金沢大学第三内科/血液・移植グループ(6)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
今回は研究室紹介です。
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「血液・移植グループ」(6)
<Dao Thi Thanh An>
My work in lab is to study about regulatory T cell subsets in Cyclosporine dependent aplastic anemia patients and also in HSCT patients treated with post transplantation Cyclophosphamid.
<材木義隆>
1)再生不良性貧血患者(AA)に高率に検出される、6番染色体短腕のコピー数変化を伴わないヘテロ接合性の喪失(6pLOH)によって片親由来のHLA遺伝子群を欠失した血球の簡便な検出法としてデュプレックスリアルタイムPCR(2qPCR)を開発しました。
2qPCRを用いて新規AA患者における6pLOHの頻度を検討するとともに、骨髄バンクから提供していただいたAA患者のDNAを用いて6pLOHによるHLA欠失が移植予後に及ぼす影響について検討中です。
2)6pLOHによるHLA欠失血球をフローサイトメトリーで検出するために、抗HLA抗体陽性の患者末梢血を用いた抗HLAモノクローナル抗体の作成にも取り組んでいます。
3)免疫抑制療法の奏効する骨髄不全症患者の分子マーカーの探索を行っています。
4)ABO副不適合造血細胞移植後に産生される抗レシピエントA/B抗体による血管内皮障害の影響について病理学的な検討を行っています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:31
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金沢大学第三内科/血液・移植グループ(5)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「血液・移植グループ」(5)
<吉田晶代>
自分は金沢大学がん進展制御研究所腫瘍分子生物学講座にて研究させて頂いております。
同講座は、腫瘍抑制遺伝子として知られる Retinoblastoma1 (RB1) について多角的に研究しています。
多くの癌腫でRB1の発現ないし機能は抑制されています。
RB1 の古典的な機能として細胞周期制御が知られていますが近年、TP53 や RAS との関与も指摘され、また、代謝や炎症の制御を介した腫瘍の幹細胞性維持や治療薬剤抵抗性についての知見も得られています。
自分は当初、Rb1を欠失した腫瘍細胞における活性酸素の動態を研究し、その後、Rb1を欠失した腫瘍細胞において悪性進展に影響を及ぼす microRNA を探索しその制御を検証するというテーマのもと研究を進めております。
また、トランスクリプトーム等のマスデーターの解析もしております。
生物・薬理・工学・情報処理等の様々な分野の研究者の考えに触れながら勉強出来ることは本当に楽しいです。
このような機会を頂けましたことに心より深く感謝申し上げます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:28
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金沢大学第三内科/血液・移植グループ(4)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「血液・移植グループ」(4)
【Luis Espinoza】
As a senior researcher in the lab, I advise graduate students about experiments design for their corresponding projects. In addition I have my own projects as described hereafter.
Current projects:
1. Using iPS cells to identify autoantigens involved in the pathogenesis of aplastic anemia. In this project I will use iPS cells derived from patients with aplastic anemia to generate hematopoietic cells suitable reconstitute the immune system of immunodefficient mice with the purpose of identify potential antigens that may be targeted by immune cells of patients with aplastic anemia.
2. Identification of Non-HLA factors that influence the clinical outcomes of patients receiving hematopoietic stem cells transplantation for hematological malignancies. Using DNA samples from patients transplanted through the Japan Marrow Donor Program and taking advantage of the TaqMan genotyping technique, I look for genetic variants on genes involved in the immune response, as well on cell metabolism and their influences on transplant outcomes. Current gene targets are CISH, CD53, NLRP3, IDH1 and others.
3. Identification of new pharmacological agents that may useful for the treatment of refractory leukemia. By using a panel of 25 leukemia cell lines and primary leukemia cells derived from patients, I am investigating the therapeutic potential of novel agents (preferentially non cytotoxic drugs) against refractory leukemias. These studies have allowed to identify some agents with attractive potential such as benfotiamine, Gnetin C, thymoquinone and others.
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23
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金沢大学第三内科/血液・移植グループ(3)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「血液・移植グループ」(3)
<高松博幸>
ASO-PCR法と比べてさらに高感度である次世代シークエンサー(NGS)法による微小残存病変 (MRD)の有無が多発性骨髄腫の予後に大きく関わることと、自家移植後の地固め・維持療法により長期無増悪生存が可能であること(図1A & B)を報告しました(2014年米国血液学会)。
その結果に基づいてJSCT-MM14臨床研究、下総MM-01 VCDスタディという全国規模の臨床研究に参加しています。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16
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金沢大学第三内科/血液・移植グループ(2)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「血液・移植グループ」(2)
病棟の様子は、移植後早期にシクロフォスファミドを投与するHLA半合致移植などリスクの高い症例に対する造血幹細胞移植が増加し、高橋、鎧高、中川の同期の後期研修医3人と丸山裕之、松浦が中心となって重症例が多くを占める日々の診療を支えてくれました。
本年度は新たに12の臨床試験を申請し、積極的に臨床研究にも取り組んでいます。
実験室の様子は、新たに研究期間に入った丸山佳奈を含め、吉田、材木の3名がリサーチ漬けの毎日を過ごしています。
ベトナムからの留学生はDao Thi Thanh AnとNguyen Hoang Vietの2人になりました。
このほか、アメリカのNational Institutes of Health (NIH)に留学していたLuis Espinozaは大学に戻り7月に博士研究員として赴任しましたが、10月からは日本学術振興会特別研究員に採用され外国人研究者として後進の指導とともに研究に励んでいます。
7月から10月までの4ヶ月間フィレンツェ大学からLucia Gargiuloが骨髄不全症の研究のために外国人研究者として短期留学に訪れたこともあり、実験室は例年以上に国際色豊かなものでした。
それでは続いて、研究内容と進捗は担当者それぞれから説明してもらった内容を紹介します。
誤訳があるといけませんので、英文はそのまま転記しています。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11
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金沢大学第三内科/血液・移植グループ(1)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「血液・移植グループ」(1) 文責:近藤恭夫
まずは嬉しい事からご報告します。
本年度、米山聖子(よねやませいこ)、高橋稚奈(たかはしわかな)、東郷泰平(とうごうたいへい)の3名が新たに研究室のメンバーに加わってくれました。
5年目の米山は卒業後黒部市民病院で山内博正先生、高松秀行先生の指導のもと研鑽を積んでいます。
高橋は3年目の後期研修医として病棟を支えてくれました。
東郷は内科専門コース(血液内科)の1年目で、7月以降JCHO金沢病院で研修に臨んでいます。
本年度人生最良の日を迎えたメンバーもあります。
9月に材木が素敵な伴侶を得ています。
7月には丸山と本宮が結婚し研究室内にビックカップルが誕生しました。
本年度大学所属の血液・移植グループスタッフは、中尾教授、大竹教授、教官6名(山崎、近藤、石山、高松、大畑、青木)、医員4名(杉森、松浦、高橋、鎧高)、大学院生5名(吉田、丸山裕之、丸山(旧姓本宮)佳奈、材木、中川)でした。
山崎は昨年度愛知医科大学医学部血液内科主任教授にご就任された高見昭良先生の後任として輸血部長に就任し、活躍の場を医局内から病院内に広げて敏腕を振るっています。
7月から外来医長を務めている石山は3年ぶりに都立大塚病院から大学に戻り研究室内に新しい風を吹き込んでくれました。
高松は初期研修医の教育を担当すると伴に、骨髄腫領域で精力的に研究を行って全国規模の臨床研究でも活躍しています。
大畑はBSL係として5年生の教育を担当し、白血病、造血幹細胞移植の分野で日本成人白血病研究グループ(JALSG)、日本細胞移植研究会(JSCT)との臨床研究推進を担当しています。
本年度から採用になった青木は6年生のクリニカルクラークシップを担当し、新入医局員の勧誘でも頑張ってくれました。
本年度から医局長を拝命した近藤は研究室への貢献度が低く来年度への課題です。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:03
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一勤務医として医局への貢献を考えてみる(インデックス)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
「一勤務医として医局への貢献を考えてみる」(インデックス)
1)同門会総会
2)血液内科手技
3)臨床から研究へ
4)卒後10年以上
5)専門医
6)標準的療法ない
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45
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一勤務医として医局への貢献を考えてみる(6)標準的療法ない
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「一勤務医として医局への貢献を考えてみる」(6)標準的療法がない
Clinical trialがいつもあるとは限りません。
ガイドラインには同種移植やBSCが同列に記載されていますが、それらは治療の目標とする意味合いが大きく違いますし、どれか一つを選択すればいいという類いのものではありません。
私は、標準的療法がなくなった後の治療をどうするかと考えることこそ専門医の腕の見せ所で、専門医の存在価値が問われ、やり甲斐のあるところではないかと思います。
人によって意見は異なることなのでこのことに必ずしもご賛同いただけるとは思っていませんが、やり甲斐を持つことが大事であることは理解していただけると思います。
幸い急性白血病は初回治療不応性となっても治癒を目指すことがまだ可能です。
当科では、他院から治療艇庫性の急性白血病患者を受け入れたときは、主治医にまず治癒を目指した治療計画を考え、カンファレンスで説明してもらうことにしています。
そしてスタッフ全員で具体的な日時をあげながら予定を立て、現実可能な治療計画かどうか意見を出し合い、例えば主治医が外来などで幹細胞採取が出来ない時は代役を立てるなどを相談します。
主治医の立てた治療計画をスタッフ全員で支えるようなイメージしていただけるとよいかと思います。
残念ながら、計画通りには進まず途中で断念することになることもありますし、計画通りにやれてももとの病気が再発してしまうこともあります。
しかし計画通り、あるいは苦労した末に退院までこぎ着けることもあるのです。
少ないながらも上手くいった例を経験した主治医は専門医としての大きな自信を持つことが出来るのではないかと思います。
今後は専門性を深く追求出来るようにすることも考えていきたいと思っています。
病院や対象となる疾患によって活躍の場は様々です。
診療以外に論文執筆や学会発表で自信を付ける人もいると思います。
今後も当科の特徴を活かして専門医として活躍できることを考えていきたいと思います。
うちではこうしているというご意見もあると思います。
もっと意味のある取り組みをされている先生方もおられることだと思います。
今述べたことは当たり前のことばかりで、たいしたことは何もなく、書いていて恥ずかしいばかりですが、医局に対して何が出来るのかということを改めて考えていただくきっかけになれば大変嬉しく思います。
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<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
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一勤務医として医局への貢献を考えてみる(5)専門医
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「一勤務医として医局への貢献を考えてみる」(5)専門医
それでは、専門医として活躍できるとはどういうことでしょう。
いろんなことが考えられると思います。
役職を与える、報酬をあげる、負担の公平さなどもとても重要な要素だと思いますが、そのことをあまりあまり述べると「巻頭言」にはふさわしくない内容になってしまうように思いますので、ここでは述べません。
同門会総会の懇親会で楽しくゆっくり語り合えるといいかと思います(笑)。
私は、当科での経験で専門医としての自信を持つ、または自信を高めることになれば、その人を活躍させることにつながるのではないかと考えます。
図を見てください。
National Comprehensive Cancer Network (NCCN)の急性骨髄性白血病の寛解導入療法後のガイドラインを示したものです。
我々は呼吸器であれ血液であれ、悪性腫瘍の治療を行うときには何らかのガイドラインに沿って治療を行います。
ガイドラインには標準療法が記載されているので、その中の一つを選ぶことになります。
しかしながら、図にあるように寛解導入療法後1〜2週間の時点で芽球がある程度存在しているときには(1)、clinical trialやbest supportive care(BSC)とあるように標準療法がすでに存在しないことがわかります。
また一旦低形成になった後寛解に入らなかった場合(2)も同様にその後の標準療法はありません。
若年成人の急性骨髄性白血病では、約20%の患者が寛解導入療法で寛解に入らず、(1)か(2)に該当することになります。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:21
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一勤務医として医局への貢献を考えてみる(4)卒後10年以上
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「一勤務医として医局への貢献を考えてみる」(4)卒後10年以上の中堅
最後に、卒後10年以上の中堅の医局員が専門医として活躍できるようにすることが、地味ではありますが医局への貢献になるのではないかと思います。
最近はなにかと初期研修医に対する教育や処遇に話題が集中している感があります。
しかし卒後10年以上20年まで年代の医師こそが、我が国の医療を支えている中心的な存在でありますし、医局においても最も活躍している年代の人たちです。
また初期研修医を直接指導する立場にあるのもこの年代層の人たちだと思います。
初期研修医から見れば、身近な目標であり、自分たちの将来像として映る存在であろうと思います。
したがって、この年代層の人たちが研修医の目にいかに映っているかは非常に重要なことです。
生き生きと輝いていると映れば、入局を考えてくれる研修医が現れるでしょう。
そうではないと映れば、その医局は敬遠されるのではないかと思います。
医局員が活躍することは同門会にとってもいいことだと思います。
この年代の人たちは、実は大学にはそれほど多くは所属していません。
当院のような一般病院に勤務しているのです。
したがって、この年代の人たちが活躍できるようにするというのは医局の役目というよりは、我々のような立場にいる者の役目なのです。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:11
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一勤務医として医局への貢献を考えてみる(3)臨床から研究へ
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「一勤務医として医局への貢献を考えてみる」(3)臨床から研究へ
次に、当院に派遣される卒後3年目から10年目ぐらいの若い3内の先生方が、当院でよい経験ができたと感じてくれることが、貢献につながるのではないかと思います。
当院のような一般病院に勤務する重要な目的の一つは、臨床の経験を積むことだと思います。
当科では年間120例ほどの新患の血液疾患患者が入院します。
当院で2年ほど臨床経験を積めば、血液専門医を取得するために必要なほとんどの血液疾患とその治療法を経験することが可能です。
多くの血液疾患を経験することはもちろん大事なことですが、さらに駆け出しの血液内科医として研究へのモチベーションが高まり、当院に在籍したことがその後の研究生活に少しでもプラスにつながれば、医局への貢献の一つになるのではないかと思います。
そういう思いで、研究活動に入る前の若い先生が国際学会へ参加が可能なように当科の研究研修費(主に治験から得られる費用)を充てることにしました。
当院でのデータを発表してもらえるなら勿論いいのですが、参加することで世界的な研究から刺激を受け、医学研究に対する興味が向上すればよいと思います。
2013年の米国血液学会には井美先生に参加してもらいました。
一度の海外出張で当科の研究研修費の大半を使用することになりますので、毎年とはなかなかいかないかもしれませんが、研究研修費が続く限りこの企画を継続したいと思っています。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:05
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一勤務医として医局への貢献を考えてみる(2)血液内科手技
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「一勤務医として医局への貢献を考えてみる」(2)血液内科の手技
近年内科医は、自らの手で針を刺す手技を敬遠する向きがありますが、私は、内科医は患者に苦痛を与えないためにも、穿刺の手技は究極に上達することが極めて重要なことだと思っています。
中心静脈カテーテルの留置は出血などのリスクが高く、医療事故の報道も散見されることから、麻酔科に依頼されている病院が多いのではないかと思います。
血液内科にとって、化学療法や造血幹細胞移植を行うためには中心静脈の留置は必要です。
誰かがやらなければなりません。
私は富山県中に着任したとき、それまでは麻酔科に依頼されることが多かった中心静脈カテーテルの留置を、麻酔科に依頼するにはあまりにも多くの症例がいるため、基本的には全例自科で行うことにしました。
当科では、内頚静脈と鎖骨下静脈からの中心静脈カテーテルの留置は全例手術室で、それにどれだけ忙しいときでも必ず血液内科のスタッフ2名以上で行うことにしています。
超音波装置と放射線透視を用いて、複数人で手順と安全を確認し、そしてお互いにスキルを高め合うようにするのです。
初期研修医にも、その他の穿刺の手技で段階的に難易度を上げ一定の技術を習得出来ていれば中心静脈の穿刺を許可しています。
私がうちのスタッフに感謝していることは、皆この趣旨をよく理解し、前述の原則を徹底してくれていることです。
初心者への指導もたいへん上手くなっています。
今後も事故のないように細心の注意を払い、中心静脈の穿刺を含めてさまざまな手技の技量を磨き、研修医に指導を行っていきたいと思います。
そのことが研修医の間で評判となり、一人でも多くの研修医が回ってきてくれて、血液内科の魅力を伝えることができれば医局への貢献につながるのではないかと思います。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
| その他
一勤務医として医局への貢献を考えてみる(1)同門会総会
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
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「一勤務医として医局への貢献を考えてみる」(1)同門会総会
富山県立中央病院 血液内科部長 奧村廣和
第三内科に入局し、今年で29年目になります。
入局した当初、お顔と名前がなかなか一致しないたくさんの先輩方に圧倒され、同門会総会は大変敷居の高い場でした。
金沢大学に教員として在籍していた頃は、研究室や医局の報告の準備がありましたので、毎年同門会総会の時期になると多少のプレシャーを感じていました。
しかし大学を離れてからは、後輩の活躍を知ることができること、そして懐かしい同門会の皆さんと懇親会でお話ができるため、同門会総会がとても楽しみに思えるようになりました。
若い医局員の方には、三内の先輩方とゆっくり話ができる貴重な機会ですので、是非6月の同門会総会に出席して、皆さんの名前を覚えてほしいと思います。
第三内科同門会がますます発展することを心から願っています。
話は変わりますが、一勤務医としての私が、医局への貢献として何ができ、何をしているかということを少し述べたいと思います。
私が勤務する富山県立中央病院では、毎年フルマッチすれば自治医出身者を合わせ最大15名の初期研修医を迎えます。
研修医に血液内科と呼吸器内科の魅力を伝え、一人でも多く第三内科に入局してもらうことができれば、医局への最大の貢献になるとでしょう。
しかしなかなか思うようにはならないのが現実です。
当院の内科は臓器別に分かれていて、研修医は初期研修プログラムに定められている内科必須の6ヶ月とそれに加えて各人の希望で内科を回りますが、2ヶ月を目安に1臓器を選択するため、内科のすべての診療科(当院では6臓器の診療科があります)を回るとは限りません。
まず重要なことは研修医が血液内科を選択してくることです(当院の呼吸器内科は第三内科ではありません)。
どうすれば血液内科を選択してくるのか、が重要です。
選択してくれなければ研修医と接点が持てず、血液内科の魅力を伝えることは容易ではありません。
抜本的な対策はなかなか見つかりませんが、最近徐々に手応えを感じ始めていることは、血液内科ではいろんな手技をさせてもらえるという評判が研修医の間で静かに立つようになってきたことです。
血液内科の手技といえば骨髄穿刺と骨髄生検、それにたまにある骨髄採取ぐらいだろうと思われるかもしれませんが、たとえば腰椎穿刺などは神経内科や脳外、または救急外来以外では血液内科で行うことが多いのではないかと思います。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:45
| その他
近況報告:中村医院/金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
近況紹介です。
「近況報告」 中村医院 院長 中村喜久(平成元年度入局)
平成18年11月に、当地で内科診療所を開設し、診療を始めてから、早くも8年が経ちました。
それまで、今はなき国立若松病院、県立中央病院、恵寿総合病院など、血液疾患の入院患者さんを診療させていただいていた頃と違い、外来の感冒症状、腹痛・下痢・嘔吐などの急性期感染症と、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの慢性疾患の診療、ワクチン接種・すこやか検診などの予防・公
衆衛生活動などをちまちまとさせていただいています。
かつて、能登島や舳倉島の診療所にいた頃と比べて、内科以外の疾病などは、近隣の専門の先生方にお願いできますし、いざというときの紹介先の病院が、救急車で道路一本すぐ搬送していただけます。
また、いろいろな講演会や勉強会なども、時に、メーカーさんのご厚意で多数開催されており、耳学問を仕入れたりすることもできています。
離島勤務と比べると、はるかに気持ちを楽に持って診療することができるように思います。
ただ、小さいながらも自分の城・アジトですので、うまく回していくための、人事・資金繰りという、勤務医の時とは違った問題に対処せねばなりません。
時にはみぞおちがしくしくして眠れなかったり、そっと枕に涙を落とすこともあります。
それでも何とか親子6人、人並みに飢えずに生活できておりますので、まわりの皆様のご支援に感謝しつつ、仕事を続けさせていただいています。
血液疾患の診療は、そのほとんどが過多月経に伴う女性の鉄欠乏性貧血です。
たまに、MCVが100を超えるような貧血を見ますがうきうきしながらMay Giemsaを染めても、HJ小体などはほとんど見られません。
1例だけ糖尿病患者さんで多発性骨髄腫を見つけましたが、病院勤務の時はそこそこ診療していた疾患
なのに、8年経ってようやく1例。
つくづく血液疾患は希少な病気の仲間なのだと思い知りました。
今後とも、よろしくお願いします。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:32
| その他
医師国家試験:紫斑
本年の医師国家試験の紹介です。
解説もつけたいと思います。
68歳の男性.
左下肢の紫斑を主訴に来院した.2週前から左下肢に紫斑が出現し徐々に拡大した.1週前から左下肢に疼痛も自覚するようになったため受診した.これまでに出血症状の既往はない.意識は清明.体温36.4℃.血圧154/88mmHg.腹部は平坦,軟で,圧痛や抵抗を認めない.
血液所見:赤血球210万,Hb 6.8g/dL,Ht 20%,白血球6,400(桿状核好中球6%,分葉核好中球54%,好酸球2%,単球6%,リンパ球32%),血小板30万,出血時間3分20秒(基準7分以下),PT 90%(基準80〜120),APTT 64.7秒(基準対照32.2),血漿フィブリノゲン256mg/dL(基準200〜400),血清FDP 4μg/mL(基準10以下).凝固因子検査の結果は第[因子活性6%(基準78〜165),第\因子活性92%(基準67〜152),von Willebrand因子活性は正常であった.左大腿から膝関節部内側の写真(註釈:紫斑、皮下出血)を別に示す.
最も考えられるのはどれか.
a 血友病A
b 血友病B
c 後天性血友病
d 播種性血管内凝固〈DIC〉
e 特発性血小板減少性紫斑病
<解説>
・
紫斑、これまでに出血症状の既往はない:出血性疾患の存在が疑われます。しかし、先天性の疾患は否定的です。
・
Hb 6.8g/dL:出血のため貧血が存在しています。
・
血小板30万:血小板数が低下することによる出血症状ではないことになります。
・
出血時間3分20秒:出血時間が正常であるために、血小板機能は正常です。
・
PT 90%:PTは延長していません。PTが延長する出血性疾患としてはビタミンK欠乏症が有名であるが、本症例では否定できる)
・
APTT 64.7秒:APTTは明らかに延長しています。重要なヒントになっています。
・
血清FDP 4μg/mL:FDPが上昇する疾患としては、播種性血管内凝固症候群(DIC)、深部静脈血栓症、肺塞栓が有名です。このうち出血性疾患はDICです。DICでは必ずFDPが上昇しますが、FDPが正常のためDICは否定して良いです。
・
第VIII因子活性6%:著減しています。APTTが延長している理由は、第VIII因子活性が低下しているためと考えられます。
・
第IX因子活性92%:血友病Bは否定できます。
・v
on Willebrand因子活性は正常:von Willebrand病は否定できます。
出血症状をきたす原因としては、以下があります。
1)血小板数の低下
2)血小板機能の低下
3)凝固異常
4)高度の線溶活性化
5)血管壁の脆弱性の存在
本症例では、血小板数は正常で、血小板機能も正常(出血時間正常のため)、高度の線溶活性化もありません(FDP正常のため)。血管壁の脆弱性の存在も根拠がないです。
APTTの明らかな延長と、第VIII因子活性が低下しており、出血症状(紫斑、皮下種血)の原因になっています。
第VIII因子の低下する出血性疾患としては、血友病A、von Willebrand病、後天性血友病が知られています。
血友病A、von Willebrand病は先天性疾患、後天性血友病は後天性疾患です。
von Willebrand病(VWD)は、von Willebrand因子(VWF)が低下する疾患です。VWFは第VIII因子のキャリア蛋白であるためVWFが存在しないと第VIII因子も安定して血中に存在できません。そのため、VWDでは第VIII因子活子も低下します。ただし、出血する原因は、第VIII因子活性の低下ではなくVWFの低下に伴う血小板粘着能低下(血小板機能低下)のためです。
臨床症状は、血友病A は関節内出血や筋肉内出血、von Willebrand病は粘膜出血(鼻出血など)、後天性血友病は筋肉内出血や皮下出血、紫斑が特徴的です(後天性血友病ではなぜか関節内出血はまずありません)。
診断
後天性血友病
選択肢ごとの解説
a 「先天性」の第VIII因子欠損症です。関節内出血が有名です(筋肉内出血もあります)。
b 先天性の第IX因子欠損症です。臨床症状は、血友病Bと同じです。
c 後天性に第VIII因子に対する自己抗体が出現して、皮下出血、紫斑、筋肉内出血などの重症の出血症状をきたします。
d FDPが正常のため否定できます。また、血小板数やフィブリノゲンの低下所見もありません。
e 血小板数が正常のために否定できます。
APTTが延長して、第VIII因子活性が低下していた場合に、臨床症状として幼少時からの関節内出血がなければ、先天性の血友病ではなく
後天性血友病を疑います。
後天性血友病を疑った場合の次の検査は、
APTTのクロスミキシング試験と第VIII因子インヒビター力価(ベセズダ)単位です。APTTのクロスミ キシング試験では、上に凸のinhibitorパターンとなります。ただし、2時間incubationを必ず行う必要があります(ミキシング直後だと deficiencyパターンになって誤診することがあります)。
なお、出産時の大出血の原因としては、DIC(常位胎盤早期剥離、羊水塞栓など)は有名であるが、後天性血友病もありうることを理解しておきたいです。この疾患をしらないと救命できません。
後天性血友病という重要疾患を知っているかどうかがポイントです。この疾患をしっていれば解答は極めて容易ですが、この疾患をしらないと血友病Aと誤答する可能性があります。
後天性血友病が国家試験で出題されるのは初めてではないかと思われます。本疾患をしらないと診断できず救命にもつながらないので、今回の主題は極めて妥当かつ素直な選択肢で良問だと思います。
正解
c
疾 患 |
血友病A
|
後天性血友病 |
遺伝形式 |
伴性劣性(男性のみ) |
後天性(男女ともにあり) |
出血部位 |
関節内出血、筋肉内出血 |
皮下出血、紫斑、筋肉内出血(関節内出血はまずない) |
出血時間、PT、FDP |
正常 |
正常(ただし血腫の吸収に伴いFDPが上昇することあり) |
APTT/第VIII因子活性 |
延長/低下 |
延長/低下 |
第VIII因子インヒビター |
第VIII因子製剤の使用に伴いインヒビター「同種抗体」が出現することがある。 |
第VIII因子に対する「自己抗体」が出現する疾患。 |
治 療 |
第VIII因子製剤(ただし、インヒビター出現時にはバイパス製剤※を使用) |
1)止血治療:バイパス製剤※
2)免疫抑制療法:副腎皮質ステロイド、サイクロフォスフォマイドなど |
危険因子 |
— |
膠原病、悪性腫瘍、高齢、薬物、女性では妊娠・出産その他 |
バイパス製剤
※:遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(商品名:ノボセブン)、活性型プロトロンビン複合体製剤(商品名:ファイバ)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51
| 医師国家試験・専門医試験対策
医師国家試験:播種性血管内凝固症候群(DIC)
本年の医師国家試験の紹介です。
解説もつけたいと思います。
播種性血管内凝固〈DIC〉でみられるのはどれか.2つ選べ.
a PT延長
b APTT延長
c 血小板増加
d 赤血球増加
e 白血球減少
解説
a 播種性血管内凝固(症候群)(DIC)では、基礎疾患の存在下に全身性持続性の著しい凝固活性化をきたし、微小血栓が多発します。微小血栓の多発に伴い血小板や凝固因子といった止血因子が消費されて、いわゆる消費性凝固障害の病態になります。進行例では、ほとんどの凝固因子が低下するために、PTやAPTTが延長します。
b 同上。ただし、相当に進行したDICを除くと、APTTはあまり延長しないことが多いです。早期のDIC症例ではAPTTがむしろ短縮することもあります(活性型凝固因子の存在のため)。管理人は不適切な選択肢と思います。
c 進行したDICでは、血小板数は低下します。
d DICに伴い出血がみられる場合には、貧血が進行する場合があります。
e DICと白血球数は直接には関係ありません。ただし、造血器悪性腫瘍や敗血症に合併したDICでは、白血球数が低下することもあります(ただしDICのためではありません)。
<DICの臨床検査所見(旧厚生省DIC診断基準に含まれる項目)>
1.基礎疾患の存在.
2.出血症状の存在.
3.臓器症状の存在.
4.血小板数の低下
5.血中FDP(Dダイマー)の上昇
6.血中フィブリノゲンの低下
7.プロトロンビン時間(PT)の延長(進行例でのみAPTTの延長もみられることあり)
<その他の重要な検査所見>
1. アンチトロンビン (AT)の低下:消費性凝固障害の一環として、活性型凝固因子と1:1結合。
2. プラスミノゲンの低下、α2プラスミンインヒビター(α2PI)の低下。消費性凝固障害の一環として、二次線溶に伴い消費されます。特に、線溶亢進型DICの典型例では、α2PIは著減します。
3. トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、可溶性フィブリン(SF)の上昇。
4. プラスミン-α2PI複合体(PIC) の上昇。特に、線溶亢進型DICの典型例では、PICは著増します。
<DICの病型分類>
線溶抑制型DIC:敗血症などの重症感染症。臓器症状がみられやすいです。
線溶亢進型DIC:急性前骨髄球性白血病(APL)、大動脈瘤、巨大血管腫、前立腺癌など。出血症状がみられやすいです。
線溶均衡型DIC;固形癌など(ただし一部の癌は線溶亢進型DIC)。進行例を除くと、出血症状、臓器症状とも比較的みられにくいです。
正解
a, b
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:43
| 医師国家試験・専門医試験対策
医師国家試験:出血傾向
本年の医師国家試験の紹介です。
解説もつけたいと思います。
出血傾向と疾患の組合せで誤っているのはどれか.
a 下肢の点状出血・・・・・・特発性血小板減少性紫斑病
b 関節内出血・・・・・・血友病A
c 口腔内粘膜の紫斑・・・・・・再生不良性貧血
d 歯肉出血・・・・・・急性前骨髄球性白血病
e 鼻出血・・・・・・赤芽球癆
解説
a 特発性血小板減少性紫斑病では、点状出血(petechiae)が特徴的です。血小板に原因があるときの出血症状として、点状出血は重要所見です。
b 関節内出血といえば、血友病です。国試レベルであれば、1対1対応と言って良いでしょう。血友病A&Bともに、関節内出血、筋肉内出血などの深部出血が特徴です。ただし、後天性血友病(第VIII因子に対する自己抗体が出現)では、何故か関節内出血はみられず、皮下出血や筋肉内出血が特徴的です。
c 再生不良性貧血では、血小板数が低下して、皮膚や粘膜の点状出血、鼻出血、歯肉出血、紫斑などがみられます。
d 急性前骨髄球性白血病(APL)では、播種性血管内凝固症候群(DIC)が必発です。線溶亢進型DICのため、出血症状が顕著です。鼻出血、歯肉出血、紫斑などがみられます。
e 赤芽球癆では、赤血球数は減少しますが、白血球数と血小板数は正常範囲にあります。
正解
e
【疾患に特徴的な出血部位】
1)関節内出血:少なくとも医師国家試験で「関節内出血」のキーワードが出れば、血友病A&Bのみを考えれば良いでしょう。
2)筋肉内出血:血友病や、後天性血友病(第VIII因子インヒビター)でみられやすいです。
3)粘膜出血:具体的には、鼻出血、歯肉・口腔粘膜出血、消化管出血、血尿、女性性器出血などです。鼻出血は片側性の場合には耳鼻科疾患の可能性がありますが、両側性の場合には、出血傾向と考えます。「幼少時から鼻出血がみられやすい」場合は、von Willebrand病を強く疑います。
4)四肢末梢(特に下肢)の左右対照性紫斑:アレルギー性紫斑病(Schoenlein-Henoch紫斑病)に特徴的です。若干膨隆して触知可能なことが多いです。腹痛、関節痛、腎障害(IgA腎症)を伴うことがあります。
5)臍帯出血:先天性第XIII因子欠損症。
6)老人性紫斑:老人で前腕伸側、手背に赤紫色で境界明瞭な紫斑が出現します。しばしば部位を変えて出没します。ただし、全ての凝血学的検査は正常です。
7)タール便(黒色便):上部消化管(胃、十二指腸など)からの出血を意味します。
なお、特発性血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP)は、近年は免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia: ITP)ともいいます。
略称はどちらであっても同じです。
今後、後者で国試に出題される可能性もあります。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 22:34
| 医師国家試験・専門医試験対策
抗凝固療法とPOCT:ワルファリンと新規経口抗凝固薬(NOAC)
簡便なPOCTによるPT-INRの測定が行われていると思います。
大がかりな検査部施設がなくても、診察室レベルでも測定可能なために大変に便利です。
ただし、重要な注意点があります。
このPOCTによるPT-INRの測定はあくまでもワルファリンコントロール目的です。
新規経口抗凝固薬(NOAC)対応ではありません。
上図のように同じ患者さんの同じ検体であっても、検査部でのデータとPOCTでの測定結果は大きくことなっています(検査部での測定結果の方が正しいです)。
この論文は海外からのものでHemochronというPOCTで測定されています。
日本ではコアグチェックというPOCTが普及していると思いますが、ワルファリン対応であって、NOACには保証されていない点に注意が必要です。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:50
| 抗凝固療法
心房細動治療ガイドライン:ワルファリン、NOAC
上図は、心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版)です。
本記事では、紹介だけにとどめさせていただきます。
実際の治療にあたっては、かならずこのガイドラインそのものをご覧いただければと思います。
(この図のみでは、治療を行うことはできませんのでご了解お願いいたします)
注目されるのは、CHADS2スコアが1点であった場合です。
ワルファリンは考慮可に留まりますが、NOACであれば、推奨になっている点です。
やはり、NOACは出血の副作用が少ないために、CHADS2スコアが1点であっても処方するメリットの方が大きくなるということだと思います(ワルファリンは出血の副作用のデメリットが、効果のメリットと比較して優位にならないということだと思います)。
このガイドライン作成時には、リバーロキサバンやエドキサバンは、CHADS2スコアが1点のエビデンスがなかったために考慮可に留まっていますが、管理人はその他のNOACとあまり変わらないのではと理解しています。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51
| 抗凝固療法
心房細動に対する新規経口抗凝固薬とSFの変動
これは、心房細動の、大変に興味ある症例報告です。
左心耳内血栓が、新規経口抗凝固薬(NOAC)の一つであるアピキサバン(商品名:エリキュース)を使用することで完全に消失しています。
この臨床経過も興味深いのですが、管理人がさらに興味深いと思うのは、血栓止血関連マーカーの推移です。
まず、アピキサバンですので、PT、APTTはほとんど変動(延長)していません。
可溶性フィブリン(SF)は、一貫して低下しています。
さて、D-ダイマーですが、一旦上昇した後に低下しています。
SFと平行して動いているわけではない点が注目されます。
D-ダイマーは形成された血栓が分解されたときに血中濃度が上昇します。
つまり、SFは低下して凝固活性化に抑制がかかって、その後に遅れて血栓が溶解したことになります。
本症例は、D-ダイマーとSFが同じ動態を示していないことから、両マーカーの異なった意義を示した点でも貴重な症例報告と考えられます。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34
| 抗凝固療法
新規経口抗凝固薬(NOAC):効果と副作用のモニタリング
抗凝固療法のモニタリングは、効果と副作用(出血)の両面から考える必要があります。
一つのマーカーで効果も副作用もチェックできれば良いのですが、抗凝固療法の場合はそうはいきません。
ワルファリンのモニタリング法は、既に記事にさせていただきました。
効果の判断はD-ダイマーやF1+2が良いでしょう。出血の副作用のチェックPT-INRになるでしょう。
トロンボテスト(TT)はある意味ではPT-INR以上に優れたマーカーですが、最近はあまりモニタリングに使用されなくなってきているかも知れません。
新規経口抗凝固薬(NOAC)は、効果判定にはD-ダイマーは候補にあげたいところです。
D-ダイマーは、大変に安定感のあるマーカーです。
ただし、心房細動でのD-ダイマーの変動は鈍感なところもあります。
より鋭敏なマーカーである、可溶性フィブリン(SF)などのマーカーにも期待したいところです。
出血の副作用チェックには、PT、APTTを候補にあげたいと思います。
心房細動が動脈硬化を基盤にしている場合があるとしますと、同じく動脈硬化を基盤に動脈瘤を合併していることもあるかもしれません。動脈瘤は慢性DICの原因になりえます。
抗凝固療法を開始する前には、DICの合併の有無をチェックするために、一度はフィブリノゲンやFDP(D-ダイマー)をみておきたいところです。
DICの合併があれば、出血に対する注意がさらに大切になってきます。
いずれのマーカーも1回のみの測定ではなく、定期的にチェックしたいところです。
新規経口抗凝固薬のモニタリングでは、測定周期をどうするかはいろんな意見があると思いますが、3〜4ヶ月くらいの周期でしょうか(ワルファリンのように毎回は必要ないと思います)。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:52
| 抗凝固療法
新規経口抗凝固薬(NOAC):モニタリングの一法
新規経口抗凝固薬(NOAC)のモニタリングをどうするかは、今後の検討が必要ではないかと考えられます。
上図ではモニタリングの考え方の一法を示しています(あくまでも一つの考え方ということで紹介させていただきます)。
ダビガトランでは、PTよりもAPTTの方が延長しやすいために、APTTでモニタリングします。
リバーロキサバンでは、APTTよりもPTの方が延長しやすいために、PTでモニタリングします。
図ではカットオフ値でふるい分けがなされていますが、カットオフ値をどうするのかは用いる試薬によっても変わってきて悩ましい問題です。
アピキサバンは、PTもAPTTも延長しにくいために、これらのマーカーではなく、抗Xa活性でモニタリングしようというものです。
ただし、抗Xa活性の測定は我が国では保険収載もされていませんし、臨床の現場ではほとんど使用されていません。
エドキサバンは上図では、抗Xa活性での測定を提案しています。
ただし、管理人の経験では、エドキサバンはPTが延長しやすい印象をもっています(用いる試薬にもよります)。
いずれにしましても、新規経口抗凝固薬(NOAC)のモニタリングは今後の重要な検討課題ではないかと思います。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
| 抗凝固療法
新規経口抗凝固薬(NOAC)のモニタリング(PT、APTT)
新規経口抗凝固薬(NOAC)は、当初はワルファリンのような毎回のモニタリングは必要ないことをメリットにしていました。
しかし、NOACは抗凝固療法の治療薬であり出血の副作用を伴う可能性があるにもかかわらず、モニタリングが不要というのは大変に違和感があります。
PT、APTTで出血の副作用がでないかどうかのモニタリングが必要と考えられます。
いろんな考え方があるとは思いますが、やはりNOACの血中濃度がピークの時点であっても、PT、APTTの延長が想定範囲内であることを確認すべきでしょう(トラフでPT、APTTが想定以上に延長していたら問題外です)。
NOACの種類によって、PTが延長しやすい薬剤と、APTTが延長しやすい薬剤があります。
延長しやすい方のみのチェックで良いのでしょうか?
いいえ、そうではないでしょう。
APTTが延長しやすいNOACであったとしても、PTもチェックしたいです。ワルファリンとNOACの併用というとんでもないことが起きても、すぐに見抜くことができます(APTTでは見抜けないです)。
逆に、PTが延長しやすいNOACであったとしても、APTTもチェックしたいです。隠れvon Willebrand病(VWD)を見抜くことができるでしょう。
ただし、PT試薬、APTT試薬に何を用いるかによって、データはまるで変わってきます。
NOACと自施設のPT、APTTとの相性をしっておく必要があります。
<リンク>推薦書籍「
臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:15
| 抗凝固療法
ワルファリンとNOACの比較
心房細動に対して、抗凝固療法(ワルファリン、新規経口抗凝固薬)を行う場合に、それぞれにメリットとデメリットがあります。
新規経口抗凝固薬(NOAC)(ダビガトラン、リバーロキサバン、エドキサバン、アピキサバン)は、ワルファリンと比較して、効果は同等以上で、出血の副作用(特に頭蓋内出血)は有意に少ない点は大きなメリットです。
しかし、NOACにもワルファリンにもそれぞれ長所と短所があります。上図でまとめてみました。
上図の他にもあります。
ワルファリンは、怠薬がまれにあっても大きな問題はないですが(効果が激減することはないですが)、NOACは半減期が短く1回の怠薬がありますと全く効果が発揮されない日を生じてしまいます。
NOACは怠薬厳禁と言えます。
外来診療の場で、ワルファリンとNOACの選択肢を患者さんにお話する際に、上記の全てをお話するには物理的に難しいかもしれませんね。
管理人は、NOACはワルファリンと比較して効果は同等以上であるにもかかわらず出血の副作用は有意に少ないこと(NOACのメリット)、NOACは怠薬のダメージが大きいこと、NOACは高価であること(NOACのデメリット)は必ずお伝えするようにしています。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
| 抗凝固療法
心房細動とアスピリン、ワルファリン、新規経口抗凝固薬
上図は、心房細動に対して抗血栓療法を行った場合の脳卒中低減率を図にしたものです。
心房細動に対しては抗血小板療法ではなく抗凝固療法が有効であることが知られています。
ただし、全く無効という訳ではなく、プラセボよりは有効です(一番左の棒グラフ)。
アスピリン単独と、アスピリン&クロピドグレル(プラビックス)併用を比較したのが、左から2番目の棒グラフです。併用の方が良いようです。
しかし、アスピリン&クロピドグレルの併用療法と比較して、ワルファリン単独は遥かに有効です(左から3番目の棒グラフ)。
心房細動に対するワルファリン療法は、いわばゴールデンスタンダードと言えるでしょう。
このゴールデンスタンダードを、上図では赤線で示してみました。
これに対して、新規経口抗凝固薬(NOAC)(上図では、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン)は、ゴールデンスタンダードのワルファリンを上回る効果です。
NOACパワーは素晴らしいですね。
なお、それぞれ違った背景での臨床試験ですので、棒グラフを横同士で比較してはいけませんので、注意していただければと思います。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
| 抗凝固療法
心房細動への新規経口抗凝固薬(NOAC)と頭蓋内出血
心房細動に対して抗凝固療法を行った場合に、新規経口抗凝固薬(NOAC)がワルファリンと比較して圧倒的に優れているのは、出血の副作用、特に頭蓋内出血が少ないことを挙げることができるでしょう。
上図はダビガトランを例にとっていますが、その他のNOACでもほぼ同様の結果です。
抗凝固療法、抗血小板療法といった抗血栓療法の避けられない副作用として、出血があります。
出血の副作用は、抗血栓療法の宿命ともいえるでしょう。
抗血栓療法は止血機序を阻止しますので、当然の結果として出血しやすくなります。
ワルファリンと効果が同等以上であることを期待できるにもかかわらず、出血の副作用、特に最も致命的な出血である頭蓋内出血が少ないというのは、極めて大きなメリットといえると思います。
<リンク>推薦書籍「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
| 抗凝固療法
心房細動への新規経口抗凝固薬(NOAC)の効果
心房細動症例に対して、新規経口抗凝固薬(NOAC)を投与した場合、脳卒中/全身性塞栓症の発症抑制効果はワルファリンと比較して同等以上です。
上図ではNOACの中でも、ダビガトラン(プラザキサ)を例に結果を示しています。
その他のNOACに関しても、効果が同等以上であるという点に関しては共通していると思います。
後述するように、NOACは、多剤との相互作用がワルファリンと比較してはるかに少ないこと、モニタリングが必要であるにしても毎回は必要ないこと、食事制限がないことなど多くのメリットがあります。
ワルファリンよりも使用しやすい薬剤といえるでしょう。
使用しやすく効果がワルファリンと効果が同等以上ですので、新たに経口抗凝固療法を行う症例では、NOACを処方する機会が多くなるのではないかと推測されます。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:16
| 抗凝固療法
ワルファリンとNOACの相違点
新規経口抗凝固薬(NOAC)は、心房細動に起因する心原性脳梗塞の予防目的に使用することが可能になりました。
エドキサバン(リクシアナ)は、静脈血栓塞栓症(VTE)にも使用可能です(平成27年1月現在)。今後その他のNOACもVTEに使用可能となるものが出てくるでしょう。
従来は、経口抗凝固薬と言えば、ワルファリンのみでしたが、NOACの登場によって、経口抗凝固療法の選択肢が一気に増加しました。
NOACは、抗トロンビン作用を有したものと、抗Xa作用を有したものがありますが、いずれにしても活性型凝固因子を阻止します。
ワルファリンは、活性型凝固因子を阻止する作用は全くありませんが、基質としての凝固因子(半減期の短い順番に、VII、IX、X、II)を低下させます。
NOACは活性型凝固因子を抑制するのに対して、ワルファリンは基質としての凝固因子を抑制します。この点がNMOACとワルファリンの決定的な違いです。
究極の血栓症ともいえる播種性血管内凝固症候群(DIC)に対してワルファリンを投与しますと大出血をきたします。DICに対してワルファリンは禁忌です。
DICをコントロールするためには基質としての凝固因子を抑制しても全く無効どころか大出血を誘発するのみです。凝固因子の枯渇した劇症肝炎でもDICを発症することからも理解できます。
DICをコントロールするためには、ヘパリンのように活性型凝固因子を抑制する必要があります(このことで初めて凝固活性化にブレーキをかけることができます)。この点、NOACはDICに対して有効である可能性があります。
DICに対する効果が、ワルファリンとNOACではまるで正反対と考えられます。
このように、ワルファリンとNOACは異質の薬剤と言うことができるでしょう。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
| 抗凝固療法