓薬は、半減期が短く可逆性のあるものや中和薬のあるものが望ましいです。
特にACSの急性期においては、観血的処置や抗血栓療法で上昇する出血リスクに対して、適切な凝固因子補充療法を行うべきです。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46
| 出血性疾患
血友病患者における高血圧症の有病率と危険因子
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「血友病患者における高血圧症の有病率と危険因子」
著者名:von Drygalski A, et al.
雑誌名:Hypertension 62: 209-215, 2013.
<論文の要旨>
高血圧症(HT)は頭蓋内出血の重要な危険因子です。
著者らは大人血友病(patients with hemophilia:PWH)におけるHTの有病率、治療、コントロール具合について検討しました(PWH:18歳以上、n=458)。
検討内容は、国民健康栄養調査(NHANES)から提供されている情報と比較しました。
その結果、PWHは、NHANESと比較して有意にHTの有病率が高かったです(PWH49.1%、NHANES31.7%)。
HTの有病率を18〜44、45〜64、65〜74、75歳以上の年齢層別に評価しますと、PWHでは、31.8、72.6、89.7、100.0%でしたが、NHANESでは、12.5、41.2、64.1、71.1%でした。
HTの治療をうけている者でコントロール状態にあったのは、PWHでは27.1%のみであったのに対し、NHANESでは47.7%でした。
年齢+BMI、糖尿病、腎機能は、独立してHTと関連していました。
血友病のなかでもHTを有している可能性は、血友病中等症〜重症では、軽症と比較して1.5倍のオッズ比でした。
以上、大人PWHに対して新たな認識が必要であり、HTの原因についての更なる検討が必要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
| 出血性疾患
診断が困難であった小児血友病
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「診断が困難であった小児血友病の2例 」
著者名:De Luca M, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinoysis 24: 645-648, 2013.
<論文の要旨>
血友病Aは、第VIII因子が先天性に欠損する伴性劣性遺伝の出血性素因です。
著者らは珍しい病状であったため診断の困難であった2例を報告しています。
1例目は生後10ヶ月の女児であり、24時間以内に出現した頚部腫瘤のために受診しました。
反復性自然血腫での受診歴がありましたが、出血性疾患の家族歴はありませんでした。
画像のみでは確定診断できず、病理学的に血腫と診断されました。
染色体解析では第VIII因子イントロン22に新規の変異がみられ、偏ったX染色体不活性化を伴っていました。
2例目は、新生男児でてんかんの既往を有していました。
脳MRIでは、四丘体槽に血管奇形をきたし小脳の圧迫所見と水頭症が当初の読影結果でした。
血液検査では、第VIII因子活性が著減していました。
画像を再評価したところ、血管奇形は否定され血腫と診断されました。
凝固異常の家族歴はありませんでした。
遺伝子検査では、第VIII因子遺伝子(イントロン22を含む)の再構成がみられました。
家族歴の欠如、画像で診断困難な血腫、女性、新生児などでは、血友病Aの診断は困難となり、誤診がありうると考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32
| 出血性疾患
後天性第XIII因子欠損症(インヒビター陰性)
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「重症の硬膜下血腫をきたした後天性第XIII因子欠損症(インヒビター陰性)」
著者名:Kawano H, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinoysis 24: 638-641, 2013.
<論文の要旨>
後天性に第XIII因子(FXIII)が低下する病態は多く知られていますが、出血症状をきたすことはまれです。
しかし、FXIIIの高度低下は致命的な出血をきたします。
FXIIIに対してインヒビターが出現して出血症状をきたす病態は最近注目されていますが、インヒビターが陰性の場合についても検討されるべきです。
著者らは、FXIIIが著減して重症の硬膜下血腫をきたした85歳男性を症例報告しています。
患者は、代償性DIC、慢性腎不全、腹部大動脈瘤、右腎癌も合併していました。
血腫除去術を行ったにもかかわらず、急性硬膜下血腫をきたして再手術が必要となりました。
クロスミキシング試験、ドットプロット解析ではFXIIIに対するインヒビターは検出されませんでした。
FXIIIの低下は主としてDICおよび手術に伴う消費のためではないかを考えられました。
このような症例に対してはFXIII濃縮製剤が有効であるために、説明のできない高度の出血に遭遇したら、インヒビター陰性の後天性FXIII欠損症も鑑別にあげるべきと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18
| 出血性疾患
血友病と偽性動脈瘤
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター
「血友病における偽性動脈瘤」
著者名:Rodriguez-Merchan EC.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinoysis 24: 461-464, 2013.
<論文の要旨>
血友病において、偽性動脈瘤を結果的にきたすような出血は極めてまれです。
ただし偽性動脈瘤は、患者が動脈損傷の既往があれば一度は考慮すべき病態です。
偽性動脈瘤は外傷があれば起こしえますが、経動脈カテーテル処置、鈍的外傷、貫通性外傷も含まれます。
診断は、ドップラーエコー検査、アンジオCT検査、動脈造影などで行われます。
治療は、以前は手術が標準治療でしたが、現在はより侵襲度の低いステント、超音波破砕、エコーガイド下トロンビン注入も行われます。
血友病の偽性動脈瘤は14例報告があり、そのうち9例は筋骨格系(手4例、膝4例、足首1例)であり、5例は筋骨格系以外でした。
血管内治療は侵襲度の低い治療です。
もし、動脈塞栓術が失敗した場合には、外科的に結紮術を行います(末梢血管へのバイパスは行うことも行わないこともあります)。
いずれの治療であっても、凝固因子濃縮製剤とトラネキサム酸による適切な止血管理が重要です。
活性型プロトロンビン複合体製剤や遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)があるために、高力価インヒビター保有症例に対しても観血的治療が可能になりました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06
| 出血性疾患
DICとアンチトロンビン(AT)11:AT活性の意義
DICとアンチトロンビン(AT)10:AT、プロテインC&Sより続く。
また、DICにおいてAT活性が低下していても、それは必ずしもDICのためという訳ではありません。
その上で、AT活性の低値は、一部のDIC基礎疾患(敗血症など)での予後予知マーカーとしての意義は大きいようです。
参考;
TAT
(続く)DICとアンチトロンビン(AT)インデックス へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10
| DIC
DICとアンチトロンビン(AT)10:AT、プロテインC&S
DICとアンチトロンビン(AT)9:AT低下と予後より続く。
凝固阻止因子としては、
アンチトロンビン(AT)の他にプロテインCやプロテインSも知られています。
上図の論文では、敗血症性ショックの症例(
播種性血管内凝固症候群(DIC)と非DICの両者を含む)における予後をこれらの凝固阻止因子で予知できるかどうか検討しています。
アンチトロンビン(AT)、プロテインC、プロテインSのいずれであっても、死亡例では生存例と比較して血中レベルは低下しているようです。
ただし、死亡例と生存例で最も血中レベルの分離が明確なのはAT活性という結果になっています。
やはり、AT活性は予後を予知するという観点から、有用性が高いようです(今回は敗血症性ショックに関してですが)。
(続く)DICとアンチトロンビン(AT)11:AT活性の意義 へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56
| DIC
DICとアンチトロンビン(AT)9:AT低下と予後
DICとアンチトロンビン(AT)8:AT活性低下の機序より続く。
上の論文でも考察されていますように、AT活性はDICの予後予測マーカーとしての意義は大きいようです(この論文では救急領域ですので、造血器悪性腫瘍や固形癌したDICは含まれていません)。
DIC診断基準は予後をも予知することができるものであるべきかどうかは議論の分かれるところかも知れませんが、AT活性が低下しやすい感染症などではAT活性を診断基準に組込んだ方が、予後も反映できるという観点からは良いかも知れません。
ただし、DIC診断と、DIC予後はリンクしている必要はないという意見の場合には、上記の考えは成り立たなくなります。
参考;
TAT
(続く)DICとアンチトロンビン(AT)10:AT、プロテインC&S へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
| DIC
DICとアンチトロンビン(AT)8:AT活性低下の機序
DICとアンチトロンビン(AT)7:AT活性の低下より続く。
それでは、
播種性血管内凝固症候群(DIC)において血中
アンチトロンビン(AT)活性が低下する機序は何でしょうか。
現在は上記の機序が考えられています。
これらの機序が、複合的にAT活性低下に関与しているものと考えられます。
これらの機序のうちどの比重が大きいかは、基礎疾患が何であるか、病期がいつであるかなど多くの臨床条件によって変ってくるものと思われます。
参考;
TAT
(続く)DICとアンチトロンビン(AT)9:AT低下と予後 へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| DIC
DICとアンチトロンビン(AT)7:AT活性の低下
DICとアンチトロンビン(AT)6:アルブミンとの相関/白血病より続く。
上図は引用論文の図を改変させていただきました。
アンチトロンビン(AT)の変動はこの論文の主旨ではないかも知れませんが、興味深い知見がえられています。
造血器腫瘍や固形癌では、
播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併しても血中AT活性は低下していませんが、感染症では
DICの合併によってAT活性が低下しています。
感染症に合併したDICにおいてAT活性が低下した場合であっても、それはDICによる消費性凝固障害のためではないことを、これまでに記事にした通りです。
参考;
TAT
(続く)DICとアンチトロンビン(AT)8:AT活性低下の機序 へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32
| DIC
DICとアンチトロンビン(AT)6:アルブミンとの相関/白血病
DICとアンチトロンビン(AT)5:アルブミンとの相関/産科より続く。
この報告は30年くらい前の論文ですが、重要な論文ではないかと思います。
まず、
播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併の有無によって、
アンチトロンビン(AT)もプロテインC(PC)もレベルは変らないことが分かります(図内の表)。換言しますと、DICを合併しましても、血中AT活性や、PC活性は低下しないことを意味しています。
一方で、アンチトロンビン活性は、アルブミンやコリンエステラーゼとは有意に相関しています。プロテインCに関しても同様です。
つまり、急性白血病においてアンチトロンビン(or プロテインC)が低下する場合であっても、それはDICのためではなく、肝予備能の低下のためと考えられます。
参考;
TAT
(続く)DICとアンチトロンビン(AT)7:AT活性の低下 へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17
| DIC
DICとアンチトロンビン(AT)5:アルブミンとの相関/産科
DICとアンチトロンビン(AT)4:アルブミンとの相関/AT製剤より続く。
上図は、産科
播種性血管内凝固症候群(DIC)症例において、血中
アンチトロンビン(AT)活性と血清アルブミンとの相関をみたものです。
参考;
TAT
やはり、両者の間には有意な正相関がみられています。
AT活性の結果が未着の場合であっても、アルブミン濃度からAT活性を予測することが可能ということになります。
上図からは、産科
DIC症例においては、血清アルブミン濃度が2.5g/dL未満であれば、AT活性は70%をきっている可能性が高そうです。
(続く)DICとアンチトロンビン(AT)6:アルブミンとの相関/白血病 へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01
| DIC