JAK2遺伝子変異と血栓症:真性赤血球増加症、本態性血小板血症(4)
血栓症の病態:真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症(3)から続く
何回も繰り返し書いて恐縮ですが、引用論文(数字で記載)は、このシリーズの最後の記事でまとめますので、よろしくお願いいたします。
【JAK2遺伝子変異による血栓傾向の機序】
前述のように、近年、骨髄増殖性疾患の多核球や血小板におけるチロシンキナーゼJAK2遺伝子変異(V617P)の存在が明らかになっています。また、JAK2遺伝子変異と血栓症との関連を論じた報告も多くみられるようになっています。
まず、この遺伝子変異を有したETでは、PVの性格を有しやすく静脈血栓塞栓症の発症率が高いと指摘されています 6)。
JAK2遺伝子変異と稀な部位での血栓症との関連について論じた興味ある報告がいくつかあります。
Budd-Chiari症候群(肝硬変例を含まない)においては、臨床的に、また血液学的に骨髄増殖性疾患の診断がなされない場合であっても、その6割近い症例において、JAK2遺伝子変異を有していると言われています。
また、腹腔内静脈血栓症(門脈血栓症や腸間膜静脈血栓症)においても2〜3割の症例でこの変異を有していると報告されています 17)18)。
このように、JAK2遺伝子変異の有無について検査することにより、臨床的に顕性化する前に、潜在的な骨髄増殖性疾患を検出することが可能と考えられています。
腹腔内静脈血栓症や脳静脈洞血栓症の症例における検討から、JAK2遺伝子変異は、骨髄増殖性疾患の有無とは関係なく、独立した血栓症の危険因子であるとも指摘されています19)20)21)。
この点からも、今後、Budd-Chiari症候群や、腹腔内静脈血栓症の症例に遭遇した場合には、JAK2遺伝子変異の有無の検査は必須と考えられます22)。ただし、腹腔内静脈血栓症以外の血栓症では、JAK2遺伝子変異との関連はないとの報告もみられています23)。
JAK2遺伝子変異が存在するとなぜ血栓傾向になるのかについても興味のあるところです。
● JAK2遺伝子変異がありますと、血小板表面上のPセレクチンの発現が高まったり、多核球の活性化を生じるという報告があります 24)。
● また、ET患者(半数例でJAK2遺伝子変異あり)の血小板や多核球には、組織因子、接着因子、炎症関連因子の発現が多く、特にJAK2遺伝子変異があると血小板表面上の組織因子発現が多く、加えて血小板と白血球の凝集が形成されやすいという報告もみられています25)。
● なお、ETにおける血栓症発症は血小板数高値であることが、大きな危険因子になっているという考え方がなされてきた歴史がありますが、血小板数が多いとむしろ血栓症発症が少ないという興味ある報告があります。この論文では、白血球数高値(1.1万/μL以上)、血小板数低値(100万/μL以下)、JAK2遺伝子変異(+)が血栓症発症の危険因子であると論じています 26)。
● JAK2遺伝子変異を有したETやPVにおいては、遊離型プロテインSの低下をきたし(好中球エラスターゼと負の相関)、後天性の活性化プロテインC抵抗性の病態になるという報告があります 27)。
● さらに近年では、JAK2遺伝子変異は造血細胞のみならず血管内皮細胞でもみられており、血管内皮の有している抗血栓性の作用が障害されているという考え方も報告されています 28)29)。
(続く)
血栓症の治療:真性赤血球増加症、本態性血小板血症(5)へ
【凝固検査&DIC】
1)血液凝固検査入門
2)DIC(図解)
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血栓症の病態:真性赤血球増加症、本態性血小板血症(3)
動脈・静脈血栓症:真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症(2) から続く
シリーズを続けます。引用論文(数字で記載)は、このシリーズの最後の記事でまとめて紹介させていただきます。
【PV、ETにおける血栓傾向の機序】
1)血液粘度の上昇:
PVにおいては、まず高ヘマトクリットにより血液粘度が上昇することが血栓傾向の大きな原因の一つと考えられています。血液粘度の上昇は、特に脳梗塞の発症上、重要な危険因子になると考えられています。また、血液粘度の上昇は、静脈血流の障害をきたし静脈血栓症の発症にもつながりやすいのです。
この点、PVにおける血液粘度のコントロールは、血栓症発症を抑制するという観点から重要ですが、血小板活性化の要素も血栓症発症と関連している点にも留意する必要があります。実際、ET症例においては、ヘマトクリット値が正常であったとしても、やはり血栓傾向にあるとの報告があります12)。
2)赤血球成分の異常:
PVやETにおいては、赤血球膜成分や赤血球内容物の組成変化がみられるという検討結果があります13)。このことが赤血球凝集を形成させ血栓症、特に脳梗塞の発症に関連しているという報告があります。さらに赤血球凝集は、血小板や白血球と、血管壁との相互作用を亢進させることが知られています。
培養血管内皮細胞を用いた検討によりますと、PV症例からの赤血球は、健常人と比較して血管内皮細胞に3.7倍も結合しやすいことが観察されています。そしてこの結合には、赤血球膜のLutheran血液型/基底膜細胞接着因子 (Lu/BCAM)と培養血管内皮細胞のラミニンα5鎖が関与しているようです。JAK2遺伝子変異を有したPVの赤血球ではLu/BCAMが恒常的にリン酸化されているために、赤血球が血管内皮に粘着しやすいらしいのです14)。このことも、微小循環障害や血栓症の原因になると考えられます。
3)血小板数 & 白血球数上昇:
ETやPVにおける血小板数の上昇も、血栓症発症の重要な要素になっています。実際、血小板数を低下させるような治療は、微小循環障害を改善させると指摘されています15)。ただし、高リスクのET症例においては、化学療法を行うことで血栓症発症を抑制できることが知られていますが16)、これは血小板数を低下させることの効果のみならず、白血球数をも低下させることで血小板と白血球の相互作用を抑制する効果にも依存しているものと考えられています。
なお、ETにおける著明な血小板数上昇は、血栓症よりもむしろ出血傾向の原因になることが知られている。その理由としては、血小板数が著増した状態でvon Willebrand因子のlarge multimerの代謝が早まるために、後天性von Willebrand病の病態になることが指摘されています。興味あることに、この場合は、化学療法により血小板数を低下させると出血傾向が改善することが知られています。
4)血小板機能:
PV、ETにおける血小板機能異常に関しても、従来多くの報告がなされています。血小板凝集能検査では、しばしばエピネフリン凝集の欠如所見が観察されます。また、血小板膜糖蛋白(GP)や受容体の異常に関する報告もみられています(GPIbやGPIIb/IIIaの発現低下、GPIVの発現低下など)。
一方で、慢性骨髄増殖性疾患で血小板活性化を生じているという報告もみられています。具体的には、血小板活性化を反映している血中βTGやPF4が上昇しているという報告や、トロンボキサンA2代謝産物の尿中排泄量の増加している報告がみられています。この代謝産物は、少量アスピリンの内服により著明に抑制されます。
5)JAK2遺伝子変異による血栓傾向:
PV、ETにおいて最近ホットな話題です。この点は後の記事で紹介させていただきます。
(続く)
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動脈・静脈血栓症:真性赤血球増加症、本態性血小板血症(2)
骨髄増殖性疾患:真性赤血球増加症(真性多血症)、本態性血小板血症と血栓症(1)から続く
シリーズの2回目です。
なお、今回の記事を含め今後登場する引用論文(数字で記載)は、このシリーズの最後にまとめて紹介させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
【PV、ETと血栓症】
<動脈血栓症>
真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板血症(ET)のいずれにおいても、動脈血栓症は診断時および経過中における臨床症状として極めて高頻度にみられます。PVでは6〜7割、ETでは7〜9割に発症するとされています。ただし、治療介入のために、診断後の経過中における発症頻度は低下します1)2)3)4)5)6)7)。
動脈血栓症の代表的疾患として脳梗塞、心筋梗塞が知られていますが、特に脳梗塞は無治療のPVの主たる死因であると報告されています(PVにおける全ての血栓症の30〜40%を占めます)2)。
一方、PVにおける心筋梗塞の発症は比較的少ないと報告されています。PV、ETのいずれにおいても、脳梗塞、心筋梗塞以外の部位における血栓症も珍しくないようです2)4)(表1&2)。
表1 真性赤血球増加症(PV)1,638例の背景
ーーーーーーーーーーーーー
登録時の年齢 65.4±12.7(歳)
診断時の年齢 60.4±13.2(歳)
男性/女性 57.5/42.5(%)
血栓症の既往 38.6(%)
動脈血栓症の既往 28.7(%)
・心筋梗塞 8.9(%)
・脳梗塞 8.9(%)
・一過性脳虚血発作 10.3(%)
・末梢動脈血栓症 5.5(%)
静脈血栓症の既往 13.7(%)
・深部静脈血栓症 8.2(%)
・肺塞栓 2.4(%)
・表在性血栓性静脈炎 6.1(%)
先端紅痛症 5.3(%)
間欠性跛行 4.7(%)
出血の既往 8.1(%)
抗血小板薬内服 58.3(%)
抗凝固薬内服 6.7(%)
瀉血治療 63.5(%)
血球減少治療 61.6(%)
・ヒドロキシユレア 48.4(%)
・ Pipobroman 6.5(%)
・インターフェロン 3.9(%)
・ブスルファン 3.7(%)
・P-32 2.7(%)
・Chlorambucil 0.3(%)
ーーーーーーーーーーーーー
表2 本態性血小板血症(ET)231例における血栓症と出血
ーーーーーーーーーーーーー
血栓症&出血 診断時ーー診断後
血栓症
・脳梗塞 20ーー15
・心筋梗塞 3ーー4
・末梢動脈血栓症 6ーー1
・門脈血栓症 1ーー0
・静脈血栓塞栓症 0ーー2
・網脈静脈閉塞症 0ーー1
(血栓症合計) 30(13%)ーー23(10%)
出血
・胃腸出血 2ーー8
・歯肉出血 3ーー0
・脳出血 0ーー3
・鼻血 0ーー3
・血痰 1ーー0
・軟部組織血腫 1ーー1
(出血合計) 7(3%)ーー15(6%)
ーーーーーーーーーーーーー
PVにおける血栓症の発症頻度を病期に応じて評価しますと、脳梗塞はPV診断時および診断前の5年間において高頻度です2)。
一過性脳虚血発作も、PVにおいて高頻度にみられる動脈血栓症ですが、脳梗塞が治療介入によって発症頻度が低下するのに対しまして、一過性脳虚血発作の発症頻度は低下しないと報告されています2)9)(図1)。
<静脈血栓症>
PVやETにおいては、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)や肺塞線(pulmonary embolism:PE)などの静脈血栓症の発症頻度も高いことが知られています。また、一般にはまれな部位の静脈血栓症も、これらの疾患では珍しくありません。
特に、静脈血栓症は、PVにおいては全血栓症の1/3と高頻度です2)(表1)。
脳静脈洞や腹腔内静脈血栓症(門脈血栓症、肝静脈血栓症)の報告も多いです。このうち、腹腔内静脈血栓症は、PV診断時や診断前での発症が多いのが特徴です2)9)(図1)。
逆に、腹腔内静脈血栓症の症例のうち40〜60%の症例において潜在的にCMPDが存在するという報告もあります10)11)。このため、腹腔内静脈血栓症の症例に遭遇した場合には、CMPDが潜んでいないかどうかの点からの精査(JAK2遺伝子変異の検査を含む)が必要と考えられます。
CMPDにおいて腹腔内静脈血栓症が多い理由としては、門脈圧亢進、うっ血性脾腫の存在、肝における髄外造血などが指摘されていますが、なお検討すべき課題です。
(続く)
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骨髄増殖性疾患:真性赤血球増加症、本態性血小板血症と血栓症(1)
骨髄増殖性疾患のうち、真性赤血球増加症(真性多血症:PV)、本態性血小板血症(ET)は、血栓症を発症しやすいことで良く知られています。
今回から、シリーズでお届けしたいと思います。
【はじめに】
慢性骨髄増殖性疾患(chronic myeloproliferative diseases:CMPD)のうち、特に真性赤血球増加症(polycythemia vera:PV)や本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)は、血栓症や逆に大出血の発症が患者の予後を左右することがあります。そのため、血栓止血学的な管理は臨床的にとても重要と考えられます。
近年の慢性骨髄増殖性疾患関連の話題の一つとして、JAK2遺伝子変異を挙げることができます。
JAK2遺伝子変異は、JAK2のエクソン12上にある1,849番目の塩基がGからTに変異を生じており、その結果617番目のバリンがフェニルアラニンに変換(V617P)しています。
この変異は、慢性骨髄増殖性疾患の病態や診断の観点からも重要になってきていますが、血栓症との関連でも大変注目されています。特に腹腔内血栓症では血栓性素因検索の一環としてJAK2遺伝子変異をチェックすべきと考えられます。
【骨髄増殖性疾患とは】
慢性骨髄増殖性疾患は、造血幹細胞レベルにおける異常のために、一系統以上の骨髄系細胞が腫瘍性に増殖する疾患群です。
従来のCMPDは、以下の4疾患を含んでいました。
1)慢性骨髄性白血病(chronic myelogenious leukemia:CML)
2)真性赤血球増加症(polycythemia vera:PV)
3)本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)
4)原発性骨髄線維症(primary myelofibrosis:PMF)
ただし、2001年の新WHO分類では、これらに以下の3疾患を加えて、7疾患としました。
1)慢性好中球性白血病(chronic neutrophilic leukemia)
2)慢性好酸球性白血病(chronic eosinophilic leukemia)
3)分類不能型
血球の増殖や分化は、サイトカインにより調整されています。
正常造血においてはエリスロポイエチンのようなサイトカインが受容体に結合しますと、受容体に会合しているJAK2がまず活性化されます。
活性化されたJAK2は下流のシグナル伝達分子をリン酸化して、サイトカインのシグナルを核に伝達し、サイトカイン反応性の細胞増殖を生じます。
ところが、真性赤血球増加症の95%以上、本態性血小板血症の約50%、原発性骨髄線維症の約50%ではJAK2に遺伝子変異が生じています。
その結果、サイトカインの刺激がない状態でもJAK2は常に活性化されるようになり、サイトカイン刺激によらない細胞の自律増殖が生じることになります。
なお、このあとのシリーズでで紹介させていただく文献の多くが海外からのものです。日本からの報告が少ないのです。
ですから、血栓症の発症頻度などで日本における実状とは若干異なる可能性がありますが、ご了解いただければと思います。
(続く)
動脈・静脈血栓症:真性赤血球増加症、本態性血小板血症(2)へ
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臨床検査医学会:血液内科とも関連、研修医の皆様もどうぞ。
臨床検査医学会をご存知でしょうか。文字通り検査関連の学会ですが、内科とも密接に関係がありますので、会員には内科医も多いのが特徴です。
領域横断的な学会ですので、いろんな領域を勉強できるというメリットがあるのではないかと思っています。研修医の皆さんも是非入会していただきたい学会の一つです。
平成21年8月26日〜29日まで、札幌コンベンションセンターで開催されています。
会長は、北海道大学の松野一彦先生です。
金沢大学第三内科といたしましては、血液内科、呼吸器内科と関連した講演・シンポジウム・セミナーなどが気になるところです。ごくごく一部のみ紹介させていただきます(敬称略)。
会長講演:
・血小板検査・研究の歩み(松野一彦)
教育講演:
・抗リン脂質抗体症候群と臨床検査(家子正裕)
・気道感染症の網羅的遺伝子検査法の新展開(江崎孝行)
・悪性リンパ腫の病理を読み解くーWHO分類が伝えるメッセージー(松野吉宏)
学会賞受賞講演:
・血液凝固活性化の病態とその制御の解析(小山高敏)
シンポジウム
・DIC(播種性血管内凝固症候群)の最前線(丸山征郎、丸藤哲、福武勝幸、野村昌作)
・検査標準化と造血器悪性腫瘍診断への貢献(東克巳、米山彰子、曽根美智子、高橋裕之、吉田繁、清水雅代)
ランチョンセミナー
・特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の診断と治療ガイドライン作成の取り組み(藤村欣吾)
・稀ではあるが見落とせない後天性血友病の診断と臨床検査(家子正裕)
・DICー病態・診断・治療の最新知見ー(丸藤哲)
・血栓止血学会「エキスパートコンセンサス」にもとづく感染症性DICの治療方針(射場敏明)
・後天性血友病の診断・治療と凝固検査(鈴木隆史)
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健康診断、血液さらさら、メタボリックシンドローム:金沢大学公開講座
金沢大学公開講座2009「健康寿命をのばそう!」
ポスターバージョンでも記事にしておきたいと思います。文章バージョンの金沢大学公開講座の案内もございます。
【申込・問い合せ先】
今日の時点では、まだゆとりがあるそうです。遠慮なく、申し込み、お問い合わせくださいませ。
金沢大学地域連携推進センター
〒920-1192 金沢市角間町
TEL:076-264-5272〜5273
FAX :076-234-4045
E−mail :kaihou@ad.kanazawa-u.ac.jp
HP :http://cr.lib.kanazawa-u.ac.jp/
受付時間 8:30〜17:00
(ただし,土・日曜日,祝日,夏季一斉休業,年末年始を除く)
【地図など】
金沢大学公開講座の開催日時:平成21年9月26日 (土) 14:00〜17:00
会場:サテライト・プラザ(西町)(076-232-5343) ←サテライトプラザHPをリンク。地図もあります。武蔵が辻から近いようです。
受講料 900円
申込期限:9/11(金) 締切以降はお問合わせ下さいませ。
【リンク】
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医学部CBT試験対策:血液内科(コアカリ)、凝固検査、DIC
出血傾向(コアカリ)&CBT予想既出問題対策(血液内科、特に血栓止血領域)の記事をシリーズでお届けしてきましたので、インデックスページを作成しておきたいと思います。
出血傾向(こあかり内容から)
1)病態
2)紫斑・関節内出血
3)医療面接
4)身体診察
5)血液検査
6)血液凝固検査と鑑別診断
7)鑑別・確定診断
医学部CBT予想既出問題
1)血栓ができる病態
2)血小板減少
3)血友病A
4)脾摘術
5)紫斑
6)充血、うっ血、虚血
7)出血性梗塞
8)網赤血球
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金沢大学公開講座:健診・血液サラサラ・メタボリック症候群
金沢大学公開講座2009「健康寿命をのばそう!」
2008年4月から特定健診いわゆる「メタボ健診」がはじまり、ポッコリ出たお腹が気になり始めた方も多いのではないでしょうか。メタボリックシンドロームは動脈硬化と密接な関係があり、動脈硬化になると脳や心臓の血管がつまり脳梗塞や心筋梗塞になる危険性が極めて高くなります。
日本人の約6割が脳卒中、心臓病、がんといった病気によって死亡するといわれており、記憶の障害や寝たきりの高齢者が、2010年までに200万人に達するという予測もあります。そこで現在では、単に寿命を延ばすだけでなく、元気で活動的に暮らすことができる期間「健康寿命」をいかに延ばすかが大きな課題です。
本講座では、日常生活の中ですぐに取り入れることができて役に立つ健康情報を、皆様にわかりやすく提供したいと考えております。健診の結果をよく理解したい方、ポッコリ出たお腹を改善したい方、脳卒中や心臓病について知りたい方、是非この講座にご参加ください。皆様の健康生活を応援いたします!
開催時期:平成21年9月26日 (土) 14:00〜17:00
定員:50名
受講対象者:一般(高校生以上)
会場:サテライト・プラザ(西町)(076-232-5343) ←サテライトプラザHPをリンク。
受講料 900円(600円) ( )内は高校生以下の金額です。
申込期限:9/11(金) 締切以降はお問合わせ下さい。
主任講師:森下英理子(保健学系准教授)
プログラム
14:00 〜 15:00
「健診結果」を健康作りに 役立たせていますか?
金沢大学保健学系 准教授 森下英理子
15:00 〜 16:00
血液サラサラ ー血栓症についてー
金沢大学附属病院高密度無菌治療部 准教授 朝倉 英策
16:00 〜 17:00
メタボリックシンドロームの実態とその予防
金沢大学大学院医学系研究科 特任教授 小林 淳二
申込・問い合せ先
金沢大学地域連携推進センター
〒920-1192 金沢市角間町
TEL:076-264-5272〜5273
FAX :076-234-4045
E−mail :kaihou@ad.kanazawa-u.ac.jp
HP :http://cr.lib.kanazawa-u.ac.jp/
受付時間 8:30〜17:00
(ただし,土・日曜日,祝日,夏季一斉休業,年末年始を除く)
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網赤血球:医学部CBT試験問題対策(血液内科領域)
出血性梗塞:医学部CBT試験問題対策(血栓止血領域)から続く
網赤血球はとても重要な検査です。貧血の症例では、必ず測定すべき検査の一つです。以下に関連記事をリンクしておきたいと思います。
汎血球減少のマネジメント:特に骨髄不全について
貧血患者へのアプローチ
さて、今回のCBT問題は、また臨床問題に戻りましたので、管理人にとってはちょっと一安心です。
網赤血球の増加がみられるのはどれか。
A. 腎性貧血
B. 溶血性貧血
C. 鉄欠乏性貧血
D. 再生不良性貧血
E. 巨赤芽球性貧血
【正誤の理由】
× A 腎不全では、腎でのエリスロポエチンの産生低下により赤血球産生障害を生じます。
○ B 溶血性貧血では、網赤血球が増加します。
× C 鉄欠乏性貧血では通常網赤血球の増加は見られません。ただし、本疾患に対して鉄剤を投与しますと、治療に反応して網赤血球が増加します。
× D 再生不良性貧血では造血能は低下しており、網赤血球は低下します。
× E 巨赤芽球性貧血では造血能は低下して、網赤血球は低下します。
【確認事項】
網赤血球数は、骨髄造血能(赤血球産生能)を評価するマーカーです。貧血では必ず測定する必要がある。
・ 網赤血球が増加する疾患病態:
溶血性貧血、急性出血、化学療法後の造血能回復期、鉄欠乏性貧血に鉄剤を投与した時など
・ 網赤血球が低下する疾患病態:
再生不良性貧血、発作性夜間血色素尿症、赤芽球癆、腎性貧血、巨赤芽球性貧血、鉄欠乏性貧血など
【正答】 B
【関連記事】
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出血性梗塞:医学部CBT試験問題対策(血栓止血領域)
充血、うっ血、虚血:医学部CBT試験問題対策(血栓止血領域)から続く
前回に続きまして、病理学の要素も含まれた問題です。管理人の感覚と致しましては、出血性梗塞と言えば、まず脳梗塞の出血性梗塞を思い浮かべてしまいますが、病理学的には違うのだと思います。
出血性梗塞が起こりやすい臓器はどれか。
A. 脳
B. 肺
C. 心臓
D. 腎臓
E. 脾臓
【正誤の理由】
× A 脳は虚血性梗塞をきたします。ただし、臨床的には大きな脳梗塞では出血性脳梗塞の病態になる場合があります。
○ B 肺は出血性梗塞の病態になります。ただし、肺は肺動脈と気管支動脈のニ重支配を受けていますので、臨床的には肺梗塞にはなりにくいです(肺塞栓の言うのが正しいです)。
× C 心臓は虚血性梗塞をきたします。
× D 腎臓は虚血性梗塞をきたします。
× E 脾臓は虚血性梗塞をきたします。
【確認事項】
血栓症などのために動脈が急速に閉塞し、血流障害により限局性壊死をきたすことを梗塞と言います。
1) 虚血性梗塞(貧血性梗塞、白色梗塞):心、脳、腎、脾
2) 出血性梗塞(赤色梗塞):肺、腸、精巣、卵巣
【正答】 B
(続く)
網赤血球:医学部CBT試験問題対策(血液内科領域)へ
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充血、うっ血、虚血:医学部CBT試験問題対策(血栓止血領域)
紫斑:CBT試験問題対策(血液内科領域)から続く
このシリーズの2回前に予告(?)させていただいたように、今回からは純臨床医学問題ではありませんので、100%自信のある回答という訳ではありません。
基礎医学、特に病理学の要素が入ってきています。
しかし、多分大丈夫ではないかと思ってはいます。
充血をきたすのはどれか
A. 局所の炎症
B. 右心不全
C. 動脈内血栓
D. 静脈内血栓
E. ショック
【正誤の理由】
○ A 局所の炎症では、充血をきたします。例えば、結膜炎では、結膜充血をきまします。
× B 右心不全では、うっ血を生じます。
× C 動脈内血栓では、虚血をきたします。例えば、心筋梗塞、脳梗塞などです。
× D 静脈内血栓では、うっ血をきたします。例えば、深部静脈血栓症(DVT)などです。
× E ショックでは循環不全をきたします。
【確認事項】
充血:細動脈や毛細血管が拡張して血流が増加した状態です。
うっ血:静脈や毛細血管が拡張して静脈血が滞留した状態です。
虚血:組織への血液供給が途絶えた状態です。
【正答】 A
(続く)
出血性梗塞:医学部CBT試験問題対策(血栓止血領域)へ
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北陸血栓止血検査懇話会開催のご案内
第4回北陸血栓止血検査懇話会
北陸血栓止血検査懇話会
代表幹事 福井大学医学部附属病院 岡田 敏春
【日時】平成21年9月12日(土) 15時30分〜17時30分
【場所】金沢都ホテル5階 能登の間
【プログラム】
15時30分〜15時50分
<学術情報提供> 血液検査における採血上の注意点について
積水メディカル株式会社 検査事業部門
検査用具事業部 企画・サービス部 戸川 勝也
16時00分〜16時20分
<症例報告> ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)が疑われた症例について
公立松任石川中央病院 医療技術部 検査室 副技師長 小倉 敦子 先生
16時30分〜17時30分
<特別講演>
HIT検査など止血系臨床検査による情報発信の基礎と応用
ー現場の実情に即した問題解決による情報提供ー
関西医科大学 臨床検査医学講座 講師 小宮山 豊 先生
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血液凝固検査入門(インデックスページ)
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トランサミン:上気道炎(扁桃炎、咽喉頭炎、感冒)での是非
トラネキサム酸(商品名:トランサミン)は、何と言っても、止血剤(抗線溶薬)として有名なお薬です。
一方で、抗炎症効果を期待して、上気道炎、いわゆる風邪(かぜ)などでも、しばしば処方されることがあります。
推薦図書:「臨床に直結する血栓止血学」 トランサミンについても詳述されています。
線溶活性化の最終段階でプラスノゲンはプラスミンに転換し、このプラスミンが血栓を溶解します(その分解産物がFDPやDダイマーです)。
プラスミンは、血管内に形成された病的血栓を溶解する場合には生体にとって有利に作用しますが、過剰なプラスミンは止血のための生理的血栓(止血血栓)をも溶解して、出血の原因となることがあります。トラネキサム酸は、過剰な線溶活性化を抑制することによって止血血栓を安定化して止血効果を期待する薬物なのです。
上記に加えて、トランサミンは、血管透過性の亢進、アレルギーや炎症性病変の原因になっているキニンなどの産生を抑制することにより、抗アレルギー・抗炎症作用も示すことが知られています。
そのために、トランサミンは、以下の疾患、病態に対して、効能・効果を有しています。
1)全身性線溶亢進が関与すると考えられる出血傾向
2)局所線溶亢進が関与すると考えられる異常出血
3)湿疹及びその類症、蕁麻疹、薬疹・中毒疹における紅斑・腫脹・そう痒などの症状
4)扁桃炎、咽喉頭炎における咽頭痛・発赤・充血・腫脹などの症状
5)口内炎における口内痛及び口内粘膜アフタ
上記のうち、1)2)は抗線溶効果、3)4)5)は抗炎症効果を期待したものです。
ただし、トランサミンを、止血薬(抗線溶薬)として用いる場合であっても、抗炎症効果を期待して用いる場合であっても、安易な使用は謹むべきと考えられます。
止血剤としてのトランサミンは、種々の出血に対して処方されますが、最も効果を発揮するのは全身性の線溶活性化が原因の出血です。換言いたしますと、それ以外の出血に対する効果は限定的と考えられます。
たとえば、出血性素因が不明な場合の種々出血(鼻出血、紫斑など)に対しても、しばしばトランサミンが投与されますが、この場合も有効性に関して過度な期待を持たない方が良いと思われます。
むしろ、血尿に対してトランサミンを投与しますと、凝血塊が溶解されにくくなり尿路結石の原因になることがあるため注意が必要です。
抗炎症効果に関しても過剰な期待を持てない点は、多くの臨床家が実感しているところではないでしょうか。
上記のように、トラネキサム酸(トランサミン)が本当に効果を発揮できる臨床病態の評価が重要であることに加えて。。。
トランサミンは、血栓症という極めて重大な副作用の発現がありうる点を熟知しておく必要があります。
線溶は、生体内においては形成された血栓を溶解するという観点から、生体防御反応的意味合いを有しています。
たとえば、究極の血栓症とも言える播種性血管内凝固症候群(DIC)においては、全身臓器の細小血管に微小血栓が多発しますが、同時進行的に線溶も活性化して血栓が溶解しています。この時の線溶活性化が適度であれば、まさに生体防御反応と言うことができます。
DICに対する抗線溶薬の投与は、この折角の生体防御反応をブロックしてしまうことになるのです。
実際、DICに対して抗線溶療法を行った場合に、全身性血栓症の発症に伴う死亡例の報告が複数みられています。
特に、重症感染症(敗血症など)に合併したDICにおいては、線溶阻止因子PAI(PAIは急性期反応物質でもあります)が著増し線溶抑制状態にあるため、多発した微小血栓が残存しやすい病態です。このような病態に対して、抗線溶療法を行うことは理論的にも問題があり、絶対禁忌と言えます。
人道的な観点から、敗血症症例に対して抗線溶療法を行ったという臨床報告はみられませんが、管理人らの検討によりますと敗血症DICと病態が近似したLPS誘発ラットDICモデルに対してトランサミンを投与しますと、臓器障害は著しく悪化し死亡率極めて高くなりました。
上気道炎(扁桃炎、咽喉頭炎など)も感染症の一種ですので、重症例では線溶阻止因子PAIの上昇が容易に予想されます。このような病態で、安易にトランサミンを投与してさらに線溶を抑制することは、血栓症の誘発を避けるという意味でも謹むべきではないかと考えられます。
高齢者では血管内皮の生理的な抗血栓作用が減弱しています。より血栓症を誘発しやすい懸念がありますので、特に注意が必要と考えられます。
(補足)
念のためですが、 上気道炎(扁桃炎、咽喉頭炎など)に対してトランサミンを投与してはいけないと言っているわけではございません。安易な投与は慎むべきという考え方です。
【参考記事】
トラネキサム酸(トランサミン)
播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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紫斑:CBT試験問題対策(血液内科領域)
脾摘術:CBT試験問題対策(血液内科領域)から続く
CBTに出題されたと思われる過去問からの記事を続けます。
4歳の女児。2週間前に感冒に罹患した。3日前から下肢に紫斑が出現し、口腔内に出血がみられた。血液所見:赤血球430万、白血球6,700、血小板1.2万。最も考えられるのはどれか。
A. アレルギー性紫斑病
B. 急性リンパ性白血病
C. 特発性血小板減少性紫斑病
D. 骨髄異形性症候群
E. 再生不良性貧血
【正誤の理由】
× A アレルギー性紫斑病は、Schoenlein-Henoch紫斑病ともいいます。しばしば上気道感染症が先行し、紫斑が下肢、臀部などに出現します。腹部症状、関節症状、腎障害を伴うこともあります。血小板数が低下することはありません。時に第XIII因子活性が低下することがあります。
× B 急性リンパ性白血病でも血小板数が低下することがありますが、本症例では赤血球数、白血球数に異常なく否定的です。
○ C 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)のうち、小児ではウイルス感染症が先行する急性型ITPが多いのに対し、大人では慢性型ITPが多いのが特徴です。
× D 骨髄異形性症候群でも血小板数が低下することがありますが、本症例では赤血球数、白血球数に異常なく否定的です。
× E 再生不良性貧血では、血小板数低下のみならず、汎血球減少症の病態となります。
【確認事項】
血小板数低下をきたす疾患・病態
1) 血小板産生低下:再生不良性貧血、骨髄異形性症候群、急性白血病、巨赤芽球性貧血、発作性夜間血色素尿症など。
2) 血小板の破壊・消費の亢進:特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)など。
3) 血小板分布異常:脾機能亢進症(肝硬変、Banti症候群)など。
4) その他:偽性血小板減少症(EDTA採血管でまれにみられるartifact)など。
【正答】 C
(続く)
充血、うっ血、虚血:医学部CBT試験問題対策(血栓止血領域)へ
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脾摘術:CBT試験問題対策(血液内科領域)
血友病A:CBT試験問題対策(血栓止血領域)から続く
CBT(こあかり)に出題されたと思われる予想問題の記事を続けます。
管理人にとって100%回答に自信のある問題から紹介させていただいています。
今回の問題と次回の問題もまだ大丈夫だと思いますが、次々回以降はやや微妙です。95%大丈夫だと思うけれども、100%自信がある訳ではないという問題もあります。
基礎医学(特に病理)の要素が入ってきますと、基礎医学を何十年も離れている人間にとっては若干自信が低下してきます。
あと何回のシリーズにすべきか考慮中です。さて、今回と次回まではまだ大丈夫だと思いますのでよろしくお願いいたします。
脾摘術が適応となるのはどれか。
A. 鉄欠乏性貧血
B. 巨赤芽球性貧血
C. 遺伝性球状赤血球症
D. 再生不良性貧血
E. 悪性貧血
【正誤の理由】
× A 鉄欠乏性貧血(消化管出血、過多月経、痔など)の原因を解明した上で、鉄剤を投与します。
× B 原因に応じて、ビタミンB12または葉酸を投与します。
○ C 遺伝性球状赤血球症では、しばしば脾摘術が行われます。
× D 再生不良性貧血では、シクロスポリンや、ATGなどの治療が行われます。
× E 悪性貧血では、ビタミンB12を投与されます。
【確認事項】
脾摘術の行われる血液疾患としては、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症、Banti症候群に伴う汎血球減少症などがあります。
【正答】 C
(続く)紫斑:CBT試験問題対策(血液内科領域)へ
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金沢大学病院での研修〜外勤〜:後期研修医の独り言(3)
金沢大学病院での研修〜この4カ月間〜:後期研修医の独り言(2)から続く
【金沢大学病院での研修と外勤】
第1弾(後期研修医の独り言(1))の時に予告した外勤の事を少し書こうかと思います。
大学病院の医師は朝から晩まで大学病院にいると思われる方も多いと思いますがそうとは限りません。
外勤といって外病院(=関連病院)に行って診療する事があります。
これは関連病院からの要請にこたえ、言わば地域医療を担うという側面と、医師個人の立場で言えば、それによって収入を得るという言い方もできます。言わばお互いの需要と供給に基づいて行われているわけです。
具体的には、今僕は週1回午後人間ドックでの健康診断と、週1回午後は地域の老人施設(特別養護老人ホーム)を訪問しています。
人間ドックでは患者さんの診察や、検査結果に対するコメントをしたり、また生活指導をしたりしています。特別養護老人ホームでは体調の悪い方の診察をしたり、病院受診が必要な方には紹介状を作成して、地域の病院と連携をとったりしています。6月には衛生講座という、食中毒予防の講演会を大勢の聴衆の前でした事もありました。
これまでに特別養護老人ホームで経験した印象的な症例を2つ紹介させていただこうと思います。
息切れを主訴に来た70台男性。
聴診で心尖部に雑音を聴取。
採血を行った所Hb 7台、MCVが70台でした。
病院ではありませんので鉄やフェリチンなどを測ることはできません。
症状・病歴・検査所見から鉄欠乏性貧血と診断して鉄剤を処方。
一ヵ月後には自覚症状、Hb、MCVともに劇的に改善。
「先生、息切れよくなったわ」と言われた時はに医者冥利につきると思いました。
また原因不明の足のしびれに悩まされていた70台女性。
診察上末梢神経障害パターンと診断しビタミン剤を処方。
一週間後には「しびれがなくなったわ」と感激している姿をみたときには感激ものです(プラセボ効果を含んでいるかもしれませんが・・・)。
大学病院では血液疾患の診療という先端医療に従事し、外勤先では地域医療に貢献する。
大学病院の医師はそんな2つの顔を持った存在と言えるのかもしれません。
ただし、最近巷でよく言われているように、地方の大学病院で研修する医師が減っています。
新臨床研修制度のもと「地域医療」の研修が必修化されました。
それにより起きているのは地方の大学病院で研修する医師の減少=地域医療存続の危機という結末です。
これを解決するのはやはり「後期研修は大学病院で行う」事に尽きると思います(これは進路に迷っている初期研修医・医学生向けのメッセージです)。
そしてそれが金沢大学第三内科であれば僕にとってこれ以上の喜びはありません。
少しは後期研修医の日常を感じ取って頂いたでしょうか?
(続く)
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金沢大学病院での研修〜カンファレンス〜:後期研修医の独り言(1)
金沢大学病院での研修〜この4ヶ月間〜:後期研修医の独り言(2)
金沢大学病院での研修〜外勤〜:後期研修医の独り言(3)
【リンク】
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血友病A:CBT試験問題対策(血栓止血領域)
血小板減少:CBT試験問題対策(血栓止血領域)から続く
今回もCBTに出題されたと思われる予想問題の記事です。
血友病Aについて正しいのはどれか。
A. PT延長
B. APTT正常
C. 出血時間延長
D. 男女比1:1
E. 関節内出血、筋肉内出血
【正誤の理由】
× A 血友病Aでは、PTは正常です。
× B 血友病Aでは、APTTは延長します。
× C 血友病Aでは、出血時間は正常です。
× D 血友病Aは、男性のみに発症します。
○ E 血友病Aでは、関節内出血、筋肉内出血などの深部出血が特徴です。
【確認事項】
血友病について
血液凝固検査入門(インデックスページ)
<概念>
先天性出血性素因の一つで、伴性劣性遺伝します。母方から遺伝しますが、発症するのは男性のみです(母親がキャリアー)。なお、孤発例(突然変異)も、約20%存在します。
<種類>
血友病には、 血友病A(第VIII因子 の欠損)と 血友病B(第IX因子の欠損)がありますが、臨床症状は全く同じです。 血友病Aの方が、血友病Bよりも多く、血友病A:B=5:1です。。
<症状>
最も特徴的なのは、関節内出血です。関節内出血を繰り返しますと、関節拘縮をきたすことがあります。筋肉内出血も多いです。 その他には、皮下出血、外傷時出血、歯肉出血、鼻出血、血尿などもあります。軽症例では、抜歯時の止血困難や、術前検査で偶然診断されることもあります。
<検査>
・ プロトロンビン時間(PT)、出血時間:正常
・ 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT):延長
・ 血友病Aでは第VIII因子活性の低下、血友病Bでは第IX因子活性の低下がみられます。
<治療>
血友病A :第VIII因子製剤
血友病B :第IX因子製剤
<治療の合併症>
血友病A(B)患者にとっては、第VIII(IX)因子は未知の蛋白ということになります。
血友病A(B)患者に治療目的に第VIII(IX)因子製剤を投与しますと、抗体(同種抗体)=第VIII(IX)因子インヒビターが形成されてしまうことがあります。 凝固因子製剤の薬効が消失してしまいますので厄介な合併症です。
【正答】 E
(続く)
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血小板減少:CBT試験問題対策(血栓止血領域)
血栓ができる病態:CBT試験問題対策(血栓止血領域)から続く
前回からの続きです。過去にCBTに出題された問題です。ただし、正確には推測出題問題ですので、全く同じ問題ではないかも知れません。ご容赦くださいませ。
45歳男性。手足の皮下出血を主訴に来院した。血小板数減少、血漿フィブリノゲン減少、FDP増加、赤沈遅延がみられる。考えられるのはどれか。
A. 血友病A
B. 血友病B
C. 特発性血小板減少性紫斑病
D. 播種性血管内凝固(症候群)<DIC>
E. 再生不良性貧血
【正誤の理由】
× A 血友病Aは、先天性第VIII因子欠損症です。伴性劣性遺伝のため男性のみ発症します(女性はキャリアー)。関節内出血、筋肉内出血などの深部出血が特徴です。APTTが延長しますが、PTや出血時間は正常です。血小板数も正常です。
× B 血友病Bは、先天性第IX因子欠損症です。あとの記載内容は、血友病Aと全く同じです。
× C 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血小板数が低下しますが、フィブリノゲン、FDPは変動しません。
○ D DICは、血小板数低下、FDP上昇、フィブリノゲン低下、プロトロンビン時間延長(PT)、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)上昇などが重要所見です。
赤沈 は、
1)ヘマトクリット低下(貧血)
2)γグロブリン上昇
3)フィブリノゲン上昇
によって亢進します(3項目ともに炎症時にみられます)。
逆に1)2)3)が反対方向に変動すれば遅延します。
DICでは、フィブリノゲンが低下するため、赤沈が遅延するのです。
ただし現在の医学では、DICを赤沈で診断することはありません。フィブリノゲンを直接測定すれば良いためです。
× E 再生不良性貧血は、骨髄での白血球、赤血球、血小板の産生が低下した病態です。血漿フィブリノゲン減少、FDP増加の所見はありません。
【確認事項】
DICの病態・臨床検査所見
1) 基礎疾患の存在:敗血症、固形癌、急性白血病、常位胎盤早期剥離、羊水塞栓、腹部大動脈瘤など。
2) 本態は、全身性持続性の著しい凝固活性化状態です。同時進行的に線溶活性化がみられますが、その程度は種々です。線溶抑制型DIC、線溶均衡型DIC、線溶亢進型DICに分類されます(DICの病型分類)。
3) DICの二大症状は出血症状と臓器症状です。線溶抑制型DIC(敗血症に合併した場合など)では臓器症状がみられやすく、線溶亢進型DIC(急性前骨髄球性白血病に合併した場合など)では出血症状がみられやすいという特徴があります(DICの病型分類)。
4) 診断に必要な検査所見:血小板数低下、FDP上昇、Dダイマー上昇、フィブリノゲン低下、PT延長
5) 重要な検査所見:トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)上昇、プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)上昇、アンチトロンビン低下、α2プラスミンインヒビター低下。
【正答】 D
(続く)
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【関連記事】
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血栓ができる病態:CBT試験問題対策(血栓止血領域)
出血傾向(鑑別・確定診断):医学コアカリ対応(7)から続く
実際に昨年出題された、CBT(コアカリ)問題から、血栓止血領域のものをピックアップして、簡単な解説を試みたいと思います。
念のためですが、CBT (Computer Based Testing) と言うのは、コンピュータを用いた多肢選択型問題の試験で、全国の医学部生が、4年から5年に進級する歳にクリアしないといけないハードルです。OSCE (Objective Structured Clinical Examination) とともに共用試験の一つです。ハードルとは言っても、普通に勉強している医学生にとっては、難なくクリアできるレベルのものです。
管理人もCBTの意義を熟知している訳ではないのですが、全く勉強をしない医学生には一度反省していただこうという意味合いではないかと思っています。
さて、問題です。医学部4年生の皆様にとっても、この程度なら大丈夫! と安心されるのではないでしょうか。
(問題)血栓ができる病態でないのはどれか。
A. 貧血
B. 心房細動
C. 血液の停滞
D. 血管内皮細胞の障害
E. 血液凝固能亢進
【正誤の理由】
× A 貧血は血栓とは無関係です。多血症は血栓傾向になります。
○ B 心房細動は、脳梗塞(心原性脳塞栓)の重要な危険因子です。しばしば、ワルファリン(ビタミンK拮抗薬)による抗凝固療法が必要になります。
○ C 血液の停滞は血栓傾向の原因となります。
○ D 血管内皮細胞の障害は血栓傾向の原因となります。
○ E 血液凝固能亢進は血栓傾向の原因となります。
【確認事項】
Virchow's triadを確認しておきましょう。
静脈血栓症形成に寄与する三大要因です。
1) 血管の障害
2) 血流のうっ滞
3) 血液性状の変化
また、具体的な静脈血栓症の危険因子(代表的疾患・病態) は、以下の通りです。
1) 脱水・多血症
2) 肥満
3) 妊娠・出産(特に帝王切開出産)
4) 経口避妊薬
5) 下肢骨折・外傷
6) 手術後(特に骨盤内臓・整形外科領域)
7) 下肢麻痺、長期臥床、ロングフライト
8) 悪性腫瘍の存在
9) 心不全、ネフローゼ症候群
10) 深部静脈血栓症や肺塞栓症の既往
11) 血栓性素因:先天性アンチトロンビン欠損症、先天性プロテインC欠損症、先天性プロテインS欠損症、抗リン脂質抗体症候群など。
【正答】 A
(続く)
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【関連記事】
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:49
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西辻雅先生の。。:金沢大学呼吸器内科
祝! ○○歳の西辻先生
○月○○日は金沢大学呼吸器内科の西辻雅先生の○○歳の誕生日でした!
その日が○曜(呼吸器内科の症例カンファレンス)だったこともあり、1か月以上前から後輩達でサプライズバースデーパーティーを企画していました。
呼吸器内科のアイドル、長岡愛子先生が心をこめて作った…といいたいところですが、残念ながら前日当直だったこともあり、心をこめて(?)病院前のF堂で注文してくれました。
見てお分かりかと思いますが、直径27cmの超巨大ケーキ!イチゴの数がすごいです。
こんな大きなケーキは今まで食べたことがありません!みんなでとてもおいしくいただきました。
○○歳になった感想は“子供と遊んだら筋肉痛が2日遅れでくるようになったなぁ…”だそうです。
小人数ではありますが、それゆえに仲の良い呼吸器内科、とても楽しいひとときでした。
西辻先生、お誕生日おめでとうございます!
【関連記事】
・慢性咳嗽の診療
・ガイドライン:咳嗽の診断と治療
・好酸球性下気道疾患
【リンク】
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金沢大学病院での研修〜この4カ月間〜:後期研修医の独り言(2)
金沢大学病院での研修〜カンファレンス〜:後期研修医の独り言(1)から続く
皆さんお待ちかね(?)後期研修医の独り言第2弾です。
第1弾があったのかと言われるかもしれません。
たまに「独り言読んだよ」と言ってくださる方もいらっしゃるので、せっかくなので第2弾を書こうと思います。
気づけばあっという間に4カ月が経ってしまいました。4カ月を振り返れば、本当に色んな事がありました。もう1年くらいたったような、そんな気もしています。
今はいわゆる夏休み期間に入り、少し病棟も落ち着いているようです。簡単にこの4カ月を振り返ってみようと思います。
【大学病院での研修〜この4ヶ月間〜】
4月
初めての大学病院での勤務。とにかく何もかもが初めてで戸惑いました。
指示出しの仕方から担当患者に対するアプローチやアセスメントの仕方、色んな意味で「ここが大学病院か」と感心することが多かったです。一般病院とのカンファレンスの違いについては前回記事をご参照ください。
また、外勤や学生への指導といった一般病院では経験しなかった事も初めてするようになりました。
5月
病棟業務も少し慣れてきた頃です。骨髄穿刺にも慣れてきた頃。初めて骨髄移植患者の主治医をさせて頂く事になったのもこの頃です。
初期研修医や学生の出入りも多く、とても賑やかな病棟でした。
そんな病棟の様子については病棟医長の記事をご覧ください。
6月
少しずつ仕事にも慣れ、そろそろ治療方針の決定のプロセスにも積極的に関わろうと意識しだした頃です。
指導医の助言だけでなく、担当患者に関連する最新の文献に当たり自分なりに治療方針を決定しようと努力しました。
治療方針に難渋した症例で、少しなりとも自分の意見が治療方針に反映された時はやはり嬉しいものがありました。
7月
病棟もだいぶ慣れました��。重症患者を持つ機会も多くなりました。
ICUの先生方に「またお前か」と言われ顔馴染みになったのもこの頃。
また4月から、初めて金沢を離れて関東の研究会に行かせて頂く機会もあり、久々に初期研修医時代の同期と再会できました。
8月
夏休み期間に入り、少し病棟も落ち着いているようです。
病棟業務にも慣れ、症例をまとめたり、臨床現場で得た知見から基礎研究のアイディアが生まれ基礎実験を始めようと準備をしている(一応大学院生ですし)・・・そんなこの頃。
とまぁ本当にあっという間の4カ月であり、また中身の濃い4カ月でした。
この4カ月で色んな楽しい事、辛い事色々あったように思います。
優秀な教官方・先輩、また熱心な後輩達、親切な病棟のスタッフに恵まれ充実した後期研修をさせて頂いています。本当の意味での後期研修はこれからだと、気を引き締めて頑張ろうと思います。
第1弾の時に予告した外勤の事は、次回の記事にしたいと思います。
(続く)
金沢大学病院での研修〜外勤〜:後期研修医の独り言(3)へ
【関連記事】
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(研修医):一言お願いします(1)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(2)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(3)
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(5)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(研修医):一言お願いします(6)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(7)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(8)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(9)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(研修医係):一言お願いします(10)
金沢大学 血液内科・呼吸器内科(クリクラ):一言お願いします(11)
金沢大学病院での研修〜カンファレンス〜:後期研修医の独り言(1)
金沢大学病院での研修〜この4ヶ月間〜:後期研修医の独り言(2)
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Dダイマー & F1+2と悪性腫瘍例の静脈血栓塞栓症予知
今回は、以下の雑誌に掲載された論文を紹介させていただきたいと思います。
Ay C, et al: 血中DダイマーおよびF1+2は、担癌患者における静脈血栓塞栓症の発症を予知する
J Clin Oncol. 2009 Jul 27. [Epub ahead of print]
この雑誌は、インパクトファクターが17を超える超一流雑誌です。
論文の内容もさることながら、この雑誌(JCO)に、Dダイマー、F1+2と言った凝血学的検査および静脈血栓塞栓症との関連を論じた報告が掲載されたところに大きな意味があるかもしれません。
<論文内容の概略>
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)は、悪性腫瘍患者における重要な合併症の一つです。
臨床検査所見は、悪性腫瘍患者におけるVTE発症のリスクを評価できる可能性があります。
著者らは、悪性腫瘍関連VTEの発症を予知するために、血中Dダイマー及びプロトロンビンフラグメント1+2(prothrombin fragment 1+2:F1+2)の測定を行っています。
対象症例は、新規に診断された悪性腫瘍患者、または、最近化学療法、放射線療法、外科手術の行われていなかった再燃悪性腫瘍患者の計821例です。中央値501日間の経過観察が行われました。
疾患の内訳は、乳癌132例、肺癌119例、胃癌35例、下部消化管106例、膵癌46例、腎癌22例、前立腺癌101例、神経膠腫102例、悪性リンパ腫94例、多発性骨髄腫17例、その他47例です。
エンドポイントは、他覚的に確認できた症候性または致命的VTEです。
検討の結果、VTEは62例(7.6%)で発症しました。
DダイマーおよびF1+2のカットオフ値は、全検討症例の75パーセンタイルで設定しています。
Dダイマー高値、F1+2高値、年齢、性別、手術歴、化学療法歴、放射線療法歴を含んだ項目で、多変量解析を行ったところ、VTE発症に関して有意であったのが、Dダイマー高値とF1+2高値でした。
Dダイマー高値症例のVTE発症のハザード比(HR)1.8(p=0.048)、F1+2高値症例のHR 2.0(p=0.015)でした。
6ヶ月後にいたるまでのVTE累積発症は、Dダイマー、F1+2両者ともに高値であった群が、15.2%と最も高率でした(DダイマーもF1+2も低値であった場合には5.0%)。ただし、Dダイマー、F1+2のいずれか一方のみの高値例では、VTE発症リスク上昇はありませんでした。
以上、Dダイマー高値とF1+2高値は、独立した因子として悪性腫瘍患者におけるVTE発症を予知するものと考えられました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この論文の注目点は以下ではないかと思っています。
1)悪性腫瘍患者の計821例と多数例で、VTE発症と凝血学的マーカーの関連を検討したこと。
2)Dダイマーのみならず、DダイマーとF1+2の同時測定の意義を見いだしたこと。
なお、なぜTATやSF(FMC)ではなく、F1+2で検討したのかにつきましては、管理人も不思議に思っています。TATやSF(FMC)では、また違った成績になったかも知れません。
【深部静脈血栓症/肺塞栓シリーズ】
1)概念
2)整形外科手術、地震災害
3)症状&診断
4)治療
5)予防、ガイドライン
6)下大静脈フィルター
7)危険因子、血栓性素因
【推薦シリーズ】
・血液凝固検査入門(図解)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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抗リン脂質抗体症候群(インデックスページ)
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血管内大B細胞リンパ腫ほか(ダウンロード)
金沢大学血液内科・呼吸器内科(第三内科)ホームページからは、多くのダウンロードがなされています。
ご愛用いただきありがとうございます。
最近1ヶ月の間にダウンロードの多かった記事を列挙しておきたいと思います。
【リンク】
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PT-INR、Dダイマー、プラビックスほか
金沢大学血液内科・呼吸器内科のブログである「血液・呼吸器内科のお役立ち情報」へは、いろんな形でご訪問いただいています。いつもご支援いただきありがとうございます。
その中でも、単一のブログ記事に対してアクセスの多かったランキングを紹介させていただきます。最近1ヶ月間の集計です。
ブログトップページや記事カテゴリーなどからご訪問いただくことも多いですが、今回はそのような場合は割愛しています。
主として、Googleや、Yahoo検索で、単一のブログ記事に対してアクセスいただいたものです。
|
PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)? |
4,994 |
5.95% |
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PT(PT-INR)とは? 正常値、ワーファリン、ビタミンK欠乏症 |
4,730 |
5.64% |
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Dダイマー(D dimer:DD)とは? :FDP/Dダイマー比 |
2,033 |
2.42% |
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|
血液凝固検査入門:インデックスページ(図解シリーズ) |
1,858 |
2.21% |
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プラビックス、プレタール、パナルジン、プロサイリン、ドルナー、ワーファリン、納豆 |
1,600 |
1.91% |
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播種性血管内凝固症候群(DIC):インデックスページ(図解シリーズ) |
1,598 |
1.90% |
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|
APTTとは? ヘパリンのモニタリングか。。。 |
1,287 |
1.53% |
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|
急性期DIC診断基準 vs. 旧厚生省(厚労省)DIC診断基準 |
1,120 |
1.33% |
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|
|
鳩尾(みぞおち)の場所:心窩部 |
1,027 |
1.22% |
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|
播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態、診断、治療(研修医/学生対応) |
1,013 |
1.21% |
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血液疾患先端フォーラムのご案内
第10回血液疾患先端フォーラム
日時:平成21年9月26日(土) 17:00より
場所:ホテル金沢 2F「ダイヤモンドルーム」
プログラム
【製品紹介】ファンガード最新の話題
【特別講演】
座長 金沢大学大学院医学系研究科 細胞移植学 教授 中尾眞二
『 血液疾患における深在性真菌症の経験的治療:ミカファンギンの有用性に関する多施設共同前方視的検討 』
演者 石川県立中央病院 血液内科 診療部長 山口 正木 先生
『 臍帯血移植における感染対策 』
演者 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液内科 部長 谷口修一 先生
*会費:500円(学生は免除)、会終了後 情報交換会あり。
共催:血液疾患先端フォーラム/アステラス製薬株式会社
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出血傾向(鑑別・確定診断):医学コアカリ対応(7)
出血傾向(血液凝固検査と鑑別診断):医学コアカリ対応(6)からの続き
【鑑別診断から確定診断へ】
<出血傾向の病態による鑑別>
1) 血小板数の低下:血算で確認。
2) 血小板機能の低下:出血時間で確認。
3) 凝固異常:PT、APTT、フィブリノゲンなどで確認。
4) 線溶過剰亢進:FDPで確認。
5) 血管壁の異常:出血時間、全ての血液凝固検査は正常。
血液凝固検査入門(インデックスページ)
<出血傾向の先天性・後天性の鑑別>
1) 先天性の出血傾向
・ 外傷時、手術時、抜歯時の異常出血の既往。
・ 幼少時からの出血。
・ 血縁者で出血しやすい者がいる。
2) 後天性の出血傾向:上記がない。
<確定診断までのプロセス>
上記のように、まず、出血傾向の病態、先天性・後天性の鑑別を行っていきます。
医療面接や身体所見では、疾患特徴的な出血症状がないかどうか注意します。特に、紫斑の性状、関節内出血の有無、鼻出血の有無などは極めて重要です。
最終的には、血小板数、出血時間、血液凝固検査(PT、APTT、フィブリノゲン、FDPなど)が確定診断の決め手となります。
なお、血小板数が低下した病態では、骨髄穿刺検査を行って骨髄像をチェックする必要があります。
血液凝固検査入門(インデックスページ)
(続く)
血栓ができる病態:CBT試験問題対策(血栓止血領域)へ
【関連記事】
全身性出血性素因の最初の検査
鼻出血(鼻血が止まらない):粘膜出血
止血剤の種類と疾患:ノボセブン、アドナ、トランサミンなど。
ノボセブン(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤):究極の止血剤。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:17
| 出血性疾患
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医学部コア・カリキュラム(出血傾向):CBT対策
出血傾向(医学コアカリ)が完結しましたので、インデックスページを作成しておきたいと思います。
CBT対策は、出血傾向に関しましては、これで万全だと良いのですが。。。
出血傾向
1)止血機序、出血傾向の原因(分類)
2)紫斑の種類、関節内出血
3)医療面接と出血傾向
4)身体診察
5)血液凝固検査、出血時間
6)代表的出血性素因と検査(鑑別表)
7)鑑別から確定診断へ
上記に加えて重要疾患は個々に勉強しておいた方が良いと思います。
CBT出題されやすい疾患、項目
(管理人の独断と偏見ですのであたらなかった場合はご容赦を)
1)特発性血小板減少性紫斑病(ITP):教科書的なITP(CBTで出題されるITP)では骨髄で巨核球の増加がみられます。
2)播種性血管内凝固症候群(DIC)
3)血友病
4)血液凝固検査の理解:とても重要だと思います。特に、PT、APTT、フィブリノゲン、FDP、出血時間、血小板数などは、完璧に評価できるようにしておくべき項目です。
5)ビタミンK欠乏症
6)ワルファリン、アスピリンなどの抗血栓療法:ワルファリンで低下するビタミンK依存性蛋白は、完璧に記憶しておく必要があります。
7)その他:
出血ではなく血栓傾向なのですが、管理人であれば、血栓症と関連のある自己抗体(抗リン脂質抗体症候群の記事の中で書かせていただいています)なども出題したいところです。
抗リン脂質抗体症候群は極めて発症頻度の高い疾患(common disease)ですし、是非学生時代から熟知しておいて欲しいです。
血液凝固検査入門(インデックスページ) ← 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンク。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:54
| 出血性疾患
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出血傾向(血液凝固検査と鑑別診断):医学コアカリ対応(6)
出血傾向(血液検査):医学コアカリ対応(5)からの続き
出血性疾患の鑑別には、血液凝固検査がとても重要です。
出血性疾患のなかでも、代表的な疾患・病態について、検査所見がどうなるのか表にしておきたいと思います。
なお、いずれの疾患・病態についても、「典型例」についての変動を書かせていただきます。
血液凝固検査入門(インデックスページ)
疾患名 |
血小板数 |
出血時間 |
PT |
APTT |
フィブリノゲン |
FDP |
血友病A&B |
N |
N |
N |
↑ |
N |
N |
von Willebrand病 |
N |
↑ |
N |
↑ |
N |
N |
血小板無力症 |
N |
↑ |
N |
N |
N |
N |
ビタミンK欠乏症 |
N |
N |
↑ |
↑ |
N |
N |
DIC |
↓ |
↑ |
↑ |
↑ |
↓ |
↑ |
先天性第VII因子欠損症 |
N |
N |
↑ |
N |
N |
N |
肝硬変 |
↓ |
↑ |
↑ |
↑ |
↓ |
N |
老人性紫斑病 |
N |
N |
N |
N |
N |
N |
ワルファリン内服 |
N |
N |
↑ |
↑ |
N |
N |
アスピリン内服 |
N |
↑ |
N |
N |
N |
N |
N:正常
(続く)
出血傾向(鑑別・確定診断):医学コアカリ対応(7)へ
【関連記事】
全身性出血性素因の最初の検査
鼻出血(鼻血が止まらない):粘膜出血
止血剤の種類と疾患:ノボセブン、アドナ、トランサミンなど。
ノボセブン(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤):究極の止血剤。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:16
| 出血性疾患
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出血傾向(血液検査):医学コアカリ対応(5)
出血傾向(身体診察):医学コアカリ対応(4)からの続き
【検査と出血傾向】出血傾向患者における検査のポイント
出血傾向でまず最初に行うべき血液スクリーニング検査は、以下の1)〜5)になります。
ただし、以下の検査ではスクリーニングされない出血性疾患もあることも知っていた方が良いです。
具体的には、先天性第XIII因子欠損症、先天性α2PI欠損症などは、以下の検査ではスクリーニングされません。この2疾患は極めてまれな疾患ですので、全ての出血傾向の患者さんでチェックするのは現実的ではありません。まずは、以下の6項目で良いでしょう。
1) 血算(血小板数を含む)
2) 出血時間
3) プロトロンビン時間(PT)
4) 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
5) フィブリノゲン
6) FDP(Dダイマー)
【血小板数 & 血小板機能】
・ 血小板数低下がみられた場合:
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、溶血性尿毒症症候群(HUS)、再生不良性貧血、急性白血病、肝硬変(肝硬変ではPT&APTT延長所見もあります)などが相当します。
・ 血小板数低下がみられない場合:
1) 出血時間延長(+):
血小板機能の低下した病態・疾患を考えます(血小板無力症、von Willebrand病、Bernard-Soulier症候群、NSAID内服、尿毒症など)。なお、von Willebrand病では、出血時間のみでなくAPTTも延長します。
2) 出血時間延長(-):
血小板機能は正常であることを意味します。PT、APTTなどの凝固検査で評価します。全ての凝固検査が正常であれば、老人性紫斑病、単純性紫斑病などが相当します。
凝固検査に異常があれば、下記で鑑別します。
【凝固・線溶】
・ PT正常 & APTT延長:
血友病A(第VIII因子の欠損)、血友病B(第IX因子の欠損)、von Willebrand病(von Willebrand病では出血時間も延長します)など。
・ PT延長 & APTT正常:
先天性第VII因子欠損症など。
・ PT延長 & APTT延長:
ビタミンK欠乏症、先天性第X、V、II因子欠損症、無フィブリノゲン血症、肝硬変(肝硬変では血小板数低下もみられます)など。
・ FDP、Dダイマー上昇:
播種性血管内凝固症候群(DIC)を考えます。典型的なDICでは、血小板数低下、フィブリノゲン低下、PT&APTT延長と言った所見もみらます。
なお、今回の記事は出血傾向の記事ですが、出血傾向に限定しないのであれば、深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)でも、FDPやDダイマーの上昇がみられます。
さらに追加しますと、出血傾向ではなく血栓性素因ですが、抗リン脂質抗体症候群(ループスアンチコアグラント陽性)症例でもAPTTは延長することがあります。
(続く)
出血傾向(血液凝固検査と鑑別診断):医学コアカリ対応(6)へ
【関連記事】
全身性出血性素因の最初の検査
鼻出血(鼻血が止まらない):粘膜出血
止血剤の種類と疾患:ノボセブン、アドナ、トランサミンなど。
ノボセブン(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤):究極の止血剤。
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ワルファリン内服と皮膚壊死:先天性プロテインC欠損症
ワルファリン(商品名:ワーファリン)は、血栓性疾患に頻用される抗血栓療法治療薬です(PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?)。
<参考>
抗血栓療法
1)抗血小板療法:アスピリンなど。
2)抗凝固療法:ワーファリンなど。
3)線溶療法:ウロキナーゼ、t-PAなど。
ビタミンK依存性蛋白
1)凝固VII、IX、X、II因子:半減期の順番です。第VII因子が最も半減期が短いです(ビタミンK依存性凝固因子:血液凝固検査入門(16))。
2)プロテインC、プロテインS :これらの凝固阻止因子もビタミンK依存性です。
3)オステオカルシン:骨代謝と関連したビタミンK依存性蛋白です。ワーファリンには再奇形性がありますが、オステオカルシンの活性を低下させることが大きな要因です。
不思議なことにワーファリンの使用によって、かえって血栓傾向が悪化する場合があります。
以下のような病態です。
【ワルファリン内服による皮膚壊死】
・プロテインC(Protein C:PC)の血中半減期はプロトロンビンや第X、第IX因子に比べて短いため、ワルファリン投与開始1〜2日後にPC活性が急激に低下します(電撃性紫斑病とワーファリン:血液凝固検査入門(21))。
・先天性PC欠損症症例(ヘテロ接合体では、元々PC活性が半減しています)に対してワルファリンを投与しますと、PC活性は著しく低下して0%に近づきます。
・このため、先天性PC欠損症ではワルファリン投与に伴い、過凝固状態となり微小血栓が多発して皮膚壊死(warfarin-induced skin necrosis)をおこすことがあります。電撃性紫斑病の病態です。二次的に出血して紫斑が見られますが、本態は出血ではなく著しい血栓傾向です。
・出血と血栓症という相反する病態が共存するという観点からは、播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態と相通ずるかも知れません。
【シリーズ】先天性血栓性素因:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症
1)病態
2)疫学
3)症状
4)血液・遺伝子検査 ←遺伝子検査のご依頼はこちらからどうぞ。
5)診断
6)治療
血液凝固検査入門(インデックスページ) ← クリック! 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンクしています。
【関連記事】
先天性血栓性素因の診断
出血性素因の診断
血栓症と抗血栓療法のモニタリング
血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)
先天性アンチトロンビン欠損症の治療
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:42
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プロテインS Lys196Glu変異(PS Tokushima変異)
プロテインS Lys196Glu変異
・PS (Protein S:PS)Tokushima(徳島)変異とも呼ばれています。
・プロテインS分子の第2EGFドメイン内にある196番目のリジン(Lys)がグルタミン酸(Glu)に変異しているプロテインS分子異常です。
・血中のPS抗原量の低下は見られませんが、ヘテロ接合体者のPS活性は健常者の平均より約16%低下しています。
・現在までのところ日本人にしか同定されておらず、日本人における静脈血栓塞栓症の最も多い危険因子の一つであることが判明しています。
・この疾患であるにもかかわらず診断に到達していない症例が多数埋もれているものと推測されます(抗リン脂質抗体症候群も埋もれ症例が多いと推測される点で、この疾患と合い通じるものがあります)。
(参考)
先天性PS欠乏症の発症頻度は、1.12%です。欧米人での発症頻度 0.16〜0.21%と比較して、5〜10倍も高いことが判明しています。
以下の、リンク「先天性血栓性素因:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症」より詳細をご覧いただけます。
【シリーズ】先天性血栓性素因:アンチトロンビン・プロテインC&S欠損症
1)病態
2)疫学
3)症状
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5)診断
6)治療
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【関連記事】
先天性血栓性素因の診断
出血性素因の診断
血栓症と抗血栓療法のモニタリング
血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)
先天性アンチトロンビン欠損症の治療
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