慢性難治性の自己免疫性出血病FXIII/13
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「臨床的寛解3年間後の出血で死亡した慢性難治性の自己免疫性出血病FXIII/13患者の報告」
著者名:Kotake T, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 598-602, 2015.
<論文の要旨>
第XIII因子に対する自己抗体が出現することで発症する自己免疫性出血病FXIII/13(AH13)は、これまでは稀な疾患と考えられてきましたが、少なくとも日本では21世紀になって増加してきています。
83歳の女性が、原因不明の筋肉内血腫と高度の貧血のために著者らの病院に入院しました。
患者のFXIII活性は、正常値の10%にまで減少していました。
FXIIIインヒビターおよびFXIIIサブユニットAに対する自己抗体が検出されたため、患者はAH13と確定診断されました。
心膜出血による心タンポナーデを発症したにもかかわらず、リツキシマブとシクロホスファミドによる免疫抑制療法とFXIII濃縮製剤による止血治療によって、臨床的にはAH13から回復しました。
しかし、患者のFXIII活性は低値が持続して、入院5年後に出血のため死亡しました。
以上、AH13は慢性の難治性出血性疾患になりやすく、長期間にわたって十分に管理する必要があると考えられました。
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血小板減少症:ITP鑑別とIPF%またはRP%
論文紹介です。
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「骨髄産生低下による血小板減少症とITPの鑑別におけるIPF%またはRP%測定の意義」
著者名:Sakuragi M, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 369-375, 2015.
<論文の要旨>
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の診断は、鑑別診断に基づいて行われています。
フローサイトメトリーによる網状血小板(RP)割合の測定(%)は、補助診断検査として有用ですが、この方法は時間を要する研究室レベルの検査です。
日々の臨床に有用な代替アッセイを検討するために、著者らは以下の3つの方法を比較しました:1)幼若血小板比率(IPF %)(XE-2100、シスメックス)、2)新しいXN-1000により測定されたIPF%(XN)、3)RP %。
対象は、ITP47例、骨髄産生抑制による血小板減少症28例(再生不良性貧血18例、化学療法に伴う血小板減少症10例)、健常対照80例です。
溶血の影響を調べるために発作性夜間血色素尿症(PNH)16例の検討も加えました。
その結果、IPF%(XN)はIPF%(XE)と比較すると、より良い同時再現性を示しました。
ITP診断のための感度と特異度は、IPF %(XE)は83.0、75.0%、IPF%(XN)は85.1、89.3%、RP%は93.6、89.3%でした。
PNH患者の検討では、溶血または赤血球破砕はIPF%(XE)には影響を与えましたが、IFP%(XN)には影響を与えませんでした。
以上、ITPの補助診断検査として、XN-1000によるIPF%の測定は、RP%に匹敵する価値を有するものと考えられました。
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ITP診断時リンパ球数:ピロリ菌除菌療法の効果
論文紹介です。
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「ITP治療における診断時リンパ球数の意義:ピロリ菌感染患者におけるリンパ球数と治療成功との関係」
著者名:Nagata A, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 268-272, 2015.
<論文の要旨>
免疫性血小板減少症(ITP)は、血小板数減少、血小板破壊の亢進、特異的自己抗体による血小板産生の阻害によって特徴付けられる後天性疾患す。
以前の研究では、ピロリ菌の除菌療法を行うと、ITPは改善すると報告されています。
著者らは、ITPの初期治療と、診断時リンパ球数との関係を検討しました。
対象は、成人ITP患者52例です(1998年3月〜2013年3月)。
標準的なピロリ除菌療法が31人の患者に行われ、この治療の前後のリンパ球数を比較しました。
ITP診断時には、ピロリ菌感染患者におけるリンパ球数は、ピロリ菌陰性患者に比べて有意に高い結果でした(1.92±0.68×109/ L vs.1.42±0.67×109/ L; p = 0.010)。
除菌療法は6/11例(54.5%)で成功し、血小板数は除菌療法が行われた4/11例(36.4%)で増加しました。
一方、除菌療法はピロリ菌感染のない15例でも行われ、9/15例で反応がみられました。
また、除菌療法によってITP完全寛解とならなかった患者よりも完全寛解となった患者で、リンパ球数は有意に高かったです(2.4±0.59×109/ L vs. 1.37±0.60×109/ L、P = 0.0023)。
以上、ITP患者における初期治療の反応性は、診断時のリンパ球数を測定することによって予測可能と考えられました。
リンパ球サブセットやサイトカインネットワークに関しては、今後の検討課題です。
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ITP:TPO受容体作動薬への変更
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「ITPにおいてTPO受容体作動薬に変更した場合の臨床転帰」
著者名: González-Porras JR, et al.
雑誌名:Br J Haematol 169: 111-116, 2015.
<論文の要旨>
慢性免疫性血小板減少症(ITP)患者において、副腎皮質ステロイド、リツキシマブ、他のトロンボポエチン受容体作動薬(TPO-RA)から変更されて、現在エルトロンボパグあるいはロミプロスチムで治療されている場合の、実臨床における治療パターンや臨床転帰について検討した報告です。
対象はITP280例であり、変更後治療の内訳はエルトロンボパグ治療中が130例、ロミプロスチム治療中が150例です。
有効性に関連する問題(期待する血小板数の増加がみられないまたは前治療への反応の欠如)が、すべての患者で治療変更の主な理由でした(エルトロンボパグ54%、ロミプロスチム57%)。
最後の来院時の血小板数は、エルトロンボパグ治療、ロミプロスチム治療のいずれであっても、それらの薬物による治療開始時の血小板数と比較して改善していました。
エルトロンボパグ治療とロミプロスチム治療間において臨床転帰には有意差はみられませんでした。
以上、著者らの検討結果は、最初のTPO-RA治療で効果が不十分な場合、他のTPO-RAへの切り替えが有益である場合があり得ることを示していました。
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ITP:ロミプロスチムからエルトロンボパグへの変更
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「ITP患者におけるロミプロスチムからエルトロンボパグへの変更」
著者名: González-Porras JR, et al.
雑誌名:Br J Haematol 169: 111-116, 2015.
<論文の要旨>
トロンボポエチン受容体作動薬(THPO-RAs)であるロミプロスチムとエルトロンボパグは、免疫性血小板減少症(ITP)に対して有効かつ安全な治療薬です。
しかし、治療反応が得られなかった場合や有害事象が出現した場合に、一方のTHPO-RAsから他方のTHPO-RAsに変更して引き続き加療を行うことの意義については明らかになっていません。
著者らは、ロミプロスチムで治療された後にエルトロンボパグでの治療に変更されたITP成人患者51名について、後方視的に検討を行いました。
年齢の中央値は、49歳(18〜83歳)、性別は女性32名と男性19名でした。
エルトロンボパグに切り替える前に、ロミプロスチム使用期間の中央値は12ヶ月でした(四分位範囲:5〜21ヶ月)。
切り替えの理由は、無効(n = 25)、患者の希望(n = 16)、血小板数の変動(n = 6)、副作用(n = 4)でした。
その結果、エルトロンボパグに反応した症例は80%(41/51)であり、そのうち完全寛解が67%(n = 35)含まれていました。
中央値14ヶ月の経過観察において、31人の患者では、治療効果が継続していました。
患者の希望、血小板数の変動、副作用が理由で変更した患者においても有効性は維持されていました。
患者のうち33%では、エルトロンボパグ治療中に1つ以上の有害事象がみられました。
以上、ITP患者においてロミプロスチムからエルトロンボパグへの変更は有効かつ安全であると考えられました。
エルトロンボパグへの反応性は、ロミプロスチム中止の原因に関連していました。
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しみじみわかる血栓止血 vol.2 血栓症・抗血栓療法編:NOAC他
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「しみじみわかる血栓止血 vol.2 血栓症・抗血栓療法編」
著者名: 朝倉英策
出版会社名:中外医学社, 2015.
<論文の要旨>
(序文より)
寝転びながらでも読めるのに血栓止血学がしみじみ分かるをモットーにして、Vol.1 DIC・血液凝固検査編が発刊されました。
幸い多くの方にお求めいただき、分かりやすい、堅苦しくなくどんどん読み進むことができるなどのご感想をいただきました。
ありがとうございます。
A5サイズでコンパクトな書籍だったのも、持ち運びに便利だったようです。
この度、Vol.2血栓症・抗血栓療法編発刊の機会をいただきました。
Vol.1では、DICや血液凝固検査を取り上げた関係で、おそらく血液内科医、臨床検査技師、研修医、医学生の皆さんに手にしていただいたのではないかと思います。
Vol.2では、血栓症、抗血栓療法を取り上げていますので、上記の方々以外にも多くの領域の皆様にご興味を持っていただけるのではないかと思っています。
また、おそらく半分程度の記事は、医療関係者ではなく一般の方にもお読みいただけるのではないかと思います。
抗凝固療法凝固花盛りの時代になっていますが、多くの皆様が関心をもたれている新規経口抗凝固薬(NOAC)関しても十分に誌面を割いて、記事にさせていただいています。
日本において、血栓止血学の楽しさをしみじみ分かる人が増えることを願っています。
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液専門医テキスト(改訂第2版):日本血液学会
論文紹介です。
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「血液専門医テキスト(改訂第2版)」
著者名: 日本血液学会
出版会社名:南江堂, 2015.
<論文の要旨>
本テキストは、血液臨床医にとっての実用書であるとともに、これから血液専門医を目指す医師にとっても指針となりうるよう編集されている。
巻末には過去の代表的な問題を記載して簡単な解説を加えてある。
さらには、小児科領域の「小児の造血器悪性腫瘍」や「形態学」で多数の病理像を示すなど、血液専門医に必要な知識を余すところなく盛り込んでいる。
血栓・止血疾患としては、血友病、von Willebrand病、先天性凝固・抗凝固因子欠損症、先天性血小板減少症・機能異常症、ITP、血管性紫斑病などが取り上げられている。
2011年に第1版が出ているが、その改訂版である。
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止血・血栓ハンドブック
論文紹介です。
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「止血・血栓ハンドブック」
著者名: 鈴木重統、他。
出版会社名:西村書店, 2015.
<論文の要旨>
(序文より抜粋)
わが国が世界で有数の長寿国と認められてからすでに久しいが、止血と血栓に関する研究の成果もその一翼を担っていることは明らかであろう。
それとともに血液凝固、線溶、血小板を中心とする止血・血栓学がすっかり面目を改めたことも事実である。
かつて血栓症がわが国には珍しかった40年前、ドイツに留学し、かの地では術後の血栓症予防のためにヘパリンを術前・術中・術後に予防的にルチンに投与し第X因子の活性化を抑制しているという現場に驚きをうけたが、ヘパリンを投与しても予期に反して血栓症が惹起される症例があるという臨床の奥深さはもっと衝撃的であった。
疾患の発生機序の解明に次いですぐ問題となるのは治療法であるが、「血栓・止血」ないし「凝固・線溶」は、究極のところ「止血すると同時に血液の流動性を保つ」という「生体防御」の範疇に入ることは明らかである。当然のことながらこの過程において血小板の果たす役割は大である。
このような凝固・線溶・血小板の研究および臨床に携わる70名に余るエキスパートがそれぞれの立場でわかりやすく条理を尽くして執筆していただいたことは感謝にたえないが、特に畏敬するドイツのB.Potzsch教授(ボン大学免疫・輸血部門)からも玉稿をいただいたことに改めてお礼を申し上げたい。
こうした流れのなかで妊娠・分娩・産褥のいわゆる「リプロダクション」は2つの生命をあずかるという意味でカテゴリーを異にするものであろうという編者の信念から、新たに章を興した。
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ITPに合併した後天性von Willebrand症候群
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「ITPに合併した抗VWF抗体によるvon Willebrand症候群」
著者名:井原章裕、他。
雑誌名:臨床血液 56: 901-904, 2015.
<論文の要旨>
後天性von Willebrand syndrome (以下AVWS)は、先天性VWD類似の稀な疾患です。
著者らは、血小板数3.2万/μlで著明な出血傾向を示した特発性血小板減少紫斑症(ITP)に合併したAVWSの1例を報告しています。
症例は76歳女性。
脳梗塞後遺症経過中ITPを発症1年後、全身の著明な出血傾向を示しました。
第VII因子活性22%、VWF:RCo<6%、VWF:Ag 276%、第XIII因子活性42%、VWF large mulitimer(±)。
ELISA法でIgG1とIgG4の抗VWF抗体を検出、ITPに合併したAVWSと診断し、プレドニゾロン20mg/日開始後VWFは正常化、血小板数は増加しませんでしたが出血傾向は消失しました。
AVWSはリンパ増殖性疾患、骨髄増殖性疾患、心血管疾患に多いといわれ、ITPでの報告はありません。
本症例は、原因不明の第XIII因子欠乏症も合併した稀な例です。
SLEに合併したAVWSは世界で9例しか報告がないです。
本症例は、SLEの診断基準に入らずITPと診断しました。
ITPに合併したAVWSは初めての報告です。
本症例はVWF活性が上昇後出血傾向は消失し、第XIII因子に変化はありませんでした。
第XIII因子活性は、25%程度あれば出血はないといわれており本症例の出血傾向は第XIII因子低下によるものではないと考えられます。
本例は病歴から早い時期に抗VWF抗体が出現したと考えられ、このような症例で軽い出血傾向の場合見逃されると考えられ、積極的止血検査が必要です。
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FIXa/FX認識バイスぺシフィック抗体ACE910と血友病A治療
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「FIXa/FX認識バイスぺシフィック抗体による新規血友病A治療」
著者名:嶋緑倫
雑誌名:臨床血液 56: 623-631, 2015.
<論文の要旨>
血友病Aの未解決の課題は、頻回の経静脈投与、インヒビター陽性例の治療と高額な医療費です。
これらの課題を解決するためにヒト型バイスぺシフィック抗体(ACE910)が開発されました。
本抗体は一方がFIXa、もう一方がFXを認識して両因子を反応しやすい位置関係に維持することによりFVIII代替作用を有します。
サル後天性血友病AモデルにおいてACE910は進行中の出血のみならず自然関節出血に対しても有効でした。
ACE910の薬物動態、薬効および安全性を明らかにするために健常人計64名、血友病A患者18名を対象に第1相臨床試験が我が国で実施されました。
半減期は約30日で、ACE910に関連する重篤な有害事象は見られませんでした。
さらに、ACE910の週1回の皮下投与により出血回数はインヒビターの有無にかかわらず激減しました。
ACE910は長時間作用するために1〜2週毎の皮下投与で、インヒビターの有無に関係なく出血を予防できる長所があるため、血友病患者のQOLが著明に向上する可能性があります。
バイスぺシフィック抗体、ACE910は皮下投与が可能で、半減期が30日と従来のFVIII製剤に比して著明に長く、1〜2週毎の皮下投与で関節内出血が予防できます。
しかもインヒビターの存在下でも同様の効果を呈し、インヒビター出現の危険性もありません。
また、投与の便宜性も高く、出血回数の減少のみならず患者のQOLを各段に向上することが期待されます。
したがって、本製剤は診断後早期から第一選択の治療製剤として使用することが期待されます。
現時点で製剤に起因する有害事象はみられていませんが、抗ACE910抗体が発生する可能性は他の抗体製剤と同様に否定できません。
しかしながら、抗ACE910抗体が発生した場合でも血液凝固機能に影響は与えず、従来のFVIII製剤による補充療法は有効です。
今後の大規模かつ長期間の臨床試験の成績が待たれます。
なお、バイスぺシフィック抗体はカニクイザルを用いた後天性血友病Aの出血モデルで有効性が確認されたことからも後天性血友病Aの新たな治療製剤としての臨床応用も期待されます。
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骨髄腫に対するレナリドマイドと後天性血友病A
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「MMに対するlenalidomide投与中に発症した後天性血友病A」
著者名:佐分利益穂、他。
雑誌名:臨床血液 56: 496-500, 2015.
<論文の要旨>
症例は67歳、女性。2009年に貧血、骨病変を認め、症候性多発性骨髄腫IgA-λと診断。Bortezomib, DEX療法後に再発し、2012年にlenalidomide (Len), DEX, CPAで治療を行いました。
10日目に血清クレアチニンが上昇し、Lenを休薬しましたが、APTTが治療開始前の33.7秒から89.5秒に延長していました。
Mixing test でinhibitor patternを示し、FVIII 2%、FVIII inhibitor(INH) 4.85 BU/mlであり後天性血友病Aと診断。
PSLを投与し、INH 1.09BU/mlまで低下しました。
Lenの休薬で血清Crは改善し、Lenの投与を再開したが、INHが再上昇しました。
Lenを中止し、PSL増量、CPA併用でINHは4ヶ月後に消失しました。
Len開始と共にINHが出現し、再投与でINHが上昇した経過からLenによる薬剤性後天性血友病A(AHA)が疑われました。
AHAは重篤な出血を来す自己免疫疾患であり、これまでLen投与と関連が疑われた報告例はなく、稀ながら注意すべき病態です。
薬剤性に関しては、penicillinなどの抗菌薬、phenytoinなどの抗痙攣薬、fludarabine、interferon αなどの報告があります。
これまでLenとの関連が疑われた報告はなく、本例ではLen投与前に正常であったAPTTが投与開始10日後に延長し、PSL投与でINHは低下しましたが、Len再投与でINHは再上昇しました。
免疫抑制療法を中止後、MMが無治療で病勢が進行した後にINHが上昇しなかった経過からも、MMがAHAの原因となった可能性は低く、また他に原因となりうる薬剤の開始や他の悪性腫瘍の合併はなく、Lenによる薬剤起因性のAHAである可能性が高いと考えられました。
実際に、Lenに伴う自己免疫疾患の報告は、血小板減少性紫斑病、心筋炎、バセドウ病、自己免疫性溶血性貧血、寒冷凝集素症など多岐に渡り、Len開始後1ヶ月以内の発症が多いとされています。
AHAは致死的出血を来す病態であり、Len内服中、特に内服開始後1ヶ月以内は慎重に凝固系のスクリーニングを行い、また原因不明の出血症状を来した際にはAHAの可能性も考慮する必要があります。
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後天性血友病AとFVIII&低用量rFVIIa併用療法
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「FVIII&低用量rFVIIa併用療法は後天性血友病A患者における止血を改善する」
著者名:Zhang XH, et al.
雑誌名:Thromb Res 135: 835-40, 2015.
<論文の要旨>
後天性血友病A(AHA)は、潜在的に重度の出血につながり、死亡率が高い自己免疫性疾患です。
この共同研究は、AHA患者におけるFVIIIおよび低用量rFVIIaの併用療法の効果を評価することを目的に行われました。
本研究では、FVIII /低用量rFVIIa併用療法(初回用量:25-55μg/ kg)を、FVIII/PCC併用療法や低用量rFVIIa単独療法と後方視的に比較しました。
副作用や再発性出血も調査しました。
これら3群の治療結果を比較するために、粗比較や条件付きロジスティック回帰解析を行いました。
5センターからの連続した患者56例の最初の出血エピソードを分析した結果、37出血エピソード(66.1%)が重症と診断されました。
特記すべきは、低用量rFVIIa単独療法またはFVIII / PCC療法に比較して、FVIII /低用量rFVIIa併用療法で有意に出血のコントロール率が高かったことです(それぞれ、58.3%、41.7%、95.0%)。
出血エピソード合計236回の分析の結果、止血治療の有効性と早期治療開始との間に明らかな正相関がみられたました。
血栓症などの治療関連有害事象は報告されませんでした。
以上、FVIIIおよび低用量rFVIIa併用療法は、理想的な止血効果を発揮して、AHA患者のための実現可能かつ安全な治療プロトコールとして推進されて良いものと考えられました。
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非重症血友病A患者インヒビターとインヒビター除去治療
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「非重症血友病A患者におけるインヒビター/転帰とインヒビター除去治療戦略」
著者名:van Velzen AS, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 114: 46-55, 2015.
<論文の要旨>
非重症の血友病A(HA)患者では、インヒビターを発症すると、出血症状は劇的に悪化します。
これらの患者においてインヒビター除去のための至適治療についてはほとんどデータがありません。
著者らは、インヒビター保有非重症HA患者におけるインヒビター除去治療について検討しました。
欧州およびオーストラリアで治療された非重症 HA患者2709名(第VIII因子2-40 IU / DL)のうち、101名ではインヒビターを保有していました(平均中央値37歳、インヒビターピーク力価中央値77BU/ml)。
大多数の患者(71%; 72/101)において、インヒビターは消失していました(自発消失70%、51/73; 除去治療の後75%、21/28)。
インヒビター除去治療戦略は多彩であり、免疫寛容誘導も免疫抑制も行われていました。
永続的な成功(インヒビター消失後に第VIII因子製剤を再投与してもインヒビターが出現しない)は、64%(30/47名)で達成されました。
高力価のインヒビター保有患者では、インヒビター除去治療をすることで初めて永続的なインヒビター消失がみられました。
以上、非重症HA患者では多くの場合インヒビターが自然に消失しますが、再投与すると35%(25/72)の症例で再度インヒビターが出現するため、これらの患者におけるインヒビター消失は、永続的な消失を意味している訳ではありません。
症例によっては、インヒビター除去治療が必要です。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31
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血友病におけるインヒビター発症と濃縮製剤の種類
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「血友病におけるインヒビター発症と濃縮製剤の種類:欧州血友病安全性監視(EUHASS)プロジェクト4年間の結果」
著者名:Fischer K, et al.
雑誌名:Thromb Haemost 113: 968-975, 2015.
<論文の要旨>
インヒビター発症は、血友病治療の最も深刻な副作用です。
使用する製剤によってインヒビター発症率が異なるかどうかは、臨床的に関心のあるところです。
著者らは、重症血友病AとBにおいて、凝固因子製剤によってインヒビター発症率が異なっているかどうか検討しました。
製剤ごとの有害事象全体をモニターするために、欧州血友病安全性監視(EUHASS)が立ち上げられました。
2008年10月から、インヒビターについては少なくとも年4回報告されました。
治療をうけている患者数は毎年報告され、インヒビターの発症なく50回の投与(未治療患者(PUPs))を完了した患者数を特定しました。
68センターにおいて、2008年10月1日から2012年12月31日までのデータが分析されました。
インヒビターは、重症血友病A PUPsの 108/417(26%)で発症して、重症血友病B PUPsの5/72(7%)で発症しました。
既治療患者(PTPs)に関しては、重症血友病Aでは17,667治療・年で26例のインヒビター発症がみられ、重症血友病Bでは1/2,836のインヒビター発症がみられました。
血漿由来製剤と遺伝子組換え製剤間の差違、各種遺伝子組換え製剤間の差違も検討されました。
結論としては、PUPsとPTPsでインヒビター発症率を確認したところ、製剤の種類による違いは観察されませんでした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24
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非重症血友病Aにおけるインヒビター発生率と死亡率
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「非重症血友病Aにおけるインヒビター発生率と死亡率」
著者名:Eckhardt CL, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 13: 1217-1225, 2015.
<論文の要旨>
非重症の血友病A(HA)患者の平均余命は、非血友病者の平均寿命と同等です。
しかし、インヒビターを発症した場合の、死亡率や血友病関連死因に対する影響に関するデータは不足しています。
非重症HA患者にインヒビターを発症すると、出血性合併症が重症となるために、臨床転帰は劇的に変化します。
著者らは、非重症HA患者におけるインヒビター発症と死亡率との関連を評価しました。
臨床データは、ヨーロッパとオーストラリアの34医療機関で1980年から2011年の間に治療を受けた非重症HA患者2709名(インヒビター保有者107名)から収集しました。
インヒビター保有の有無で患者死亡率を比較しました。
その結果、追跡期間64,200人・年の間に、148人の患者が死亡しました(死亡率:2.30/1000人・年、中央値年齢:64歳)。
62名(42%)の死因は血友病関連でした。
インヒビター保有患者16名が、中央値年齢71歳で死亡しました。
10名では死亡時にインヒビターが存在していました(7例は重症出血が死因でした)。
インヒビター保有患者での全死因の死亡率は、非保有患者と比較して5倍以上でした。
以上、非重症血友病におけるインヒビター発症は、死亡率の増加と関連していました。
また、非重症血友病において血友病関連の死亡率が高いことは、非重症血友病でも決して軽症と言う訳ではなく、これらの患者でも注意深い経過観察が必要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43
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免疫寛容導入療法の国際研究およびインヒビター保有血友病A
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
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「免疫寛容導入療法の国際研究およびインヒビター保有血友病Aの日本患者におけるフォローアップ研究」
著者名:Yoshioka A, et al.
雑誌名:Int J Hematol 101: 362-368, 2015.
<論文の要旨>
インヒビター保有血友病A患者における免疫寛容導入療法(I-ITI)の国際研究は、115名の被験者の合計のうち、16名の日本人患者が含まれていました。
これらの日本人患者の結果は、I-ITI臨床研究終了11例、I-ITI臨床研究継続中 3例、予防治療に寛容2例でした。
低用量群と高用量群との間には、成功率に有意差はみられませんでした(臨床試験I)。
続いて、同意が得られた14症例において日本の独立した追跡調査が行われました(臨床試験II)。
10例は、I-ITI研究終了時に臨床研究が終了していました。
これら10例のうち、7例の成功例のうち7例が追跡調査の終了時点でも臨床的成功状態を維持しており、部分的な成功状態だった1例は2回目の再発中に完全成功状態となり、失敗した1例はその後に部分的な成功例と診断されました。
I-ITI研究終了時に、臨床試験中であった4症例は、追跡調査研究終了時点で、3例は成功、1例は失敗と評価されました。
以上、追跡調査の終了時点で以下の結果となりました: ITI成功11例(78.6%)、部分的成功1例、失敗1例、再発1例。
このように、ITIの追跡調査は、インヒビターの長期予後を知るのに有用であった。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
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日本血栓止血学会/第3回教育セミナー(研修医対象)
日本血栓止血学会 第3回教育セミナー
URL: http://www2.convention.co.jp/jsth-eseminar/
<はじめよう 血栓止血学への第一歩>
第3回教育セミナーは次世代を担う医師として総合的なパフォーマンスを向上させると共に、血栓止血領域への興味を喚起し将来血栓止血学に関する研究や臨床を選択する人材の育成を目的としたセミナーです。
対象:初期・後期研修医
日時:2015年10月31日(土)〜11月1日(日)
1日目:12:55〜19:30
2日目:8:00〜14:40
会場:クロス・ウェーブ船橋
千葉県船橋市本町2-9-3 TEL:047-436-0111
受講料:10,000円(初期・後期研修医)
初期・後期研修医以外は20,000円
(参加決定後、事前にお振り込み頂きます)
申込先:オンラインでのお申込になります。
URL: http://www2.convention.co.jp/jsth-eseminar/
にアクセスの上、必要事項をご登録ください。
申込締切:8月15日(土)正午
*定員は50名となっております。申込締切後、学年等を考慮し参加者を決定いたします。
*宿泊費につきましては、主催者負担とさせていただきます。
*1日目 10月31日のプログラムの終了後、情報交換会を予定しております。
主催:一般社団法人 日本血栓止血学会
参考文献(リンク)
・「しみじみわかる血栓止血 vol.1 DIC・血液凝固検査編」
・「しみじみわかる血栓止血 vol.2 血栓症・抗血栓療法編」
・「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50
| 研究会・セミナー案内
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)スタッフ
金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)のスタッフです。
いつもお世話になりありがとうございます。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11
| その他
金沢大学第三内科同門会総会・開講記念会(全体写真)
金沢大学第三内科同門会総会・開講記念会が開催されました。
全体写真をアップさせていただきます。
平成27年6月21日(日)午後1時00分より(金沢東急ホテル)
・同門会総会:午後1時00分〜
・開講記念会:午後1時30分〜
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
| その他
血友病Aキャリアにおける出血症状
論文紹介です。
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「血友病Aキャリアにおける出血表現型の横断的研究」
著者名:Paroskie A, et al.
雑誌名:Br J Haematol 170: 223-228, 2015.
<論文の要旨>
血友病Aキャリヤーは、通常の止血を示すと歴史的には考えられてきました。
しかし、最近の報告では、第VIII因子活性(FVIII)が正常であるにもかかわらず、血友病Aキャリヤーは出血傾向をきたすとされています。
著者らは、血友病キャリヤーでは臨床的に意義のある出血が増えるという仮説を検証しました。
血友病Aキャリヤーと通常の女性と比較する横断的研究が行われました。
アンケート調査は、general bleeding questionnaire、condensed MCMDM-1VWD bleeding assessment tool、Pictorial Bleeding Assessment Chart (PBAC)で行われました。
臨床検査的評価は、血算、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノゲン、第VIII因子活性(FVIII:C)、von Willebrand因子抗原量、リストセチンコファクター活性、血小板凝集能、血液型(ABO)で行われました。
対象は、血友病Aキャリヤー44名と健常女性43名です。
臨床検査的評価では、唯一第VIII因子活性のみが統計的に有意差を示しました(82.5対134%、P < 0.001)。
全てのアンケート調査において、血友病Aキャリヤーでは有意に出血が多いことが示されました。
以上、健常女性と比較しますと、血友病Aキャリヤーは出血性症状が多いことが示されました。
血友病Aキャリヤーにおける出血表現型を十分に理解して、適切な管理を行うためには、更なる検討が必要と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26
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血友病治療と半減期の長い第VIII&IX因子製剤
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「血友病治療における半減期の長い第VIII因子製剤と第IX因子製剤の意義」
著者名:Mahdi AJ, et al.
雑誌名:Br J Haematol 169: 768-776, 2015.
<論文の要旨>
先天性血友病は、第VIIIまたは第IX因子製剤よる、頻回の輸注をしばしば必要とします。
効果的な輸注計画を確立するためには、頻回の輸注は不可欠でした。
これらの問題を解決するために、ポリエチレングリコール、Fc-neonatal IgG1、アルブミン融合製剤といった3つの主要な技術開発が行われ、各種の臨床開発段階にあります。
これまでの報告によると、上記の新しく開発された第VIII因子および第IX因子製剤の半減期は、標準的な遺伝子組換え製剤に比べて、それぞれ約1.5倍、5倍と延長しています。
これらの有効性と安全性に関する臨床研究の結果が、論文として発表され始めています。
ただし、これらの新しい製剤のモニタリング法と最適使用法は、まだ不明です。
血友病Bでは、第IX因子製剤を毎週1回による治療は、患者の予防治療レジメになるものと考えられます。
血友病Aでは、半減期の長い第VIII因子製剤であっても、毎週1回のみではほとんどの場合は十分な予防治療にはなりませんが、輸注頻度を減らすことが可能です。
現在進行中の臨床試験や実臨床経験の蓄積によって、これらの製剤の有用かつ費用対効果の良い投与法が考案されるようになるでしょう。
しかし、投与回数が少なくなって便利ではあっても、本来の治療目標すなわち出血や関節症を阻止するという目標が忘れられてはいけません。
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インヒビター保有血友病Bとリツキシマブ併用免疫寛容療法
論文紹介です。
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「インヒビター保有の重症血友病Bに対するリツキシマブを併用した免疫寛容療法」
著者名:Kobayashi R, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 26: 580-582, 2015.
<論文の要旨>
インヒビターの発症は、血友病患者における大きな問題の1つです。
血友病Aのインヒビター発症率は25-30%程度と言われているのに対して、血友病Bのインヒビター発症率は1-3%程度と、より低頻度です。
血友病B患者に対する免疫寛容誘導(ITI)については、わずかな症例報告しかありません。
著者らは、インヒビター保有の重症血友病Bに対するリツキシマブを併用した免疫寛容療法について報告してます。
患者は、生後9ヵ月に重症血友病Bと診断され、血漿由来第IX因子製剤(pd FIX)による定期補充療法を受けました。
19回の投与後に、第IX因子インヒビターが発症したために、補充療法は中止されました。
しかし、生後1年時に頭蓋内出血を発症したために、1回目のITIが行われましたが、残念なことにインヒビターの力価を低下できなかったために、このITIは2年後に中止されました。
pd FIXを用いた2回目のITIも失敗した。
14歳時に、リツキシマブを併用したITIが行われました。
患者は、リツキシマブ375mg/m2を週に1回、計4回投与されて、かつ毎日pd FIX 40u/kgの投与を受けました。
リツキシマブを併用したITI開始の4週後には第IX因子インヒビター活性は消失し、治療後1年間インヒビターは検出されませんでした。
本例では、リツキシマブ併用のITIは有効でした。
インヒビター保有の血友病Bに対して、リツキシマブ併用ITIは考慮すべき治療と考えられました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:02
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骨髄腫患者におけるM蛋白の止血・血液凝固検査への影響
論文紹介です。
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「骨髄腫患者におけるM蛋白の止血への影響」
著者名:Huang H, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 26: 555-559, 2015.
<論文の要旨>
多発性骨髄腫の患者ではしばしば止血異常が検出され、これらの止血異常の機序は検討すべき課題です。
著者らは、多発性骨髄腫のタイプ別または病期別に出血性素因や凝固障害を調べて、これらの状況の違いによって、パラプロテイン濃度がどのように影響するか検討しました。
2012年1月から2014年4月の間に新たに診断された多発性骨髄腫101名において、止血スクリーニング検査とM蛋白濃度を後方視的に解析されました。
その結果、出血性素因と、骨髄腫のタイプや国際ステージングシステム(ISS)による病期との間で有意差は見られませんでした。
しかし、多くの患者(77.7%)でトロンビン時間(TT)の延長が観察され、軽鎖濃度と正相関しました(p<0.01)。
プロトロンビン時間(PT)の延長は、軽鎖型と比較してIgA型およびIgG型の多発性骨髄腫でより明らかでした。
病期の進行とともに、PTは著明に延長しました。
Mタンパク濃度は、PTが正常の症例よりもPTが延長した症例において、有意に高濃度でした(p<0.01)。
多発性骨髄腫では、D-ダイマーの上昇もみられました。
フィブリノゲン値はM蛋白濃度と負相関しました。
しかし、APTTは、多発性骨髄腫のタイプ、病期、M蛋白濃度、軽鎖濃度との間に関連はありませんでした。
軽鎖型骨髄腫では他のタイプと比較してTT延長が高頻度にみられました。
M蛋白濃度は、PTに対して明らかに影響を与えていました。
PT延長は、IgA型およびIgG型骨髄腫でより高頻度でした。
ただし、凝血学的な止血異常があることと、臨床的な出血症状は関連がありませんでした。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:54
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インヒビター保有血友病Aとバイパス製剤予防投与
論文紹介です。
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「インヒビター保有血友病Aに対するバイパス製剤の予防投与」
著者名:Leissinger CA, et al.
雑誌名:Blood 126: 153-159, 2015.
<論文の要旨>
血友病患者においてインヒビターを発症すると、出血に対して標準的な凝固因子補充療法で治療することが困難になるため、インヒビター保有患者の治療対策は重要な課題です。
インヒビター保有患者は、出血コントロールが困難となり、合併症とくに関節症や身体障害のリスクが高くなります。
インヒビター保有血友病患者を対象とした3つの臨床試験では、バイパス製剤による予防治療は、関節出血やその他の部位の出血を減少させて、オンデマンド療法と比較して健康関連QOLを改善することを証明しました。
インヒビターを保有していない血友病患者では、関節内出血を繰り返す前に第VIII因子製剤または第IX因子製剤による予防治療を開始することは、関節症の進行を阻止することができます。
一方で、同じことがバイパス製剤についても言えるかどうかは、今後の検討課題です。
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血友病患者の骨強度と骨梁と骨皮質の微細構造
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「骨梁と骨皮質の微細構造の早期変化が血友病患者の骨強度を低下させる」
著者名:Lee A, et al.
雑誌名:Blood 125: 2160-2163, 2015.
<論文の要旨>
骨密度の低下は、男性血友病患者の加齢とともに大きな懸念材料となり、脆弱性骨折の罹患率を高めます。
高解像のperipheral quantitative computed tomography (HR-pQCT)を使用して、著者らは、血友病患者では年齢・性の一致した健常人と比較して、遠位橈骨と脛骨の両者において、骨梁や骨皮質の骨密度が低いことが体積骨塩量(BMD)の低下につながることを示しました。
血友病で見られる骨梁の骨密度の低下は、骨梁数の低下と分離の増加に起因していました。
骨皮質の骨密度低下は骨皮質が薄いことが原因でしたが、一方、皮質多孔性は維持されていました。
三次元HR-pQCT画像によるMicrofinite要素分析によると、血友病患者の微細構造の欠損は、遠位橈骨と脛骨の両者における生体力学的骨強度の低下につながっていました。
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インヒビターの血友病A死亡率に対する影響
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「インヒビターの血友病A死亡率に対する影響(米国)」
著者名:Walsh CE, et al.
雑誌名:Am J Hematol 90: 400-405, 2015.
<論文の要旨>
以前に報告されてきた死亡率に関する研究は、血友病集団に限定されていますが、第VIII因子インヒビターを保有していても死亡率が上昇しないことを示しています。
この後方視的研究では、インヒビター保有と死亡との関連を評価するために、重症血友病A男性患者 7,386名(13年間)のデータを収集して解析しました。
試験期間中に432名が死亡しましたが、そのうち48名がインヒビターを有していました。
死亡に最も強く関連した臨床的特徴は、出血回数、肝疾患、HIVまたはHCVの感染、インヒビターの保有でした。
多変量解析では、現在インヒビターを保有している患者では、インヒビターを保有しない患者と比較して、死亡のオッズは70%増加しました(P <0.01)。
インヒビター保有患者では、インヒビターを有していない患者と比較して出血性合併症に起因する死亡がはるかに多い結果でした(42対12%、P <0.0001)。
以上、重症血友病A患者において、インヒビターの存在は死亡のリスク上昇と関連していると考えられました。
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血友病患者における癌発症頻度と生存率
論文紹介です。
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「血友病患者1,054例における癌発症頻度と生存率」
著者名:Huang YC, et al.
雑誌名:Am J Hematol 90: E55-59, 2015.
<論文の要旨>
血友病患者(PWH)の平均余命が向上するに伴って、癌などの加齢と関連した疾患が問題となってきます。
著者らは、台湾におけるPWHの癌発症率と生存率を検討しました。
台湾の国民健康保険研究のデータベースから取得したPWH1,054例のデータ(1997〜2010年)を調査して、一般集団からの年齢および性別が一致した健常人10,540人と比較しました。
その結果、新たに癌の診断がなされたのは、PWH43名、一般集団の178名でした(RR 2.42)。
PWHと一般集団におけるがんの累積発症率は、それぞれ4.7%、1.9%でした。
PWHでは、肝細胞癌(HCC)が最多の癌でした(17例)。
HCCおよびHIV関連癌を除外した場合であっても、PWHでは依然として癌発症は高率でした(RR 1.66)。
ただし、肺、大腸・直腸、前立腺の各癌の発症率には有意差はみられませんでした。
PWHは一般集団と比較して、癌診断がより若年であり(45.1対57.2歳、P<0.001)、合併症はより少なかったです。
癌を発症したPWH19例では、試験期間中に死亡しましたが、これらの患者では出血関連死はありませんでした。
生存率は、PWHと一般集団との間で有意差はみられませんでした。
以上、PWHでは癌の累積発生率は高く、より若年で癌の診断がなされて合併症は少なかったですが、生存率には差はみられませんでした。
<リンク>
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血液内科学系統講義試験:汎血球現象、再生不良性貧血
平成27年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成27年7月14日 火曜日
問題紹介です。
問10. 78歳の男性。
5年前から貧血を指摘されていたが放置していた。1年前からあった易疲労感と動悸が激しくなったため近医を受診した。白血球減少と貧血を認めたため精査を目的に血液内科に紹介された。
血液所見:
赤血球290万/μl、Hb 8.6g/dl、Ht 30.4%、網赤血球4.0万/μl、白血球1,600/μl(好中球15%、リンパ球82%、単球3%)、血小板13.6万/μ1、LDH 220 IU/L (基準値120-214)、総ビリルビン 1.0 mg/dl。
骨髄塗抹標本をスライド2に示す<省略>。
1)本疾患の診断のために必要な検査はどれか。3つ選べ。
(1) FDG-PET
(2) 骨髄塗抹標本の鉄染色
(3) 骨髄細胞のG-banding
(4) 骨髄細胞のフローサイトメトリー
(5) 骨髄細胞の遺伝子変異検索
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
2)治療方針として適切なものはどれか。1つ選べ。
a. 無治療経過観察
b. 副腎皮質ステロイド薬
c. アザシチジン
d. 多剤併用化学療法
e. 造血幹細胞移植
問11. 再生不良性貧血に関する記載の中で誤りはどれか。3つ選べ。
(1) 先天性の中でもっとも多いのはファンコニー貧血である。
(2) 診断のためには骨髄生検によって細胞密度の低下を証明する必要がある。
(3) 骨髄異形成症候群に移行する例は稀である。
(4) 抗胸腺細胞グロブリンによって改善はするが治癒することはない。
(5) 肝炎関連再生不良性貧血の原因はC型肝炎ウイルスであることが多い。
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
(正答)
問10
1) d
2) c
問11 e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:48
| 医師国家試験・専門医試験対策
試験管中で溶血、リンパ腫
平成27年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成27年7月14日 火曜日
問題紹介です。
問7. 試験管の中で溶血が起こるのはどれか。3つ選べ。
(1) 低濃度酢酸液にPNH患者赤血球を浮遊させ、健常者の非働化血清を加えた。
(2) 健常者の血球を濃酢酸液に浮遊させた。
(3) 低濃度酢酸液にPNH患者赤血球を浮遊させ、健常者血清を加えた。
(4) 健常者の血球を0.1%食塩水に浮遊させた。
(5) 遺伝性球状赤血球症患者の赤血球を0.85%食塩水に浮遊させた。
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
問8. 次の文章の中で正しいものはどれか。3つ選べ。
(1) NK細胞リンパ腫は鼻腔原発が多い。
(2) びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の約40%は節外性である。
(3) 胃辺縁帯B細胞リンパ腫の多くはヘリコバクター・ピロリに関連して起こる。
(4) 濾胞性リンパ腫では骨髄浸潤を認めることはまれである。
(5) リンパ形質細胞リンパ腫では骨病変がしばしばみられる。
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
問9. 治療法で正しい結びつきはどれか。3つ選べ。
(1) ホジキンリンパ腫―抗CD30抗体
(2) 発作性夜間ヘモグロビン尿症―抗C5抗体
(3) 骨髄異形成症候群―抗CD33抗体
(4) 多発性骨髄腫―抗CD20抗体
(5) 濾胞性リンパ腫―90Y-イブリツモマブチウキセタン
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
(正答)
問7 d
問8 a
問9 b
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43
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血液疾患と副腎皮質ステロイド、マラリア多発地域、造血
平成27年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成27年7月14日 火曜日
問題紹介です。
問4. 副腎皮質ステロイドが初期治療に含まれない疾患はどれか。3つ選べ。
(1) 発作性夜間血色素尿症
(2) 自己免疫性溶血性貧血
(3) 特発性血小板減少性紫斑病
(4) ホジキンリンパ腫
(5) 骨髄異形成症候群
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
問5. マラリア多発地域で比較的頻度が高いのはどれか。
(1) 行軍ヘモグロビン尿症
(2) グルコース6リン酸デヒドロキナーゼ(G6PD)欠乏症
(3) サラセミア
(4) ピルビン酸キナーゼ欠乏症状
(5) 溶血性尿毒症症候群
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
問6. 造血に関する記載で正しいのはどれか。3つ選べ。
(1) 末梢血中に存在する造血幹細胞の割合は全白血球中の約1%である。
(2) ヒトiPS細胞から赤血球や血小板を作ることができる。
(3) ヒト造血幹細胞のマーカーとして用いられる抗原はCD34である。
(4) 造血幹細胞移植後末梢血に中に好中球が出現するのは移植後約2週間目である。
(5) 造血幹細胞は骨髄ニッチで活発に増殖を繰り返している。
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
(正答)
問4 c
問5 d
問6 d
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36
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血液内科学系統講義試験:貧血、LDH上昇
平成27年度 血液内科学系統講義試験
細胞移植学(血液内科)
平成27年7月14日 火曜日
問題紹介です。
問3. 63歳の女性。
家族から顔色不良を指摘され近医を受診したところ、貧血とLDHの上昇を指摘され、血液内科に紹介された。
検査所見:赤血球数210万/μl、Hb 8.6g/dl、Ht 23.1%、白血球数3,600/μl、血小板数9.8万/μl、網赤血球1.5万/μl、LDH 2,400 IU/l (基準値220-430) 、総ビリルビン 1.8 mg/dl、間接ビリルビン0.8 mg/dl。骨髄塗抹標本像をスライド1<省略>示す。
1)MCV(四捨五入)値を冪数(10X)表示の単位をつけて記載せよ。
2)本症例のプライマリーケアとして適切な処置はどれか。3つ選べ。
(1) 全身CTの撮像
(2) 末梢血フローサイトメトリー
(3) 血清ビタミンB12測定
(4) 上部消化管検索
(5) 血清葉酸値測定
a. (1)(2)(3) b. (1)(2)(5) c. (1)(4)(5) d. (2)(3)(4) e. (3)(4)(5)
(正答)
1)省略
2)e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:30
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