金沢大学呼吸器内科 藤村政樹科長の送別会(インデックス)
藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(9)より続く。
1)平成24年3月17日(土)
2)素敵なメロディー
3)多くの方が出席
4)第三内科OBの大先輩の先生方
5)意義深い会
6)過去最高の出席者数
7)合成画像
8)多くの先生方からのスピーチ
9)藤村科長の功績
藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(9)より続く。
藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(8)より続く。
藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(7)より続く。
(続く) 藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(9)へ
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藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(6)より続く。
(続く) 藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(8)へ
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藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(5)より続く。
(続く)藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(7)へ
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藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(4)より続く。
(続く)藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(6)へ
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藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(3)より続く。
(続く)藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(5)へ
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藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(2)より続く。
(続く)藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(4)へ
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藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(1)より続く。
いつも素敵なメロディーを奏でてくださいます。
感動します。
(続く)藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(3)へ
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藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(1)
平成24年3月17日(土)に、藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会が行われました。
金沢大学第三内科同門会総会を上回る大勢の皆様にご出席いただきました。
ありがとうございます。
(続く)藤村政樹科長(金沢大学呼吸器内科科長)の送別会(2)へ
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今回紹介させていただく、N Engl J Medの論文は、最初は誤植ではないかと思ってしまいそうです。
血友病A治療薬としての第VIII(8)因子ではなくて第XIII(13)因子を論じています。
もし臨床応用できたら、素晴らしいのではないかと思います。夢のある報告ではないでしょうか。
「血友病A治療薬としての第XIII因子 」
著者名:Rea, CJ. et al.
雑誌名:N Engl J Med 366: 281-283, 2012.
<論文の要旨>
血友病患者ではトロンビン形成が不充なため、凝血塊は不安定です。
この理由として、第XIII因子活性化が不充分であることも要因と考えられます。
血友病Aの標準的治療は第VIII因子濃縮製剤ですが、高価でかつ時間を要します。
著者らは、第VIII因子活性が低い状況でも、生理的レベルを越えた第XIII因子が凝血塊を安定化させるのではないかと言う仮説を立てました。
凝血塊の安定性は、血漿に組織因子とt-PAを同時に加えて濁度の変化を追跡することでAUCを算出して比較しました。
第VIII因子欠乏血漿に第VIII因子を添加するとAUCが改善しましたが、最大量(1IU/mL,正常100%値)でも凝血塊安定性を正常化しませんでした。
一方、第VIII因子と共に第XIII因子(10μg/mL:血漿活性を50%上昇、25IU/体重kgの静注で達成可能)も添加されると、第VIII因子が極めて少量であっても凝血塊安定性の正常化が可能でした。
トロンビン形成能による検討では、FXIIIの影響はみらませんでした。
以上、血友病Aに対する第XIII因子による治療は、第VIII因子製剤を節約し費用を軽減する上で有用かも知れません。
第XIII因子の半減期は9日間ですから、投与回数が少なくてすむ利点もあります。
今後臨床的に検討していく価値があると考えられます。
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血友病は補充療法の充実により、QOLは改善し長寿を望めるようになりました。
それに伴い、高齢者に多い疾患である心血管疾患(参考:血友病の冠動脈石灰化と頸動脈内膜中膜肥厚度、血友病と動脈硬化、血友病A患者と冠動脈石灰化)や癌などが問題になってきているようです。
「血友病A患者における癌(イタリア) 」
著者名:Tagliaferri, A. et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 90-95, 2012.
<論文の要旨>
血友病は補充療法の充実により、QOLは改善し長寿を望めるようになりました。
それに伴い、高齢者に多い疾患である心血管疾患や癌などが問題になるようになりました。
著者らは血友病における癌の実状(イタリア血友病センター協会;AICE)を調べることにしました。
AICEの21センターの症例(1980〜2010年)を調査したところ、血友病122症例において127の癌が確認されました。
癌の69%は、2001〜2010年の登録でした。
83%の症例はHCVに感染しており、そのうち22%はHIVとの重複感染でした。
癌のうちHCV関連は43%であったのに対し、HIV関連は9%でした。
重症血友病は、軽症&中等症血友病と比較して、ウイルス関連の癌がより高頻度でした(P=0.0004)。
出血の合併症は、化学療法(14%)や放射線療法(19%)を行っている症例で高頻度でした。
以上、血友病診療に従事している医師にとっても癌診療は重要な課題になっていくものと考えられました。
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最近のシリーズで紹介させていただいている論文では、血友病の動脈硬化関連の報告が多くありました。
それだけ、血友病のコントロールが良好になってきているために(一般男性と変わらない予後になってきているために)、一般男性と同様に動脈硬化関連の懸念が出て来ているということではないかと思います。
「血友病患者における冠動脈石灰化指数と頸動脈内膜中膜複合体肥厚度 」
著者名:Zwiers, M. et al.
雑誌名: J Thromb Haemost 10: 23-29, 2012.
<論文の要旨>
血友病患者は、心血管疾患になりにくいかどうかは議論となるところです。
著者らは、血友病患者における動脈硬化度を、冠動脈石灰化指数(CACS)および内膜中膜複合体肥厚度(IMT)で評価しました。
血友病69例(血友病A 51例、血友病B 18例:年齢中央値52才)を対象としました。
心血管危険因子および主要心血管イベント(MACEs)の情報を収集しました。
CACSは、電子ビームCTまたはdual-source CTで検査し、頸動脈IMTはエコーで評価し、同年齢標準値と比較しました。
全血友病患者CACS中央値は35、IMTは0.80mmであり、比較標準値と同等でした。
MACEの既往のあった症例(n=9)では既往のなかった症例と比較して、CACSおよびIMTは有意に高値でした(MACE有vs無:CACS 1013 vs.0、IMT 1.09mm vs. 0.76mm, P<0.001)。
以上、今回のCACSとIMTによる検討からは、血友病症例は動脈硬化の進展が抑制されている訳ではないと考えられました。
また、動脈硬化の程度は、従来より知られている心血管危険因子と関連していたため、血友病患者においても心血管危険因子のモニターを行い加療すべきと考えられました。
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ワルファリン(参考:INR)による脳内出血は本来あってはいけないのですが、ワルファリンの処方件数はとても多いですから、どうしてもありえます。
管理人自身、間接的に数例経験してきました。
その際の対策として、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン)や活性型プロトロンビン複合体製剤(APPC;ファイバ)が期待されています。
「rFVIIaとPCCはワルファリンによる実験的脳内出血の血腫量を同等に減少させる 」
著者名:Schlunk, F. et al.
雑誌名:Stroke 43: 246-249, 2012.
<論文の要旨>
著者らはワルファリン(参考:INR)による実験的脳内出血モデルを用いて、プロトロンビン複合体製剤(PPC)と遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)(ノボセブン)の効果を比較しました。
マウスにワルファリン(2mg/kg)を経口投与しました。
脳内出血は、コラゲナーゼを右線状体に注入することで誘発しました。
45分後に、PCC(100IE/kg)、rFVIIa(1mg/kg)、生食のいずれかを経静脈的に投与しました。
24時間後の血腫量をphotometric Hb法で測定しました。
INRは、生食群4.3±0.4、rFVIIa群0.9±0.1、PCC群1.4±0.2でした。
脳内出血量は、生食群20.0±19.7μL、rFVIIa群8.6±4.3μL、PCC群6.1±1.8μLでした。
rFVIIa群およびPCC群は生食群と比較して有意に有効でしたが、rFVIIa群とPCC群との間には有意差はみられませんでした。
以上、PCCおよびrFVIIaは、ワルファリンによる急性の脳内出血に対して、凝固異常の改善および血腫の抑制の観点より、同程度に有効と考えられました。
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血友病患者さんでは、関節症などに伴い運動障害を伴う場合もあるため、骨粗鬆症など骨の観点からの論文が報告されることがります。
「血友病A&B症例における骨塩量の低下(北部ギリシャ症例) 」
著者名:Anagnostis, P. et al.
雑誌名:Thromb Haemost 107: 545-551, 2012.
<論文の要旨>
血友病A&B患者では、骨量が少ないことが多いです(症例の67-86%)。
著者らは、血友病患者における骨疾患の頻度を評価し、その危険因子について検討しました。
北部ギリシャ血友病センターに通院中の大人血友病A&Bを対象としました。
骨塩量(bone mineral density : BMD)は、X線を用いたDXA法で測定しました。
血友病104例(45.8±15.1歳)と健常人50例(44.9±12.8歳)を対象としました。
BMDが低値と診断されたのは血友病28例(26.9%)、健常人10例(20%)でした(P=0.0001)。
BMD低値と診断された血友病症例は、骨盤、大腿骨頚部、下転子においてであり、腰椎では健常人と差がみられませんでした。
BMDと正相関したのは、血友病重症度、HCV&HIVの感染、運動能力であり、負相関したのは関節症の重症度でした。
多変量解析の結果からは、運動能力および25-ハイドロキシビタミンD[25(DH)D]のみが、有意にBMDを予知することができました。
血友病の半数例においてビタミンD欠乏症と診断された。
以上、血友病ではBMDの低値の患者が多く、運動能力と25(DH)DはMBD低値を予知する独立した要素と考えられました。
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今回紹介させていただく論文は、日本からです。
日本人の出産後出血(PPH)に対する遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)(ノボセブン)治療効果について論じています。
「重症出産後出血に対するrFVIIa治療(日本における多施設研究) 」
著者名:Kobayashi, T. et al.
雑誌名:Int J Hematol 95: 57-63, 2012.
<論文の要旨>
日本人の出産後出血(PPH)に対する遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)(ノボセブン)治療については、限られた症例報告のみです。
著者らは重症PPHに対してrFVIIaが投与された日本人症例を集積しました(2005年〜2010年)。
患者背景、血液製剤使用量、rFVIIaの使用量と使用時期、有害作用についての調査を行いました。
rFVIIaの出血に対する効果は、止血、軽減、不変、悪化の4段階としました。
日本の18施設の25症例に対して、PPHの止血目的にrFVIIaが使用されていました。
rFVIIaの最終投与後に、止血は16例(64%)、軽減は8例(32%)、不変が1例(4%)でした。
また、初回rFVIIa投与後に血液製剤使用量は有意に低下しました。
2例(15.4%)では、rFVIIa投与に子宮摘出術が行われました。
3症例で、4回の無症候性血栓症の報告がなされました。
以上、rFVIIaは重症PPHの日本人症例に対して、血液製剤使用量を減らして子宮摘出を阻止する観点から有用と考えられました。
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小児血友病患者において最初の関門となる出産時における頭部出血(新生児出血)の報告を紹介させていただきます。
「血友病における新生児出血(欧州コホート研究) 」
著者名:Richards, M. et al.
雑誌名:Br J Haematol 156: 374-382, 2012.
<論文の要旨>
小児血友病患者においては、出産が最初の関門になります。
著者らは、周産期危険因子と血友病患者の新生児大出血との関連を検討しました。
欧州の12の血友病治療センター(HTC)の血友病A&B 508例が対象となりました(1990〜2008年)。
頭部出血は出生後28日までの間で18例(3.5%)でみられ、その内訳はクモ膜下出血3例、硬膜下血腫1例、頭血腫14例でした。
2例(0.4%)で頭蓋内出血がみれら、持続性神経障害をきたしました。
死亡例はみられませんでした。
鉗子分娩および吸引分娩を用いた介助分娩のみが頭部出血の危険因子でした(オッズ比8.84)。
血友病が軽症であることや、母親が自分は血友病キャリアーであることを知っていることは頭部出血を抑制していましたが、推計学的に有意ではありませんでした(オッズ比は、それぞれ0.24、0.34)。
国、母体年齢、出産歴、在胎月週齢と頭部出血との間には関連はみられませんでした。
また、母親が自分でキャリアーであることを認識していることは、介助分娩を阻止する要素でした(オッズ比0.37)。
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第VIII因子インヒビター(後天性血友病)の病態が最近少しずつ明らかになってきました。
今回紹の論文では、近年の病態解明が紹介されています。
「後天性血友病Aにおける自己免疫反応は蛋白分解性抗体で全て説明可能か 」
著者名:Mahendra, A. et al.
雑誌名:Br J Haematol 156: 3-12, 2012.
<論文の要旨>
後天性血友病A(AHA)は、出血異常の既往のない者において突然第VIII因子に対する抗体(第VIII因子インヒビター)が出現することで知られるまれな出血性素因です。
発症頻度が極めて低いこと、未治療患者からは生物学的検体を採取することが困難なことは、AHAの病態究明の障害となっています。
ただし、近年になりAHAの病態究明が進んでいます。
特に、CD4陽性T細胞がAHA発症に重要な役割を果たしており、T細胞が標的とする第VIII因子のエピトープが明らかにされました。
CD4陽性T細胞反応を調節していることで知られているcytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4 gene (CTLA4)の遺伝子多型と、ある種のHLA classIIハプロタイプの優先的使用が疾患と関連しています。
最近の研究によると、AHA症例においては、第VIII因子および第IX因子に対する蛋白分解活性を有したIgGの存在が明らかになりました。
AHA患者から取り出した第VIII因子を加水分解するIgGは、in vitoroにおいて第VIII因子を不活化するのに対して、第IX因子を加水分解するIgGは第IX因子を活性化します。
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第VIII因子インヒビター(後天性血友病)の抗体(インヒビター)を消失させることを目的とした第一選択薬はステロイドだと思いますが、ステロイドの副作用を考えますと代替治療を考慮することもあります。
「多発性骨髄腫に第VIII因子インヒビターを発症した症例に対するリツキシマブとIVIG治療 」
著者名:Muzaffar, J. et al.
雑誌名:Int J Hematol 95: 102-106, 2012.
<論文の要旨>
後天性第VIII因子インヒビター(AFI)は稀な疾患です。
AFIが多発性骨髄腫に合併するとなると更に稀であり、文献的には症例報告が5報のみです。
AFIの基礎疾患としては、固形癌、造血器悪性腫瘍、自己免疫疾患、感染症などが知れれています。
症状として、粘膜皮膚出血が最も高頻度です。
診断は臨床検査医学的に行われ、APTTの延長(正常血漿で補正されない延長)、第VIII因子活性・抗原の低下、第VIII因子インヒビター陽性(ベセスダ法)を確認します。
止血目的にはバイパス製剤(FEIBAやrFVIIa)が用いられ、インヒビター力価を低下させる目的にはステロイド、サイクロフォスファマイドが用いられます。
ステロイド不応例では、リツキシマブが投与されることもあります。
可能な症例ではAFIの基礎疾患を治療します。
著者らは、多発性骨髄腫に第VIII因子インヒビターを発症し、致命的な出血性心嚢水や関節内出血をきたした症例を経験しています。
この症例では急性出血に対する止血目的にFEIBAが投与されました。
多発性骨髄腫に対して毎週デキサメタゾン(ステロイド)投与中にもかかわらずAFIを発症したこと、ステロイドを継続することは致命的な感染症が懸念される症例であったことより、AFIを抑制する目的でリツキシマブと免疫グロブリンの併用量法が行われ、有効でした。
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高力価インヒビター保有血友病Aに対する免疫寛容療法(ITI)に際して、第VIII因子製剤は低用量が良いのか、高用量が良いのかを検討した報告です(参考:第VIII因子インヒビター)。
結局は、高用量が良いということなのだと思います。
「免疫寛容療法の国際臨床試験の結果(無作為用量比較試験) 」
著者名:Hay CR, et al.
雑誌名:Blood 119: 1335-1344, 2012.
<論文の要旨>
高力価インヒビター保有血友病Aに対する免疫寛容療法(ITI)の国際臨床試験が行われました。
多施設前方視的、無作為用量比較試験であり、高用量群(HD:200IU/kg/dを毎日)と低用量群(LD:50IU/kgを1週間に3回)とに分類されました。
115症例中66例が規定のエンドポイントに到達しました。
成功例n=46(69.7%)、部分的な反応n=3(4.5%)、失敗n=17(25.8%)でした。
成功例はLD 24/58例、HD 22/57例と有意差はみられませんでした。
インヒビターの陰転、回収率の正常化までの期間は、HD群で有意に短かい結果でした(それぞれp=0.027、0.002)。
ITI中のインヒビター力価のピークと、治療に成功することは負相関を示しました。
LD群ではより頻回の出血がみられました(オッズ比2.2、P=0.0019)。
初期の月間出血回数はLD群0.62、HD群0.28であり(P=0.00024)、インヒビターが陰転化した後は90%低下しました。
出血のない症例は、LD群8/58例、HD群21/57例でした(P=0.0085)。
41症例で124回の中心静脈カテーテル感染が報告されましたが、頻度は両群間で差がありませんでした。
今回の臨床試験は、エビデンスに基づいたITI治療を行う上での貴重な成績となりました。
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今回紹介させていただく論文も大変に興味あります。
このような遺伝子組換え変異型第IX因子が実際に臨床の場で使われるようになると素晴らしいですね。
「遺伝子組換え変異型第IX因子は第VIII因子をバイパスして血友病Aの出血症状を軽減する(マウス)」
著者名:Milanov P, et al.
雑誌名:Blood 119: 602-611, 2012.
<論文の要旨>
第IX因子と、その補因子である第VIII因子が複合体を形成することは、内因系凝固機序が進行する上で必須です。第VIII因子、第IX因子のいずれかが欠損すると血友病となります。
第VIII因子は最も疾患と関連しやすい凝固因子で、X染色体上の遺伝子変異をきたせば(先天性)血友病Aを発症し、第VIII因子に対する自己抗体が出現すれば後天性血友病Aを発症します。
血友病Aの治療は第VIII因子濃縮製剤が主体ですが、インヒビターが出現した場合の対処法は困難なことがあります。
著者らは、第VIII因子非存在下で内因系凝固反応を進行させる変異型第IX因子を開発しました。
これをFVIII-KOマウスに発現させたところ、凝固時間は短縮し、尾切断後出血量は減少し、レーザーによる血管損傷部位における凝血塊形成を復活させました。
加えて、第VIII因子対する抗体を有したマウスに対しても変異型第IX因子の効果を確認しました。
遺伝子組換え変異型第IX因子は、インヒビターの有無にかかわらず血友病Aに対して有効である可能性が示唆されました。
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金沢大学第三内科HP&ブログへの最近のアクセス状況(正確にはページビュー数)です。
上図は最近1週間の状況です。
土曜日、日曜日は、平日よりもアクセスが少なくなっていますが、平日には現在約7,000〜8,000のアクセスをいただいています。
有り難く思うとともに、責任ある発信を行っていきたいと身の引き締まる思いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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論文紹介を続けさせていただきます。
血友病の患者さんでは、動脈硬化になりやすいかどうかの検討です。内膜中膜肥厚度(IMT)、上腕動脈を用いた血流依存性血管拡張(flow mediated dilatation : FMD)により評価しています。
「第VIII因子欠損は動脈硬化に対して阻止的に作用しない」
著者名:Biere-Rafi, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 30-37, 2012.
<論文の要旨>
血友病A症例では心血管疾患による死亡率が低いです。
この理由が、低凝固性によるものなのか、動脈硬化が軽度であるためなのかは不明です。
血友病Aのうち、肥満者51例を一般男性のうち肥満者42例および非肥満者50例と比較しました。
頸動脈および大腿動脈の内膜中膜肥厚度(IMT)、上腕動脈を用いた血流依存性血管拡張(flow mediated dilatation : FMD)により動脈硬化と内皮機能の評価を行いました。
全体での年齢は50±13歳でした。
頸動脈IMTは肥満者では0.77±0.22mmであり、非肥満者0.69±0.16mmよりも高値となりました(P=0.008)。
しかし、頸動脈&大腿動脈IMTともに血友病と非血友病との間で差はみられませんでした。
血友病肥満者の35%、一般男性肥満者の29%において動脈硬化性プラークが検出されました。
FMDも血友病肥満者と一般男性肥満者との間で差はみられませんでした。
肥満のある血友病患者では、一般男性血友病者と同様に動脈硬化をきたすものと考えられました。
血友病患者においても心血管危険因子の診断と治療は一般男性と同等に必要と考えられました。
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金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)へのアクセス(最近の1週間)は、日本からが最も多いのは当然なのだと思いますが、国外からのアクセスもいただいているようです。
ありがとうございます。
パキスタン、ウクライナからのアクセスが多いのは何故でしょう。。。。
<リンク>
論文紹介を続けさせていただきます。
後天性血友病(参考;血友病)は、まれな疾患と従来は言われてきましたが、最近遭遇する機会が多くなってきたように思います。
この症例が増えたというよりも、見逃されることが少なくなってきたためではないかと思っています。
「rFVIIa誘導体によるインヒビター保有血友病患者の関節内出血に対する治療」
著者名:Paula E, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 81-89, 2012.
<論文の要旨>
遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)誘導体(NN1731 ; vatreptacog alfa)は、インヒビター保有血友病患者に対する安全で、即効性があり、効果持続の長い止血剤となる期待のもとに開発されました(参考:後天性血友病、血友病)。
インヒビター保有血友病患者における急性関節内出血に対して、NN1731群(5,10,20,40,80μg/kgを1〜3回)とrFVIIa群(90μg/kgを1〜3回)とを比較検討しました。
一時エンドポイントは、包括的な有害事象とし、二次エンドポイントは、免疫反応、薬理動態、効果としました。
対象は、51症例(12才以上)の96関節内出血でした。
その結果、NN1731は有効であり有害事象が低頻度でした。
また、NN1731に伴う免疫反応や血栓症の発症もみられませんでした。
出血の98%はNN1731 20〜80μg/kgの初回投与により9時間以内にコントロールされました。
一方、rFVIIaの有効率は90%でした(既報と同レベルでした)。
今回の検討は有効性の比較を主眼としたものではないですから、NN1731とrFVIIaの有効性を比較するための臨床も必要と考えられます。
<リンク>
論文紹介を続けさせていただきます。
後天性血友病(参考;血友病)は、まれな疾患と従来は言われてきましたが、最近遭遇する機会が多くなってきたように思います。
この症例が増えたというよりも、見逃されることが少なくなってきたためではないかと思っています。
「高齢者後天性血友病A3例の臨床的検討」
著者名:斉藤 誠、他。
雑誌名:臨床血液 53: 240-245, 2012.
<論文の要旨>
後天性血友病Aの3例を経験し、その臨床病態を検討して報告しています。
3例とも高齢(79歳、77歳、68歳)の男性で、皮下出血とAPTTの延長、貧血を認めたため、紹介入院となり、第VIII因子活性の低下(0.9〜3.1%)、第III因子インヒビタの存在(57.1〜173BU/ml)により後天性血友病Aと診断しました。
症例1と症例2は活性型第VII因子製剤(商品名:ノボセブン)の投与により止血を行い、症例1はプレドニゾロン(PSL)単剤で、症例2はPSLに途中、シクロホスファミドを併用し、それぞれ第VIII因子インヒビターは消失しました。
症例3は週1回、5サイクルのリツキシマブ(RTX)投与により、第VIII因子インヒビターは3.5U/mlまで低下(後日、消失を確認)、この間、特に止血剤を用いることなく止血に成功し、肝細胞癌を治療するため前医に再転院となりました。
後天性血友病Aは第VIII因子に対するインヒビターが原因とされ、その制御のため第一にPSLが選択されることが多いですが、症例によってはRTXも試されて良い治療薬と考えられました。
<リンク>
論文紹介を続けあせていただきます。
Scott(スコット)症候群は、恥かしながら管理人の頭から忘れ去られていた疾患ですが、再インプットしたいと思います。
「原因不明の出血性素因としてのスコット症候群」
著者名:Flores-Nascimento MC, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 75-77, 2012.
<論文の要旨>
Scott(スコット)症候群は、血小板膜上のホスファチジールセリン発現が障害されていることによる、まれな出血性素因です。
血小板プロコアグラント活性やトロンビン形成能が低下するために凝血塊の形成が抑制されています。
著者らは、原因不明の出血エピソードを持った17才女性の症例を経験しました。
本症例の血液凝血学的検査は正常でしたが、細小動脈血流下の血小板凝集能は低下していたために血小板機能異常が示唆されました。
さらに、アネキシンVの発現量が著名に低下していたために、スコット症候群の確定診断がなされました。
本症例に対して血小板輸血を行ったところ、臨床症状が軽快しました。
以上、血液凝固学的検査が正常であるにもかかわらず異常出血の既往のある症例に遭遇したら、スコット症候群も念頭において精査すべきと考えられました。
(補足)
スコット症候群は、他の血小板機能異常症とは異なり出血時間は正常です。また、血小板第3因子測定結果が異常です。
<リンク>
血友病の患者さんでは、凝固因子が欠損していることで血栓性疾患になりにくいと考えられてきました。
しかし、動脈硬化になりやすいかどうかは、あまり検討されてきませんでした。
近年、血友病患者さんの止血コントロールが良好になってきましたので、動脈硬化のテーマが研究対象になるのではないかと思います。
「血友病A患者の冠動脈石灰化(第VIII因子活性低下は動脈硬化に対して阻止的に作用しない)」
著者名:Tuinenburg A, et al.
雑誌名:Arterioscler Thromb Vasc Biol 32: 799-804, 2012.
<論文の要旨>
血友病患者では、一般男性と比較して虚血性心疾患による死亡率が低いです。
著者らは、血友病患者における凝固因子活性の低下が、動脈硬化の進展を抑制しているかどうか検討しました。
冠動脈硬化の程度は、マルチスライスCTで評価しました。重症〜中等症の血友病A(男性42例、59才以上)と、非血友病男性613例とが比較されました。
HIV感染者や心血管疾患の既往のある症例は除外されました。
冠動脈の石灰化の程度は、Agatston scoreの算出と石灰量で定量化されました。
Agatston scoreを自然対数化した上での血友病と非血友病の平均差(β)は、0.141でした(P=0.709)。
年齢、BMI、高コレステロール血症、高血圧症、糖尿病薬の頻用で適合化しても、同様の結果でした(β=0.525、P=0.157)。
石灰化量の検討結果も同様でした。
以上、血友病患者における冠動脈石灰化の程度は、非血友病一般男性と差がみられませんでした。
そのため、血友病患者においても動脈硬化のスクリーニングや精査は重要と考えられました。
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金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)のHP&ブログに訪問していただく方の中で、検索によって到達していただく方がとても多いようです。
どの検索エンジンで入っていただいているのかの現状(最近1ヶ月)を紹介させていただきます。
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Googleと、Yahooで合わせて95%以上になるようです。
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この4週間で、金沢大学第三内科HP&ブログのアクセスの多い記事を紹介させていただきます。
アクセス数の多い順に列挙させていただきます。
・PT(PT-INR)とは? 正常値、ワーファリン、ビタミンK欠乏症
・Dダイマー(D dimer:DD)とは? :FDP/Dダイマー比
・あ播種性血管内凝固症候群(DIC):インデックスページ(図解シリーズ)
・播種性血管内凝固症候群(DIC):インデックスページ(図解シリーズ)
・プラビックス、プレタール、パナルジン、プロサイリン、ドルナー、ワーファリン、納豆
最もアクセスの老い記事(PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?)は、8,470/4Wでした。
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