血液内科学系統講義試験:多発性骨髄腫
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は多発性骨髄腫です。
問35. 多発性骨髄腫の腎障害の原因として誤っているのはどれか。1つ選べ。
a. Bence‐Jones蛋白の沈着による尿細管障害
b. アミロイドの沈着による尿細管障害
c. 骨髄腫細胞の腎臓浸潤
d. 骨融解に伴う高カルシウム血症
e. 脱水
(正答) b
問36. 多発性骨髄腫に関する記述で誤っているのはどれか。
(1) 高カルシウム血症を伴う場合は治療を要する。
(2) G-band法による染色体検査では染色体異常の検出率は高い。
(3) t(4;14) の染色体異常を有する多発性骨髄腫は予後良好である。
(4) 血清アルブミン値と血清β2-ミクログロブリン値を組み合わせることによって予後予測が可能である。
(5) アミロイドーシスを合併している例もある。
a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)
(正答) b
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:14
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血液内科学系統講義試験:白血病など
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は白血病などです。
問27. 本邦の成人患者に関する記述で正しいのはどれか。
(1) 急性骨髄性白血病の罹患率は慢性骨髄性白血病のそれより低い。
(2) 急性リンパ性白血病におけるキメラ遺伝子の頻度はbcr/ablが最も高い。
(3) 慢性骨髄性白血病患者に対する造血幹細胞移植件数は減少している。
(4) 本態性血小板血症患者の大部分はJAK2遺伝子変異陽性である。
(5) 多発性骨髄腫の人口10万人あたりのおおまかな年間発症数は30人である。
a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)
(正答)b
問28. 疾患名と臨床症状の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。
a. 急性前骨髄球性白血病 − 出血傾向
b. 慢性骨髄性白血病 − 胃潰瘍
c. 真性多血症 − 低酸素血症
d. 本態性血小板血症 − 出血傾向
e. 原発性マクログロブリン血症 − 眼底のソーセージ様静脈怒張
(正答)c
問29. POEMS症候群の5徴に含まれない所見はどれか。1つ選べ。
a. 筋委縮
b. 肝脾腫などの臓器腫大
c. 耐糖能低下・無月経などの内分泌異常
d. M蛋白血症
e. 色素沈着・剛毛などの皮膚症状
(正答)a
問30. 疾患名と検査所見の組み合わせで誤っているのはどれか。2つ選べ。
a. 急性単球性白血病 − 非特異的エステラーゼ染色陽性の芽球を認める
b. 急性リンパ性白血病 − 一部の芽球にAuer bodyを認める
c. 慢性骨髄性白血病急性転化 − NAP scoreが低値である
d. 骨髄線維症 − 末梢血塗沫標本でtear drop cellsを認める
e. 多発性骨髄腫 − 頭蓋骨の単純X線写真でpunched-out lesionを認める
(正答)b, c
問31. 疾患名と治療法・治療薬の組み合わせで誤っているのはどれか。1つ選べ。
a. 急性前骨髄球性白血病 — レチノイン酸(ATRA)
b. フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病 − メシル酸イマチニブ
c. 真性多血症 − 瀉血
d. 血栓症状を伴う本態性血小板血症 − 低用量アスピリン
e. 無症候性多発性骨髄腫 − MP(メルファラン+プレドニゾロン)療法
(正答)e
問32. 造血器腫瘍の治療に用いられる抗がん剤とその代表的な副作用の組み合わせで誤っているのはどれか。
(1) イダルビシン − 心機能障害
(2) シクロホスファミド − 出血性膀胱炎
(3) ビンクリスチン − 中枢神経障害
(4) レナリドミド − 動脈血栓症
(5) ボルテゾミブ − 肺障害
a. (1) (2) b. (2) (3) c. (3) (4) d. (4) (5) e. (1) (5)
(正答)c
問33. ペルオキシダーゼ染色が通常陰性と判定される急性骨髄性白血病はどれか。3つ選べ。
a. 最未分化型急性骨髄性白血病(M0)
b. 急性前骨髄球性白血病(M3)
c. 急性骨髄単球性白血病(M4)
d. 急性単球性白血病(M5a)
e. 急性巨核球性白血病(M7)
(正答)a, d, e
問34. 慢性骨髄性白血病に関して誤っているのはどれか。2つ選べ
a. 自覚症状がなく健康診断等で偶然発見されることが多い。
b. 末梢血の白血球分類では好塩基球の増加を認める。
c. 通常、t(9;22)の染色体異常を伴う。
d. 通常、JAK2遺伝子変異を伴う。
e. 骨髄中の骨髄芽球が5%以上に増加した場合は急性転化とみなす。
(正答)d, e
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(9)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(9)です。
問12. 下記の疾患または病態のうち、検査所見の記載が正しいのはどれか。1つ選べ。
|
疾患・病態 |
出血時間 |
PT
|
APTT
|
Fbg
|
HPT |
a |
単純性紫斑病 |
延長 |
正常 |
正常 |
正常 |
正常 |
b |
Glanzmann病
|
延長 |
正常 |
正常 |
低下 |
正常 |
c |
第V因子インヒビター |
正常 |
延長 |
延長 |
正常 |
低下 |
d |
後天性血友病A
|
正常 |
正常 |
延長 |
正常 |
低下 |
e |
ワルファリン内服 |
正常 |
延長 |
延長 |
正常 |
低下 |
PT:プロトロンビン時間
APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
Fbg:フィブリノゲン
HPT:ヘパプラスチンテスト
(解説)
a. 単純性紫斑病では、全ての検査所見が正常である。
b. Glanzmann病(血小板無力症)では、Fbgは正常である。
c. 第V因子インヒビターでは、HPTは正常である。
d. 後天性血友病Aでは、HPTは正常である。
e. 正しい。
(解答) e
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(8)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(8)です。
問20.
69歳女性。
5日前より頻尿と排尿時痛を自覚。昨日より39℃を超える発熱、口渇がみられるようになり来院した。
肋骨脊柱角に叩打痛を認める。
血液学的検査:白血球 15,800、赤血球 374万、Hb 12.1g/dl、血小板 4.8万、クレアチニン 1.2 mg/dl、LDH 202単位(基準176〜353)、PT 13.4秒(基準10〜14)、FDP 41μg/ml。
なお、血液培養にて大腸菌が検出された。
最も適切な治療薬はどれか。1つ選べ。
a. 濃厚血小板
b. ビタミンK
c. 新鮮凍結血漿
d. トラネキサム酸
e. 遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(リコモジュリン)
(解説)
膀胱炎 → 急性腎盂腎炎 → 敗血症に至った症例である。
血小板数低下と、FDP上昇が際立った所見である。
敗血症を基礎疾患として、DICを合併したものと考えられる。
a. この程度の血小板数低下であれば、濃厚血小板輸注は必要ない。
b. PTは正常であり、ビタミンK欠乏状態ではない。
c. PTは正常であり、新鮮凍結血漿は必要ない。
d. 禁忌である!
e. 遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(リコモジュリン)は、DICの特効薬である。
(答え) e
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(7)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(7)です。
問19. 血管内皮の血管拡張作用と最も関連しているのはどれか。1つ選べ。
a. トロンボモジュリン(TM)
b. プロスタサイクリン(PGI2)
c. von Willebrand因子(vWF)
d. 活性型プロテインC(APC)
e. プラスノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)
(解説)
a. トロンボモジュリン(TM)(参考:リコモジュリン)には、抗血栓作用があるが、直接的な血管拡張作用はない。
b. プロスタサイクリン(PGI2)は、血小板機能抑制作用と、血管拡張作用を有する。
c. von Willebrand因子(vWF)は、血小板粘着時に必要である。
d. 活性型プロテインC(APC)は、VaとVIIIaを抑制する。
e. プラスノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)は、t-PAと一対一結合することで、線溶抑制的に作用する。
(答え) b
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(6)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(6)です。
問18.
21歳女性。頻回かつ止血困難の鼻出血の精査目的に来院した。
血液検査は下記の通りであった。
Hb 8.6 g/dL,血小板数 38.1万/μL,出血時間14分,PT 10.2秒,APTT 78.5秒,フィブリノゲン 226 mg/dL,FDP 2.4 μg/mL.
妹も、幼少時より鼻出血がみられやすい。
「この患者の疾患」と「(先天性)血友病A」とで異なっている点はどれか。1つ選べ。
a. APTT延長
b. 第VIII因子活性低下
c. PT正常
d. 出血部位
e. 第XIII因子正常
(解説)
鼻出血(粘膜出血)を主訴に来院した女性である。鼻出血のためと思われる貧血がみられている。
出血時間とAPTTの延長が特徴的な所見になっている(PTは正常)。
妹にも同じく出血症状がみられており、先天性出血性素因が疑われる。
「この患者の疾患」は、von Willebrand病と考えられる。
a. 正しい。
b. 正しい。
c. 正しい。
d. von Willebrand病では粘膜出血(鼻出血など)がみられやすく、血友病では深部出血(関節内出血、筋肉内出血など)が見られやすい。
e. 正しい。
(答え) d
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(5)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(5)です。
問17. 血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか。1つ選べ。
a. アレルギー性紫斑病に対しては、ビタミンC内服が有効である。
b. 肺塞栓の再発予防としては、アスピリン内服が有効である。
c. Upshow-Schulman 症候群に対しては、新鮮凍結血漿の投与が有効である。
d. 閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては、ビタミンK内服が有効である。
e. 第VIII因子インヒビターの出血に対しては、血漿由来第VIII因子製剤が有効である。
(解説)
a. しばしば、自然軽快する。第XIII因子濃縮製剤を使用することもある。
b. アスピリンは無効で、ワルファリンが使用される(参考:深部静脈血栓症)。
c. 正しい。
d. 閉塞性黄疸ではビタミンKを経口投与しても吸収されないために、経静脈的に投与する。
e. 第VIII因子インヒビターの出血に対しては、バイパス製剤(ノボセブン、ファイバなど)が使用される(参考:後天性血友病)。
(答え) c
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(4)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(4)です。
問16. 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通した所見の記載として誤りはどれか。1つ選べ。
a. 血清ハプトグロビンの低下
b. 網状赤血球の上昇
c. 抗ADAMTS13抗体陽性
d. 間接ビリルビンの上昇
e. 血清LDHの上昇
(解説)
a. 溶血でみられる所見である。
b. 溶血でみられる所見である。
c. 典型的な TTPでは抗ADAMTS13抗体陽性は陽性であるが、HUSではこの抗体は陽性にならない。
d. 溶血でみられる所見である。
e. 溶血でみられる所見である。
(答え) c
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(3)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(3)です。
問15. 播種性血管内凝固症候群(DIC)の記載として正しいものはどれか。1つ選べ。
a. FDP、血小板数ともに正常であれば、DICを否定できる。
b. 敗血症に合併したDICでは、フィブリノゲンが著減する。
c. 敗血症に合併したDICでは、血中α2プラスミンインヒビター(α2PI)が著減する。
d. 羊水塞栓に合併したDICでは、血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が正常である。
e. 急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICでは、血中プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)が著増する。
(解説)
a. 正しい。
b. 敗血症に合併した播種性血管内凝固症候群(DIC)では、フィブリノゲンの低下がみられにくい。炎症反応によって、むしろ上昇していることも少なくない。
c. 敗血症に合併したDICでは、血中α2プラスミンインヒビター(α2PI)は低下しにくい。α2PIは、α2分画に属し、DICがなければむしろ炎症反応で上昇する。
d. 全てのDICにおいて、TATは上昇する。
e. 急性前骨髄球性白血病(APL)に合併したDICでは、血中プラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)は上昇しない。
(答え)a
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(2)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(2)です。
問14. 典型的な抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する記載内容として、正しいものはどれか。1つ選べ。
a. ラッセル蛇毒時間が延長する。
b. 静脈血栓症では門脈血栓が最も多い。
c. APTTが正常であればAPSを否定できる。
d. 不育症の女性に対しては、ワルファリンによる抗凝固療法を行う。
e. APS患者血漿:コントロール血漿=1:1の混合血漿で、凝固時間の延長が是正される(混合試験)。
(解説)
a. 正しい。
b. 静脈血栓症では深部静脈血栓が最も多い。
c. APSの全症例で、APTTが延長しているわけではない。
d. ワルファリンには、催奇形性の副作用がある。
e. APS患者血漿:コントロール血漿=1:1の混合血漿で、凝固時間の延長が是正されない。
(答え) a.
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22
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血液内科学系統講義試験:血栓止血学(1)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は血栓止血学(1)です。
問13. 下記の疾患のうち出血、血栓の両者がみられる疾患・病態はどれか。1つ選べ。
a. 高PAI血症
b. 高Lp(a)血症
c. Trousseau症候群
d. 先天性プロテインS欠損症
e. Warfarin induced skin necrosis
(解説)
a. 高PAI血症では、血栓傾向となる。
b. 高Lp(a)血症では、血栓傾向となる。
c. Trousseau症候群では、悪性腫瘍に、遊走性血栓性静脈炎を合併する。
d. 先天性プロテインS欠損症では、血栓傾向となる。
e. Warfarin induced skin necrosisでは、紫斑は見られるが、その本態はPC活性低下に伴う
血栓傾向である。
(答え) e
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10
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血液内科学系統講義試験:輸血(3)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は輸血学(3)です。
血液型おもて試験結果を図に示す。
血液型組み合わせとして正しいのはどれか。1つ選べ。
左から順に患者1/2/3/4とする。
a) A/B/O/AB
b) B/A/AB/O
c) A-/B-/O-/AB-
d) B+/A+/AB+/O+
e) おもて・うら不一致
(解説)
抗RhDやうら試験結果を示していないので、Rh+-、おもて・うら不一致とは言えない。
(答え) a
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26
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血液内科学系統講義試験:輸血学(2)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火)
今回は輸血学(2)です。
問24. 血液製剤に関し誤っているのはどれか。1つ選べ。
a. 赤血球製剤は2-6℃で保存する。
b. 血液製剤から白血球除去を行う目的は、副作用予防である。
c. 4月1日の献血で得られた赤血球製剤の有効期限は、4月22日の24時である。
d. 特定生物由来製品は、ヒト由来原料から製造された医薬品である。
e. 免疫グロブリン製剤は、生物由来製品感染症等被害救済制度の対象である。
(解説)
a) 正しい。
b) 正しい。
c) 正しくは21日24時。採血日を1日目として、最終使用日は21日目である。
d) 正しい。
e) 正しい。
(答え) c
問25. 輸血前検査に関して正しいのはどれか。1つ選べ。
a. 副試験は省略できない。
b. 主試験は血液型検査の一種である。
c. 患者のHAV・HBV・HCV検査を行う。
d. 緊急輸血前の輸血関連検査用採血は不要である。
e. ABO式血液型検査の原則は、2回採血・2回検査である。
(解説)
a) 省略して良い。
b) 交差適合試験の一種である。
c) HBV・HCV・HIV検査を行う。
d) 血液型検査や交差試験の結果を待つ必要は無いが、採血は行う。
e) 正しい。
(答え) e
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16
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血液内科学系統講義試験:輸血学(1)
平成24年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成24年7月17日 (火) 試験時間 10時〜11時(60分間)
問題と回答をアップさせていただきます。
今回は輸血学(1)です。
問21. ABO型不適合赤血球輸血について正しいのはどれか。1つ選べ。
a. 死亡率は80%である。
b. 血圧を測定してから輸血を中止する。
c. 不適合輸血が50 mL以内なら救命可能である。
d. O+血をA+患者に輸血すると、ABO不適合輸血になる。
e. 輸血していた製剤は、血液型が確認できれば廃棄して良い。
(解説)
a) 死亡率は20%である。
b) 最初の対応は輸血中止である。次に輸血セットを交換し、乳酸または酢酸リンゲル液を急速静注する。
c) 正しい。
d) ABO異型輸血だが、輸血可能であり、適合輸血となる。
e) 不適合輸血量は予後と関連するため、輸血量の確認も必要である。
(答え)c
問22. 不規則抗体について正しいのはどれか。1つ選べ。
a. 免疫抗体は主にIgMである。
b. 妊婦の不規則抗体検査は不要である。
c. 不規則抗体の陽性率は約10-20%である。
d. 不規則抗体は規則抗体(抗A、抗B)以外の血液型関連抗体である。
e. 免疫抗体は主に不衛生な環境により産生される。
(解説)
a) 主にIgGである。
b) 必要である。
c) 1-2%である。
d) 正しい。
e) 輸血・妊娠・移植が主な原因。
(答え)d
問23. 血液製剤の使用に関して誤っているのはどれか。1つ選べ。
a. 輸血した血小板の約1/3は脾臓に捕捉される。
b. 新鮮凍結血漿は、融解後3時間以内に輸注する。
c. アルブミン投与後の血管回収率は通常約40%である。
d. 体重80kgの患者に赤血球製剤を2単位輸血すれば、Hbは約2 g/dL増加する。
e. 血清アルブミン値2.0 g/dLは、アルブミン投与の絶対適応でない。
(解説)
a) 正しい。
b) 正しい。凝固因子不活化を防ぐため他製剤に比べ短い。
c) 正しい。
d) (40/80)x2=1 g/dL増加する。
e) 低アルブミン血症を単に補正するだけのアルブミン投与は認められない。
(答え)d
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:59
| 医師国家試験・専門医試験対策
血友病診療の過去・現在・将来
血友病診療の過去、現在、将来に関する論文が、Lancetで報告されましたので、紹介させていただきます。
参考:血友病、後天性血友病
「現代の血友病治療」
著者名:Berntorp E, et al.
雑誌名:Lancet 379: 1447-1456, 2012.
<論文の要旨>
血友病治療は、この40〜50年間で充分に向上しました。
1970年代までは、血液凝固因子製剤を自宅で輸注することはできませんでした。
しかし不幸なことに、自己注射が可能になったことでHIVや肝炎ウィルスなどのウィルス感染が広がり、特に1980年代は血友病患者の死亡率が上昇しました。
この20年間で遺伝子組換え製剤の登場といった製剤の改善がみられ、治療の安全性が向上しました。
それに伴い、治療の焦点は製剤を予防的に使用する方向性へとシフトしました。
重症の血友病では長期的な予防治療が推奨されますが、いつ開始するか、至適治療プロトコールはどれか、この高価な治療をどのように中止できるかなど解決すべき問題点が残されています。
治療の主な副作用はインヒビターの発症であり、現在も重要な研究課題となっています。
治療法改善の次のステップは、薬物動態の改善された新しい製剤の開発です。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48
| 出血性疾患
出血性素因の凝固因子活性と出血の重症度
まれな出血性疾患において、凝固因子活性と臨床的な出血の重症度を論じた論文を紹介させていただきます。
参考:血友病、後天性血友病
「まれな出血性素因における凝固因子活性と臨床的な出血の重症度」
著者名:Peyvandi F, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 615-621, 2012.
<論文の要旨>
European Network of Rare Bleeding disorders (EN-RBD)は、まれな出血性素因(RBDs)における知識と実臨床のギャップを埋めるために設立されました。
著者らは、RBDs症例における凝固因子活性と出血の重症度の関連について検討しました。
EN-RBDに登録された489症例を用いた横断調査が行われました。
その結果、フィブリノゲン、X、XIII、V&VIII複合欠損に関しては、凝固因子活性と出血重症度の間に強い相関がみられました。
V、VII因子欠損症に関しては、弱い相関がみられました。
XIに関しては、相関はみられませんでした。
RBDs症例において出血症状が出なくなるレベルは、フィブリノゲン100mg/dl、V 12U/dL、V&VIII複合欠損43U/dl、VII 25U/dL、 X 56U/dL、 XI 26U/dL、 XIII 31U/dLでした。
さらに、Grade IIIの出血がみられるレベルは、フィブリノゲン・V・XIII感度以下、V&VIII複合欠損15 U/dL、VII 8U/dL、X 10U/dL、XI 25U/dLでした。
RBDsのいずれであるかによって、凝固因子活性と出血重症度の関連は様々でした。
強い相関がみられたのは、フィブリノゲン、X、XIIIのみでした。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27
| 出血性疾患
出血性疾患(血友病ほか)における血栓症
出血性疾患において血栓症を起こすこともあるという、逆説的な報告です。
たとえば、血友病などの患者さんにおける止血コントロールは大きく進歩したために、今後は血栓症対策が大切になってくるのでしょう。
参考:血友病、後天性血友病
「まれな出血性疾患における血栓症」
著者名:Ruiz-Saez A.
雑誌名:Hematology Suppl 1: S156-S158, 2012.
<論文の要旨>
凝固因子の先天性欠損症は、通常は一生出血傾向をきたします。
血友病A&B、von Willebrand病のみならず、先天性フィブリノゲン、FII・V・VII・X・XI・XIII因子欠損症、複合因子欠損症も知られており、多様な臨床症状を示します。
逆説的ですが、これらの出血傾向をきたす疾患で、動・静脈血栓症をきたしたという報告もあります。
血友病患者における血栓症の病態は多様であり、中心静脈カテーテルの長期間留置、手術時の強力な補充療法、バイパス製剤の使用、先天性または後天性血栓性素因の共存などが原因として知られています。
その他のまれな出血性素因に関しては、無フィブリノゲン血症・FXI&VII因子欠損症での血栓症が報告されています(若年者の報告もあります)。
症状のない軽症の欠損症例では、補充療法の有無に関わらず抗血栓療法を考慮した方が良い場合があります。
血栓症の既往のある症例では、出血性素因のみならず血栓性素因も共存していないか検査すべきです。
全症例で言えることですが、心血管疾患危険因子のコントロールを行っておくべきです。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53
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遺伝子組換え第XIII因子製剤:第XIII因子欠損症に対して
遺伝子組換え第XIII因子製剤も登場しそうです。
血液凝固因子製剤は、一部の疾患を除いて、遺伝子組換え製剤が主流になっていくのでしょうか。
参考:血友病、後天性血友病
「遺伝子組換え第XIII因子製剤:第XIII因子欠損症に対する安全で新規の治療法」
著者名:Inbal A, et al.
雑誌名:Blood 119: 5111-5117, 2012.
<論文の要旨>
先天性第XIII因子(FXIII)欠損症はまれな常染色体劣性遺伝の疾患であり、ほとんどの症例はサブユニットA(FXIII-A)の欠損症です。
本疾患では、致命的出血、創傷治癒不全、自然流産がみられます。
ほとんどの国において、血漿製剤やクリオ製剤が使用可能ですが、アレルギー反応や血液由来病原菌の危険性を有しています。
著者らは先天性FVIII-A欠損症に対する遺伝子組換え第XIII因子製剤(rFXIII)予防投与の有効性と安全性を評価しました。
対象は6歳以上の41例(平均26.4歳:7〜60才)です。
rFXIIIによる予防治療期間中は、4症例での5回の出血エピソード(外傷に起因)のみであり、その際にはFXIII製剤による治療が行われました。
rFXIIIによる予防治療期間中の出血は0.138回/人・年であり、それまでの出血時輸注療法だった時期の2.91回/人・年に比較して有意に低率でした。
一過性の非中和性低力価抗rFXIII抗体が4例でみられましたが、アレルギー反応、治療を要する出血、FXIII薬物動態の変化を伴いませんでした(しかも、その後消失しました)。
以上、rFXIIIはFXIII-A欠損症の出血を予防する上で有効かつ安全と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
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金沢大学呼吸器内科のスタッフ写真(2)
金沢大学呼吸器内科では、肺癌、喘息・慢性咳嗽、肺炎/間質性肺炎などの研究、臨床に精力的に取り組んでいます、
全国的にも(もちろん北陸でも)、内科領域の中でももっとも人材が渇望されている呼吸器内科、血液内科の同志を心から求めています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45
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金沢大学第三内科(呼吸器内科)スタッフ写真(1)
金沢大学第三内科(呼吸器内科)医局のスタッフ写真です(関連記事:金沢大学血液内科スタッフ)。
金沢大学第三内科(呼吸器内科/血液内科)への入局者、研修者を、心から歓迎しています。
当科は、他大学からの入局者も多いのが特徴です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
| その他
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)医局説明会
金沢大学第三内科医局説明会のお知らせ
上記ポスターの如く、平成24年7月5日(木)18時〜
第三内科医局(C棟4階)において、
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)医局説明会が開催されます。
お誘い合わせの上、多数ご出席くださいませ。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06
| 研修医の広場
金沢大学第三内科同門会総会・開講記念会(全体写真)
第29回 金沢大学第三内科同門会総会、第44回 金沢大学第三内科開講記念会
<日時 平成24年6月17日(日)>
全体写真ができましたので、アップさせていただきます。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
| その他
可能性トロンボモジュリンと血友病
今回紹介させていただくBlood誌の論文は、抗凝固薬である可能性トロンボモジュリン(参考:リコモジュリン、トロンボモジュリン)が、出血性疾患である血友病に有効かもしれないというトリッキーな論文です。
本当なら、かなりビックリですが、Blood誌での報告ですから、重みがあります。
参考:血友病、後天性血友病
「可能性トロンボモジュリンは血友病全血のクロット安定性を高める」
著者名:Foley JH, et al.
雑誌名:Blood 119: 3622-3628, 2012.
<論文の要旨>
Solulinは可溶性トロンボモジュリンです。
第VIII因子欠乏血漿のクロット溶解時間は、TAFIaを介した機序により延長することが知られています。
著者らは、血友病のヒトおよび犬から採血し、トロンボエラストグラフィー(TEG)による組織因子惹起フィブリン形成能およびt-PA溶解能を評価しました。
その結果、重症血友病Aにおいては、Solulin存在下でクロット安定性は4倍以上となりました(溶解能への影響はごくわずかでした)。
第VIII/IX因子製剤による予防投与を受けている症例においても、Solulinで同様の効果が得られました。
低濃度状態ではトロンビン- Solulin複合体の効果は、プロテインC活性化よりもTAFI活性化に対して優位でした。
血友病イヌの検討では、Solulinを投与することによりクロットが強固になりました(TEGによる評価)。
以上、Solulinが低濃度であれば血友病ヒト(in vitro)と血友病イヌ(in vivo/ex vivo)において、抗線溶活性が優位に発揮されるものと考えられました。
この知見は、低濃度Solulin(可溶性トロンボモジュリン)が血友病の新たな治療戦略になる可能性を示していると考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07
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血友病A:予防治療 vs. 出血時輸注療法
今回紹介させていただくJ Thromb Haemost誌の論文では、血友病Aに対して出血時輸注療法よりも予防治療の方が良く、さらに予防投与法であっても投与方法の工夫ができることを報告しています。
参考:血友病、後天性血友病
「血友病A患者における2種類の予防治療の比較と出血時輸注療法との比較」
著者名:Valentino LA, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 359-367, 2012.
<論文の要旨>
インヒビターを保有しない血友病Aに対する至適治療は第VIII因子製剤による予防治療と考えられています。
著者らは、アドベイト(遺伝子組換えの血漿/アルブミン非含有製剤)よる2種類の予防治療の比較(主要評価項目)、および出血時補充療法と予防治療の比較(二次評価項目)を行いました。
これまで出血時輸注療法が行われてまた66症例(7〜59歳;FVIII活性≦2%)が、まず6ヶ月間の出血時輸注療法が継続され、その後に(1)20〜40IU/kgを隔日投与12ヶ月間、or(2)20〜80IU/kgを1回/3days(薬物動態で調節)12ヶ月間に分類されました。
いずれの投与法においてもFVIII活性のトラフ値を1%以上を目標とした。効果は年間出血率(ABR)で評価されました。
予防治療が行われたうち22症例(33.3%)では出血のエピソードが全くみられませんでしたが、出血時輸注療法が行われた症例では出血の無い症例は存在しませんでした。
ABRは、2つの予防治療法間で差がありませんでしたが、いずれの予防治療法であっても出血時輸注療法との間には大きな差がみられました。
ABR中央値は、出血時輸注療法43.9、(1)の予防治療法1.0、(2)の予防治療法2.0、両予防治療法1.1でした。
FVIII使用量や有害事象出現率は、2種類の予防治療法間で差はみられませんでした。第VIII因子インヒビター発症者はいませんでした。
以上、2種類の予治療法の有用性には差がなく、いずれの方法であっても出血時輸注療法よりも出血を減らすものと考えられました(1)の標準的な予防治療のみでなく、(2)の予防治療法も代替治療になるものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46
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血友病Aと遺伝子組換え第VIII因子・Fc融合蛋白
今回紹介させていただくBlood誌の論文では、新しい方向性での第VIII因子製剤を報告しています。
現在使用されている第VIII因子製剤の半減期は半日程度です。この半減期が長くなれば、投与回数を減らすことが期待できます。
現時点では夢のような話ですが、半減期が一ヶ月以上の製剤があったら、とても素晴らしいのではないでしょうか。
参考:血友病、後天性血友病
「血友病A患者に対する遺伝子組換え第VIII因子・Fc融合蛋白の安全性と活性の持続」
著者名:Powell JS, et al.
雑誌名:Blood 119: 3031-3037, 2012.
<論文の要旨>
現在使用されている第VIII因子(FVIII)製剤の半減期は8〜12時間であるため、血友病A患者の予防治療や出血時投与に際して頻回の輸注が必要となります。
rFVIIIFcは、FVIIIが1分子とヒトIgG1のFc領域が結合した融合蛋白であり、半減期が長くなっています。
著者らは血友病A16症例に対して、rFVIII(25 or 65IU/kg)を1回投与した後に、同量のrFVIIIFcを投与した。
その結果、有害事象のほとんどは薬物と無関係でした。
また、抗rFVIIIFc抗体やインヒビターが出現した症例もありませんでした。
rFVIIIFcはrFVIIIと比較して、半減期は1.54〜1.70倍、クリアランスは1.49〜1.56倍長く、AUCは1.48〜1.56倍となりました。
以上、rFVIIIFcは、血友病A患者における止血能の是正時間を延長し、製剤の輸注回数を減らす上で有用ではないかと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24
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血友病インヒビターとBAY86-6150(rFVIIa)
今回紹介させていただくJ Thromb Haemost 誌の論文では、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa:ノボセブン)の改良型であるBAY86-6150の第I相試験の結果を紹介しています。
ノボセブンは素晴らしい止血剤ですが、半減期が短いために頻回の投与が必要なことが問題点とされてきました。半減期の長い活性型第VII因子製剤の開発は、一つの方向性になっています。
参考:血友病、後天性血友病
「改良型遺伝子組換え活性型第VII因子製剤の血友病患者への投与(第I相試験)」
著者名:Mahlangu JN, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 773-780, 2012.
<論文の要旨>
BAY86-6150(BAY)は、新しいタイプの遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)であり、インヒビター含有血友病患者に対して優れた向凝固活性と長い半減期を有することが期待されています。
対象は、出血のしていない血友病A&B(中等症〜重症:18〜65歳)(インヒビター有無ともに含まれます)です。
16症例が、BAY(6.5, 20, 50, 90μg/kg)投与群またはプラセボ投与群へ無作為に分類されました。コホートデータをみてBAYの増量が行われました。
その結果、今回行われたBAY用量では、臨床的意義を有した有害事象や用量制限毒性はみられませんでした。
BAYの薬理動態の検討では、用量により直線的に反応し、半減期は5〜7時間でした。
乏血小板血漿(PPP)を用いたトロンビン形成試験においては、用量依存性のトロンビン形成がみられました。
また、PTおよびAPTTは短縮しました。
50日間の追跡でもBAYに対する中和抗体は出現しませんでした。
以上、BAYは90μg/kgの用量まで安全であり、今後第II&III相臨床試験によりBAYの有効性と安全性を評価すべきと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51
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アミオダロンと第V因子インヒビター
今回紹介させていただくBlood Coagul Fibrinolysis 誌の論文では、第V因子インヒビターの原因として、抗不整脈薬であるアミオダロンも挙げられるのではないかと述べています。
凝固因子インヒビターは稀な疾患です。その中でも、第VIII因子インヒビターが最も多いですが、次が第V因子インヒビターではないかと思います。
第V因子インヒビターは、術中あるいは観血的処置時(内視鏡検査を含む)に使用される牛トロンビン製剤との関連も原因のひとつとして指摘されています。
参考:血友病、後天性血友病
「アミオダロン療法に伴う第V因子インヒビター」
著者名:Shreenivas AV, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 342-344, 2012.
<論文の要旨>
第V因子インヒビターは、まれな出血性素因です。
著者らは出血症状をきたした高齢者男性で、後日に第V因子インヒビターを発症していることが確認された症例を報告しています。
本症例は心房細動に対してアミオダロンが投与されましたが、アミオダロン内服開始数ヶ月後に第V因子インヒビターに起因する出血症状をきたしました。
文献的には、第V因子インヒビターの多くは牛トロンビンに暴露された後に出現しています。
しかし、著者らの症例は、手術中に牛トロンビンは使用されていませんでした。
しかも、牛トロンビンが原因となる第V因子インヒビターは暴露後1〜2週間で出現しますが、著者らの症例は数ヶ月後に出現しています。
アミオダロンを中止して、ステロイドおよびサイクロフォスファマイドの投与を行ったところ、6週間後には凝固異常は劇的に改善しました。
以上、第V因子インヒビター発症の原因として、アミオダロンも加えるべきと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30
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北陸血栓研究会のご案内
第10回 北陸血栓研究会
日 時:平成24年11月17日(土)17:00〜19:00
場 所:十全講堂 会議室(2階)(金沢大学医学部構内)
代表世話人 金沢大学医薬保健研究域医学系 細胞移植学 中尾 眞二
当番世話人 金沢医科大学 血液免疫内科学 正木 康史 先生
プログラム
学術情報提供(17:00 〜 17:10) CSLベーリング株式会社
開会の挨拶 金沢医科大学 血液免疫内科学 准教授 正木 康史 先生
教育講演(17:10 〜 17:50)
「先天性アンチトロンビン欠乏症について(仮題)」
金沢大学医薬保健研究域保健学系保健学科 准教授 森下 英理子
− 休 憩 − (17:50 〜 18:00)
特別講演(18:00 〜 19:00)
座長 金沢医科大学血液免疫内科学 准教授 正木 康史 先生
「抗リン脂質抗体症候群(APS)について(仮題)」
北海道大学大学院医学研究科 内科学講座第二内科 教授 渥美 達也 先生
閉会の挨拶 金沢大学附属病院高密度無菌治療部 准教授 朝倉 英策
謝辞 CSLベーリング株式会社 京都支店 福家 真治
共催
北陸血栓研究会
CSLベーリング株式会社
社団法人 石川県臨床衛生検査技師会
後援
石川県病院薬剤師会
一般社団法人 福井県臨床検査技師会
※ 本研究会は、石川県病院薬剤師会生涯教育制度の1単位に該当。
※ 本研究会は、日本臨床衛生検査技師会生涯教育研修制度 専門教科20点に該当。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 21:13
| 研究会・セミナー案内
後天性血友病の疫学
今回紹介させていただくJ Thromb Haemost 誌の論文では、後天性血友病に関する欧州多施設症例における疫学的検討結果です。
症例数が多いので説得力があるように感じます。
参考:血友病、後天性血友病
「後天性血友病の疫学&臨床データ」
著者名:Knoebl P, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 622-631, 2012.
<論文の要旨>
後天性血友病A(AHA)は、第VIII因子に対する自己抗体が出現し、異常出血の家族歴や既往歴のない者が自然出血をきたす稀な自己免疫性疾患です。
現在、AHAに対する至適治療法の情報は限られています。
AHAの疫学、診断、基礎疾患、出血の特徴、治療法、予後に関するデータベースを作るために、European Acquired Hemophilia Registry (EACH2)が設置されました。
欧州13ヶ国の117センターから501症例(男性266例、女性235例)が対象となりました(2003年〜2008年)。
467症例においては、出血のイベントを契機に止血検査とAHAの診断がなされました。
診断時の年齢中央値は73.9歳でした。
AHAのうち、特発性が51.9%、悪性疾患によるもの11.8%、自己免疫性疾患11.6%でした。
妊娠関連症例を除くと、AHAの57%が男性でした。
474件の出血イベントは初診時にみられ、70.5%では止血治療が開始されました。
33.5%の症例では、診断の遅れが治療開始に影響を与えていました。
477症例において免疫抑制療法が行われ、72.6%では完全寛解となりました。
EACH2は、AHAの様々な疑問点を解析していく上で寄与するものと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15
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血友病A:インヒビターと第VIII因子製剤の由来と純度
今回紹介させていただくJ Thromb Haemost 誌の論文では、血友病治療に伴うインヒビターは、血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤ではどちらが出現しやすいか、また、血漿由来製剤の場合であっても純度の高い製剤と低い製剤ではどちらが出現しやすいかを検討しています。
参考:血友病、後天性血友病
「血友病A患者におけるインヒビター発症の危険因子としての第VIII因子製剤の由来と純度」
著者名:Mancuso ME, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 781-790, 2012.
<論文の要旨>
血友病A患者におけるインヒビター発症はいくつかの要素に左右されますが、第VIII因子製剤の種類も一因と考えられています。
著者らは、第VIII因子製剤の由来(pd:血漿由来、r:遺伝子組換え)のみならず純度(特異活性)でも分類して検討しました。
対象は血友病A377例であり、インヒビター発症までのデータまたは150回までの輸注データについて調査しました。
その結果、111症例(29%)でインヒビターを発症しました(高反応型は96例(25%))。
低〜中等純度のpdFVIII製剤で治療された場合は、高純度のpd&rFVIIIで治療された場合よりもインヒビター発症が低率でした。
低〜中等純度のpdFVIIIを対照とすると、補正ハザート比は、rFVIII4.9、高純度pdFVIII2.0でした。
以上、FVIIIの純度はインヒビターの発症率に影響を与えるものと考えられました。
特に、pdFVIIIにおいてもFVIIIの純度はインヒビター発症率に影響を与えることは強調されるべきと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 出血性疾患
血友病Aに対する骨髄移植:第VIII因子活性回復の由来細胞は?
今回紹介させていただくBlood誌の論文は、移植治療に携わっている血液内科医にとっても、血栓止血診療に携わっている者にとっても興味のある論文ではないかと思います。
管理人も、大変に興味深く思いました。
「マウス血友病Aに対する骨髄移植の意義」
著者名:Follenzi A, et al.
雑誌名:Blood 119: 5532-5542, 2012.
<論文の要旨>
著者らは、血友病Aマウスに対して健常マウス骨髄を移植することにより、骨髄由来細胞が、第VIII因子を合成し遊離する細胞を産生するかどうか検討しました。
その結果、ドナー骨髄由来の肝細胞や血管内皮細胞はきわめて僅かでしたが、健常骨髄を投与された血友病マウスは血友病症状が消失することが明らかになりました(ドナー骨髄由来の肝細胞や血管内皮細胞はFVIII因子活性上昇を説明できませんでした)。
一方、ドナー骨髄由来の単核球や間葉系幹細胞は充分量に存在し、FVIII mRNAおよびFVIII蛋白を発現していました。
さらに、血友病Aマウスに対する健常マウスのクッパー細胞(肝マクロファージ/単核球)(主として骨髄由来)の投与、または骨髄由来間葉系幹細胞の投与は、血中の第VIII因子活性を上昇させ血友病症状を消失させました。
以上、骨髄移植により血友病Aが治る理由は、ドナー由来の単核球および間葉系幹細胞による(肝細胞や血管内皮細胞ではない)ものと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
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