血友病Bと長時間作用型第IX因子・Fc融合蛋白(rFIXFc):周術期治療
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「血友病Bに対する長時間作用型遺伝子組換え第IX因子・Fc融合蛋白(rFIXFc)による周術期治療(第3相B-LONG試験)」
著者名:Powell JS, et al.
雑誌名:Br J Haematol 168: 124-134, 2014.
<論文の要旨>
第3相B-LONG試験(血友病B症例に対する遺伝子組換え第IX因子・Fc融合蛋白(rFIXFc)において、rFIXFcは遺伝子組換え製剤(rFIX)と比較して重症血友病B患者での半減期が長いことが証明され、出血の予防や治療として用いるときに安全かつ有効であることが示されました。
このB-LONG試験のサブ解析では、大手術が必要となった症例における有効性が検討されました。
投与回数は主治医の判断によることとしました。
評価項目は、投与回数、製剤消費量、出血・輸血量、止血反応です。
12症例が14回の大手術(11回の整形外科手術を含む)を受けました。
ほとんどの症例(11/12症例)が、術前にrFIXFc予防知治療を受けていました(期間:2週間〜12ヶ月間)。
主治医(執刀医)による止血反応評価は、極めて良好(n=13)、良好(n=1)でした。
ほとんど(85.7%)の手術において、術前の投与から手術終了までを通してrFIXFc1回の輸注で止血が維持されました。
出血量は、非血友病患者における類似の手術の場合と同程度でした。
また、手術はrFIXFcの薬物動態に影響を与えませんでした。
安全性にも問題なく、インヒビターの発症もみられませんでした。
以上、血友病B患者の周術期におけるrFIXFcの投与は、安全かつ有効であり、輸注間隔を延長させ、製剤消費量を減少させるものと考えられました。
また、手術はrFIXFcの薬物動態に影響を与えませんでした。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30
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ACE910は後天性血友病Aモデルの関節内出血を予防する
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「ACE910は後天性血友病Aモデルの関節内出血を予防する」
著者名:Muto A, et al.
雑誌名:Blood 124: 3165-3171, 2014.
<論文の要旨>
ACE910(血液凝固第IXa/X因子に対するバイスぺシフィック抗体)は、第VIII因子と類似の機能を有しています。
著者らは、血友病モデルにおいてACE910の1回静注は人工的に誘発された筋肉内出血と皮下出血に対して止血効果を有することを示し、ACE910の皮下注は3週間の半減期があるために血友病Aの出血予防治療として有用かつ利便性が高いであろうとこを報告しました。
しかし、このようなACE910皮下注は日常生活における自然出血を阻止するかどうかは直接的エビデンスはありませんでした。
今回は、第VIII因子中和抗体を多数回静注することで、長期間持続する後天性血友病Aモデルを作成しました。
このモデルのコントロール群のサルにおいては、種々の自然出血がみられAPTTは持続的に延長していました。
とくに、血友病の特徴的出血とも言える関節内出血は全例でみられました。
これに対してACE910を毎週皮下注(初期量は3.9mg/kgで、その後1mg/kg)することで、この出血を有意に抑制しました。
とくに、関節内出血は全くみられなくなりました。
以上、ACE910は毎週皮下注する方法であったとしても血友病A患者における自然出血や関節内出血を予防するものと期待されました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:10
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第VIII因子製剤の種類と第VIII因子インヒビター(英国)
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「第VIII因子製剤の種類と第VIII因子インヒビターの発症(英国における未治療の小児重症血友病A :2000-2011の検討)」
著者名:Collins PW, et al.
雑誌名:Blood 124: 3389-3397, 2014.
<論文の要旨>
2000.1.1〜2011.12.31.に英国で誕生した未治療の重症血友病A407症例において、遺伝子組換え第VIII因子製剤(rFVIII)の種類とインヒビターの発症の関連について検討しました。
88症例(22%)はRODIN試験に組込まれていました。
インヒビターは118症例(29%)に発症しており、60例は高力価、58例は低力価でした。
最初の暴露からの中央値は7.8ヶ月(3.3〜13.5:25〜75 percentile)、暴露日は16日(9〜30)でした。
コージネイト(Bayer/Helixate NexGen)で治療された128症例のうち45症例(35.2%)でインヒビターを発症したのに対して、アトベイトでの治療者172症例のうち42症例(24.4%)でインヒビターを発症しました(P=0.04)。
アドベイトに対するコージネイトの調整危険率(HR)は、高力価インヒビターでは2.14(P=0.02)、全インヒビターでは1.75(P=0.02)でした。
UK-RODIN登録症例を除外すると、高力価での調整危険率は2.00(P=0.08)でした。
ReFacto AFは、アドベイトと比較して全インヒビター発症は高率でした(高力価インヒビターでは高率でなかったが)。
以上、第VIII因子製剤の相対的な免疫原性を議論したり、どのrFVIII製剤を使用するか決定する上で有用な結果がえられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03
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遺伝子組換え第VIII因子製剤とインヒビター発症
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「遺伝子組換え第VIII因子製剤とインヒビター発症(未治療の重症血友病A男児での検討)」
著者名:Calvez T, et al.
雑誌名:Blood 124: 3398-3408, 2014.
<論文の要旨>
遺伝子組換え第VIII因子製剤(rFVIII)は、全部で8種類が世界的に販売されています。
2013年に、Reserch of Determinants of inhibitor Development (RODIN)試験グループは、未治療(PUPs)の重症血友病A患者において、第2世代の完全長rFVIII(D製剤)でのインヒビター発症率が高いことを報告しました。
1994年、フランス公衆衛生局は血友病治療の安全性をモニターするために、前方視的コホート研究を確立しました。
PUPサブグループについては、インヒビター危険因子を検討するように設定されました。
著者らはRODIN知見の観点からこのサブコホートを解析しました。
RODIN試験に参加した50症例を除外したのちに、まず1種類のrFVIIIで治療された重症血友病Aの303男児に焦点をあてることを主要解析としました。
臨床的意義を有したインヒビターは114男児(37.6%)に検出されました。
D製剤におけるインヒビター発症は、最も世界的に使用されているrFVIII製剤よりも高率でした(調整ハザード1.55)。
高力価のインヒビターに関しても同じ結果でした。
RODIN試験と著者らの検討結果の間には、差異はみられませんでした。
合体させた調整バザード比は、全インヒビター1.58、高力価インヒビターで1.70でした。
以上、PUPsの重症血友病AにおいてはD製剤は他の製剤よりも免疫原性が高いものと考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57
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von Willebarand病、軽症血友病AとDDAVP
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関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
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「von Willebarand病および軽症血友病Aに対するDDAVP15μg皮下注の反応」
著者名:Siew DA, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinoysis 25: 820-823, 2014.
<論文の要旨>
デスモプレシン(DDAVP)は、1型von Willebarand病(VWD)と軽症血友病Aの治療薬として用いられています。
DDAVP0.3μg/kg用量での反応は、この薬物の将来的な治療効果を占うことができます。
著者らの研究目的は、DDAVP15μg/kg固定量での皮下注であっても同様のDDAVPの反応を得ることができるかどうか評価することです。
1995年〜2013年において1型VWDと血友病Aの患者(大人および小児、体重50μg/kg以上)のカルテを後方視的に調査しました。
DDAVP15μg投与前と投与1時間後における第VIII因子レベル、リストセチンコファクター活性、VWF抗原量が測定されました。
その結果、1型VWDでは完全に反応がみられたのは82.5%、部分的に反応がみられたのは12.5%、反応が無かったのは5%でした。
また、軽症血友病Aではそれぞれ53.8%、38.5%、7.7%でした。
以上、DDAVP15μg固定量での皮下注は、従来0.3μg/kg用量で報告されていた反応率と同等でした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
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第XI因子欠損症:抗凝固薬開発のヒント
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「ヘパリンを使用せずに血液解析を行いえた重症の第XI因子欠損症」
著者名:Takamizawa Y, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinoysis 25: 898-899, 2014.
<論文の要旨>
先天性第XI因子欠損症は、血友病A&Bと比較して出血症状がみられにくい稀な血液疾患です。
第XI因子は、近年新しい抗凝固薬を開発する上でも大変注目されています。
著者らは、59才男性、慢性腎不全の症例を報告しています。
動静脈シャント術の術前検査でAPTTの著明な延長が確認されたことが発見の契機となり、最終的には第XI因子欠損症と診断されました。
透析を開始して6ヶ月以上経過しましたが、体外循環回路の凝血塊は確認されていません。
特筆すべき点としては、この症例(第XI因子欠損症)は透析中に抗凝固薬が使用されていないことです。
また、APTTが120秒以上に延長して第XI因子が3%以下に低下した腎不全症例であるにもかかわらず、出血症状は全くみられませんでした。
以上、第XI因子欠損症は、透析においてヘパリンに匹敵するような抗凝固作用を発揮するものと考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45
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後天性血友病と少量プロトロンビン複合体製剤(PCC)治療
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
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「後天性血友病49症例の後方視的解析(中国単施設での検討)」
著者名:Yang Y, et al.
雑誌名:Clin Appl Thromb Hemost 21: 35-40, 2015.
<論文の要旨>
後天性血友病(AHA)は、従来出血性素因のなかった者が第VIII因子に対する自己抗体が出現することで出血症状をきたすまれな疾患です。
著者らは、自施設の1994年2月〜2012年10月の間にAHAと診断された49症例について、特徴と転帰を解析しました。
急性の出血ピソードをきたした24例においては、プロトロンビン複合体製剤(PCC)が30〜50U/kg/日と比較的少量で治療されましたが、副作用もなく良好な治療効果がえられました。
インヒビター除去のための第1選択薬としては副腎皮質ステロイドが単独あるいはサイクロフォスファマイドとの併用で用いられました。
検討可能であった39症例のうち35症例(89.7%)で完全寛解(CR)が達成されました。
以上、遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)や活性型PCC製剤(APCC)が使用できない環境にあっては、少量PCCはAHA患者の出血をコントロールするのに有効と考えられました。
また、第1選択の治療でCR89.7%と良好な転帰がえられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
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重症第XIII因子欠損症の臨床症状と治療
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「重症第XIII因子欠損症における臨床症状と治療」
著者名:Naderi M, et al.
雑誌名:Int J Hematol 100: 443-449, 2014.
<論文の要旨>
先天性第XIII因子欠損症はまれな出血性素因ですが、東南イランでは発症頻度が高いことが知られています。
著者らは190症例を対象に検討を行っています。
イラン人に最多のFXIII-Aサブユニット遺伝子異常(Trp187Arg)は全例で解析されました。
臨床症状と、頭蓋内出血(ICH)、流産、第XIII因子欠損症の新生児の治療内容が記載されました。
新生児は2群に分類されました。
I群:標準量のフィブロガミンP(FP:10-26IU/kg)投与
II群:高用量投与(60-80IU/kg)、36ヶ月間
その結果、全症例がTrp187Arg(ホモ接合体)遺伝子異常でした。
臨床症状としては、臍帯出血、血腫、遷延する創部出血が高頻度にみられました。ICHも高頻度にみられ、行動発達異常や失語症をきたしていました。
ICHはFP10-26IU/kgで治療され、流産はFP10IU/kg(妊娠中は2週間毎;懐妊前は同量を予防的に4週間毎)で治療されました。
FP高用量が使用されたII群においては、血栓症の合併をきたすことなく、出血エピソードを減らしました。
イランでは、Trp187Argが最も高頻度にみられるFXIII-Aサブユニットの遺伝子異常であり、FPは有効な治療薬と考えられました。
また、FP高用量は、新生児において安全かつ有効と考えられました。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32
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遺伝子出血性毛細血管拡張症(オスラー病)の診療
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「遺伝子出血性毛細血管拡張症(オスラー病)の適正診療」
著者名:Garg N, et al.
雑誌名:J Blood Med 5: 191-206, 2014.
<論文の要旨>
遺伝子出血性毛細血管拡張症(HHT)は、Osler-Weber-Rendu病とも呼称され、常染色体優性遺伝します。
皮膚、粘膜、内蔵(脳、肺、肝)に動静脈奇形(AVM)をきたすことでも知られています。
発症頻度は5,000〜8,000人に一人です。
ほとんどの症例において、endoglin (HHT1)またはACVRLK1(HHT2)遺伝子の変異が原因となっています。
鼻粘膜や胃腸粘膜の毛細血管拡張のために再発性/慢性の出血や鉄欠乏性貧血をきたします。
比較的大きなAVHは、肺(40〜60%)、肝(40〜70%)、脳(10%)、脊髄(1%)にみられます。
激烈で潜在的には致命的な合併症(脳卒中や肺AVMを伴う脳膿瘍など)をきたすこともあるため、無症候性の時期におけるスクリーニングや治療は極めて重要です。
しかし、HHTは依然としてしばしば過少診断されており、多くの血縁者が適切なスクリーニング検査や治療をうけていません。
HHT症例ではVEGFレベルが15倍にまで上昇しており、病態への関与が示唆されています。
Bevacizumab(血管内皮のVEGF受容体に結合するモノクローナル抗体)の全身投与または局所投与が鼻出血に対して有効との報告があります。
また、タモキシフェン(選択的エストロゲン受容体阻害薬)がHHTの鼻出血に有効との報告もみられます。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
| 出血性疾患
高齢血友病患者と心疾患(心房細動)
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
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「高齢血友病患者の治療(心疾患の観点から)」
著者名:Zimmermann R, et al.
雑誌名:Thromb Res 134S1: S48-52, 2014.
<論文の要旨>
重症血友病A患者の平均余命は、70年前は17才未満でした。
今日では、安全で有効な凝固因子製剤を使用できるようになったため、少なくともウイルス感染症のない患者での平均年齢はほとんど健常人と変わりません。
多くの血友病患者が70歳台、80歳台まで生存可能となり、高齢者に見られやすい疾患を発症するようになりました。
特に、心血管合併症に対する治療は議論となります。
血友病患者(少なくとも重症例)では心筋梗塞、脳卒中、静脈血栓塞栓症を発症しにくいというエビデンスにありますが、凝固因子欠損症であっても心血管疾患の危険因子は有しています。
血友病患者(とくにHAART治療中の患者)は、より肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症になりやすいという報告もあります。
心血管疾患を有した高齢血友病患者の治療はエビデンスに基づいたガイドラインがないのが現状です。
しかし、血友病社会においては心血管治療の経験が増加しており、いくつかの個人レベルでの治療指針は発刊されています。
最も重要なことは心血管疾患の危険因子の治療ですが、凝固因子補充療法も適切に行う必要があります。
<血友病での心房細動>
・ CHADS2スコア2点以上で第VIII因子≧30IU/dl:少量アスピリン(100mg/日)またはVitK拮抗薬。
・ 脳卒中リスクよりも出血リスクの方が大きい時は抗凝固療法は行わない。
・ 脳卒中リスクが高い場合はVitK拮抗薬。凝固因子のトラフ値が低い場合は、脳卒中リスクが高くてもアスピリンを考慮。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15
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無症候性後天性第V因子インヒビター
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「抗菌薬投与後に生じた無症候性後天性第V因子インヒビター」
著者名:金城泰幸、他。
雑誌名:臨床血液 55: 2311-2315, 2014.
<論文の要旨>
第V因子インヒビターは稀な疾患であり、発症の誘因や重症度が症例により大きく異なり、手術で使用するフィブリン糊が原因となることが多いです。
今回著者らは、誤嚥性肺炎の治療目的で使用した抗菌薬によると思われた後天性第V因子インヒビターを経験しました。
症例は80歳代、男性。
既往歴には心房細動、脳梗塞と腰部脊柱管狭窄を有していました。
誤嚥性肺炎の治療後に凝固能異常となり入院となりました。
凝固能検査ではPTとAPTTの異常な延長を認めました。
脳梗塞の再発予防のワーファリン投与中であったため、これを直ちに中止しビタミンKを投与しましたが、延長したPT、APTTは改善しませんでした。
クロスミキシングテストでインヒビターが示されたため検索したところ、第V因子の著明な低下とベセスダ法で第V因子に対するインヒビターを検出し、後天性第V因子インヒビターと診断されました。
出血症状がなかったため経過観察していたところ、8ヶ月後にPT、APTTは自然に正常化しました。
原因不明ですが、後天性FVインヒビターは約半数の症例で無治療にて自然消失することが確認されています。
一方、致死的な出血傾向を示す場合もあります。
本症例は誤嚥性肺炎を繰り返していましたが、出血症状も認められないことから凝固検査と出血傾向の注意深い経過観察を行いました。
基礎疾患や患者の状態により治療を開始できない場合もあります。
約70%の後天性FVインヒビター症例で出血傾向を示しますが、出血傾向を認めない症例も存在します。
その理由として、血液中の第V因子が低値であっても、血小板内に存在するFVがインヒビターによる捕捉を免れて作用しているためと考えられています。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07
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「しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編」の紹介
書籍紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
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「しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編」
編者名:朝倉英策
発行所:中外医学社 1-146, 2014.
<論文の要旨>
(序文より)
出血•血栓性疾患ともに病態、検査・診断、治療の各面で進展開があります。
血栓止血領域の臨床が脚光を浴びている昨今です。
そのような中、血栓止血関連用語の<インターネット検索>で私たちのブログ「金沢大学血液内科・呼吸器内科/血液•呼吸器内科のお役立ち情報」を数多くご利用いただきました。
その利用者から「便利だがリンク先ジャンプ中に迷子になるので、書籍化してほしい」とのご要望をいただいてきました。
幸い中外医学社の方との話し合いの機会をいただき、方向性が一致いたしましたので、今回の出版になりました。
ブログ記事のわかりやすさをそのまま継承しつつ、かつ項目立てを整理することで書籍としてのメリット最大限に生かされています。
また、本書のために追記した部分も多数あります。
寝転びながらでも読めるのに血栓止血学がしみじみわかるをモットーにしています。
この書籍を最初から最後まで読み終わった時点で、血栓止血学を見る目が変わっているのではないかと思います。
なお、シリーズ化を予定しています。今回はVol.1 DIC・血液凝固検査編です。
日本において、血栓止血学の楽しさをしみじみわかる人が増えることを願っています。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05
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「よくわかる血栓・止血異常の診療」の紹介
書籍紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
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「よくわかる血栓・止血異常の診療」
編者名:金倉 謙、冨山佳昭。
発行所:中山書店 1-297, 2014.
<論文の要旨>
(序文より)
血液疾患の診療は、近年めざましい進歩を遂げている。
革新的な分子生物学的解析手法により血液疾患の病理生理についての解明が進み、新規治療法も続々と開発されている。
血液疾患としては白血病•リンパ腫•骨髄腫などの造血器腫瘍、貧血、血栓•止血異常症など多種多様な疾患が含まれる。
また、日常診療において稀にしか遭遇しない疾患も存在する。
日常診療に従事している血液内科医が、これらの多種多様な血液疾患の最新情報を常に入手し、各疾患の診療に精通することは必ずしも容易ではない。
そこで、血液疾患の日常臨床をプラクティカルに支える実用書として<ブリンシプル血液疾患の臨床>シリーズが企画された。
本シリーズは、「ここまできた白血病/MDS治療」、「リンパ腫•骨髄腫の最新療法」、「新戦略による貧血治療」、「よくわかる血栓•止血異常の診療」の全4巻からなり、血液疾患の病態生理や現場の診療ですぐに役立つ実践的な知識を提供している。
各項目には、最初にPointとして、記載内容の要約が箇条書きで簡潔記述されており、疾患の特徴を短時間で知るのに役立つ、また、写真や図表を多用し、ビジュアルで理解しやすい紙面作りであるのも特徴である。
さらに、コラム記事として、本文の理解を助けるための知識、診療に役立つ情報、海外の動向などの関連事項をMemo, Basic PointやPitfallとして盛り込んでいる。
各疾患の背景を理解しながら、現在の診療で問題となっているポイントについて理解を深めることができるように工夫されている。
血液疾患の最新の治療の進め方や治療のコツを明快に記述するには、文献的知識だけでは不十分で、疾患の本質を理解したうえでの臨床経験も求められる。
本シリーズでは、最新の医療情報に詳しく、しかも、専門領域での実地診療に深く関わっている先生方に専門編集をお願いしている。
各巻はそれぞれのテーマにふさわしい特色ある構成となっており、興味ある巻だけお読みいただくことも可能である。
本シリーズは、血液内科専門医および専門医を目指す医師を主な対象としているが、内科医や研修医にも有用であろう。
本シリーズが、血液内科に携わっている医師の一助となれば幸いである。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:57
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富山労災病院便り(インデックス)
富山労災病院便り(6)アスベスト相談業務より続く。
富山労災病院便り(インデックス)
1)魚津市
2)黒部の太陽
3)二次救急指定病院
4)アスベスト疾患センター
5)アスベスト関連疾患
6)アスベスト相談業務
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33
| その他
富山労災病院便り(6)アスベスト相談業務
富山労災病院便り(5)アスベスト関連疾患より続く。
富山労災病院便り(6)
アスベストに関して、先生方がお困りの場合はもちろん、心配をお持ちの市民の方、患者様、御家族様、またご遺族様も、御相談、御紹介は大歓迎ですのでご利用ください。
相談業務は私の業績としてもカウントされるようになっています。
しかし、来院される場合は、上記の状況で私自身病院を空けることも度々ありますので、必ずご予約をお願いいたします。
アスベスト疾患センター連絡先
asubesuto@toyamah.rofuku.go.jp
直通電話0765-24-6471 専任事務員がおります。
尚、病院代表電話は0765-22-1280です。
(続く)富山労災病院便り(インデックス)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30
| その他
富山労災病院便り(5)アスベスト関連疾患
富山労災病院便り(4)アスベスト疾患センターより続く。
富山労災病院便り(5)
以下、当院の一番の特徴であり、また私の仕事のメインであるアスベスト疾患センターに関して宣伝がてら記載させて頂きます。
設立の経緯は前述の通りで、一番の目的は、国民のアスベストに対する不安への対処です。
そのための、業務内容としては、相談、健診、診療、啓発、医師への教育、研究等です。
相談は紹介患者様や、医師からの相談だけではなく、アスベストに関する不安や疑問をお持ちの一般市民や事業者の方からも直接受けることを国から指示されていて、実際多くの方が、遠くは福井からも、直接相談に訪れておられます。
もちろん他院で診療中の患者様や御遺族の方も来院されます。
このような事例もありました。「私は、来週、肺癌の手術を受けることになっているんです。私は現役時代にアスベストを吸ったんです。
「「アスベストが私の肺癌の原因ではないのでしょうか?」と主治医に何度言っても、まったく取り合ってくれないんです。」
この患者様には石綿肺癌について国の補償う受けることができる要件等を丁寧に説明し、主治医あてにお手紙をお書きし、納得して帰っていただきました。
また、過去にアスベストばく露を受けた方は、原則一生アスベスト関連疾患発症率が高く、また潜伏期が40年程度の疾患もあり、早期発見が必要で、国は、要件を満たす離職者に継続的に健診を無料で受けるサービスを提供しています。
当院ではその健診を毎日行っており、時に石綿肺癌をはじめアスベスト関連疾患が見つかります。
もちろんアスベスト関連疾患を発症してしまった方には、適切な入院、外来診療を行っています。
アスベスト関連疾患は5つありますが、疾患ではないものの、胸部健診時等に注意が必要なアスベスト関連所見(アスベストプラークと言います)や、石綿に特徴的で稀であったり、また医学的に診断の難しい疾患があり、診断が困難な疾患もあります。
また、病気を診療するだけでは不十分で、患者様の労災や、環境省の補償に関する判断や、申請関連の書類作成が必要です。
しかし、一般の臨床医には補償を受けることの出来る要件の解釈や書類の書き方が難しいです。
当センターで私が、患者様御自身や御家族様、他医療機関の主治医の先生方のサポートしております。
また日本では肺がん一般の約10%が石綿が原因とされています。
肺癌を診たら必ず石綿に関する職業歴の聴取が必要です。
以上の状況があり、厚労省からの委託事業として、石綿関連疾患の診断技術等の普及を目的に、全国のアスベスト疾患センターの先生方とチームを組んで全国を講習に回っています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21
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富山労災病院便り(4)アスベスト疾患センター
富山労災病院便り(3)二次救急指定病院より続く。
富山労災病院便り(4)
この間、労働省と厚生省が統合したり、国の政治方針が揺らいで、国立病院系医療機関(厚生省)と当院(労働省)の合併問題も一時浮上したことから、労災病院の独自性を打ち出すため、平成16年から、13分野の労災疾病(内容としては職業関連疾病、例えば、じん肺、石綿関連疾患、腰痛、メンタルヘルスなどを含む)の研究を労災病院群で開始しました。
職業性呼吸器疾患として当院を含む4病院が選ばれ、私も全国4人の分担研究者の一人に任命され、研究活動を開始しました。
ところが、機をほぼ同じくして翌年平成17年夏に、例の神戸の尼崎の企業クボタの事案が明らかとなり、アスベストショックが全国を吹き荒れました。
それをきっかけに、国全体が、きわめて速いテンポで対策を立て、実行しましたが、その一つに、国民の不安に対処することを目的に、労災病院のうち対応能力のある当院を含む23病院ににアスベスト疾患センター設立を指示しました。
もちろん北陸三県では当院のみです。
私がセンター長となり、後述のとおり活発に活動しています。
また当アスベスト疾患センターの活動が認められ、がん対策基本法に基づく地域がん連携拠点病院に初回から指定され、現在も更新されています。
当院は前述のごとく、いくつかの紆余曲折がありましたが、病院を取り巻く体制が安定し、かつ収支も一時より改善したことから、設立56年目にして、病院全体が、70〜80億円の予算で、正式に、現在と同敷地で新規建て替えが決定され、現在すでに工事が始まっています。
富山県内では初めての全館免震構造です。
平成28年秋にグランドオープンの予定です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15
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富山労災病院便り(3)二次救急指定病院
富山労災病院便り(2)黒部の太陽より続く。
富山労災病院便り(3)
病床は全部で300床です。
1日外来患者数は約650名です。
二次救急指定病院で、毎日平日休日にかかわらず、7〜10台の救急搬送を受け入れています。
診療科と常勤および嘱託医数は、内科13人、外科4人、呼吸器外科1人、整形外科4人、脳神経外科4人(内1名が院長)、形成外科2人、眼科1人、泌尿器科3人、麻酔科2人、皮膚科1人、核医学診療科(PET、RI専任)1人,放射線科1人、健診科(専従)1人の合計38名です。
また、私が、院長の指示で、研修を積み、勉強をして、今年日本感染症学会の専門医を取得(4年前に取得の敷居がとても高くなりました)したため、平成27年1月より、感染症科を院内標榜する予定です。
医師の出身に関しては、整形外科と後述の内科は富山大学で、それ以外の科は金大出身です。
常勤以外、パート医として血液内科医を金大旧三内から派遣していただいています。
かつては留学からお帰り直後の中尾現教授も、一時当院へパート医として働いていただいたとお聞きいたしております。
その他、金大からのパートで耳鼻科、産婦人科外来が開かれています。
更に富大からのパートで膠原病外来、常勤医が居る分野ではありますが、糖尿病外来応援医師と神経内科応援医師による外来も開かれています。
常勤内科医は、もともとは産業医大学卒の神経内科医以外は、すべて金大出身者で、旧三内呼吸器出身の私以外(一時三内からも旧研修医を派遣頂いておりました)は、研修医も含めすべて金大旧一内出身者で占めていました。
しかし、例の新研修医制度のあおりなどを受け、医師の引き上げに合い、一時、内科医はたった3人まで減少する羽目になりました。
しかし、ちょうど氷見市民病院の事案が持ち上がったこと等がきっかけで、富山大学から内科医が派遣されるようになり、現在に至っています。
現在、他の労災病院から3ヶ月に一度初期研修医が、また富大から学部5年生が3週間に一人ずつ当院へ研修に来ています。
また、日本医療機能評価機構の認定病院です。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08
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富山労災病院便り(2)黒部の太陽
富山労災病院便り(1)魚津市より続く。
富山労災病院便り(2)
当院の設立の由来は、かつて石原裕次郎主演の映画「黒部の太陽」にもなった黒部第四ダムの建設工事です。
当時の難工事で、残念ながら多数の死傷者が発生しました。
当院は、その傷病者の診療を行うために、昭和33年に設立されました。
傷病者は、当院の前にある小学校の校庭へ、ヘリで緊急輸送され、当院からストレッチャーで迎えに行き、病院へ収容しました。
ということで、当初は整形外科と内科で、かつ当時の労働省の特殊法人として開設されました。
その後、黒部ダム工事関連はもとより、全国のトンネル工事にて、粉じん暴露を受けた多数の労働者で、代表的職業性呼吸器疾患であるじん肺を発症してしまった患者様の診療を、現在まで行っています。
現在、当院は、厚労省管轄の独立行政法人の病院として、かつ労災患者の割合はまだ一般の総合病院の約4倍ですが、通常の市民病院としての役割を担っています。
なお、魚津市には急性期総合病院は当院のみです。
全国労災病院群では一等最初、富山県内でも初めてでしたが、平成9年にPETが導入され、私も呼吸器を含む一般診療に、またアスベスト関連疾患の診断に重宝しています。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02
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富山労災病院便り(1)魚津市
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報原稿からです。
富山労災病院便り(1) 水橋啓一(平成元年入局)
新病院予想外観図(平成28年秋予定)
平成6年5月より当院に赴任している水橋啓一です。
平成元年金大卒で、呼吸器内科医です。
富山労災病院は、富山の東部、魚津市(人口約4万5千)にあります。
JRでは富山駅、滑川駅、その次に当院のある魚津駅、次は黒部市民病院のある黒部駅となります。
スキーなどで北陸道を北上されることがおありの方には、魚津ICは有磯海サービスエリアから約2q新潟よりにあることで大体の場所をお分かりいただけると思います。
ICから病院までは車で5分の距離です。
当院と大学は森本ICが完成したこともあり、車で約1時間です。
労災病院は全国に現在32病院あり、全国組織ですが、それぞれが独立採算制をとっています。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53
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やわたメディカルセンター(インデックス)
やわたメディカルセンター(3)北陸体力科学研究所より続く。
やわたメディカルセンター(インデックス)
1)加賀八幡温泉病院
2)リハビリテーション
3)北陸体力科学研究所
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
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やわたメディカルセンター(3)北陸体力科学研究所
やわたメディカルセンター(2)リハビリテーションより続く。
やわたメディカルセンター(3)
当院の診療以外の特徴として、スポーツ好きの職員が多いこともあげられるかと思います。
仕事終わりに隣接する北陸体力科学研究所のジムで汗を流すという人も多く、運動をすることが日常的な雰囲気です。
また、通院されている方の中には、ジムにも通っていて診察が終わったら運動してから帰るという方もいらっしゃいます。
北陸体力科学研究所はスポーツ科学に早くから取り組んできたとのことで、有名な選手がトレーニングに来たりされているようです。
以前はシーズンオフにプロ野球選手が自主トレーニングに利用されたりすることもあったようで、大リーグで活躍したN選手やM選手も利用されていたとのことです。
私が当院に赴任したのは平成25年ですが、呼吸器内科に関しては中村暁子先生が早くから睡眠時無呼吸症候群の診断、治療に取り組んでおり、現在は450人前後の方のCPAP治療を行っています。
検査についてもPSGを積極的に行っており、マニュアルタイトレーションも行っています。
肺癌については当院で積極的に診療できる体制が整っているとは言い難いのですが、笠原准教授が外来診療に来て下さいますので、ご指導を受けながら対応しております。
気道疾患におきましては、呼吸機能検査で気道過敏性テストまでは今までも可能でしたが、新たに咳テストも開始し、呼気NO検査も測定できるようになりましたので喘息、COPD診療の充実と将来的には咳専門外来をできる体制を整えていきたいと考えています。
今後も大学病院、近隣医療機関と連携しながら地域の医療を支えていけたらと思っております。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15
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やわたメディカルセンター(2)リハビリテーション
やわたメディカルセンター(1)加賀八幡温泉病院より続く。
やわたメディカルセンター(2)
循環器内科では心疾患のみならず、下肢血管に対しでもカテーテル治療や運動療法を行い、低温サウナによる心不全治療(和温療法)にも取り組んでいます。
整形外科では、関節外科、脊椎外科、スポーツ外来、リハビリテーションを中心に、患者様の身体に負担をかけない治療を目指し、手術は関節鏡をはじめとする低侵襲手術を多く採用しています。
リウマチ科では生物学的製剤を含めた薬剤を使用し、滑膜切除術、人工関節置換術なども積極的に行っています。
小児整形外科では、股関節の診断に超音波検査を取り入れており、自立支援医療(育成・更生医療)の指定医療機関です。
リハビリテーション科では、機能訓練、後療法のみを行うだけではなく、QOL向上のために、さまざまな取り組みを行っています。
回復期リハビリ病棟では、脳血管疾患や大腿骨頚部骨折等の方に対して、寝たきり防止と家庭復帰を目的としたリハビリ計画を医師、看護師,理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士等が共同で作成し、これに基づくアプローチを集中的に1年365日行っており、平成24年4月には回復期リハビリテーション病棟入院料1を県内で初めて取得しています。
リハビリテーションに関しては、急性期病床においても充実しており、病棟専属の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、社会福祉士が常駐しています。
当院では、高齢の入院患者が多いこともあり、循環器疾患に対する心臓血管リハビリ、脳血管障害に対するリハビリ以外にも、肺炎などの疾病で入院されても早期からリハビリ介入を行い、寝たきりにならず、体力やADLの維持、回復が達成できるように取り組んでいます。
誤嚥性肺炎の方でも摂食評価、リハビリを行い、単に肺炎を治すことだけでなく、肺炎を繰り返さないことを目標に診療を行っています。
実際に施設などで寝たきりに近いADLだった方が、肺炎などで状態が悪くなり入院されたにもかかわらず、リハビリ介入により歩いて退院できたという経験が少なからずあります。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07
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やわたメディカルセンター(1)加賀八幡温泉病院
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)同門会記事からです。
やわたメディカルセンター(1) 片山 伸幸(呼吸器内科 科長)(平成5年入局)
当院は1968年に開設された加賀八幡温泉病院を前身とし、2001年新病院完成時に現在の「やわたメディカルセンター」へ名称が変更されました。
病院は小松市東部丘陵地にあり、急性期病棟と回復期リハビリ病棟を備えています。
やわたメディカルセンターは勝木グループの中核として地域医療を支えており、勝木グループは、ほかに健診センター、在宅サービスセンター、芦城クリニック、デンタルクリニック、訪問看護ステーション、北陸体力科学研究所などからなっています。
グループの基本理念は「あなたの健康が私たちの願いです」であり、急性期医療から回復期・在宅医療まで地域の医療機関と連携し,総合的な地域医療サービスの充実を目指したシステムをとっています。
特に予防医学を積極的に押し進め, 検査や治療にとどまらず「病気にならないための病院」として退院後の行動変容までを治療範囲ととらえています。
当院では整形外科、循環器内科を核として19の診療科があり、主に循環器疾患・対運動器疾患・スポーツ障害・リウマチ疾患・脳血管障害・消化器疾患・生活習慣病など対しての診療を各科が協力して行っています。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
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ノックスビル出産奮闘記(インデックス)
ノックスビル出産奮闘記(7)それから半年より続く。
ノックスビル出産奮闘記(インデックス)
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01
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ノックスビル出産奮闘記(7)それから半年
ノックスビル出産奮闘記(6)ブルーライトより続く。
ノックスビル出産奮闘記(7)
米国での出産にあたり、息子が大学の教員という職業で拘束時間が月水金の午後だけという比較的時間を自由に使える仕事で本当に助かった。
買い物には車が必要だし、どこで何をどう買うかについても彼が必要だった。
息子が子供にメロメロのイクメンであることもよかった。
ベビーのオムツ替えは姪のオムツ替えで実習済で手際がよかったし、入浴もお手の物だった。
出産後2週間、もっといたかったが、私自身の都合もあって帰国した。
来たとき木々には葉が無く枝だけの冬景色だったが、帰るときは木蓮が咲き始めたんぽぽが咲いていた。
もうしばらくすると若葉が芽吹き美しいだろうなと思いながら帰国したのだった。
それから半年、木々は緑の葉をいっぱい付けていた。
もうしばらくすると紅葉が綺麗だという。
ベビーは元気いっぱいに育っていた。
息子たちは主人と私をノックスビルのあちこちに連れて行ってくれて、連日、観光と家族団らんを楽しむことが出来た。
(続く)
ノックスビル出産奮闘記(インデックス)
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43
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ノックスビル出産奮闘記(6)ブルーライト
ノックスビル出産奮闘記(5)手術室より続く。
ノックスビル出産奮闘記(6)
(ブルーライト照射中)
ベビーの黄疸が強く、ブルーライトを照射することになった。
病室にブルーライトが持ち込まれ照射が始まる。
アイマスクがずれないかとても気になる。
出産5日目にようやく退院となった。
米国での出産としては長期入院だった。
ここでは
退院時までにベビー用のキャリアを用意しておくことが求められる。
息子は会う人ごとにキャリアは準備したのかと聞かれたそうだ。
退院時にナースが、ベビーがきちんとセットされているか点検する。
母親は5kg以上のものを持ってはいけないということで、車いすに座り膝にベビーキャリアを乗せて病棟を出る。
ナースが外まで見送ってくれ、キャリアが車内の台座にきちんとセットされたことを確認して、ようやく退院ということになった。
車社会の米国ならではのものかと思う。
(続く)
ノックスビル出産奮闘記(インデックス)
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32
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ノックスビル出産奮闘記(5)手術室
ノックスビル出産奮闘記(4)分娩室より続く。
ノックスビル出産奮闘記(5)
(分娩室のホワイトボード)
(病室のボード)
スタッフの制服の色で仕事が分かる(赤は採血係)
手術室には1人しか入れない。
ということで、息子が入り私は荷物番をして待つことになった。
給湯室にはコーヒーメーカーがありいつでも熱いコーヒーが無料で飲める。
コーヒーを飲みながら部屋を観察する。
彼女が消えた分娩室にはモニター類が残っている。
壁には
ホワイトボードがある。
産婦名、担当ナースの名前、子宮口の大きさを示す○の絵、ニコニコからションボリまでの顔の絵。
窓の外にはうっすらと雪。
陣痛が始まってから30時間以上かかってようやく誕生した。
2600gの男の子。
小さい。どこが引っかかっていたんだろう。
病室は母児同室、担当者が入れ替わり立ち替わり入ってくる。
ベビーの様子を見るナース、採血担当者、母親に授乳指導するナース、母親の全身管理をするナース、合間に掃除担当者。
担当が細かく区分されていてそれぞれが別個に入ってくるので、母親はなかなか休めない。
(続く)
ノックスビル出産奮闘記(インデックス)
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16
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ノックスビル出産奮闘記(4)分娩室
ノックスビル出産奮闘記(3)テネシー大学より続く。
ノックスビル出産奮闘記(4)
幸い入院の許可が下りた。
陣痛の間隔も短くなりいよいよ分娩室へ。
分娩室には2人入れると言うことで、息子と私が入った。
いよいよ出産となったとき、担当ナースは息子に「ハイ、あなたはこっちの脚を支えて」、
私に「あなたはそっちよ」。
「しっかり持って、しっかり声かけて!」・・・・全員参加型の出産であった。
「見てるだけ〜」の日本とは違う。
ベビーの頭が見えているが出てこれない。
時間が刻々と過ぎていく。
ドクターは産婦本人に「鉗子分娩を試みるか、すぐ帝王切開するか?」と聞く。
「鉗子分娩を試したい」
試みるが出てこない(形だけのようにも見えた)。
結局帝王切開になった。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01
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ノックスビル出産奮闘記(3)テネシー大学
ノックスビル出産奮闘記(2)米国での出産より続く。
ノックスビル出産奮闘記(3)
翌日(3月1日)はテネシー大学を案内してもらった。
2日は彼女が出産前に是非行きたかったというレストランで食事をした。
テネシー川沿いのレストランだった。
川の向こう側を貨物列車が通っていったが、一体どれだけあるのだろうと思うくらい長い列車だった。
その夜陣痛が始まった。
ここまでは予定通り、いい子だね、おばあちゃんの到着を待っていてくれて。
翌日(3月3日)病院に連絡すると、4分間隔になるまでは自宅待機と言われた。
ノックスビルは内陸部のため寒暖の差が大きい。
3月はまだ氷点下10数℃になり道路が凍り付くこともしばしばで、しかも、道路は起伏が大きい。
この日の天気予報では、気温はだんだん下がり、氷点下になるとのこと。
昼頃には雪が降り出した。
道路が凍り付く前に病院に行くことにした。
4分間隔でないからとダメと言われても、そのまま待つことにして。
テネシーには車検がない。
ここは車が生活必需品。
つるつる坊主のタイヤの車が平気で走っている。
高速道路にバーストしたタイヤが散乱しているのを目撃してぞっとした。
高校生も半数は自動車通学だ。
めずらしい混雑しているなと思ったら、高校の下校時刻だったことがある。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51
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ノックスビル出産奮闘記(2)米国での出産
ノックスビル出産奮闘記(1) プランプラン信号より続く。
ノックスビル出産奮闘記(2)
(テネシー大学メディカルセンター 高速道路に直結している)
ご存知の通り、日本と違い、米国での出産は入院期間がすこぶる短い。
通常の出産は出産後1泊、帝王切開は2泊が普通とのことである。
彼女の場合は出産に長時間を要したうえの帝王切開であったので3泊が許された。
これとて保険会社のOKが出なければ3泊目は全額自己負担となる(今回はOKだった)。
実際は新生児黄疸が強くもう1泊したが、これは入院している赤ん坊に母親が付き添っているという形であった。
「(あなたは退院しているのだから)私達は今晩はあなたの面倒は見れないわ」とナースが説明していった。
実際は同じ病室で同じように過ごしたのだが。
出産の手伝いは妊娠が分かったときから頼まれていた。
彼女の実家には97才のおばあちゃんがいる。
結婚式にも出席した元気でしっかりしたおばあちゃんだ。
でも、どう見ても私の方が身軽であるから、私が手伝いを頼まれた。
出産予定日は3月5日。2月28日出発、3週間の滞在とした。
小松→成田→シカゴ→ノックスビルと乗り継いで、2月28日22:00にノックスビル空港で二人に再会した。
(続く)ノックスビル出産奮闘記(インデックス)
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40
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