DIC診断基準:劇症肝炎
DIC診断基準:産科DICスコア より続く。
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<劇症肝炎に合併したDIC診断基準>
「DIC合併疑い」≧18点
「DIC合併」≧33点
(続く)DIC診断基準:急性期(救急領域)へ
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DIC診断基準:産科DICスコア より続く。
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<劇症肝炎に合併したDIC診断基準>
DIC診断基準:新生児 より続く。
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DIC診断基準:新生児 より続く。
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DIC診断基準:消化器外科における重症感染症 より続く。
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(続く)DIC診断基準:極小未熟児 へ
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DIC診断基準:松田試案 より続く。
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播種性血管内凝固症候群(DIC)は予後不良の重篤な病態ですので、予後改善のためにも適切な診断基準で、適切に診断することが大切です。
DIC診断基準は、日本で知られているものだけでも、いくつもあります。
その中には、今現在使用されている診断基準、今は使用されてはいないけれども大きな医学的意義を有する診断基準、今後のDIC診断基準改訂の参考になると思われる診断基準など、いろいろあります。
種々のDIC診断基準を、シリーズで紹介させていただきたいと思います。
<DIC診断基準(松田試案)>
(松田保ほか:厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班 平成4年度研究報告書 24-30, 1993)
(続く)DIC診断基準:消化器外科における重症感染症 へ
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論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「VWD(2B型)に対する抗VWFアプタマーARC1779は、VWFレベルと血小板数を上昇させる 」
著者名:Jilma SP, et al.
雑誌名: Thromb Haemost 108: 284-290, 2012.
<論文の要旨>
2B型のvon illbrand病(VWD)(血小板膜GPIbに対する結合能の異常亢進症)に対してDDAVPを投与しますと血小板数が低下しますが、von illbrand因子(VWF)に対するアプタマーARC1779を用いてVWFの反応性を抑制しますと血小板数低下を阻止できます。
このため、著者らはARC1779はVWF活性を上昇させ血小板低値を是正するのではないかと仮説を立てました。
血小板数低値を伴う2B型VWDの3症例に対して、ARC1779 0.23mg/kgを静注してその後4μg/kg/minで72時間持続点滴しました。
ARC1779の血漿濃度は76μg/mL(59-130)まで上昇し、遊離型VWFA1ドメインは速やかに低下しました。
VWF/FVIII活性は、ARC1779投与開始12時間後には上昇して、投与終了時点で最高レベルとなりました。
投与中止後の経過観察で前値に復しました。
VWFリストセチン活性(VWF:RCo)は、投与8時間後に10倍になりましたが、この時点ではVWF抗原量とFVIIIの上昇は比較的軽度でした(それぞれ、5倍、4倍)。
重要な所見として、血小板数は40×109/L(38-58×109/L)より最大146×109L(107-248×109/L)に上昇しました。
以上、2B型VWD症例において、ARC1779はVWF/FVIII活性を著明に上昇させ、血小板数も上昇、正常化させるものと考えられました。
ARC1779の体内での効果はすぐれていると考えられました。
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論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「サル免疫不全ウィルス(SIV)感染霊長類で凝固マーカーが病気の進行を予知する」
著者名:Pandrea I, et al.
雑誌名:Blood 120: 1357-1366, 2012.
<論文の要旨>
HIV感染症は心血管合併症を増加させることが知られていますが、その機序は不明です。
血中Dダイマー(DD)は、HIV感染患者の死亡率や心血管疾患発症と関連していることが知られています。
著者らは、病原性サル免疫不全ウィルス(SIV)に感染したアカゲザルとブタオザル(PTMs)、非病原性SIVに感染したアフリカミドリザル(AGMs)とスーティーマンガベイを用いて、心血管病変部位の数と、血中DDを比較しました。
AGMsからのSIV(SIVagm)に感染したPTMsにおいては、DD値はAIDS進展や死亡率の指標となっており、心血管病変とも関連していたため、SIVagmに感染したPTMsはHIV関連心血管疾患を研究する上での理想的な動物モデルになっていると考えられました。
病原性SIV感染症においては、DDは感染直後より上昇し、免疫活性化・炎症やmicrobial translocation (MT)のマーカーと強く相関していましたが、ウィルス量との相関は弱かったです。
SIVagmに感染したAGMsに対してエンドトキシンを投与すると、DDは有意に上昇しました。
以上、SIV感染における凝固亢進状態や心血管病態は、少なくとも一部は過剰な免疫活性化やMTの結果と考えられました。
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論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「複数の凝固因子インヒビター偽陽性を示したループスアンチコアグラント・低プロトロンビン血症症候群」
著者名:森永信吾、他。
雑誌名: 臨床血液 53: 716-720, 2012.
<論文の要旨>
著者らは、ループスアンチコアグラント・低プロトロンビン血症症候群(LA-HPS)の1歳男児例を経験しました。
患者は6ヶ月間の副鼻腔炎の治療後、皮下出血斑と鼻出血を認めました。
凝固検査でPT、APTTが延長し、APTTクロスミキシング試験で補正できませんでした。
凝固因子活性はそれぞれ、第II因子20%、第VII因子44%、第IX因子42.5%、第X因子59%、第XI因子4%、第XII因子10%でした。
Bethesda法により複数の凝固因子インヒビターを認めました。希釈ラッセル蛇毒時間結果も加味してLA陽性と判定し、凝固因子インヒビター偽陽性が疑われ、LA-HPSと診断しました。
患者は無治療にて、発症から2ヶ月後に自然寛解しました。
LAはリン脂質依存性の凝固反応を阻害するため、複数の凝固因子活性低下を認めることがあります。同様に、Bethesda法によるインヒビター測定もリン脂質依存性のため、複数のインヒビターを認めることがあります。
鑑別には、特異的抗凝固因子結合抗体を検出するELISA法、抗FVIII抗体であればH鎖やL鎖を検出するイムノプロット法、免疫沈降法などがあります。
LAでは上記鑑別検査は陰性となり、Bethesda法での陽性は偽陽性と判断されます。
本症例では、上記検査は行っていませんが、クロスミキシング試験で即時型のインヒビターを呈し、一人の患者に複数の凝固インヒビターが発生することはまれであることから、複数の凝固因子に対するインヒビターはLAによる偽陽性反応と考えられました。
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論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「XaとTFPIの相互作用を抑制するモノクローナル抗体の止血効果(ウサギ血友病モデルでの検討)」
著者名:Hilden I, et al.
雑誌名:Blood 119: 5871-5878, 2012.
<論文の要旨>
血友病では、第VIII因子(FVIII)または第IX因子(FIX)による補充療法が行われます。
今後の治療法改善の方向性としては、インヒビターを発症しにくく、皮下注投与や半減期の長い製剤の開発が挙げられます。
組織因子経路インヒビター(TFPI)は、FVIIa/TF/FXaを抑制することで凝固開始を抑制します。
TFPIを抑制することで、血友病におけるトロンビン形成を促進する可能性があります。
著者らは、TFPIに親和性の高い(KD=25pM)モノクローナル抗体であるmAb2021について検討しました。
血友病の全血および血漿において、mAb2021はTFPIに効率よく結合し、FVIIa/TF/FXaを阻止して凝血塊形成能を改善させました。
ウサギ血友病モデルでは、mAbの静注または皮下注は、有意に出血時間を短縮させました。
このモデルにmAb2021を1回静注しますと、出血時間の是正効果は少なくとも7日間持続しました。
以上、mAb2021によるTFPIの抑制は、血友病に対する新しい代替治療になるものと考えられました。
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論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「TFPIインヒビター(BAX499)の作用機序と血友病治療」
著者名:Chang JY, et al.
雑誌名:Thromb Res 130: e151-157, 2012.
<論文の要旨>
凝固阻止因子経路インヒビター(TFPI)を抑制することでトロンビン産生を促し、血友病患者の出血の予防や治療に応用しようとする考え方があります。
著者らは、TFPIのインヒビターであるアプタマー(BAX499)とTFPIの相互作用について検討しました。
血友病患者より採取した第VIII因子欠乏血漿に対するBAX499の影響は希釈PT時間で評価しました。
その結果、BAX499がTFPIに結合した後に、TPPI/ BAX499複合体は親和性は低下するもののXaに対する抑制効果を有していました。
外因系Xase活性法では、BAX499はTFPIによる外因系Xase活性を遅らせました。加えて、BAX499はTFPIによるprothrombinase複合体の抑制を消失させました。
BAX499は、第VIII因子欠乏血漿における希釈PT時間を短縮させ、血友病A患者(インヒビター有無の如何にかかわらず)から採取した検体において全血凝固時間を短縮させました。
以上、BAX499は、インヒビター保有血友病A患者の止血治療のためバイパス製剤として加えることができるのではないかと考えられました。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「アプタマー(BAX 499)によるTFPIの抑制は血友病患者の全血および血漿の凝固能を改善させる 」
著者名:Gorczyca ME, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 1581-1590, 2012.
<論文の要旨>
組織因子系路インヒビター(TFPI)は、TFによる凝固の重要なインヒビターですが、血友病治療の観点からも注目されています。
アプタマーであるBAX499(以前はARC19499と呼称されました)は、TFPIを特異的に抑制することにより止血能を改善させる目的で開発されました。著者らは、凝固能向上に関して、BAX499濃度依存性を検討しました。
全血凝固能は、ROTEM(rotational thromboelastometry)とTEG(thromboelastography)で定量され、乏血小板血漿におけるトロンビン形成能はCAT(calibrated automated thrombogram)で評価されました。
対象は、血友病A55例、血友病B11例、後天性血友病A1例、健常人37例でした。
その結果、BAX 499は濃度依存性に血友病患者の凝固能を改善しました。重症血友病A患者の検体であっても、健常人の凝固プロフィールと同様になるまでに改善しました。
以上、BAX 499は、各重症度の血友病A&B患者からの全血および血漿のex vivo凝固パラメータを改善しました。後天性血友病でも同様の改善がみられました。
TFPIを抑制することは、血友病患者の止血治療法として有効な治療戦略であることを支持する結果が得られました。
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論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「長期間作用型第VIII因子部分インヒビター(TB-402)の中和戦略 」
著者名:Tangelder M, et al.
雑誌名:J Thromb Haemost 10: 1371-1378, 2012.
<論文の要旨>
TB-402は、第VIII因子に対する部分的抑制効果を有した抗体で、長時間作用型の抗凝固剤として開発中です。
TB-402による第VIII因子活性抑制を中和できるかどうかについて、in vitroでrhFVIII、人血漿由来FVIII(hpd FVIII)、遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)、バイパス製剤であるFEIBAおよびプロトロビン複合体製剤(PCC)を添加して検討しました。
12人の被験者に対してTB-402 620μg/kgの1回投与48時間後に、プラセボ、rhFVIII 35IU/kg 、rhFVIII 70IU/kgのいずれかの投与にふり分けられました。
TB-402濃度、FVIII活性(FVIII:C)、APTT、トロンビン形成能は、8週間にわたり測定されました。
その結果、TB-402はFVIII:Cを30%抑制し、APTTを4.5秒延長させ、トロンビン形成能のピーク値をコントロールの56±13%にまで抑制しました。
TB-402 10μg/mLの存在下では、rhFVIIIはFVIII:CとAPTTを正常にまで回復させました。
TB-402のトロンビン形成能に対する抑制効果は、rhFVIII、hpd FVIII、rhFVIIa、FEIBA、PCCにより完全に中和されました。
TB-402の半減期は14.2日間でした。TB-402は、内因性のトロンビン活性を約35日間にわたり23%抑制しました。
rhFVIIIa 35IU/kgの輸注の効果は軽度でしたが、rhFVIIIa 70IU/kgはFVIII:Cを回復させAPTTを前値にまで短縮させ(9時間持続)、トロンビン形成能を回復させました(約3時間持続)。
以上、TB-402は長時間にわたり安定して抗凝固活性を発揮し、rhFVIIIほかの凝固因子製剤は、TB-402を一時点に中和するものと考えられました。今後の臨床応用が期待されます。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「出血性素因を有した小児の口腔出血に対するABS」
著者名:Leblebisatan G, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 494-497, 2012.
<論文の要旨>
Ankaferd blood stopper (ABS)は、トルコにおいて皮膚出血や粘膜出血の止血目的に局所において使用される止血剤です。
通常、外傷、創傷、小手術、大手術時の出血に対して局所的に使用されます。
著者らは、出血性素因を有した小児12症例に対して、口腔出血に対してABSを使用しました。ABSは、15回の口腔出血のエピソードに対して処方されました。
その結果、1症例を除いて良好に止血コントロールすることが可能でした。
以上、ABSは、出血性素因を有する口腔出血に対して有効と考えられました。
<ABS>
トルコの薬草剤(5種類の薬草を含有)で、トルコで伝統的に用いられています。
通常の凝固カスケードに依存せずに血栓形成をきたすため、凝固異常を有する場合にも効果が期待されます。赤血球凝集を通して数秒で止血作用を発揮するとされます。
消化管出血、食道静脈瘤からの出血に対して有効とする欧文論文もみられます。
なお、本記事執筆時点で、PubMedの検索ではAnkaferdに関する93編の論文が存在しました。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「膝関節置換術を施行した血友病患者の術後感染症の予防」
著者名:Rodriguez-Merchan EC.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 477-481, 2012.
<論文の要旨>
膝関節置換術(TKA)後の術部位感染症は、通常平均1%ですが、血友病患者(Persons with hemophilia : PWH)では約8%と高率になります。
著者らは、なぜ血友病患者では高率なのか、予防する方法はあるのかについて、PubMedとCochrane Libraryで検索しました。
重要と考えられる論文(TKAを施行したPWHの感染予防の方法を述べている論文)のみを抽出しました。
術部位感染症の一般的な危険因子は、免疫不全状態、術前の膝関節感染症の存在でした。
TKA感染症の起因菌として最も多かったのはMRSAでした。
術前の全身性細菌検査は重要と考えられました。
MRSA感染対策としては、術前の鼻腔MRSAの除菌(ムプロシン軟膏3日間)が勧められます。術前の抗生剤による予防治療も、感染率を低下させるのに有効です。
PWHでは、危険因子がさらに3つ加わり、不充分な止血、HIV陽性、中心静脈カテーテル(CVC)を挙げられました。
TKA施行のPWHでは術後2〜3週間にわたり充分量の凝固因子製剤を使用することも感染率を低下させます。
CD4が200/μL未満のHIV感染者では、感染症が疑われた場合には速やかに充分な治療を行うこと、そして、手術を行うことの利点と危険性を慎重に評価すべきです。
カテーテルのケアに関しては厳重な手洗いと無菌操作は必須です。
もし、TKAの適応でない場合には、関節鏡的膝関節滑膜切除術によっても数年間の疼痛暖和が期待できて、TKA施行までの期間延長させることができます。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「第XI因子欠損症症例における脳出血(手術施行例)」
著者名:Goto Y, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 456-458, 2012.
<論文の要旨>
男性63歳が突然に右半身麻痺をきたし、著者らの施設に搬送されました。CTでは、左側頭葉の皮質下出血と診断されました。
既往歴に高血圧があったため、当初は高血圧症性の脳出血と考えられました。
しかし、血液凝固検査ではAPTTの延長が確認されました。入院1時間後に、Glasgow Coma Scaleは14から11へ低下しました。
著者らは、超音波ガイド下に定位血腫除去術を行いました。患者の病状は急激に改善し、手術数日後に先天性第XI因子欠損症と診断されました。
先天性第XI因子欠損症は血友病Cと呼称されたこともあり、自然出血はまれですが、観血的処置を行う際に出血をきたすことがあります。
本症例の経験から、脳内出血の症例に遭遇した場合には凝固検査をすることが重要と考えられました。
そして、凝固異常が発見された際には、より低浸襲な術式を選択することが良い結果につながるものと考えられました。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
参考:血友病、後天性血友病、rFVIIa、プラザキサ vs ワーファリン(心房細動)、新規経口抗凝固薬
「無症候性第VII因子欠損症における大手術に対するrFVIIa治療 」
著者名:Livnat T, et al.
雑誌名:Blood Coagul Fibrinolysis 23: 379-387, 2012.
<論文の要旨>
先天性第VII因子欠損症は、まれな常染色体劣性遺伝する凝固因子欠損症の中では最も高頻度にみられます。
先天性第VII因子欠損症は、臨床的な重症度や臨床症状と第VII因子活性レベルとの間には必ずしも相関がないことが知られています。
ただし、重症の出血は第VII因子活性が2%以下の症例で見られやすい傾向にあります。
第VII因子活性が2〜10%の間にある症例においては、無症候性の場合〜致命的な出血をきたす場合まで様々です。
遺伝子組換え活性型第VII因子(rFVIIa)は、先天性第VII因子欠損症に対して最も用いられる補充療法です。
しかし、血友病に対しては治療ガイドラインが確立しているのに対して、無症候性の第VII因子欠損症に対する治療法については議論があります。
著者らは、大手術が必要になった無症候性第VII因子欠損症症例に対して、1回のごく少量のrFVIIaが有効かつ安全であったと報告しています。
また、トロンビン形成試験やトロンボエラストメトリーによってもこの方法が適切であることが確認されました。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
参考:血友病、後天性血友病、rFVIIa。、プラザキサ vs ワーファリン(心房細動)、新規経口抗凝固薬
「ダビガトランおよびリバーロキサバンの抗凝固活性に対する非特異的中和剤の効果(健常人を対象としたex vivoの検討)」
著者名:Marlu R, et al.
雑誌名: Thromb Haemost 108: 217-224, 2012.
<論文の要旨>
新規経口抗凝固薬であるダビガトランやリバーロキサバンにおいて出血合併症の対処が問題となっています。
著者らはトロンビン形成能をマーカーとして、これらの薬剤の抗凝固活性に対する各種中和剤の効果を検討しました。
白人健常男性10名に対して、リバーロキサバン20mgまたはダビガトラン150mgのどちらかを1回経口投与して、ex vivoの検討を行いました。2週間のwashout期間の後に、もう一方の抗凝固薬を内服しました。
採血は、薬物内服前(H0)および2時間後に行った。ex vivoでの抗凝固薬の中和は、各種濃度のプロトロンビン複合体製剤(PCC)、rFVIIa、FEIBAで行いました。
リバーロキサバンは、内因性トロンビン能(ETP-AUC、トロンビン形成最大値)、lag-time、ピークまでの時間に影響を与えました。
PCCは強力にETP-AUCを是正しましたが、rFVIIaの効果はマイルドでした。FEIBAは全てのパラメータを正常化しました。
ダビガトランは、lag-timeおよびピークまでの時間の延長を伴うトロンビン形成動態に影響を与えました。
PCCはETP-AUCを上昇させたものの、lag-timeも是正したのはrFVIIaとFEIBAのみでした。
どちらの抗凝固薬に対しても、少量(通常量の1/4〜1/2)のFEIBAが中和能が最も強力でした。
臨床応用可能かどうかについては、今後の慎重な臨床試験による検討が必要です。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「成人血友病患者における非致死的心血管疾患、悪性疾患、その他の疾患」
著者名:Fransen van de Putte DE, et al.
雑誌名: Thromb Res 130: 157-162, 2012.
<論文の要旨>
血友病のコントロールが良好になってきたことに伴い、加齢関連の問題に直面しています。
血友病患者における心血管疾患、悪性疾患、その他の疾患の発症率を知っておくことは重要です。
著者らは、1971年以前に生まれた血友病患者408症例(重症204例、非重症204例)の診療録を用いて全ての合併疾患を調査し、年齢の一致した一般男性オランダ人と比較しました。
その結果、11症例で心筋梗塞(MI)を発症していました(全て非致死的)。
重症血友病患者での非致死的MI発症率は一般人男性よりも低い結果でしたが(0.5%vs. 4.8%)、非重症血友病患者での発症率は4.4%であり、一般男性と同等でした。
ウィルスと関連ない悪性疾患やその他疾患は、血友病患者と一般男性間に差はみられませんでした。
血友病患者の12%にHIV感染症がみられ、56%にHCV感染がみられました。78例(19%)は死亡していました。
主な死因は、悪性疾患、AIDS、C型肝炎、頭蓋内出血でした。
以上、重症血友病AではMIの発症が低く、凝固因子活性が著減することは血栓症阻止的に作用すると考えられました。
ただし、他の疾患(ウィルス関連を除く)は、血友病患者と一般男性間で差はないものと考えられた。
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論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「先天性出血性素因を有した症例における急性冠症候群の治療とその経過」
著者名:Lim MY, et al.
雑誌名: Thromb Res 130: 316-322, 2012.
<論文の要旨>
先天性出血性素因を有した症例における急性冠症候群(ACS)の治療ガイドラインは存在しません。
著者らは、自施設で2000〜2011年の間に治療された軽症血友病およびvon Willebrand病における急性期&慢性期ACS治療の経過を調査しました。
対象期間中、8症例(年齢中央値72歳)が10回のACSを発症していました。
救急部で治療を受けた4例中3例ではアスピリン325mgと未分画ヘパリンの投与を受けましたが出血の合併症はありませんでした。
8例で、10回の冠動脈造影が施行されました。
凝固因子製剤の予防投与が6/10回(60%)で行われませんでしたが、出血の合併症がみられたのは1/6回(17%)(そけい部の血腫)のみでした。
2例では、凝固因子製剤とともにbare metal stents治療とGPIIb/IIIaインヒビター投与が行われましたが、急性期出血の合併はみられませんでした。
6/10回では外来でのアスピリン投与が行われ、2症例では2種類の抗血小板薬による治療が1ヶ月間行われましたが(凝固因子製剤の補充はなし)、出血の合併症はありませんでした。
中央値8.5年(1〜11.5年)の経過中、5例中2例でアスピリン投与中の小出血がみられました。
以上、軽症の出血性素因においては、凝固因子製剤の補充を行わなくても、冠動脈造影やACSの急性期治療を出血の合併症なく行えるものと考えられました。
短期間の抗血小板薬併用療法も問題なく、長期間のアスピリン投与でも出血は軽症にとどまるものと考えられました。
<リンク>
論文紹介をさせて続けさせていただきます。
「後天性血友病Aに対する免疫抑制(EACH2の結果)」
著者名:Collins P, et al.
雑誌名:Blood 120: 47-55, 2012.
<論文の要旨>
後天性血友病(AHA)は、第VIII因子に対して自己抗体が出現する自己免疫疾患です。
インヒビターが消失するまでは重症かつ致命的な出血の懸念があり、ガイドライン上も診断直後からの免疫抑制療法が推奨されています。
しかし、至適な治療法は不明であるため、前方視的にEACH(European Acquired Haemophilia Registry)に登録された331症例のデータを解析しました。
その結果、ステロイドにサイクロフォスファマイドを併用する方法が、より安定した安全寛解率(CR:インヒビターが消失し、第VIII因子活性が70IU/dL以上になり、免疫抑制療法が中止可能で定義)70%を示しました。
ステロイド単剤のCRは48%、リツキシマブを基本とした治療のCRは59%でした。
年齢、性別、第VIII因子活性、インヒビター力価、基礎疾患を一致させた傾向スコア適合分析では、安定した寛解は、ステロイド単独よりも、ステロイドとサイクロフォスファマイドの併用で得られました(オッズ比3.25;P<0.003)。
CRまでの中央値は、単独、併用療法のいずれでも約5週間でした。
リツキシマブを基本とした治療では、CRまでの期間は約2倍かかりました。
イムノグロブリンの投与は経過に対する改善効果はみられませんでした。
ファーストライン治療に失敗した症例で、セカンドライン治療に成功したのは、ファーストライン治療の種類の如何にかかわらず約60%でした。
CRとなりやすかどうかは、基礎疾患とは無関係でしたが、インヒビター力価やFVIII活性に依存していました。
<リンク>
論文紹介をさせていただきます。
今回は、後天性血友病Aに関するBloodの論文です。
「後天性血友病Aの止血治療(EACH2試験の結果)」
著者名:Baudo F, et al.
雑誌名:Blood 120: 39-46, 2012.
<論文の要旨>
後天性血友病Aは、第VIII因子に対する自己抗体が出現するまれな出血性素因です。
発症時の出血は、通常は自然出血で重症です。至適な止血治療に関しては議論となっています。
著者らは、EACH2(European Acquired Haemoophilia)に登録された501症例について、初回出血エピソードに対する止血治療としてのバイパス製剤(rFVIIaまたはaPCC)、FVIII、DDAVPの評価を行いました。
1回以上の出血のみられた482症例のうち、144症例(30%)は止血治療を受けていませんでした。31症例は対症療法のみでした。
ファーストラインの止血治療をうけた307症例のうち、174例(56.7%)はrFVIIa、63例(20.5%)はaPCC、56例(18.2%)はFVIII、14例(4.6%)はDDAVPによる治療を受けていました。
ファーストラインの止血療法または補助療法のみをうけた338例中269例(79.6%)では出血がコントロールされました。
Propensity score mathing法により治療群間の不偏的な比較を行いました。
止血効果は、FVIII/ DDAVPに比較してバイパス製剤で有意に良好でした(68.3% vs. 93.3%;P=0.003)。
rFVIIaとaPCC間では差はみられませんでした(936.0%;P=1)。
血栓症の合併は3.6%でみられ、rFVIIaで2.9%、aPCCで4.8%と同等でした。
<リンク>
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会報の原稿を、このブログでも紹介させていただきます。
今回は、森孝夫先生です。ユーモラスな原稿をいただきました。ありがとうございます。
近況報告
「昔の思い出話でもいいですか」
森 孝夫 (昭和49年入局)
医者になっていつの間にか40年。
第三内科に20年程お世話になった後、前第三内科同門会会長(現顧問)の北中勇先生の運営する老人保健施設に勤めるようになってやはり20年が経ちました。
妊婦と子供以外は何でも診ています(抜歯もします)。
近況報告をとのことで何を書こうかとあれこれ考えましたが大したこともしておらず、そのうちに何だかんだと昔のことを思い出したのでそんな事を書かせていただきます(もしもご迷惑のかかる先生がいらっしゃいましてももう時効ということでどうかご勘弁を)。
ちなみに昭和49年は長島茂雄が現役を引退したり、ウォーターゲート事件でニクソン大統領が辞めたり、オイルショックでトイレットペーパーが店先からなくなったりした年だそうです。
1.白血病のすべて
初代教授の服部絢一先生の病棟回診のとき、白血病患者さんを担当していた主治医があまりに教授の質問に答えられなかったので教授が怒って、「君は一体どんな本を読んで勉強しているんだ」と聞いたら、主治医は患者さんの枕元で「白血病のすべてです」と答えました。
2.多発性骨髄腫の患者さんの骨髄穿刺
多発性骨髄腫の患者さんの骨髄穿刺を胸骨で行いました。骨がもろくて心臓穿刺になると恐いのでストッパーを短くしてできるだけやさしく刺したつもりでしたが、やっぱり針がいきなりズボッと入って
しまい小生の心臓が止まる思いをしました。患者さんは平気な顔をしていましたが。
3.これが脾臓だよ
服部教授の外来に男性の患者さんが受診されました。腹部を触診すると腫瘤を触れます。白血球数も増加しています。先生は診察の補助をしている我々に、「これはCMLだ。この腫瘤は脾臓だ。君達もよく触れて覚えておくように」とおっしゃいました。入院後胃透視をしたらその腫瘤は大きな胃癌でした。勿論すぐにこっそり外科にお願いしました。
4.ネズミ小屋
昭和50年頃はネズミを使って実験をされている先生が多かったようです。勿論きれいな動物実験センターなどあるはずもなくバラックのような小屋で飼育しているのですが、ケージの中にネズミを飲み込んでお腹の膨れだヘビがいたり、系の異なるネズミ同士が交尾をしてあっという間に混血児だらけなったり、ダニやらノミやらシラミをうつされたりして大変でした。ネズミをひもでしばって水に沈め
ストレス潰瘍の実験をしている先生もいらっしゃったと思います。
5.医局旅行
今でもそうかも知れませんが、以前の医局旅行には奥さんやお子さんなど家族も参加して、バスの
中でみんなで童謡を歌ったりしてとても楽しいひと時でした。夜の宴会場で相撲をとって畳を破った
先生もいました。ところである年金沢駅前で解散した医局旅行の時です。家に帰るために皆当たり前
のようにタクシー乗り場に向かうのですが、服部先生ご夫妻だけはバス乗り場に向かわれました。
6.トイレで
昭和55年から2年間ほどシアトルのフレッド八ッチソン癌研究所に留学していたことがあります。後
に骨髄移植でノーベル賞を受賞したトーマス教授のいたところです。ある日トイレを使おうとドアをノックして鍵のかかっていないトイレを開けたら、ズボンを下ろしこっち向きに便器に腰掛けているトーマス教授がいました。お互い「ハーイ」と手を挙げて挨拶をしてドアを閉めました。
まだまだありますが、これ以上書くと第三内科の名誉と品位を失いかねないのでこのあたりで。
<リンク>
金沢大学第三内科同門会:独立行政法人国立病院機構七尾病院(2) より続く。
独立行政法人 国立病院機構 七尾病院(3)
金沢大学第三内科同門会:独立行政法人国立病院機構七尾病院(1) より続く。
独立行政法人 国立病院機構 七尾病院(2)
<七尾病院正面玄関(外来・管理棟)平成26年に建て替え予定>
前述の変遷によって、現在の診療方針と診療機能は次のようになっています。
政策医療として特化された結核医療と重症心身障害児(者)の療育を行い、併せて慢性難治性疾患である神経・筋難病や関節リウマチ、脳卒中後遺症などの重症で高度の医療を必要とする患者を収容して快適で満足していただける療養を提供することです。
さらに近年は、病状の安定と患者教育によって在宅医療を可能にすることも重要課題となってきました。
これを受けて在宅人工呼吸器患者や在宅酸素療法患者等の在宅医療可能患者に対して在宅訪問医療を行っています。
私が本年4月に赴任してからの現状と感想を述べたいと思います。
医療関係者には知名度が低く、同門の先生方には全く縁のない病院ですし、近隣の住民からも馴染みの薄い病院です。
種々の媒体を介して知名度を上げること、健康教室などに出向いて地域住民に開かれた病院として親しみをもってもらうことを実践開始しています。
私は、松島前病院長(小児科)が受け持っていた重症心身障害児(者)6名の主治医を引き継いでおります。
20〜30年前の国立療養所時代に常勤や非常勤として重症心身障害児の病棟をご覧になった先生方は覚えていらっしゃると思いますが、あの独特な異臭が立ち込めていた病棟は今はもうありません。
臭いのしない、清潔で明るくて広い病棟にびっくりしました。
過去の障害児も医療の進歩によって齢を重ね、63歳の障害者が健やかに療育しております。
小児科だけではなく、内科、さらには老年科の関与が必要になってきている感があります。
(続く)金沢大学第三内科同門会:独立行政法人国立病院機構七尾病院(3) へ
金沢大学第三内科同門会から、病院紹介の記事をアップさせていただきます。
今回は、独立行政法人国立病院機構 七尾病院の紹介です。
独立行政法人 国立病院機構 七尾病院(1)
病院長 藤村政樹(昭和54年度入局)
<七尾湾に架かる能登島大橋と和倉温泉街が絶妙に調和した絶景>
金大附属小、中、高等学校、金大医学部、金大大学院、金大教官と長〜く金大にお世話になりましたが、この3月にやっと金大を卒業して七尾病院に病院長として赴任いたしました。
七尾病院は、能登半島中央の七尾湾沿岸部に位置し、七尾市街地より北西約4kmの県道1号線沿いの海抜35mの高台にあります。
周囲は四季折々の緑と花に囲まれ、野鳥のさえずりが絶えず、眼下に広がる七尾湾からは和倉温泉を結ぶ能登島大橋と、遠くにツインブリッジが一望できる風光明媚で空気清澄な長期療養に適した環境にあります。
当院の沿革の概略を紹介します。
昭和20年1月に日本医療団松百(まっとう)園として創設されました。
昭和22年4月に厚生省に移管し、国立療養所松百園、昭和27年4月に国立七尾療養所、昭和50年4月に国立療養所七尾病院と変遷しました。
平成16年4月に独立行政法人国立病院機構七尾病院に移行し、若松病院が医王病院に合併吸収されたため、石川県における結核診療の拠点病院として位置づけられました。
平成21年11月に新病棟が完成し、見栄えも綺麗な病院となりました。
また、平成22年11月には電子カルテも導入されました。
現在の病院の規模は、医療法病床数は総数240床(実稼働210床)で、内訳は結核50床(内30床は休床中)、一般190床(一般144床、重症心身障害児(者)46床)を常勤医8名で運営しています。
常勤医8名(医療法上の標準定数は13名)は、国立病院機構144病院の中で、下から2〜3番目と情けない状況下にありますが、各々の常勤医の踏ん張りによって経営は順調に推移しています。
(続く)金沢大学第三内科同門会:独立行政法人国立病院機構七尾病院(2) へ
金沢大学第三内科(血液・呼吸器内科)同門会の先生の近況報告を、ブログ記事としてアップさせていただきます。
今回は、金沢医科大学生化学教授の岩淵先生です。
実は、管理人の同期生です。大変な御活躍で、とても嬉しく思っています。
金沢医科大学での18年間
昭和59年入局 岩淵邦芳
1995年、留学からの帰国が決まった際に、松田保教授のご高配により金沢医科大学血液免疫内科の講師のポジションをいただきました。
このポジションなら留学先で行っていた研究も継続できるだろうと思い、その後2年あまり血液免疫内科で過ごしました。
しかし残念ながら当時の血液免疫内科は、実験に必要な器具もそろっておらず、加えて若い研修医が入らず慢性的な人手不足で、殆ど実験をする時間が確保できない状態でした。
そこで、生化学I研究室で設備や器具を借りて、実験をさせてもらうことにしました。
これがご縁で、生化学Iの伊達孝保教授から生化学Iに移らないかとお誘いを受け、1997年生化学Iへ籍を移しました。
大学を卒業して13年間臨床医として働いてきた者が、基礎医学研究者としてこの後どれくらいの仕事ができるか不安はありましたが、当時は、あと何年間かは実験をしてみたいという思いのほうが強く、あまり迷いませんでした。
行き詰ったら3内に泣きつこうという甘い考えもあったように思います。
以来12年間、思う存分やりたい実験だけをすることができました。
私は留学先で、53BP1という、癌抑制蛋白質p53と結合する新しい蛋白質を見つけました。
帰国当時その機能は全く不明でしたので、さっそく53BP1の機能解析に着手しました。
当初は科研費もなかなか採択されず苦しみましたが、実験成果を毎年学会で発表していくにつれ、少しずつ53BP1に興味をもってくれる研究者が増えてきて、次第に科研費も取れるようになってきました。
53BP1は大きな蛋白質であるため、そのcDNAを容易にRT-PCRでクローニングすることはできません。
そのため、世界中の研究者から53BP1cDNAの供与依頼が届くようになり、これも53BP1について知ってもらう大きな要因となりました。ただし、cDNAの供与は諸刃の剣で、こちらがわずかなデータを基に論文を書いている時に、cDNAを供与した研究室からさらに内容豊富な論文を発表されてしまうということが何度もありました。
2009年、12年間楽しんだわりにこれといった論文が出ないまま、前教授の定年退職に向けての次期教授選考が始まりました。
なにぶんにも私立医科大学の基礎研究室の教授選考のことですから、全国公募でも7名程度の応募しかなかったこと、また、何をしたというわけでもないのですが金沢医科大学に15年間在籍していたということが幸いして、何とか生化学Iの第3代教授に選任されました。
現在教授になって3年半になります。
いまだに53BP1にしがみついてその機能解析を行っています。
教授になって変わったのは、大学の雑用が増えたため自分では全く実験ができなくなったこと、そのかわりに教室員全員を53BP1の研究に使えるようになったことです。
薬学部の博士課程を終えたばかりの若い研究者も加わってくれて、面白そうなデータを少しずつ出してくれています。
何とか、母校金沢大学に負けないよう、頑張っていきたいと思っています。
金沢大学第三内科同門会近況報告:加賀の地で開業して(1)より続く。
「加賀の地で開業して10年」(2)
ボケ防止対策Aとして講演も断らないようにしています。
結局、暇の成せる業だと思うのですが、今年は1年で10回を超えました。
中でも昨年の12月に行った北陸RESPIRATORY SEMINARは、藤村政樹先生監修のもと小児科の谷内江昭宏教授とスピードスケート長野オリンピック金メダリストの清水宏保氏と「喘息死0を目指して」座談会をすることができ、大変楽しい一時を過ごすことができました。
近年、在宅医療が国策となり、講演依頼も在宅医療関係が多いのですが、石川県医師会の仕事で金沢大学医学類の1年生にここ3年間で2度「在宅医療」の講義をする機会を頂きました。
2年前は前の方の席がガラ空きで「1年生なんて人の話を聞かないよね」と思っていたのですが、今年は結構前までギッシリで「聞く姿勢」が伝わってきました。
これも時代の変化でしょうか。
その実績からか分りませんが、今年は4年生の講義も第3内科学教室から当てられ(了承した記憶はないのですが)切羽詰っています。
今年の2月には同門会長であり、現石川県医師会長である近藤邦夫先生からスーパーニュースへの出演を打診され、恥ずかしながら5分ほど「在宅医療」の特集として放送されました。
職員や在宅関連の方々と出演させて頂き、一生の思い出になりました。
悪いこと以外で自分がテレビに出ることがあるとは思いませんでした(笑)。
時が止まったような田舎の加賀市にいるため、知識まで老朽化しないようにと金沢との繋がりを保つように努力しています。
これからもよろしくお願いします。
金沢大学第三内科同門会の先生の近況報告を、ブログ記事としてアップさせていただきます。
「加賀の地で開業して10年」(1)
橘 秀樹(平成4年入局)
2003年に加賀の地で「加賀たちばな元気クリニック」を開業して早10年が過ぎようとしています。
ありきたりな台詞ですが、「あっという間」でした。
特に何があったかと問われれば、特に何もない10年間だったような気がします。これからもよろしくお願いいたします。
以上が本音ですが、これではあまりに「近況報告」にならないので1200字分、何か絞り出したいと思います。
石川県の最南端にある加賀市で開業して、毎日自然の変化を眺めながら往診に勤しんでいます。
地表は一面田んぼで稲が黄色く実り、今年も稲刈りが始まりました。
もうしばらくしたら白山の頂上から順に白み始め冬が近づくのを実感できます。
加賀市は本当に田舎で、人も少なく、年寄りは少し多いですが、仕事量はまあこんなもんです。
暇というほどではありませんが、決して忙しいわけでもありません。
渋滞とも無縁で特にストレスもなく、何もない加賀市で、足るを知る日々を過ごしています。
知的刺激に飢え易い環境なので、たまに治験を引き受けます。
治験をするのは本当にボケ防止が一番の理由ですが、2006年にはPDE4阻害薬の喘息とCOPDの第二相試験を、昨年からは長時間作用型抗コリン薬の喘息の第三相試験を行っており、いずれも症例登録数は全国上位(以前は17位/500施設、現在は1位)です。
この結果は大学病院や県立中央病院などで諸先輩方にご指導いただいた賜物だと思うとともに、第三内科の臨床レベルの高さを実感しています。
また患者さんにもメリット(協力費や薬剤費軽減)があり意外と喜ばれています。
(続く)金沢大学第三内科同門会近況報告:加賀の地で開業して(2)へ
「厚生連高岡病院」
2010年には「腫瘍内科」が独立診療科となり、私自身は一般呼吸器診療から完全に離れることになりました。
腫瘍内科は現在私のもとに3人のスタッフを擁していますが、いずれも三内医局外からの調達です。
三内医局からの人材提供がなかなか望み通りにいかない中での苦肉の策ですが、今後は強力な助っ人を期待できるものと信じております。
血液内科は常勤2人体制、呼吸器内科は三内からの常勤1人に、地元開業医の息子さんと2名の体制というのが現状です。
悩みは研修医不足で、医局からは入局者を送り込めとのお達しがありますが、いかんせん、初期研修医は毎年1ないしゼロ名という状況で、なかなか思うようにはいきません。
東診療棟の竣工から10数年を経て、現在病院は老朽化した西診療棟等の改築中です。
2012年度末には新たな西診療棟が完成し、さらに翌年度末に南側に救急棟が完成して改築工事が終了します。
腫瘍内科外来や外来化学療法室は、改築対象となっている旧診療棟に急ごしらえで設置した部署で、今回新西診療棟が完成した暁には、その2階に移転することになっています。
床面積も現状の倍以上となり、独立した緩和ケア外来の設置、がんサロン・情報コーナーの常設、腫瘍内科外来の増設、外来治療室の増床(13床→17床)が図られます。
腫瘍内科外来を設置した際に「総合的がん診療センター」と称する組織を院内に立ち上げましたが、今回の改築移転でハード面でもセンターとしての一応の完成を見ることになります。
「がんを生きぬく人々とともに」をキャッチフレーズに多職種専門スタッフが一丸となってがん診療に取り組み、がんサバイバーシップを支えていきたいと考えています。
今後の我々の取り組みにぜひご注目いただければと存じます。
<リンク>
当院の関連病院を紹介させていただいます。
今回は、厚生連高岡病院です。
「厚生連高岡病院」
総合的がん診療センター長・腫瘍内科診療部長
柴田和彦(1988年度入局)
厚生連高岡病院は、富山県西部最大規模の病院(一般病床567床)で、高岡駅のやや西側に位置しています。
設立母体は、富山県厚生農業協同組合(要するに農協)で、その意味では私立病院ですが、いわゆる公的病院の一形態です。
通常の病院と同様に業務に関しては厚生労働省の管轄ですが、同時に、その経営状態等に関しては農協を管轄する農林水産省の指導も受けています。
病院の改築等の際にも、農水省がやたらと口を出すそうです。
私は1997年に当院に赴任し、早いもので15年が経ちました。
赴任した年に、救命救急センターの指定を受け、三次救急病院となりました。
ほぼ一日おきに二次輪番の当番病院となり、輪番日には全科オンコール体制をとります。
輪番日の当直はそれなりに大変ですが、月に多くても2回程度なので、50に近い年となっても何とかこなしています。
また、赴任当時は、内科が第一内科と第二内科に完全に分かれて診療を行っていました。
北陸三県では唯一、金沢大学の第一・第二内科が、ほぼ同じ規模で相乗りした病院で、当時は第一内科に血液内科医を、第二内科に呼吸器内科医を、それぞれ一人ずつ第三内科から派遣しており、私も第二内科の呼吸器内科医として赴任しました。
思えば無駄が多かったと思いますが、幸いに1999年5月に新診療棟(東棟)が完成した際に、内科病棟は臓器別になり、その後数年をかけて院内での一内・二内の垣根はほぼ取り除かれました。
臓器別の病棟となった際に、たまたま呼吸器内科と血液内科は同じ病棟に割り当てられ、「第三内科病棟」が発足することになりました。
現在はこの病棟(1病棟7階)は、血液内科と腫瘍内科の病棟となり、呼吸器内科は呼吸器外科と同じ病棟をベースに診療を行っています。
当院の診療の柱は、「救急」と「がん」です。
第三内科に関連の深いがん診療に関して言えば、赴任当時にはまだまだハード、ソフトともに不十分な点が多く、かなり限界を感じていました。
2000年にライナックが稼働し、ようやく本格的な放射線治療が可能となりました(治療医は未だに非常勤ですが)。
また、2002年7月1日には、北陸地方では最も早く、通院でのがん化学療法専用の部門「外来点滴センター」が9床で発足しました。
同じ頃に、血液内科・山崎宏人先生が、当院での同種造血幹細胞移植の第一例目を成功させました。
2004年9月には、全面的に電子カルテが導入されましたが、この際に化学療法専用機能を稼働させ、院内での化学療法のマネージメントを一気に進めていきました。
2007年1月には、地域がん診療連携拠点病院の指定を受けましたが、その際、「富山型がん診療体制」の中で、「化学療法」分野の担当病院となりました。
その業務として、化学療法に関する市民講座や、各病院で院内での化学療法の実務にたずさわるスタッフを対象とした「がん化学療法チーム養成ワークショップ」を開催しています。
<リンク>