金沢大学第三内科:血液・移植グループ(4)
金沢大学第三内科:血液・移植グループ(3)より続く。
「血液・移植グループ」(4) by 山崎宏人
5. 研究
今年もそれぞれから紹介してもらいます。
【細川晃平】
13q欠失を伴うMDS-UはPNH型血球が高率に検出され、免疫抑制療法によって改善する良性の骨髄不全である事を報告しました(第26回内科学会奨励賞)。
再生不良性貧血患者において、高頻度に検出される可溶性血漿HLAペプチドームを同定し、それらの一部が既知の腫瘍関連ペプチドに一致する事を報告しました(2013年日本血液学会、優秀ポスター賞)。
また、シクロスポリン単独療法で改善する早期の再生不良性貧血では骨髄中のNr4a familyの発現が亢進している事を報告しました(2013年米国血液学会)。
【吉田晶代】
現在、金沢大学がん進展制御研究所腫瘍分子生物学講座にてご指導頂いております。
講座の主な研究テーマは、腫瘍抑制遺伝子Rbが腫瘍細胞においてどのように腫瘍としての動態を制御しているかを明らかにすることです。
講座のメンバーはそれぞれ、Rbによる転写・脂質代謝・炭素代謝・炎症などの制御とそれによる腫瘍細胞の増殖や幹細胞性への影響などを様々な手法を用いて研究されております。
自分は、RbによるROS制御・Rbにより発現変動するmiRNAの探索とその意義・Rbに制御される発現変動遺伝子群の同定とその機能解析などを明らかにするというテーマを頂いて研究を始めました。
約1年経ちましたが、多少知識は増えてもまだ勉強せねばならぬ事は限りなく多く、研究的思考も身につかぬ自分に時折愕然とします。
けれど、講座の皆様が熱心に且つ楽しそうに研究されている姿勢に励まされ、自分ももっと精進しなければと思います。
基礎研究には診療・臨床研究とは違う大変さと楽しさがあると感じます。
基礎研究に触れる時期を持てたことは悦びでありますがその事のみに満足せず、皆様のご指導のもと結果を出せるよう引き続き努めます。
(続く)
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:36
| 血液内科
金沢大学第三内科:血液・移植グループ(3)
金沢大学第三内科:血液・移植グループ(2)より続く。
「血液・移植グループ」(3) by 山崎宏人
4. 教官の動向
近藤は今年度から病棟医長に就任し、大学診療にも求められるようになった「病院経営」の一翼を担っています。
小谷はBSL係として5年生の教育を担当しています。
彼が企画する病棟クリスマス・コンサートはすっかり定着し、病棟スタッフにとっても恒例行事の一つになりました。
リンク:
金沢大学附属病院第三内科(血液・呼吸器内科)病棟(1)
金沢大学附属病院第三内科(血液・呼吸器内科)病棟(2)
高松は6年生のクリニカルクラークシップを担当しました。
また、骨髄腫領域での活躍もめざましく、彼の研究テーマである「多発性骨髄腫の微小残存病変(MRD)」をテーマにした講演にも引っ張りだこです。
大畑は今年度から当科における日本成人白血病研究グループ(JALSG)の施設責任者(運営委員)となり、臨床研究の推進を担当しています。
(続く)
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:27
| 血液内科
金沢大学第三内科:血液・移植グループ(2)
金沢大学第三内科:血液・移植グループ(1)より続く。
「血液・移植グループ」(2) by 山崎宏人
3.学会の開催
平成25年3月7日〜9日の3日間、石川県立音楽堂、ANAクラウンプラザホテル金沢、ホテル日航金沢、金沢市アートホールの4会場を用いて、中尾教授が第35回日本造血細胞移植学会総会を主催されました。
医師はもちろん、造血幹細胞移植チームを構成する様々な職種のスタッフ約2,700名が一同に会し、盛会裏に終えることができました。
今回の総会では、中尾教授が掲げた『移植がもたらす「無限の喜び」‐奇跡の検証とこれから‐』のテーマに沿って、4つのシンポジウムと6つのワークショップが企画されました。
会長シンポジウム「SCT for bone marrow transplantation」では、韓国・アメリカ・イタリアから招聘した世界のオピニオンリーダーの先生方とともに、再生不良性貧血に対する骨髄移植の課題について検討されました。
最終日の夕刻には、市民公開講座を企画しました。
特別講演に前宮城県知事の浅野史郎氏をお迎えしたほか、移植に係わった皆さんと「無限の喜び」を分かち合うべく、実際に当院で骨髄移植を受けた患者さん、骨髄バンクドナー経験者、主治医、看護師等、様々な立場からのメッセージをいただきました。
通常の講演会とは切り口が異なった涙あり笑いありの講演会でした。
金沢での開催は第3回(服部絢一教授)、第11回(松田保教授)に続いて3回目でした。
本学は本邦の骨髄移植を牽引したパイオニア施設の一つであり、教室の名前が細胞移植学とあるのもこの伝統に由来するものと思います。
(続く)金沢大学第三内科:血液・移植グループ(3)へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18
| 血液内科
金沢大学第三内科:血液・移植グループ(1)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報原稿からです。
今回は研究室紹介です。
「血液・移植グループ」(1) by 山崎宏人
0. 速報
本号でご紹介するのはフライングですが、吉報ですのでお許し下さい。
この度、高見昭良先生が、平成26年3月1日付けで愛知医科大学医学部血液内科主任教授にご就任されることが決まりました。高見先生は平成3年に第三内科に御入局され、以来、ご専門の血液内科学・造血幹細胞移植領域において多くの研究業績をあげられたのみならず、平成19年からは輸血部長としても当院の診療に大変ご尽力されました。
教室内はもとより院内各部門からもお祝いの言葉がたくさん届いていますが、新天地でのますますのご活躍をお祈り申し上げます。
1.新メンバーの紹介
平成25年度の新メンバーは、虎の門病院での初期研修を終えた水牧裕希と初期研修1年目の田辺命(みこと)です。
水牧は中尾教授とも懇意の谷口修一先生のもとで、血液内科を中心とした後期研修を継続しています。
田辺は当院研修プログラム内科専門コース(血液内科)を選択しており、大学で3か月間の研修を終えたあと、7月からは恵寿総合病院での研修に臨んでいます。
2.人事異動
材木が研究期間に入りました。
岡山大学病理学(腫瘍病理)教室に出向し吉野正教授の薫陶を受けていた岩城が10月から金沢に戻っています。
10月には細川がアメリカのNational Institutes of Health (NIH) に留学しました。
渡米直前に病棟一番人気の山田さんと結婚。みんなに祝福されての門出となりました。
ちなみに、2月に井美が、7月に中川がそれぞれ素敵な伴侶を得ており、平成26年もまだまだ続きそうです。
(続く)金沢大学第三内科:血液・移植グループ(2)へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:07
| 血液内科
黒部市民病院:病院紹介(インデックス)
黒部市民病院:病院紹介(3)より続く。
「黒部市民病院」(インデックス) by 山内博正
1)所在地・年表・概要
2)臨床研修と内科
3)最近の話題
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:24
| その他
黒部市民病院:病院紹介(3)
黒部市民病院:病院紹介(2)より続く。
「黒部市民病院」(3) by 山内博正
最近の話題
1)平成26年7月に日本医療機能評価のVer7.0を受審するため、その準備と対策がすすめられていること。
2)平成15年に導入された電子カルテが、平成25年3月から富士通のものへ変換されました。
病院事務作業、管理面や他院との比較・連携などの面での利点は大きいのかもしれません。
しかし個人的には、疾患そのものと合併症、併発疾患などの治療経過やそれらの関連性の理解などが得難いカルテになりました。
今後、表面的診察や診療内容の希薄化が進まないかが心配です。
3)平成28年度に完成予定の外来棟などの病院増改築工事が始まったこと、など・・・。
終わりに、平成元年に黒部市民病院に勤務してから24年が経ちました。
長年に渡り、黒部で大過なく血液内科診療が続けられた事、当院が富山県内では多少なりとも血液疾患を専門に診療できる病院と認知される様になりましたのは、第3内科の多くの先生方にいただきましたご助力とご支援によるものと深く感謝しております。
今後とも何卒よろしくご指導、ご鞭撻とご協力を賜ります様にお願い申し上げます。
(続く)黒部市民病院:病院紹介(インデックス)へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:51
| その他
黒部市民病院:病院紹介(2)
黒部市民病院:病院紹介(1)より続く。
「黒部市民病院」(2) by 山内博正
臨床研修について
当院の初期研修医基幹型わくのマッチング率は常に100%であり、富山県内の病院の中では大変人気があります。
研修センタースタッフの苦労もさることながら、むしろ当院の研修医サポートシステムの影響が大きいようです。
まずは研修医宿舎が病院のすぐ隣にあります。
さらに当院と国際医療交流を行っている米国ジョージア州のマーサ大学医学部、中央ジョージア医療センターに、初期研修2年目に病院負担で1ヶ月間の医療見学に渡米させてもらえる事が大きいかと思います。
現在の初期研修医数は、1年目13名、2年目11名(富大または金大とのたすきがけ12名を含む)です。
内科について
常勤医は21名で、そのほとんどが金大1内出身者で占められています。
第3内科からは小生と高松秀行医師の2名のみであり、以前3内で担当していた呼吸器は富山大1内の医師が担当しています。
各種専門分野に分かれていますが、内科全体として毎週月曜日の朝には休日中の入院患者の受持ち割り振りを含めた連絡会が行われ、火曜日の夜には症例検討会が施行されています。
なお、当院の血液部門の患者様は65才以上の高齢者が大多数を占めています。
また、何らかの持病を治療中に血液疾患を併発してきて紹介いただくケースも目立ちます。
血液の病態の評価・管理以外に、個々のケースの主要臓器機能、合併症やADLを判断して、標準治療により近い成績が得られる様に、患者さんとご家族に納得いただける様に努めています。
個人的には、大学や県中枢の病院での治療対象になり難いこれらのケースを受け入れるのが、地域の要望に即した当院血液部門の役割と考えています。
高松先生もおそらく同じ様に考えて頑張ってくれているものと思っています。
(続く)黒部市民病院:病院紹介(3)へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49
| その他
黒部市民病院:病院紹介(1)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会原稿からです。
「黒部市民病院」(1) by 山内博正
以前にも機会をいただきましたが、今回再度当院の紹介をさせていただきます。
所在地
まず黒部市は、富山県東部(新潟県より)にあり、金沢からは高速道路(北陸道)で黒部インターまでは1時間、JRの特急(直通は、北越とはくたかのごく一部のみ)でもJR黒部までは1時間を要します。
血液・呼吸器内科(第3内科)の関連病院としては最北東端の病院になります。
年表
昭和21年に富山県農業会の桜井診療所(黒部市になる前は、下新川郡桜井町と言われていた)として開設され、その後、下新川厚生病院、黒部厚生病院、さらには昭和51年に黒部市民病院と改称されて現在に至っています。
概要
病床数は414床(一般405、結核5、感染4)で、常勤医数は67名です。
富山県東部(黒部市、下新川郡、魚津市の黒部より)の公的中核病院として、一般診療科のほか2.5次地域救急センター、NICU、腎センター(透析)、検診センター(ドック)、へき地診療(巡回診療)なども担っています。
診療機器としてはPET・CT、MRI、リニアック、結石破砕装置、血液成分分離装置、無菌病室、高圧酸素治療室などがあり、地域災害機関としてのヘリポートも設置されています。
平成16年と22年(ver6)には日本医療機能評価認定病院の認定を、平成19年からは地域がん診療連携拠点病院の指定を受けています。
(続く)黒部市民病院:病院紹介(2)へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:33
| その他
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)平成24年度臨床講義
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会原稿からです。
平成24年度の臨床講義は医学科4年生を対象に春学期(6月)に中尾教授と朝倉准教授が担当しました。
講義内容は以下の通りです。
6月8日 「汎血球減少で発症した急性骨髄性白血病」中尾教授
6月15日 「慢性関節リウマチに対するMTX治療中に発症した濾胞性リンパ腫」中尾教授
6月22日 「肝機能障害・著しい肝腫大で発症したALアミロイドーシス」中尾教授
6月29日 「固形癌に合併した慢性DIC」朝倉准教授
この臨床講義の主役は学生達です。
学生自ら患者さんを診察し、病歴をまとめ、考察して講義の際にプレゼンテーションを行います。
症例提示後の質疑応答も発表した学生が主体で、自主性が重んじられています。
これまで実際に患者さんに接した事がなかった学生達にとっては、患者さんとのコミュニケーションの取り方など、学ぶべき事が多い実習となっています。
どのグループも患者さんの診察こそたどたどしかったものの、グループ内でしっかりと役割分担をして、十分な時間がない中で要領よくスライドをまとめあげる所には感心しました。
今回取り上げられた症例の多くは初期研修医が担当医となっており、丁寧に時間をかけて学生に指導していた姿が印象的でした。
ある熱心な学生は担当医を質問攻めにして、担当医が圧倒されていた一場面もありました。
最後に、学生の診察に快くご協力いただいた患者様にこの場を借りて深謝いたします。
(平成24年度臨床講義係 小谷岳春)
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:23
| その他
ASCO/2013に参加して:インデックス
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(3)から続く。
「ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して」(インデックス) by 米田太郎
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:46
| その他
臨床に直結する血栓止血学(電子書籍)
「臨床に直結する血栓止血学」の電子書籍もリリースされました。
臨床医、研修医、臨床検査技師、薬剤師、医療関係学生の皆様方にお勧めの一冊ではないかと思います。
リンク:臨床に直結する血栓止血学(アマゾン)
リンク:臨床に直結する血栓止血学(中外医学社)
リンク:臨床に直結する血栓止血学(電子書籍)
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18
| 研修医の広場
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(3)
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(2)から続く。
「ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して」(3) by 米田太郎
ASCOは毎年、シカゴで開催されており、会場はミシガン湖畔にある。
会場の横が湖畔のベランダのようになっており、広大なミシガン湖の水平線が望めた。
そんな環境で多くの講演ならびにポスター、ポスターセッションが繰り広げられた。
世界の第一線の先生方が慣れた感じで講演を進めていく様子を目の当たりにした。
演題も持たずにASCOに来ている自分がなんだか寂しい感じがした。
その思いは今も鮮明に胸の中に残っている。
例えは古いが「いつかはクラウン、いつかはASCO」である。
ASCO期間中、夕方は薬剤メーカーの日本人向けの肺癌関連の講演やワークショップがあった。
特にワークショップは刺激的であった。
シカゴに行って日本人だけのワークショップなんてと思いながらいざ参加してみると、同世代くらいの医師たちが、統計の話や臨床試験の話などで我こそはとディスカッションしていた。
その様子は「この人達は今後日本の肺癌次世代を担う人なんだなあ」と自分が参加しておきながら思ってしまい、まさに外野席からの観戦状態であった。
最終日は摩天楼の町シカゴの象徴である2展望台のうち「ジョンハンコックビル」を曽根先生と行った。
今回ASCOに出席させていただき、肺癌の知見を得ること以外に、今後の自分の目指すべき目標がイメージできたことは大きいお土産であった。
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:39
| その他
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(2)
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(1)から続く。
「ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して」(2) by 米田太郎
翌日ASCO会場へ向かう。
急いでバス乗り場に向かうべく用意をしている時にホテルの部屋でポーチを床に落としてしまった。
落とすことはよくあるのでそれは別に問題はなかったのだが・・。
ホテルを出て、記念にホテルの全景をデジカメにおさめようと、デジカメのスイッチを入れたとき、写真のシャッターは切れるが、液晶画面がしましまになってかろうじて日よけシェード越しに映るような状況に気づいた。
ポーチの中のデジカメの液晶画面が破損してしまったのだ。
高松先生から高松先生のASCOご発表ポスターの写真を撮ってくることを依頼されていたのでどうなることかと思ったが、どうにか写真は撮れた。
しかし以降はせっかくのシカゴの写真はピントが合っているかどうかは確認できずに撮ることになった。
ちなみに帰国後、デジカメの修理は海外旅行保険の「携行品保証」にてカバーしてもらった。
海外旅行保険に入っておいてよかった。
各ホテルからASCO会場への無料シャトルバスが出ており、自分たちが宿泊したホテルの前にバスが来て会場へ向かった。
タクシーを使わずにすみ安心であった。
(続く)ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(3)へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:25
| その他
ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(1)
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報原稿からです。
「ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して」(1) by 米田太郎
本年度(2013年)、自分は大学院生研究期間として大学帰学の期間を与えていただいた。
大学でのリズムに慣れる、もしくは思い出して新鮮な気持ちで実験をさせていただいている。
その最初の5月にシカゴでのASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)への参加の機会も与えていただいた。
海外へ行くのは5年ぶりである。
過去にアメリカに行ったことがあるが、タクシーにぼったくりされたり、さらに英語が流暢に話せるわけでもなく正直「海外に行くこと」に不安があった。
海外旅行保険加入も思い出して加入した。
しかし、曽根先生も一緒に参加され、非常に有意義な経験をさせていただいた。
ASCOはWebで事前参加登録が可能である。
自分は「大学院生」、つまり学生にて参加費も115ドル程度であった。
5月31日に小松空港を出発し、乗り換えして14時頃シカゴのオヘア空港に到着した。
飛行機での時間は予想通り長かった。
オヘア空港から市内へは地下鉄やバスを主にする「CTA」と呼ばれる交通網が機能している。
チケットはプリペイドカードを販売機でVISAでカード払い方式で購入する。
タクシーは高いので(怖いのではなく?!)地下鉄で乗り換えながら予定のホテルに到着した。
夕食は再度地下鉄で市内に出た。「
グランド駅」に降車し、先にシカゴに到着されておられた笠原先生ならびにがん研有明病院の西尾先生グループと合流し食事をした。
(続く)ASCO(アメリカ臨床腫瘍学会)2013に参加して(2)へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:18
| その他
笑いの力:インデックス
笑いの力(5):金沢大学第三内科同門会報より続く。
「笑いの力」(インデックス) by 福井社会保険病院 内科主任部長 小澤眞二
1)福井社会保険病院
2)「さわやか大学」
3)笑いに関することわざや格言
4)極限状況での笑い・ユーモア
5)ポピュラー音楽
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
| 研修医の広場
笑いの力(5):金沢大学第三内科同門会報
笑いの力(4):金沢大学第三内科同門会報より続く。
「笑いの力」(5) by 福井社会保険病院 内科主任部長 小澤眞二
話の途中では、私の趣味であるポピュラー音楽から曲をはさむようにしている。
一曲はミュージカルのサウンド・オブ・ミュージックから「My favorite things」である。
つらいときにも、お気に入りのことを思い浮かべるとつらさも薄らいでいくという内容である。
話の最後には、Chaplinの作曲した「Smile」を流して終わることにしている。
傷心・悲哀の時でも、微笑めば希望がみえてくるという内容の歌である。
先生方も患者に、笑い・笑顔を勧められてはいかがでしょうか。
そんな悠長なことをいっておられないほど重篤な患者を持っておられる先生もおられるかもわかりませんが、ご自分のご健康のためにも笑い・笑顔をこころがけていかれればと思います。
(続く)笑いの力:インデックスへ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:34
| 医学全般
笑いの力(4):金沢大学第三内科同門会報
笑いの力(3):金沢大学第三内科同門会報より続く。
「笑いの力」(4) by 福井社会保険病院 内科主任部長 小澤眞二
極限状況での笑い・ユーモアも重要である。
その一例としてアルフォンス・デーケンの言葉をあげる。
彼は、金沢にも講演に来られたことがある上智大学名誉教授で哲学者、死生学の研究者である。
彼の著書から、「私の母国ドイツでは、ユーモアとは<にもかかわらず>笑うことである」という定義があるそうだ。
これは、自分はいま大変苦しくつらい状態だが、それにもかかわらず、相手を少しでも喜ばせようとほほえみかける優しい心遣いがユーモア精神であるという意味だそうである。
ときには笑顔が言葉よりも多くの思いを伝える。
もう一人、第2次世界大戦中ユダヤ人であるがためにナチスによって強制収容所に送られた体験をもとに「夜と霧」を著わしたオーストリアの精神科医ヴィクトール・フランクルである。
彼は極限的な体験をしたが、ユーモアとウィットを愛して生き残った。
彼の著書から、「私たちがまだ持っていた幻想は、ひとつまたひとつと潰えていった。そうなるとおもいもよらない感情がこみあげた。やけくそのユーモアだ!」、
「ユーモアも自分を見失わないための魂の武器だ。ユーモアとは知られているように、ほんの数秒でも周囲から距離をとり、状況にうちひしがれないために、人間という存在にそなわっているなにかなのだ」、
「強制収容所の人間をしっかりさせるためには、未来の目的をみつめさせること、つまり人生が自分を待っている、だれかが自分を待っているとつねに思い出させることが重要だった。」
—これらの言葉は、重篤な患者を持ったりすることがあるわれわれにも役立つと思う。
(続く)笑いの力(5):金沢大学第三内科同門会報へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:26
| 医学全般
笑いの力(3):金沢大学第三内科同門会報
笑いの力(2):金沢大学第三内科同門会報より続く。
「笑いの力」(3) by 福井社会保険病院 内科主任部長 小澤眞二
笑いに関する私の話は、笑いに関することわざや格言の紹介から始まる。
「笑う門には福来たる」
「泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生」
「箪笥長持ち持ってくるよりも、笑顔一つの嫁がよい」
「Laughter is the best medicine」
「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ(アラン)」
「人間だけがこの世で苦しむため、笑いを発明するほかなかったのだ(ニーチェ)」
「A day without laughter is a day wasted(Charlie Chaplin)」など。
日本には「笑い講(山口県防府市)」、「笑い祭り(和歌山県川辺町)」など笑いをテーマにした伝統のイベントを行う地方もある。
これらの地域では長生きする人が多いとか・・・。
笑いを医療に取り入れたのが、「笑いと治癒力」という著書のあるノーマン・カズンズである。
彼は、強直性脊椎炎になったが、笑いにあふれた映画やテレビ番組をみて病気を克服したという。
また「パッチ・アダムス」という映画のモデルになったハンター・アダムスも「笑いと思いやりが医療効果を上げる」と説き、クリニクラウン(臨床道化師)の先駆者となった。
笑いにはmentalな癒しの効果だけでなく、免疫機能の活性化、炎症物質の抑制、脳血流の改善、ストレスホルモンの抑制、食後血糖値の低下作用などの様々な作用が明らかになっている。
これら笑いの効果の多くは、実際に笑わなくても笑顔を作るだけでももたらされるといわれている。
これら健康面での効果だけでなく、笑いはもちろんコミュニケーションの潤滑油として人間関係を豊かなものにしてくれる。
よい笑顔を作るためには、顔面の表情筋を鍛えることも大切で、笑み筋体操というものもあるし、顔じゃんけん(ご存知ですか)も役立つ。
(続く)笑いの力(4):金沢大学第三内科同門会報へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:19
| 医学全般
笑いの力(2):金沢大学第三内科同門会報
笑いの力(1):金沢大学第三内科同門会報より続く。
「笑いの力」(2) by 福井社会保険病院 内科主任部長 小澤眞二
このなかで最もヒットしたのが「笑いの医力」というテーマである。
日頃患者を診ていると、あまり深刻な病状でもないのに診察室へ入ってきたときから眉間にしわを寄せて深刻な顔をした方や、不安をつのらせる方、悲観的な考え方ばかりする方などがいる。
このような方々にもっと笑顔でいてほしい、もっと前向きな考え方をしてほしいと思ったのが、この話をするきっかけだった。
「さわやか大学」で話した後、当地のいくつかの公民館で地域住民に同内容で話を依頼されたり、会社の社内勉強会で話すようにリクエストがあった。
びっくりしたのは福井のローカルなテレビ局が、この話を記事にしたインターネットのサイトをみて、新春にふさわしいテーマだから取材させてほしいとオファーがあったことである。
平成23年の1月最初に5分間程度だったが、私としては初めてテレビにとりあげられた。
平成25年にも同テレビ局が「笑いヨガ(笑いをひとつのエクササイズとして行う活動のこと)」をとりあげた際にコメントを求められた。
この時は他の北陸地方のテレビ局でも放映されたようで、富山県に転勤したMRさんや、石川県在住の某先生から「見たよ」と連絡をいただいた。
(続く)笑いの力(3):金沢大学第三内科同門会報へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:12
| 医学全般
笑いの力(1):金沢大学第三内科同門会報
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿からです。
先行してのご紹介になります。
「笑いの力」(1)
福井社会保険病院 内科主任部長 小澤眞二
福井県勝山市にある福井社会保険病院に勤務するようになってから10年が経つ。
半年後までの外来予約患者数をみると1000人を超えるようになった。
その患者の1人に当地の高齢者学級(当地ではそれを「さわやか大学」と呼ぶ)の役員をしておられる方がいて、その学級で健康関連の内容でしゃべってほしいと依頼があった。
年に1回程度、もう10回くらい続いている。
間に10分の休憩を置いて、1コマ1時間で2コマ計2時間の話となる。
一つのテーマで2時間話すのは私にとっては大変である。
これまでのテーマは「気候・気象と健康」、「痛みについて」、「認知症について」、「肺炎について」などなど。
メンバーの方の要望にこたえた話題もあり、私の専門外の範囲のことも話すことがあるが、これがけっこう自分にとっていい勉強になると思ってやっている。
(続く)笑いの力(2):金沢大学第三内科同門会報へ
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:35
| 医学全般
臨床に直結する血栓止血学/中外医学社
書籍紹介です。
「臨床に直結する血栓止血学」
リンク1(アマゾン):「臨床に直結する血栓止血学」
リンク2(中外医学社):「臨床に直結する血栓止血学」
出版会社:中外医学社(平成25年10月発刊)
<論文の要旨>(序より改変)
血栓止血学というと、どちらかといえば取っつきにくい領域と思われてきました。
しかし、実は決して難しい領域ではなく、いかに楽しく、一旦理解してしまえば記憶することも少ないとても興味深い領域であることが本書を読めば分かります。
近年、出血性疾患、血栓性疾患ともに病態、検査・診断、治療の各面で新たな展開がみられています。
薬剤も、新規経口抗凝固薬(ダビガトラン、リバーロキサバン、エドキサバン、アピキサバン)、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤、エクリズマブなどが次々と登場しました。
血栓止血領域の臨床がかつてないくらい脚光を浴びている今、本書の果たす役割は大きいと思われます。
血栓止血学の基礎から詳細に論じた専門書や雑誌は多数ありますが、本書はあくまでも「臨床に直結する」を意識しています。
換言しますと、臨床に直結するとまではいえない基礎的事項は思い切って割愛して、そのぶん臨床的な内容を充実させています。
血栓止血の臨床をしみじみとわかっていただくための入門書です。
教科書的な基本知識にとどまらず、以下の内容が充実しています。
・ ここがコンサルトされやすい!
・ ピットフォール
・ お役立ち情報
・ 症例紹介
血栓止血の臨床において血液凝固検査の適切な評価は最重要です。
凝血学的検査をきわめれば、血栓止血の臨床の8割以上はきわめたといえるかもしれません。
各疾患や薬剤の章でも凝血学的検査の話は登場していますが、まず検査の章を最初に組んであるのは、凝血学的検査の重要性を認識しているためです。
想定している読者は血栓止血のエクスパートではなく、研修医、一般臨床医、血液専門医(ただし血栓止血専門以外)、血液以外の専門医、臨床検査技師、薬剤師、医学生、保健学科学生などです。
<リンク>「臨床に直結する血栓止血学」
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:17
| 出血性疾患
血友病Bに対する遺伝子組換え第IX因子/Fc融合蛋白製剤
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「血友病Bに対する遺伝子組換え第IX因子/Fc融合蛋白製剤の第3相試験」
著者名:Powell JS, et al.
雑誌名:N Engl J Med 369: 2313-2323, 2013.
<論文の要旨>
血友病B患者に対する製剤投与回数を減らす目的で、半減期の長い遺伝子組換え第IX因子/Fc融合蛋白製剤(rFIXFc)が開発されました。
著者らは、治療歴のある重症血友病B 123症例(全例12歳以上、FIX≦2%)を対象に第3相試験を行いました。
症例は4群に分類され、1群(用量調整群):最初はrFIXFc 50IU/kgを週1回(投与間隔は固定)の予防投与、2群(投与期間調整群):100 IU/kg(投与量は固定)を最初は10日間毎から予防投与、3群:20〜100 IU/kgを出血時に投与、4群:周術期に投与、としました。
その結果、遺伝子組換え第IX因子製剤(rFIX)と比較して、rFIXFcは半減期82.1hrと有意に延長していた。
年間出血率の中央値は、1、2、3群でそれぞれ3.0、1.4、17.7でした。
2群では、53.8%の患者では投与間障を14日以上にすることができました。
1、2、3群ともに、出血エピソードの90.4%で1回静注で止血しました。
大手術時の止血効果は全て「極めて良好」または「良好」と評価されました。
インヒビターの出現は1例もみられませんでした。
1、2、3群での有害事象出現率は73.9%であり、重篤な有害事象は10.9%でした。こ
れらの有害事象は血友病一般でみられる率と同等でした。
rFIXFcを1〜2週間に1回の予防投与は、年間出血率を減らすものと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:58
| 出血性疾患
血友病/凝固異常と大腿コンパートメント症候群
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「未診断の軽症血友病Bにおける軽外傷後の急性コンパートメント症候群」
著者名:Jones G, et al.
雑誌名:Lancet 382: 1678, 2013.
<論文の要旨>
2013年3月に、25歳の男性が前日のサッカーで相手選手と空中衝突して右大腿を外傷したということで来院しました。
打撲の跡は不明でしたが、右大腿下部が腫脹しており、膝関節の高度な可動域制限がみられました。
骨折もなく一旦退院となりました。
しかし、5日後に右大腿腫脹と疼痛の悪化および麻痺の出現のため再入院になりました。
この時点で急性コンパートメント症候群が疑われました。
Hb8.0g/dlと低下しており、CTでは血腫(2.27L)が確認されました。
緊急に筋膜切開術が行われましたが、腫脹軽減のみられるまでの9日間、切開部は開放状態でした。
また、一旦退院になりましたが6日後に大腿の再腫脹がみられ、切開創は、また開放状態になりました。
患者は再入院となり、2回の血腫除去術や輸血が行われました。
血液検査ではAPTTおよび第VIII因子は正常でしたが、第IX因子27.2%と低下していたため、軽症血友病Bと診断された。
本症例では大腿腫脹軽減のために筋膜切開術を行ったことが、致命的出血と診断の遅れにつながりました。
最近のシステマティックレビューでは、大腿のコンパートメント症候群の21%は凝固異常を有していると報告されています。
以上、大腿のコンパートメント症候群に遭遇した場合には、筋膜切開術の前に凝固異常の有無をチェックすべきと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:49
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Klippel-Trenaunay症候群の慢性DICと新規経口抗凝固薬
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「Klippel-Trenaunay症候群に合併したDICに対する経口抗Xa薬治療」
著者名:Randrianarisoa E, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 24: 766-770, 2013.
<論文の要旨>
Klippel-Trenaunay症候群(KTS)は、リンパ管や血管の異形成で特徴付けられるまれな先天性疾患です。
また、軟部組織や骨の発育障害をきたします。
臨床所見は多様性に富み、静脈の奇形のため播種性血管内凝固症候群(DIC)に起因する血栓塞栓症の危険が増大します。
著者らは、深部静脈血栓症を繰り返し、消費性凝固障害のために致命的な出血をきたしたKTSの1例を報告しています。
また、新規経口抗凝固薬であるリバーロキサバン(抗Xaの薬の一つ)による抗凝固療法により長期的な管理に成功している。
(Klippel-Trenaunay症候群)
1900年にフランスのKlippelとその弟子Trenaunayの二人により初めて報告されました。
患肢の骨軟部組織の過成長と低流量性の血管奇形を伴う疾患です。
(三兆候)
1) ポートワイン斑(port wine stain)
2) 静脈の異常(先天性静脈瘤•深部静脈形成不全;典型的には患肢の外側面に拡張した異常血管がみられる)
3)患肢の骨軟部組織の過成長による肥大
(合併症)
深部静脈血栓症、肺塞栓症、感染・敗血症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、直腸出血•血尿
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:37
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慢性ITPに対するエルトロンボパグ長期間投与
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「治療歴のある慢性ITPに対するエルトロンボパグ3年間投与」
著者名:Katsutani S, et al.
雑誌名:Int J Hematol 98: 323-330, 2013.
<論文の要旨>
エルトロンボパグ(E薬)は、免疫性血小板減少症(ITP)に対して許可されたトロンボポエチン受容体作動薬です。
著者らは、E薬6ヶ月間の初期臨床試験の終了した慢性ITPの日本人患者19例について、3年間投与の安全性、忍容性、有効性について検討しました。
患者は、初期臨床試験終了時のE薬投与量(12.5,25,50mg)で1日1回の内服を継続しました。
血小板数5〜20万を維持できるように、E薬投与量の調整や中断は主治医判断に委ねられました。
主要評価項目は、E薬長期間投与の安全性と忍容性です。
投与期間の中央値は27.5(9.9〜32.3)ヵ月間でした。
有害事象出現率は短期間投与時の初期臨床試験と同様であり、治療中断となった例はありませんでした。
重篤な有害事象の報告は9件でした。
血小板数の中央値は、E薬投与1週間後より上昇がみられはじめ、観察期間中5万以上を維持しました。
出血事例は、治療開始2週間で63%から21%に低下して、その後も低いレベルが維持されました。
当初ITPの他の治療も併用されていた15例のうち、10例では永続的に併用量法が不要になったり1つ以上の治療薬が不要になりました。
以上、日本人の慢性ITPに対してE薬の長期間投与は、安全で、忍容性と有効性が高いと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:29
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新生児、小児、成人と止血能
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「年齢と止血能の関連について」
著者名:Attard C, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 11: 1850-1854, 2013.
<論文の要旨>
新生児、小児、成人の間には止血能の差があると考えられています。
成人の止血生理に対する知識と比較して、新生児や小児における知識は不充分です。
これまでに止血関連蛋白を年齢毎に検討した報告はほとんどありません。
幼児や小児期の止血異常の予防、診断、治療のためには、止血関連蛋白の年齢に伴う変動を理解しておく必要があります。
対象は健常人120例で、内訳は新生児(生後1日、3日)、生後28日〜1年、1〜5歳、6〜10歳、11〜16歳、成人です。
検討した因子は、第II, V, VII, VIII, IX, X, XI,XII, XIII, プラスミノゲン, プロテインC、総&遊離型プロテインSです。
これらのうち10蛋白については、新生児と成人間で有意に異なっており、この差異は小児期間中継続していました。
以上、凝固関連蛋白の多くは年齢により変動するものと考えられました。
(論文から一部結果抜粋)
Day1, 3, 1〜5歳, 6〜10歳, 成人の順
VII(%):38, 42, 68, 72, 84(漸増)
IX(%):25, 33, 48, 55, 66(同上)
X(%):47, 57, 123, 121, 130(同上)
PC(%):27, 30, 66, 70, 82(同上)
総PS(%):10, 12, 33, 36, 50(同上)
VIII(%):102, 85, 94, 93, 84(不変)
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:22
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遺伝子組換えFVIIa/アルブミン融合蛋白と半減期
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「遺伝子組換えFVIIa/アルブミン融合蛋白の安全性の薬物動態」
著者名:Golor G, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 11: 1977-1985, 2013.
<論文の要旨>
血友病診療においてインヒビターの出現は最も重要な合併症です。
遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(rFVIIa)がその際の止血治療薬として用いられてきましたが、半減期が短いという問題点がありました。
著者らは、新しく開発された遺伝子組換FVIIa/アルブミン融合蛋白(rVIIa-FP)の薬物動態と安全性を健常人男性(40人、18〜35歳)で検討しました。
rVIIa-FPの1回投与量は、140, 300, 500, 750, 1000μg/kgまたはプラセボの各群に振り分けられました。
投与に先立って全員が、ビタミンK拮抗薬による抗凝固療法(INR 2〜3)が行われました。
その結果、全ての投与量でrVIIa-FPの忍容性は優れており、重篤な有害事象はみられませんでした。
薬物に対する抗体出現者もありませんでした。
血中FVIIa活性の上昇は用量依存性でした。
rVIIa-FPの用量と無関係に半減期は一定であり、6.1〜9.7hrでした。
最大用量の1000μg/kgでは、FVIIaの半減期は8.5hrでした。
クリアランスは7.62〜12.74ml/hr/kgでした。
従来のrFVIIaと比較して、rVIIa-FPのクリアランスは低下しており、半減期は3〜4倍に延長するものと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:13
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第VIII因子遺伝子(F8)変異と血友病A患者インヒビター
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「第VIII因子遺伝子(F8)変異と非重症血友病A患者でのインヒビター発症」
著者名:Eckhardt CL, et al.
雑誌名:Blood 122: 1954-1962, 2013.
<論文の要旨>
非重症血友病A患者における第VIII因子インヒビターの発症は、出血傾向を悪化させるために重大な合併症です。
第VIII因子製剤の治療日数を考慮したデータがないために、インヒビター発症危険度の高い患者の固定は困難でした。
INSIGHT試験では、著者らは非重症血友病A患者(FVIII:2〜40IU/dL)におけるF8変異とインヒビター発症の関連について検討しました。
欧州とオーストラリアからの14のセンターより非重症血友病A患者1112例が登録されました(70%の症例では遺伝子変異が同定済み)。
治療44,800日(1人の患者あたりの治療日の中央値は24日)のなかで、1112症例中59嶺でインヒビターを発症しました。
治療日中央値28日の後に、累積で5.3%の発症率でした。
50治療日におけるインヒビターのリスクは6.7%であり、100治療日では13.3%にまで上昇しました。
全体でそれぞれ異なったF8ミスセンス変異214件のうち、19件ではインヒビターの発症と関連していました。
以上、非重症血友病A患者におけるF8変異の同定は重要と考えられた。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:01
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von Willebrand病の小腸血管異形成由来出血とダナゾール治療
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「von Willebrand病における小腸血管異形成からの難治性出血に対するダナゾール治療」
著者名:Botero JP, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 24: 884-886, 2013.
<論文の要旨>
von Willebrand病(VWD)では胃腸(GI)血管の異形成をきたすことがあり、慢性GI出血の原因となります。
従来の治療としては、von Willebrand因子(VWF)補充療法、内視鏡的止血術、腸管切除などが知られていますが、必ずしも出血を減らすとは限りません。
著者らは、GI出血に対して従来の治療が無効であった3症例を報告しています。
ダナゾールによる治療を開始したところ、GI出血は長期間にわたって減少し、赤血球輸血量も減少しました。
1例では重篤な肝毒性が出現したために精査したところ、原発性胆汁性肝硬変を合併していることが判明しました。
従来の治療法が無効であるVWDの血管異形成に起因するGI出血に遭遇した際に、ダナゾールは考慮されて良いものと考えられました。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:55
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過多月経の血液凝固検査
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「過多月経の診療」
著者名:Pai M, et al.
雑誌名:Br J Haematol 162: 721-729, 2013.
<論文の要旨>
過多月経は臨床においてしばしば遭遇します。
女性の10〜35%は一生の間で過多月経の経験があるのに対して、過多月経の精査目的に内科を受診する女性は5%に過ぎません。
産婦人科を受診する女性の15%は過多月経であり、出血性素因と関連して血液専門医が診療にあたる機会も多いです。
過多月経の原因としては局所性、全身性ともに多様であり、注意深い診察と検査が必要です。
(過多月経の血液学的検査)〜婦人科疾患を除いて〜
(1) 血算:貧血の有無、血小板数低下をきたす疾患の有無
(2) 血小板機能検査:血小板凝集能
(3) フェリチン:鉄欠乏性貧血の診断
(4) PT、APTT、フィブリノゲンなど:異常があれば凝固因子活性も測定
(5) VWF抗原、VWF活性、第VIII因子(必要があればVWFマルチマー構造解析)
(注意)
VWFレベルは月経周期の影響を受けます。
エストロゲンレベルが高いと、VWF値が上昇してVWDを見逃す懸念があります。
VWFの測定はエストロゲン値が最低となる月経周期1〜4日で行うのがよいです。
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:47
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血友病患者における腎疾患:病態と治療
論文紹介です。
関連記事:APTT、血友病、後天性血友病、第V因子インヒビター、第VIII因子インヒビター、PT-INR
、クロスミキシングテスト
「血友病患者における腎疾患:病態と治療」
著者名:Esposito P, et al.
雑誌名:Eur J Haematol 91: 287-294, 2013.
<論文の要旨>
血友病患者の予後とQOLは随分と改善しましたが、これはHCVやHIVに対する知識が深まり治療選択肢が増えたことにもよります。
一方で、血友病患者には違った問題店も指摘されるようになってきました。
特に、糖尿病、高血圧症、癌などの年齢と関連した疾患や、慢性ウイルス感染症に伴う問題点です。
種々の慢性疾患の中でも、腎疾患に関しては特殊治療を必要とすることがあるために、注意が必要です。
実際、適切な腎疾患進行阻止治療やウイルス感染治療の選択、透析方法の選択、シャント作成部位、透析時の処方などは、データがほとんどないために特に複雑です。
著者らはこの総説のなかで、血友病患者の腎障害の病態(とくに血液製剤由来のウイルス感染症との関連)や、透析治療や腎移植治療とも関連した問題を含む腎治療について論じています。
(血友病患者における腎疾患の危険因子)
・高血圧症
・糖尿病
・高齢
・HIV感染症
・HCV感染症
・薬物による腎毒性(抗ウイルス薬、抗生物質など)
・腎出血
<リンク>
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 01:42
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