新鮮凍結血漿製剤(FFP)(7)注意点
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(6)必要量より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(7)注意点
1)ナトリウム濃度
FFP上清のナトリウム濃度は
1単位、2単位製剤が約170 mEq/L、Ap製剤が約150 mEq/Lと高いです。容量負荷が懸念される場合は特に注意すべきです。
2)カリウム濃度、糖、Alb、浸透圧
カリウム濃度は3〜4 mEq/L、
グルコース濃度は360 mg/dL、アルブミン濃度は4 g/dL、浸透圧は300 mOsm/kgH
2O、pHは7.3〜7.4です。
3)血球
凍結時に混在する少量の白血球、赤血球、血小板は、融解によりほぼ破壊されますが、上清に5〜8 g/dLの遊離ヘモグロビンがあります。
4)日本輸血・細胞治療学会ガイドライン
輸血副作用の種類・対応に関して、日本輸血・細胞治療学会よりガイドラインが発表されています(フリーアクセスです)。
日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会. 輸血副作用対応ガイド. Available from: http://wwwjstmctorjp/jstmct/Document/Guideline/Ref19-2pdf (Accessed on 1 April 2013). 2013.
輸血時は必携です。
なお、FFPの場合、血漿分画製剤と異なりウイルス不活化処理はなされていないので、ウイルス感染症の潜在的な危険性は高いです。
(続く)
新鮮凍結血漿製剤(FFP)インデックスへ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
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新鮮凍結血漿製剤(FFP)(6)必要量
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(5)凝固因子活性増加より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(6)必要量
肝硬変など複数の凝固因子が低下している場合は、FFP 1単位輸血後の凝固因子活性増加=300÷体重[kg](%)の計算で良いですが、凝固因子個々の補正が必要な場合は以下の表を目安に計算します。
300÷体重[kg](%)の式は、生体内回収率を100%とした値ですので、生体内回収率をかけて補正します。
止血に必要な濃度と生体内半減期より、投与間隔を決めます。
たとえば50 kg、第V因子活性基礎値10%の患者にFFPを2単位輸血しますと、第V因子(生体内回収率80%)活性は300÷50×2×0.8=10%増え、20%になると予想されます。
半減期15〜36時間から、止血に必要な第V因子活性15%以上を保つには、12時間ごとFFP 2単位の投与が必要となります。
(続く)
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(7)注意点へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:06
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新鮮凍結血漿製剤(FFP)(5)凝固因子活性増加
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(4)種類より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(5)凝固因子活性増加
止血に必要な凝固因子活性は20〜30%以上です。
生体内回収率を100%とすれば、FFP 1単位(120 mL)投与後の凝固因子活性増加は120 [mL]÷循環血液量[mL]で概算できます。
循環血液量は体重の4%ですので、FFP 1単位輸血すると、300÷体重[kg](%)の凝固因子活性増加が期待できます。
たとえば体重50 kg、PT 8%の患者にFFPを2単位輸血すると、PTは300÷50×2=12%増え、20%になると予想されます。
止血に必要なフィブリノゲン値は100 mg/dL以上です。
FFP 1単位(120 mL)はフィブリノゲンを約250 mg含みます(フィブリノゲン100 mg/dLから算出すればよいです)。
したがって、FFP 1単位輸血後600÷体重[kg](mg/dL)のフィブリノゲン増加が期待できます。
たとえば50 kg、フィブリノゲン76 mg/dLの患者にFFPを2単位輸血すると、フィブリノゲンは600÷50×2=24 mg/dL増え、100 mg/dLになると予想されます。
(続く) 新鮮凍結血漿製剤(FFP)(6)必要量へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:53
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新鮮凍結血漿製剤(FFP)(4)種類
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(3)凝固因子製剤より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(4)種類
国内の新鮮凍結血漿製剤(FFP)は全て保存前白血球除去(leukocyte reduced: LR)製剤(FFP-LR)です。
1単位あたりの白血球数は1×106個以下と少なく、しかも凍結によりほとんど破壊されます。
200 mL献血、400 mL献血由来の1単位製剤(FFP-LR-1:8,706円)、2単位製剤(FFP-LR-2:17,414円)、成分献血由来のFFP-LR-Ap(22,961円)があり、容量はそれぞれ120 mL、240 mL、450 mLです。
FFP-LR-Apは5単位製剤とみなされてきましたが、実際は4単位弱の容量しかありません。
これは2007年LR処理が導入されるまで、FFP 1単位製剤が80 mLであったことのなごりです。
FFP-LR-Apは主に血漿交換に用いられます(なお、血漿交換に1単位、2単位製剤を用いると割高になります)。
新鮮凍結血漿は、安全性担保のため採血後180日の貯留保管期間が設けられています。
有効期限は採血後180日から1年後までです。
その間−20°C以下で凍結保存されます。
FFPは、ビニール袋に入れたまま30〜37°Cの恒温槽やFFP融解装置で融解します。
直接熱湯をかけたり、電子レンジを使用されないよう注意します(「解凍して」の指示のとらえかたは様々です)。
凝固因子の失活を防ぐため、FFPは融解後3時間以内に輸注し終えます。
FFPの再凍結は行いません。
新鮮凍結血漿は献血者の厚意に基づく貴重な薬剤です。
安易な考えで不必要なFFPを発注し廃棄処分に至らしめる行為は厳に慎むべきです。
(続く)新鮮凍結血漿製剤(FFP)(5)凝固因子活性増加へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
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新鮮凍結血漿製剤(FFP)(3)凝固因子製剤
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(2)非適応より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(3)凝固因子製剤
第VII、VIII、IX、XIII因子など、安全で効果的な血漿分画製剤や遺伝子組み換え製剤など代替医薬品があればFFPは用いません。
他のビタミンK依存性凝固因子欠乏症(第II、第X因子)は、プロトロンビン複合濃縮製剤の適応が考えられます。
また、低・無フィブリノゲン血症、フォンヴィレブランド病には、濃縮フィブリノゲン製剤、フォンヴィレブランド因子を含む第VIII因子濃縮製剤(コンファクトF)を用います。
第XII因子、高分子キニノゲン欠乏症、プレカリクレイン欠乏症は出血傾向に乏しいのでFFPの適応となりません。
後天性TTPの場合、ADAMTS13の補充と自己抗体の除去を企図し、FFPを置換液とする血漿交換を行います。
先天性TTPはADAMTS13補充目的のFFP単独投与で良いです。
なお、後天性溶血性尿毒症症候群に対するFFPを用いた血漿交換療法の有効性は不明です。
FFP使用前にプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定します。
播種性血管内凝固症候群(DIC)や大量出血時はフィブリノゲン値も測定します。
検査値はFFPの適応判断に必要ですが、出血傾向が改善すれば検査値正常化を目指さなくて良いです。
(続く)新鮮凍結血漿製剤(FFP)(4)種類へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
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新鮮凍結血漿製剤(FFP)(2)非適応
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(1)適応より続く。
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(2)非適応
出血傾向や血栓症、TTP、観血的処置の予定が無ければ、FFPの適応となりません。
<新鮮凍結血漿製剤(FFP)の不適切使用>
・循環血漿量減少の改善と補充
・蛋白質源としての栄養補給
・創傷治癒の促進
・末期患者への投与
・その他:重症感染症の治療、播種性血管内凝固症候群(DIC)を伴わない熱傷の治療、人工心肺使用時の出血予防、非代償性肝硬変での出血予防
(続く) 新鮮凍結血漿製剤(FFP)(3)凝固因子製剤へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:09
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新鮮凍結血漿製剤(FFP)(1)適応
新鮮凍結血漿製剤(FFP)(1)適応
新鮮凍結血漿製剤(frozen fresh plasma: FFP)の使用目的は以下の通りです。
(1) 凝固因子、凝固阻止因子、線溶因子、血漿因子の補充による出血傾向・血栓症、血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura: TTP)の治療(治療的FFP輸血)、
(2) 観血的処置時の出血予防(予防的FFP輸血)
厚生労働省. 「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の改正について(平成24年3月一部改正). Available from: http://wwwmhlwgojp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/tekisei120319html (Accessed on 1 April 2013). 2013.
高松純樹. 血液製剤の適応と使用法 新鮮凍結血漿. 血栓止血誌. 2009;20(5):498-500.
<新鮮凍結血漿製剤(FFP)の適応疾患と病態>
(単に凝固・凝固阻止・線溶・血漿因子の低下だけでは適応になりません)
1 凝固因子の補充:PT延長(30%以下または国際標準比率 [INR] 2以上)、またはAPTT延長(25%以下または基準値上限の2倍以上)、または低フィブリノゲン血症(フィブリノゲン100 mg/dL未満)
・肝障害
・L-アスパラギナーゼ投与後(凝固阻止因子も低下)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)
・大量輸血時(希釈性凝固障害の治療)
・安全で効果的な血漿分画製剤や遺伝子組み換え製剤の無い凝固因子欠乏症
・クマリン系薬剤効果の緊急補正(ビタミンK補給により可能な1時間以内の補正では不十分で、濃縮プロトロンビン複合体製剤が使用出来ない場合)
2 凝固阻止因子、線溶因子の補充
・プロテインC・プロテインS欠乏症(ヘパリンなど抗凝固療法を併用)
・プラスミンインヒビター欠乏症(トラネキサム酸など抗線溶薬を併用)
3 血漿因子の補充
・後天性血栓性血小板減少性紫斑病(FFPを置換液とした血漿交換)
・先天性血栓性血小板減少性紫斑病(FFP単独投与)
(続く)新鮮凍結血漿製剤(FFP)(2)非適応へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
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金沢大学第三内科(呼吸器内科)スタッフ
金沢大学第三内科(呼吸器内科)のスタッフ全体写真です。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42
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濃厚血小板製剤(PC)(8)注意点
濃厚血小板製剤(PC)(7)手術前の血小板数(トリガー値)より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(8)注意点
1. 現有の厚労省ガイドラインは、化学療法後の目標血小板数は1〜2万/µLと幅のある記載がされておりわかりにくいです。実際は1万/µL以上で済むことが多いです(濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的輸血と血小板数)。
厚生労働省. 「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の改正について(平成24年3月一部改正). Available from: http://wwwmhlwgojp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/tekisei120319html (Accessed on 1 April 2013). 2013.
2. 「血小板減少=血小板輸血必要」ではありません。
偽性血小板減少やサンプリングエラー(特に新生児)の可能性も念頭におく必要があります。
3. 化学療法や造血細胞移植、新生児血小板減少において、血小板輸血の適応判断に幼若血小板比率(IPF)測定が有用です。
最近自動計測が可能となり、積極的な活用が望まれます。
4. 血小板濃厚液10単位には、不安定な凝固因子を除いて、新鮮凍結血漿2.5単位に相当する凝固因子活性が含まれています。
5. 輸血副作用の種類・対応に関して、日本輸血・細胞治療学会よりガイドラインが発表されています(フリーアクセス)。輸血時は必携です。
日本輸血・細胞治療学会輸血療法委員会. 輸血副作用対応ガイド. Available from: http://wwwjstmctorjp/jstmct/Document/Guideline/Ref19-2pdf (Accessed on 1 April 2013). 2013.
(続く)
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05
| 輸血学
濃厚血小板製剤(PC)(7)手術前の血小板数(トリガー値)
濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的輸血と血小板数より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(7)手術前の血小板数(トリガー値)
手術や処置の際に維持すべき血小板数(トリガー値)と方法の相談を受けることがあります。
トリガー値は、濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的輸血と血小板数を参考に個々の病態を考慮し判断します。
血小板輸血の生体内半減期は3〜5日とされますが、実臨床では2日程度と考えた方がよいです。
たとえば、患者体重50 kg、術前血小板数2万/µL、トリガー値5万/µL、予定手術時間3時間、内視鏡的胆嚢切除術(非重要臓器)の例で考えてみたいと思います。
濃厚血小板輸血10単位輸血すれば、200÷50=4万/µL、6万まで増加が期待できます。
したがって、手術直前(通常は1時間前に輸血が終わるように)に濃厚血小板を10単位輸血すればよいです。
より慎重を期するため、血小板輸血しながら手術が実施されることもあります。
なお、可能なら術前血小板輸血終了15分後に血小板数を測定し、血小板数増加を確認します。
血小板輸血不応の可能性が否定できない場合や血小板数10万/µL以上が必要な場合は15分前の血算確認は強く望まれます。
(続く)濃厚血小板製剤(PC)(8)注意点へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| 輸血学
濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的輸血と血小板数
濃厚血小板製剤(PC)(5)治療的&予防的輸血より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(6)予防的血小板輸血において維持すべき血小板数(トリガー値)
1 血小板数5千/µL以上
・出血グレード1以下の造血不全
2 血小板数1万/µL以上
・出血グレード1以下(血液がん、化学療法、造血細胞移植造)
3 血小板数2万/µL以上
・出血グレード2
・凝固異常を伴う肝障害の合併
・播種性血管内凝固症候群(DIC)の合併
・急性前骨髄球性白血病
・38.5度以上の発熱
・活動性感染症(敗血症、発熱性好中球減少、肺炎など)
・抗凝固療法中
・壊死性腫瘍
・抗胸腺グロブリン治療
・血小板数が急激に減少(3日で2万/µL以上低下)
・白血球増多
・小児・新生児
・血小板製剤入手に制限がある(連休前、遠隔地、震災後など)
4 血小板数5万/µL以上
・出血グレード3以上
・腰椎穿刺前
・CVカテーテル設置前(5万/µL未満でも可能との意見もある)
・活動性出血後(肺出血や消化管出血など)
・血小板数10万/µL以上を必要としない手術
・全大腸内視鏡検査、気管支鏡検査
・針生検
5 血小板数10万/µL以上(血小板輸血終了)15分後血小板増加の確認が必要
・中枢神経など重要臓器の手術
・3時間以上人工心肺を使用する心大血管手術
・広範な癒着剥離を要する手術
・出血傾向を伴う慢性腎臓病や肝疾患を有する手術
(続く)濃厚血小板製剤(PC)(7)手術前の血小板数(トリガー値)へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16
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濃厚血小板製剤(PC)(5)治療的&予防的輸血
濃厚血小板製剤(PC)(4)血小板輸血不応より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(5)治療的&予防的血小板輸血
<治療的血小板輸血>
網膜、中枢神経系、肺、消化管など重要臓器の活動性出血には、血小板数5万/µL以上を保つように血小板輸血を行います。
<予防的血小板輸血>
1. 外科手術、検査、大量出血
眼・脳など中枢神経・重要臓器(「重要」の判断はしばしば主観的です)の手術、3時間以上人工心肺を使用する心大血管手術、広範な癒着剥離を要する手術、出血傾向を伴う慢性腎臓病や肝疾患を有する場合、血小板数(7〜)10万/µL以上を保つよう必要に応じ血小板輸血を行います。
血小板輸血終了15分後血小板増加を確認する必要があります。
その他の手術、人工心肺使用時、全大腸内視鏡検査、気管支鏡検査、針生検など侵襲的処置時に必要な血小板数は原則5万/µL以上です。
ただし、圧迫止血が可能な骨髄検査(生検を含む)時は通常予防的血小板輸血は不要です。
抜歯時も予防的血小板輸血は不要と思われますが、1万/µL以上を奨める意見もあります。
大量出血の場合は目安となる血小板数は無く、臨床的判断に基づき血小板輸血を行います。
2. 血液がん、化学療法、造血細胞移植、造血不全
出血グレードや病態を参考に血小板輸血の適応を考慮します。
出血に関するWHOグレード
グレード0:出血なし
グレード1:点状出血、紫斑、潜血(尿、便など)、経血増加
グレード 2:相当量の出血、ただし赤血球輸血必要量は増えない(鼻出血、肉眼的血尿、吐下血など)
グレード 3:1日1単位以上の赤血球輸血を要する出血
グレード4:生命を脅かす出血(出血性ショック、臓器出血、頭蓋内出血、心嚢内出血、肺出血など)
造血不全(再生不良性貧血、骨髄異形成症候群など)の場合、血小板数が5千/µL以上あり出血症状が皮下出血斑程度の軽微な場合、血小板輸血の繰り返しによる血小板輸血不応を回避するため、血小板輸血の適応にはなりません。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
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北陸ヘモフィリア懇話会のご案内
第6回 北陸ヘモフィリア懇話会
日時:2013年5月18日(土)14時00分〜16時30分
会場:金沢都ホテル 5F「能登の間」
プログラム
14:00-14:15 製品紹介 バクスター株式会社
開会のことば 金沢大学医薬保健研究域検査科学専攻 森下英理子
14:15-15:15 【症例検討】
座長:富山大学医学部小児科 金兼弘和 先生
症例検討(1)『ステロイド投与による合併症に苦慮した後天性血友病の一例』
井美達也1)2) 林朋恵1) 森下英理子1) 朝倉英策1) 中尾眞二1)
1)金沢大学附属病院血液内科 2)富山県立中央病院
症例検討(2)『ビンクリスチン投与が奏効したKasabach-Merritt症候群の一例』
星野顕宏 野村恵子 金兼弘和
富山大学小児科
15:15-15:30 休憩
15:30-16:30 【特別講演】
『血友病の基礎講座と最近のトピックス:
成人血友病患者の課題と医療ネットワーク構築の必要性』
演者:医療法人財団 荻窪病院 理事長 花房秀次 先生
主催:バクスター株式会社 バイオサイエンス事業部
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:38
| 研究会・セミナー案内
金沢大学第三内科(血液内科)スタッフ
金沢大学第三内科(血液内科)のスタッフ全体写真です。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
| その他
濃厚血小板製剤(PC)(4)血小板輸血不応
濃厚血小板製剤(PC)(3)血小板数増加より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(4)血小板輸血不応の判断
濃厚血小板製剤を投与しても、十分血小板が増えるとはかぎません。
この状態を血小板輸血不応と呼びます。
血小板輸血不応の判断には、「補正血小板増加数(corrected count increment: CCI)[/µL]=(輸血後血小板数[/µL]−輸血前血小板数[/µL])×体表面積[m2] ÷輸血血小板数総数[×1011]を用います。
分母が輸血血小板数総数[×1011]であることに注意します。
すなわち濃厚血小板製剤10単位輸血すると分母は2になります。
CCI-24(輸血終了24時間後のCCI:輸血翌朝の測定値を用いてよい)が7,500/µL未満なら輸血不応と判断します。
通常は次の輸血時にCCI-1(輸血終了1時間後のCCI)を計算します。
CCI-1が4,500/µL未満なら免疫機序による血小板輸血不応を疑います。
CCI-24が7,500/µL未満でもCCI-1が4,500/µL以上なら、非免疫機序による血小板輸血不応を疑います。
実際は区別が難しい場合も多いです。
身長160 cm、体重50 kgの場合、体表面積は1.5 m2。
濃厚血小板製剤10単位輸血後血小板数が1万/µLから2万/µLへ増加したら、CCI=(2万-1万)×1.5 ÷2=7,500/µLと、CCI-24の閾値に一致します。
したがって、「濃厚血小板製剤10単位輸血後翌日の血小板が1万/µL以上増えなかったらおかしい」と覚えていてもよいです。
免疫機序による血小板輸血不応が疑われた場合、抗HLA抗体や抗血小板特異抗原(HPA)に対する抗体の有無を調べます。
原因が特定できない場合、特発性血小板減少性紫斑病や血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、ヘパリン起因性血小板減少も疑います。
抗HLA抗体や抗HPA陽性の場合、HLA、HPA適合濃厚血小板製剤を用います。
血小板はHLA class IIを発現していないため、通常はHLA -AとBのみ合わせればよいです。
HLA、HPA適合濃厚血小板製剤の場合、ABO血液型不適合血を受け入れざるをえません。
ただし、溶血性副作用や新たな血小板輸血不応を来たすことがあるため、注意します。
HLA、HPA適合濃厚血小板製剤を用いた場合、必ずCCI-1、CCI-24を測定し、有効性を評価します。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43
| 輸血学
濃厚血小板製剤(PC)(3)血小板数増加
濃厚血小板製剤(PC)(2)種類より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(3)濃厚血小板製剤による血小板数増加
濃厚血小板製剤10単位には、2×10
11個以上3×10
11個未満の血小板が含まれます。
濃厚血小板製剤1単位は全血200 mLに含まれる血小板数に相当しますので、血小板数10-15万/µLから算出すればよいです。
濃厚血小板製剤を投与すると3分の1は脾臓で補足され破壊されます。
したがって血小板数増加は、輸血血小板総数÷循環血液量×2÷3で概算できます。
循環血液量は体重の7%ですので、濃厚血小板製剤を10単位輸血すると、200÷体重[kg](万/µL)の血小板数増加が期待できます。
たとえば体重50 kg、血小板数1万/µLの患者に濃厚血小板製剤を10単位輸血しますと、血小板数は200÷50=4万/µL増え5万/µLになると予想されます。
血小板の生体内半減期は3〜5日です。
しかし、血小板輸血が必要な患者は血小板消費亢進状態を伴いやすく、化学療法や造血細胞移植後など自己造血が期待できない期間は週2〜3回の血小板輸血が必要になることが多いです。
(続く)
濃厚血小板製剤(PC)(4)血小板輸血不応へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:40
| 輸血学
濃厚血小板製剤(PC)(2)種類
濃厚血小板製剤(PC)(1)適応より続く。
濃厚血小板製剤(PC)(2)濃厚血小板製剤の種類
血小板輸血には、輸血後移植片対宿主病を防ぐため照射済み(
Irradiated: Ir)の、保存前
白血球除去された(
leukocyte reduced: LR)濃厚血小板製剤(PC)を用います。
国内のPCは全てLR(
PC-LR)であり、1単位あたりの白血球数は1×10
6個以下です。
医療安全の観点から、施設内照射より照射済み製剤(
Ir-PC-LR)の購入が強く望まれます。
Ir-PC-LRには、1単位(7,618円:平成25年4月1日現在。以下同。)、2単位(15,236円)、5単位(38,792円)、
10単位(77,270円)、15単位(115,893円)、20単位(154,523円)があります。
それぞれ基準容量は20 mL、40 mL、100 mL、
200 mL、250 mL、250 mL(15単位と20単位の容量は同じ)です。
抗HLA産生に伴う血小板輸血不応への対応として、HLA適合ドナーから採取した製剤(
Ir-PC-HLA-LR)があり、規格は
10単位(92,893円)、15単位(139,162円)、20単位(185,250円)があります(基準容量はIr-PC-LRと同じです)。
濃厚血小板製剤の有効期限は、献血で採取された日を1日目として4日目までと、「採取4日後」でないことに注意が必要です。
たとえば、4月1日の献血で採取された濃厚血小板製剤は、4月4日24時までに投与を終了すべきです。
ちなみに、
濃厚赤血球製剤は採取日を1日目として21日目まで使用できます。
なお、血小板輸血後の難治性アレルギー反応の予防として、洗浄血小板製剤が用いられることがあります。
洗浄血小板製剤の有効期限は通常洗浄日を1日目として2日目までです。
濃厚血小板製剤は、使用するまで水平振盪機で撹拌しながら室温保存します。
濃厚血小板製剤は献血者の厚意に基づく貴重な薬剤であり、有効期限も短いです。
安易な考えで不必要な濃厚血小板製剤を発注し廃棄処分に至らしめる行為は厳に慎むべきです。
(続く)
濃厚血小板製剤(PC)(3)血小板数増加へ
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:20
| 輸血学
濃厚血小板製剤(PC)(1)適応
濃厚血小板製剤(PC)(1)濃厚血小板製剤の適応
濃厚血小板製剤(platelet concentrate:PC)は、血小板減少または血小板機能異常による出血予防(
予防的血小板輸血)または出血治療(
治療的血小板輸血)に用いられます。
厚生労働省. 「輸血療法の実施に関する指針」及び「血液製剤の使用指針」の改正について(平成24年3月一部改正). Available from: http://wwwmhlwgojp/new-info/kobetu/iyaku/kenketsugo/tekisei120319html (Accessed on 1 April 2013). 2013.
高松純樹. 血液製剤の適応と使用法 新鮮凍結血漿. 血栓止血誌. 2009;20(5):498-500.
Slichter SJ. Evidence-based platelet transfusion guidelines. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2007:172-8. PubMed PMID: 18024626. Epub 2007/11/21. eng.
ただし、特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症;ITP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)には予防的血小板輸血は行いません。
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)への血小板輸血は禁忌です。
幸いヘパリン起因性血小板減少症は重篤な血小板減少や出血傾向はほとんどありません。
活動出血を伴う血栓性血小板減少性紫斑病で、血小板輸血による止血が必要な場合は、血小板輸血後速やかに血漿交換を行うか、血漿交換後に血小板輸血を行います。
なお、末期患者への延命目的での血小板輸血は適応外です。
(続く)
濃厚血小板製剤(PC)(2)種類へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:08
| 輸血学
幼若血小板比率(IPF):インデックス/最近の動向
幼若血小板比率(IPF):インデックス/最近の動向
1)幼弱血小板比率(IPF)とは
2)疾患/病態
3)注意点
4)症例
5) IPF測定が有用な疾患・病態
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
| 出血性疾患
幼若血小板比率(IPF)(5) IPF測定が有用な疾患・病態
幼若血小板比率(IPF)(5) IPF測定が有用な疾患・病態
幼若血小板比率(IPF)(4) 症例より続く
疾患・病態
|
意義 |
化学療法・造血幹細胞移植 |
血小板輸血適応判断・血小板回復指標 |
腎移植後 |
血小板機能評価 |
血小板減少性疾患 |
鑑別診断、エルトロンボパグ治療反応性予測 |
新生児血小板減少症 |
診断・治療反応性判断 |
血小板増多性疾患 |
血栓症予測、診断 |
急性冠動脈疾患 |
再閉塞予測 |
慢性肝疾患 |
肝硬変診断 |
周期性血小板減少 |
診断 |
骨髄異形成症候群 |
診断 |
細菌感染症 |
診断 |
抗血小板療法 |
治療効果評価 |
骨髄増殖性腫瘍 |
JAK2変異の予測 |
(続く)幼若血小板比率(IPF):インデックス/最近の動向へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
| 出血性疾患
幼若血小板比率(IPF)(4) 症例
幼若血小板比率(IPF)(4) 症例
幼若血小板比率(IPF)(3) 注意点より続く。
症例1
82歳の男性。歯肉出血のため来院。
白血球5,600/μL、Hb 8 g/dL↓、血小板0.2万/μL↓、網赤血球6.3万/μL(基準値2.5-9.0)、IPF 18%↑、ALT 12 IU/L、LDH 207 IU/L、T-bil 0.4 mg/dL、FDP 0.5 μg/mL。
診断:特発性血小板減少性紫斑病
症例2
48歳の男性。B型肝硬変・肝細胞癌で通院中、汎血球減少を指摘され来院。
白血球2,400/μL↓、Hb 13 g/dL↓、血小板3.5万/μL↓、網赤血球4.0万/μL(基準2.5-9.0)、IPF 9.6%↑、ALT 27 IU/L、LDH 171 IU/L、T-bil 1.8 mg/dL、FDP 1.8 μg/mL。
診断:脾機能亢進症
症例3
37歳の男性。6週前から階段昇降時息切れが出現したため来院。
白血球2,600/μL↓、Hb 8 g/dL↓、血小板3.8万/μL↓、網赤血球2.1万/μL↓(基準2.5-9.0)、IPF 2.3%、ALT 17 IU/L、LDH 270 IU/L↑、T-bil 0.7 mg/dL、FDP 0.5 μg/mL。
診断:中等症再生不良性貧血
(続く)幼若血小板比率(IPF)(5) IPF測定が有用な疾患・病態へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22
| 出血性疾患
幼若血小板比率(IPF)(3) 注意点
幼若血小板比率(IPF)(3) 注意点
注意点
1) 血小板輸血の影響
血小板輸血製剤のIPFはほぼ0%です。
したがって、血小板輸血後IPFは希釈性に低下するので評価に注意します。
2) IPF低下の臨床意義は不明
「IPF低下=血小板造血能低下」とは言えません。
3) IPFは血小板産生能、血栓傾向の簡易指標
IPFは非侵襲的検査として有用性ですが、骨髄検査に置き換わるものではありません。
4) IPF測定法は標準化されていない
施設毎に基準値を設定する必要があります。
(続く)幼若血小板比率(IPF)(4) 症例へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:14
| 出血性疾患
幼若血小板比率(IPF)(2) 疾患/病態
幼若血小板比率(IPF)(2) 異常となる病態・疾患
幼若血小板比率(IPF)とはより続く。
1) IPFの評価
IPFは高値かどうかで評価します。IPF低値の臨床意義は不明です。
2) 血小板減少性疾患の鑑別
IPFは血小板減少性疾患の鑑別診断に有用です。
IPF高値なら、血小板消費亢進の病態(ITP、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、播種 性血管内凝固症候群、脾機能亢進症、慢性肝炎など)が疑われます。
ITPではステロイドなどの治療に反応するとIPFは低下します。
またITPに対するトロンボ ポイエチンレセプター作動薬エルトロンボパグ治療開始10日目の幼若血小板数は、治療反応性予測に役立ちます。
Barsam SJ, et al. Platelet production and platelet destruction: assessing mechanisms of treatment effect in immune thrombocytopenia. Blood. 2011;117: 5723-32.
IPFは血小板数回復に先行して増加します ので、化学療法や造血細胞移植後の血小板回復予測、血小板輸血適応の判断にも有益です。
骨髄検査など侵襲的検査が難しい新生児血小板減少症の鑑別診断や 経過観察にもIPF測定は有用です。
3) 血小板減少性疾患以外のIPF活用
血小板増多性疾患においてIPF高値は血栓症の危険因子です。
また、抗血小板薬の効果判定にも役立ちます。
急性冠動脈疾患の急性期はIPFが著増し、IPF 増加と冠動脈再閉塞との関連が示唆されています。
感染症があるとIPF は若干増加します。これを利用し、IPFを細菌感染症の早期診断に利用するという試みもあります。
JAK2変異陽性骨髄増殖性腫瘍は陰性例よりIPFが高いとの 報告があり、JAK2変異の予測にも役立ちます。
Panova-Noeva M, et al. JAK2V617F mutation and hydroxyurea treatment as determinants of immature platelet parameters in essential thrombocythemia and polycythemia vera patients. Blood. 2011; 118: 2599-601.
4) 骨髄異形成症候群におけるIPF
骨髄異形成症候群(MDS)では、IPFと血小板数の相関はありません。
この原因として、血小板減少が軽い割にIPFが高値となる「IPF高比率MDS」の存在 があります(3, 4)。
Sugimori N, et al. Aberrant increase in the immature platelet fraction in patients with myelodysplastic syndrome: a marker of karyotypic abnormalities associated with poor prognosis. Eur J Haematol. 2009; 82: 54-60.
柴山正美, et al. 骨髄異形成症候群の幼若血小板高比率は7番染色体異常を含む予後不良染色体異常の存在を示唆する. 日本検査血液学会雑誌. 2008; 9: 136-42.
血小板数5万/µL以上かつIPF 10%以上をIPF高比率MDSと定義した場合、MDSの約20%に相当します。
IPF高比率MDSは、7番染色体異常などの染色体異常や血小板・骨髄巨核 球の形態異常が多いです。
(続く)幼若血小板比率(IPF)(3) 注意点へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:56
| 出血性疾患
幼若血小板比率(IPF)とは
幼若血小板比率(IPF)とは(1)
図 幼若血小板比率(IPF)
シスメックス社XE-2100の場合、RETチャンネルを用いて、全血小板における未成熟血小板の割合(IPF)が測定できます。
健常人(A)、特発性血小板減少性紫斑病患者(ITP)(B)のデータを示します。
参考:幼若血小板比率(IPF)/網血小板:インデックス
基準値
0.5%から5%(標準化されていないため、施設毎に基準値を設定する必要があります)
検査の意義
骨髄から放たれたばかりの血小板はRNAが豊富で、網血小板と呼ばれます。
血小板寿命3-10日(平均約8日)のうち、最初の24-36時間は網血小板と考えられます。
網血小板は従来研究室レベルで測定されていましたが、XE IPF master(シスメックス社)により幼若血小板比率(immature platelet fraction: IPF)として自動測定可能となりました。
IPFは骨髄の血小板産生能を反映し、骨髄巨核数と相関します。
骨髄機能が正常なら血小板が増えると巨核球は減り、逆に血小板が減ると巨核球は増えるため、健常人ではIPFと血小板数は逆相関します。
(続く)幼若血小板比率(IPF)(2) 疾患/病態へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
| 出血性疾患
後天性抗第V因子インヒビター(インデックス)血液凝固
後天性抗第V因子インヒビター(7)予後より続く。
後天性抗第V因子インヒビター(インデックス)血液凝固因子への自己抗体
1)概念・定義、疫学
2)発生機序、タココンブ
3)病態
4)診断、血液凝固検査
5)治療:止血治療
6)治療:免疫抑制療法
7)予後
参考:第V因子欠損症1/異常症:先天性凝固因子異常症(21)
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11
| 出血性疾患
後天性抗第V因子インヒビター(7)予後
後天性抗第V因子インヒビター(6)治療:免疫抑制療法より続く。
後天性抗第V因子インヒビター(7)予後
<予後>
ウシトロンビン起因性の後天性FVインヒビターは、暴露後平均8.3日で出現し消失までの期間は平均2.3ヶ月で、致死率は6%でした。
Streiff MB, Ness PM: Acquired factor V inhibitors: a needless iatrogenic complication of bovine thrombin exposure. Transfusion 42: 18-26, 2002.
一方、ウシトロンビン起因性以外の後天性FVインヒビター症例の致死率は、12-17%と報告されています。
Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
インヒビター消失は54例/78例(69%:自然消失12例、治療後42例)で、消失までの期間は1週間〜29カ月(中央値6週間)であした。
予後は基礎疾患に関連しており、特発性インヒビター症例や薬剤起因性では良好ですが、自己免疫性疾患や悪性腫瘍を合併している症例では不良です。
(続く)後天性抗第V因子インヒビター(インデックス)血液凝固へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01
| 出血性疾患
後天性抗第V因子インヒビター(6)治療:免疫抑制療法
後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療より続く。
後天性抗第V因子インヒビター(6)治療:免疫抑制療法
<治療>
免疫抑制療法
免疫抑制療法としては副腎皮質ホルモン(PSL)が最もよく使用されています。
単独投与あるいはcyclophosphamide、azathioprineなど他の免疫抑制剤との併用で約7割以上が良好な反応を得ています。
最近は、抗CD20抗体であるrituximabの有効性が報告されています。
今後、rituximabは後天性血友病Aと同様に、PSLなどによる効果が不十分な場合の第二選択薬として位置付けるべきでしょう。
血漿交換や免疫吸着療法も、急速にインヒビター力価が低下し効果的な治療法です。
尚、高容量γグロブリン製剤の有効性については、意見が分かれています。
一方、インヒビター除去治療を行なわずとも、約半数の症例で自然に抗体が消失します。
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
出血例ではインヒビター除去治療を行った方が行わない場合より抗体消失までの期間が短縮しますが、非出血例では両者にほとんど差がないとの報告されています。
したがって、インヒビター除去治療は、出血症例あるいは出血の危険性が高い症例に対して行うのが望ましいと考えられます。
(続く)後天性抗第V因子インヒビター(7)予後へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:48
| 出血性疾患
後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療
後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査より続く。
後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療
<治療>
後天性FVインヒビターの治療の原則は、出血のコントロールとインヒビターの除去です。
止血治療
通常、無症候性の場合は治療の必要はありません。
出血症例に対しては、新鮮凍結血漿(FFP)、血小板製剤(PC)、活性型プロトロンビン複合体製剤(APCC:ファイバR)、遺伝子組換え活性型凝固第VII因子製剤(rFVIIa、ノボセブンR)など、様々な製剤が止血治療に用いられています。
しかしながら、FFP中に含まれているFVは少量でインヒビターにより容易に不活化されてしまいますので、FFPの止血効果は期待できません。
PCは、少なくとも活性化して脱顆粒するまではα顆粒中のFVはインヒビターから保護されているため、臨床的に効果があると考えられます。
Kalafatis M, Simioni P, Tormene D, et al: Isolation and characterization of an antifactor V antibody causing activated protein C resistance from a patient with severe thrombotic manifestations. Blood 99:3985-3992, 2002.
PC輸注は約7割の症例で有効でしたが、全ての症例に効果があるわけではなく、またPC輸注量や輸注回数なども定まったものはありません。
Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
近年はバイパス製剤としてrFVIIaが重症出血に使用されるようになってきており、良好な止血効果を得ています。
残念ながら、現時点では抗FVインヒビターの出血に対して確立した治療法はありません。
Angらは(エビデンスは全くありませんが)、第一選択としてPC輸注を行い、頻回のPC輸注でも出血がコントロールできない場合は第二選択としてrFVIIaを90 μg/kg投与することを薦めています。
(続く)後天性抗第V因子インヒビター(6)治療:免疫抑制療法へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32
| 出血性疾患
後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査
後天性抗第V因子インヒビター(3)病態より続く。
後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査
<診断> 血液検査所見
このような場合第X・V・II因子活性を測定し、FV活性の低下を認めた場合、次にPTならびにAPTTクロスミキシング試験(交差混合試験)を行います。
正常血漿の添加により、延長した凝固時間が短縮されれば先天性FV欠損症、短縮されなければ抗FVインヒビターの存在を考えます(参考:後天性血友病)。
FVIIIに対するインヒビターの反応は通常2時間の加温が必要ですが(遅延型)、抗FVインヒビターは15分以内でFVを不活化する即時型が多いです。
しかし、筆者らは遅延型の抗FVインヒビターを経験しており、実際には0時間と37℃2時間加温後の両方でクロスミキシング試験を実施することが望ましいです。
診断の確定は、抗FVインヒビターの検出であり、Bethesda法にて力価を測定します。
文献検索にて症例報告(ウシトロンビン起因性は除去)をまとめた総説によりますと、ピークインヒビター力価の中央値は19BU(0.5-1500 BU)、FV活性中央値は1%(1-20%)でした。
Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.
インヒビター力価は、FV活性レベルや出血の重症度とは全く相関しませんでしたが、FV活性値は出血の重症度と相関しました。
このような結果はAngらの結果とも一致しています。
出血群のFV活性中央値が1%(0-23)に対して、非出血群では3%(0-20.8)(P=0.068)で、APTTも出血群で有意に延長していました(P=0.032)。
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
したがって、診断時にFV活性が1%未満の患者に対しては出血症状の出現について慎重に経過観察する必要があります。
一方、インヒビター力価については、その強さよりもむしろ性状が出血の重症度と関連するといわれています。
インヒビターの血小板α顆粒中に含まれるFVに対する反応性の違いや、FV C2ドメイン上のエピトープに対する認識力の違いが、出血症状の程度の差となります。
Nesheim ME, Nichols WL, Cole TL, et al: Isolation and study of an acquired inhibitor of human coagulation factor V. J Clin Invest 77: 405-415, 1986.
(続く)後天性抗第V因子インヒビター(5)治療:止血治療へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50
| 出血性疾患
後天性抗第V因子インヒビター(3)病態
後天性抗第V因子インヒビター(2)発生機序、タココンブより続く。
後天性抗第V因子インヒビター(3)病態
<病態>
抗FVインヒビター保有患者の出血症状は、ウシトロンビンが誘因となった場合はほとんど無症候性ですが、約1/3が出血症状を認め6%で致死的となります。
Streiff MB, Ness PM: Acquired factor V inhibitors: a needless iatrogenic complication of bovine thrombin exposure. Transfusion 42: 18-26, 2002.
一方、それ以外の抗FVインヒビター発生例では7-8割が出血症状を示し、12-17%で致死的となります。
Franchini M, Lippi G: Acquired factor V inhibitors: a systematic review. J Thromb Thrombolysis 314:449-457, 2011.
Ang AL, Kuperan P, Ng CH, et al: Acquired factor V inhibitor. A problem-based systematic review. Thromb Haemost 101:852-859, 2009.
数か所の部位で同時に出血することもまれではありません。
初発出血症状は消化管・泌尿器系・呼吸器系などの粘膜出血が半数以上を占め、中でも血尿の頻度が高いです。
頭蓋内出血や後腹膜出血はまれですが、致死率が高いです。
術後にインヒビターが発生した患者では、術創からの出血が時に致死的となることがありますので、注意深く観察する必要があります。
また、後天性血友病Aと同様に関節内出血はまれです。
一方、興味深いことに血栓症状をきたすこともあり、活性化プロテインCによる活性化FVの不活化あるいはFVの抗凝固阻止作用を、インヒビターが選択的に阻害するためと考えられています。
Kalafatis M, Simioni P, Tormene D, et al: Isolation and characterization of an antifactor V antibody causing activated protein C resistance from a patient with severe thrombotic manifestations. Blood 99:3985-3992, 2002.
(続く)後天性抗第V因子インヒビター(4)診断、血液凝固検査へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
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