悪性リンパ腫(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫):標本1
BSL標本カンファレンス:毎週火曜 17:30〜18:00ごろ 金沢大学第三内科医局
(関連記事)
NETセミナー:悪性リンパ腫の診断
悪性リンパ腫:1
悪性リンパ腫:2
悪性リンパ腫:3
2008年9月30日(火)
今回のテーマは「ホジキン病関連」でした。
提示された3症例を3回に分けてご報告します。
非ホジキンリンパ腫との鑑別が非常に難しい症例が含まれていました。みなさんよく勉強されていて、難しい質問がたくさん飛び出しました。
症例1 40代男性
現病歴 金沢大学血液内科受診3ヶ月前からの右頸部リンパ節腫脹で発症、B症状なし。
身体所見 右頸部に、直径5cmと4cm大のリンパ節を2個触知、他の表在リンパ節や肝・脾触知せず。
主要な検査結果 LDH 205と軽度上昇、可溶性IL-2受容体(sIL-2R、リンパ腫の腫瘍マーカー、基準値220〜530 U/mL) 997と軽度〜中等度に上昇。
CT 右頸部リンパ節腫大、PET 同部位に集積亢進。
右頸部リンパ節生検標本
◆H-E染色(核が紫、細胞質がピンクに染まる)
正常な、ろ胞構造は完全に消失している。
小型の細胞の中に大型の細胞が散在。
1核:Hodgkin細胞
2核以上:Reed-Sternberg細胞
弱拡では、リンパ節周囲の被膜が肥厚しており、リンパ節内にも線維の増生が見られる部位があった。
免疫染色
◆CD30:大型の異常細胞が陽性を示している
矢印で示してある茶色の細胞が陽性
細胞で、核は青〜紫色に染色されている。
CD30はclassical Hodgkin lymphomaの多くで陽性となるが、anaplastic large T-cell lymphomaやDiffuse large B-cell lymphomaの一部、EBV感染細胞なども陽性となる。3回終了後のQ&Aでも話題がでます。
◆CD15:CD30と同様に大型の異常細胞が陽性を示した
CD15は正常顆粒球に見られるが、classical Hodgkin lymphomaの多くが陽性となる。
◆CD20:大型の異常細胞が陽性を示した
CD20はB細胞のマーカーで、(正常なB細胞はもちろん陽性で)腫瘍ではほとんどのB細胞性リンパ腫のほか、Nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphomaやclassical Hodgkin lymphomaの一部でも陽性となる。
◆CD3(T細胞のマーカー):腫瘍細胞と考えられる大型細胞は陰性で(写真では見えにくいが強拡大で薄い青紫の大型細胞が存在)、その周囲をとりかこむ小型細胞が染まっている
これを「ロゼット形成」という(ホジキン病に特徴的)
◆EBER:大型の異常細胞が陽性
ホジキンリンパ腫の半数でEBVが陽性であるとの報告があり、mixed cellular typeのホジキンリンパ腫や、小児と高齢者のホジキンリンパ腫で頻度が高い。EBVとホジキンリンパ腫の因果関係については現在も研究が続けられている。
診断 ホジキンリンパ腫(結節硬化型)、臨床病期 Ann Arbor分類のIA(リンパ節あるいはリンパ組織の1箇所のみに浸潤)
Q&A
・免疫染色は細胞のうちどの部分がそまるのか?
>>種類によって細胞質内、細胞膜、核内など染色パターンは様々
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:50
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播種性血管内凝固症候群(DIC):基礎疾患(図解4)
DICは多くの基礎疾患に合併します。
内科系、外科系を問わず、ほとんど全ての科で遭遇する疾患と言うことができます。
その中でも、
DIC基礎疾患の三大疾患は、敗血症、急性白血病、固形癌です。
論文によっては、この三疾患でDICの7〜8割を占めるという報告もあります。
その他の基礎疾患も含めて診療領域別に列挙したいと思います。
全内科・外科系(救急部を含む):
敗血症、重症感染症
全内科・外科系:固形癌
血液内科:急性白血病(
病態、
治療)
産科:常位胎盤早期剥離,羊水塞栓
救急部:外傷(頭部外傷、骨折を含む)、熱傷
内科、膠原病内科:膠原病(特に血管炎合併例)
全科:ショック
血管外科、血管内科:大動脈瘤
消化器内科:劇症肝炎、肝硬変、急性膵炎
などが知られています。
なお、DICという病態が発見されるきっかけになったのは、
常位胎盤早期剥離です。そういう意味では、常位胎盤早期剥離は深い意義を有していることになります。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:41
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播種性血管内凝固症候群(DIC):病態、TAT、PIC(図解3)
播種性血管内凝固症候群(DIC)の最も本質部分は、基礎疾患の存在下における全身性持続性の著しい凝固活性化状態です。
さらりと書かせていただきましたが、局所性ではなく全身性の凝固活性化ですし、一過性ではなく持続性の凝固活性化です。
凝固活性化のマーカーとしては現在トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が頻用されています。ですから、DICの本態である凝固活性化をみることのできるTATは極めて意義深いマーカーということができます。換言しますと、もしTATが全く正常であれば凝固活性化がないということになりますので、この一点のみでDICを否定することができます。
また、程度は種々ですが、凝固活性化と同時進行的に必ず線溶活性化がみられます。この線溶活性化の程度はプラスミン-α2PI複合体(PIC)で評価可能です。線溶活性化はDICのタイプを分類する重要な要素の一つですので、PICを測定すればDICの病型を分類することができます。
このように、DICの本態である凝固活性化を評価するTAT、同時進行的に見られる線溶活性化を評価するPICは、とても重要なマーカーです。
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播種性血管内凝固症候群(DIC):病態と疫学(図解2)
播種性血管内凝固症候群(DIC)の本態は、全身性持続性の著しい凝固活性化状態です。ですから、DICはまさに究極の血栓症(血栓症の王様)ということができると思います。
ただし、DICは究極の血栓症であるにもかかわらず、出血症状がみられることがあります。本来であれば、「血栓」と「出血」というのは、180度ベクトルの異なった病態なのですが、この相反する病態が共存しているところがDICの難しいところでもあり(病態の面でも、治療の面でも)、予後が芳しくない理由と考えられます。
旧厚生省(厚生労働省)研究班の疫学調査によりますと、DIC患者数は73,000人/年と推測されています。また死亡率は、56.0%と極めて予後不良です。DIC症例では、基礎疾患そのものが重篤なことが多く、基礎疾患のために救命できないこともありますし、また、DIC以外の合併症により救命できないこともあります。
しかし、DICそのものが死因となった例が、9,800人/年と報告されています。言い方を変えますと、DICの診断技術の向上や治療法の改善により年間に約1万人の方を救命しうるということができます。
DICの研究は、この年間に約1万人の方を救命するためにあるということができます(もちろん世界的に言えばさらに大きな数になります)。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:47
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播種性血管内凝固症候群(DIC):概念(図解1)
適切な治療を行う上でも、DICの病態を理解しておくことは重要です。
播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)とは、基礎疾患の存在下に全身性かつ持続性の著しい凝固活性化をきたし、全身の主として細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態です。凝固活性化と同時進行的に線溶活性化がみられますが、その程度は基礎疾患により、あるいは症例ごとに相当の差異がみられます。
微小血栓多発の結果として、しばしば血小板や凝固因子と言った止血因子が低下します。このよな病態を、消費性凝固障害(consumption coagulopathy)と言います。
この消費性凝固障害と、線溶活性化があいまって出血症状をきたします。
従来、DICにおいて出血症状がみられる理由としては、消費性凝固障害が強調されてきましたが、管理人らはむしろ線溶活性化の要素の方が大きいと考えています。
その理由は、同じような血小板数低下がみられたような症例を比較した場合でも、線溶活性化が高度なタイプのDICでは出血症状が著しいのに対しまして、線溶活性化が抑制されたタイプのDICでは意外と出血症状がみられないからです。
出血も目で見てわかる出血(皮下出血など)と、目で見て分からない出血(脳出血など)がありますが、後者の方がより怖いということができるでしょう。
微小血栓が多発した結果として、重要臓器における微小循環が起きますと臓器不全をきたします。
循環障害も目で見てわかるもの(四肢末梢循環不全など)と、目で見て分からないもの(腎糸球体フィブリン沈着など)がありますが、後者の方がより怖いということができるでしょう。
この、出血症状と、臓器症状は、DICの二大症状と言われています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:16
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プラビックス、プレタール、パナルジン、プロサイリン、ドルナー、ワーファリン、納豆
【プラビックスとは】
抗血小板薬のプラビックス(薬品名:クロピドグレル)は、パナルジン(薬品名:チクロピジン)の改良型です。プラビックスのことを、スーパーパナルジンと言ったこともあります。
よく、種々の抗血栓薬の違いについてご質問をお受けしますので、代表的な抗血栓薬の比較をしたいと思います。
【プラビックスとパナルジンの比較】
パナルジンには、肝障害、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、無顆粒球症などの副作用が問題になることがあります。これらの副作用はまれですが、一旦発症しますと重症化することがあります。プラビックスでは、これらの副作用が明らかに少なくなっています。しかも、効果はパナルジンと同等以上です。すべての点で、パナルジンよりもプラビックスの方が優れているように思います。
ただし、一点のみ、プラビックスの方が劣る点があります。薬価が高いことです。どのようなお薬でも、新薬は高いのが特徴です。新薬の開発に、製薬会社も莫大な資金を投入していますので、ある程度高いのは仕方のないところです。
しかし、薬価の点を除きますと、すべての点において、プラビックスの方が優れていると考えて良いと思います。もし、管理人が内服するのであれば、迷うことなく、パナルジンではなくプラビックスを選択すると思います。
【プラビックスとプレタールの比較】
プラビックスも、プレタールも、抗血小板薬(血小板機能を抑制する)という点では共通しています。
プラビックス:
上記のごとく、パナルジンの改良薬です。パナルジンより副作用が少なく効果は同等以上です。今後、パナルジンはあまり使用されなくなり、代わってプラビックスの処方が多くなっていくものと推測されます。血小板の働きを抑制します。
プレタール(補足:プロサイリン、ドルナー):
血小板抑制作用に加えて、血管拡張作用があります。ラクナ梗塞に対してエビデンスがあるのはプレタールのみです。また、閉塞性動脈硬化症(ASO)の特効薬でもあります(プロサイリン、ドルナーもASOの特効薬です)。頭重と、動悸の副作用が高頻度に出現しますので、患者様に充分説明させていただく必要があります。副作用を軽減するために、少量から漸増していくのがコツです。
(補足)ASO治療薬であるプロサイリン、ドルナーにも血小板抑制作用に加えて、血管拡張作用があります。頭重と、動悸の副作用が高頻度に出現する点も、プレタールと共通しています。
【プラビックスとワーファリンの比較】
抗血小板薬(アスピリン、パナルジン、プラビックスなど)と、抗凝固薬(ワーファリン)は、違う分類に入るお薬です。
ですから、プラビックスは抗血小板薬、ワーファリンは抗凝固薬です。当然ながら、治療対象疾患が異なってきます。
抗血小板薬は、血小板活性化がおきている病気で使用します。具体的には、プラビックスの適応は下記の通り、虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制などです。
抗凝固薬は、凝固活性化がおきている病気で使用します。具体的には、ワーファリンは、深部静脈血栓症、肺塞栓、心房細動などで用いられます。
ただし、同じ脳梗塞の再発予防でも、心原性脳塞栓症(心房細動が原因)の場合は、プラビックスではなくワーファリンを使用します。
【プラビックスとビタミンK】
プラビックスは、ビタミンKにより効果がなくなるということはありません。
たとえば、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)のお薬に、グラケーというお薬がありますが(グラケーはビタミンKそのものです)、プラビックスに併用しても何ら問題ありません。
ただし、ワーファリン(ビタミンKの拮抗薬です)内服中の患者さまは、ビタミンK製剤(グラケーなど)を内服してはいけません。
【プラビックスと納豆】
抗血栓薬としては、
1)抗血小板薬:アスピリン、パナルジン、プラビックス、プレタール、プロサイリン、ドルナーなど。
2)抗凝固薬:ワーファリンなど。
などが知られています。
上記のお薬のなかで、納豆を食べていけないのは、ワーファリン内服中のみです。ワーファリンはビタミンKの拮抗薬ですが、納豆には極めて大量のビタミンKが含有されているために、ワーファリンの効果を打ち消していまうのが理由です。
プラビックスを内服していても、納豆は普通に食して全く問題ありません。
【効能】
プラビックス
1)虚血性脳血管障害(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制。
2)経皮的冠動脈形成術(PCI)が適用される急性冠症候群(不安定狭心症、非ST上昇心筋梗塞)(アスピリンと併用します)。
パナルジン
1)血管手術及び血液体外循環に伴う血栓・塞栓の治療ならびに血管手術及び血液体外循環に伴う血流障害の改善。
2)慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感などの阻血性諸症状の改善。
3)虚血性脳血管障害(一過性脳虚血発作(TIA)、脳梗塞)に伴う血栓・塞栓の治療。
4)クモ膜下出血術後の脳血管攣縮に伴う血流障害の改善。
プレタール
1)脳梗塞(心原性脳塞栓症を除く)発症後の再発抑制
2)慢性動脈閉塞症に基づく潰瘍、疼痛及び冷感等の虚血性諸症状の改善
ワーファリン
血栓塞栓症(静脈血栓症、心筋梗塞症、肺塞栓症、脳塞栓症、緩徐に進行する脳血栓症等)の治療及び予防。
関連記事(リンクしています)
・血管内皮と抗血栓作用
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
・アリクストラ(フォンダパリヌクス)
・プロタミン(ヘパリンの中和)
・スロンノン(アルガトロバン)
・フサン(線溶亢進型DICに対する特効薬)
・リコモジュリン(トロンボモジュリン製剤)
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・血栓症の分類と抗血栓療法の分類
・抗血小板療法 vs, 抗凝固療法(表)
・PT-INRとトロンボテスト
・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
・ワーファリン
・プラビックス:パナルジン、プレタール、プロサイリン、ドルナー、ワーファリンとの比較(納豆は大丈夫か?)
・抗Xa vs. 抗トロンビン
・深部静脈血栓症
・ロングフライト血栓症
・閉塞性動脈硬化症
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:11
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血管内皮:トロンボモジュリン、ヘパリン様物質、PGI2、NO、t-PA
血管内皮の神秘
なぜ血管内を循環している条件下では、血液は凝固しないのでしょうか?
それは、血管の内部を覆う血管内皮の果たす役割が極めて大きいと考えられています。血管内皮からは、血液を凝固させないための多くの抗血栓性物質が産生されています。
すなわち、以下のような物質が産生されることで、血栓ができにくいようになっています。
1) トロンボモジュリン(TM)
2) ヘパリン様物質(ヘパラン硫酸)
3) PGI2(プロスタサイクリン)
4) 一酸化窒素(NO)
5) 組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)
これらの血管内皮から産生されている物質のほとんどはお薬になっています。人間は血管内皮をヒントにして、素晴らしいお薬を作り出したとも言えるのです。
少し、解説を追加したいと思います。
● 血管内皮には、トロンボモジュリン(TM)という抗血栓性物質が存在しています。トロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン)が、2008年5月についに市販されるようになりました。究極のDIC治療薬です。
さて、このトロンボモジュリンですが、2つ戦法で凝固を抑えています。
1)トロンビンを捕捉します。このことで、トロンビンの作用を抑制しますので、凝固を抑えていることになります。
2)加えて、トロンビン-トロンボモジュリン複合体は、プロテインC(PC)という凝固阻止因子を飛躍的に活性化して、活性型プロテインC(APC)に転換します。このAPCは、活性型第V因子(Va)と、活性型第VIII因子(VIIIa)を抑制します。この2段戦法による凝固の阻止は極めて効率良いと考えられています。
このトロンボモジュリンは、全身の臓器に広く分布していますが、ある臓器ではほとんどトロンボモジュリンが分布していないことが知られています。その臓器は、人間のからだの中で、最も血栓症が多い臓器としても知られています。
さて、トロンボモジュリンが分布していない臓器=最も血栓症が多い臓器とはどこでしょう? それは脳です。脳は、人間の体の中で最も血栓症が多い臓器ですが、トロンボモジュリンが分布していないことが大きな理由ではないかとも考えられています。
なお、トロンボモジュリンは血管内皮がダメージを受けますと、血中に遊離しやすいことが知られています。現在、血中トロンボモジュリン濃度を測定可能ですが、血管内皮障害のマーカーとして用いられています。
● 血管内皮には、ヘパリン様物質が存在します。ヘパリンという血栓症の治療に使われるお薬がありますが、血管内皮にはヘパリン類似物質が存在します。
このヘパリン様物質には、抗凝固性蛋白であるアンチトロンビン(antithrombin:AT)とTFPI(tissue factor pathway inhibitor:外因系経路インヒビター)が結合しています。アンチトロンビンは肝臓で産生されますし、TFPIは血管内皮から産生されます。
血管内皮は、アンチトロンビンとTFPIによってがっちりと保護されていることになります。
● 血管内皮からは、プロスタサイクリン(PGI2)と、一酸化窒素(nitric oxide:NO)が産生されます。この両物質は類似の作用を発揮します。すなわち、血小板機能抑制作用と、血管拡張作用です。血小板機能を抑制することでも抗血栓作用を発揮しますが、合わせて血管拡張作用を有することで、良好な循環維持に寄与します。
● このように、血管内皮には、トロンボモジュリンが存在し、アンチトロンビンやTFPIが結合し、一酸化窒素(NO)やプロスタサイクリン(PGI2)が産生されます。血栓症に対する防御は盤石のように感じます。しかし、どうもこの血栓症バリア機序は盤石ではないようで、しばしば人間は血栓症を発症します。
そういう時のために、できた血栓を溶かそうという働きがあります。その働きを、線溶と言います。血管内皮から組織プラスミノゲンアクチベーター(t-PA)が産生されます。t-PAは、肝臓で産生されたプラスミノゲン(Plg)をプラスミンに転換します。プラスミンは、血栓(フィブリン)を分解して、FDP(Dダイマー)にします。t-PAとプラスミノゲンは、血栓(フィブリン)親和性が高く、血栓のある場で、要領よく血栓を溶解します。
血管内皮には、このように多くのお宝成分が存在しています。
人間はそのお宝を見つけ出して、お薬(抗血小板薬、抗凝固薬、抗血栓薬)に転換してきました。
管理人が学生のころに習ったのは、アンチトロンビンと、PGI2くらいだったと思います。
その他につきましては、その後に次々と見つけ出されたのだと思います。
この勢いでいきますと、まだまだお宝は眠っているのではないでしょうか。。。
関連記事(リンクしています)
・血管内皮と抗血栓作用
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
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・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
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・アリクストラ(フォンダパリヌクス)
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・フサン(線溶亢進型DICに対する特効薬)
・リコモジュリン(トロンボモジュリン製剤)
・NETセミナー:DICの病態・診断
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・PT-INRとトロンボテスト
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・ワーファリン
・プラビックス:パナルジン、プレタール、プロサイリン、ドルナー、ワーファリンとの比較(納豆は大丈夫か?)
・抗Xa vs. 抗トロンビン
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・閉塞性動脈硬化症
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:59
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大倉徳幸Dr(呼吸器内科)が優秀賞を受賞!
10月18日、東京コンファレンスセンター・品川で開催された
「臨床喘息研究会 第16回学術講演会」において、
当科の 大倉徳幸Dr(呼吸器内科)が優秀賞を受賞 しました。
演題名:
喘息患者および健常人におけるメサコリン吸入による気道収縮と咳嗽の検討
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:24
| 呼吸器内科
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第6回 北陸血栓研究会(旧:DIC研究会)
第6回 北陸血栓研究会(旧:DIC研究会)
日 時:平成20年10月25日(土)16:30〜20:30
場 所:金沢都ホテル5F「加賀の間」
会費:500円(学生を除く)
代表世話人 金沢大学大学院医学系研究科
がん医科学専攻 機能再生学講座 細胞移植学 中尾 眞二
当番世話人 福井大学医学部 麻酔科蘇生科学 重見 研司
プログラム
I. 学術情報提供(16:30 〜 16:40) CSLベーリング株式会社
II. 開会の挨拶 福井大学医学部
麻酔科蘇生科学 教授 重見 研司 先生
III. 一般演題 (16:40 〜 19:10)
座長:福井大学医学部 内科学(1) 浦崎芳正 先生
1.「無酸素性作業閾値を超える運動負荷による血漿中血小板由来マイクロパーティクル(PDMP)の変動」
角野忠昭1),森下英理子1)2),関谷暁子1),長屋聡美1),丸山慶子1),朝倉英策2),大竹茂樹1),中尾眞二2)
1)金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻病態検査学,2)金沢大学大学院医学系研究科細胞移植学
2.「IVH挿入後の縦隔血腫から気道狭窄を合併し挿管による気道確保を必要としAMLの1例」
小谷 浩1),廣田幸次郎1),米田高宏1),吉田昌宏1),河田将行1),伊藤宏保1) ,古木勲2),西塚一男2),菊川哲英2),山形忠永2),経田克則3)
1)厚生連高岡病院 救命センター,2)厚生連高岡病院 麻酔科,3)厚生連高岡病院 内科
座長:芳珠記念病院 内科 青島敬二 先生
3.「繰り返す消化管出血の治療に苦慮した von-Willebrand病とC型肝硬変を有する1例」
青木剛1),吉田太治1),村田了一1),山口正木1),上田幹夫1),三輪一博2),土山壽志2),朝倉英策3)
1)石川県立中央病院 血液免疫内科,2)石川県立中央病院 消化器内科,3)金沢大学附属病院 血液内科
4.「抗リン脂質抗体症候群合併大動脈閉鎖不全症に対して術前血漿交換療法を行った一例」
高田睦子1),山岸正和1),山崎雅英2)
1)金沢大学循環器内科,2)金沢大学血液内科
座長:富山大学 集中治療部 渋谷伸子 先生
5.「エンドトキシン高値を呈した原発巣不明の敗血症の一例」
野田透1),笹川武史1),大石尚毅1),小見亘1),太田圭亮1),後藤由和1),谷口巧1),稲葉英夫1)
1)金沢大学附属病院 救急部集中治療部
6.「グラム陽性球菌感染症による敗血症性ショックを契機としたDIC」
高井美穂子1),田居克規1),高木和貴1),見附保彦1),浦崎芳正1),山内高弘1),岩崎博道1),上田孝典1) ,三田建一郎2),信川泰成2),重見研司2)
1)福井大学医学部 内科学(1),2)福井大学医学部 麻酔蘇生学
座長: 厚生連高岡病院 救命センター 廣田幸次郎 先生
7.「人工股関節置換術施行後19日目に生じた症候性肺塞栓症の1例」
吉田弘範1),加畑多文1),田中一範1),楫野良知1),富田勝郎1)
1)金沢大学整形外科
8.「内挿術後の脚閉塞の一例」
大竹裕志1),木村圭一1),加藤寛城1),出村嘉隆1),伊藤明子1),渡邊剛1),眞田順一郎2),松井修2)
1)金沢大学 心肺・総合外科 ,2) 金沢大学放射線科
座長:金沢大学付属病院 心肺・総合外科 大竹裕志 先生
9.「当院のICUおよび救急部における下肢静脈超音波検査の現状」
宮崎初美1),大場教子1),寺上貴子1),宮嶋良康1),木村圭一2),大竹裕志2),高村雅之3),林研至1)3),和田隆志1)4)
1) 金沢大学附属病院 検査部,2) 金沢大学附属病院 心肺・総合外科,
3) 金沢大学附属病院 循環器内科,4) 金沢大学大学院医学系研究科 血液情報統御学
10.「大動脈解離に合併したDICの1例」
寺崎靖1),山下朗1)
1)富山市立富山市民病院内科
座長:金沢大学大学院医学系研究科 保健学専攻病態検査学 森下英理子 先生
11.「採血条件による凝血学的分子マーカー測定値への影響」
表美香1),高道小百合1),柴山正美1),吉田知孝1),朝倉英策2),和田隆志1)3)
1) 金沢大学附属病院 検査部,2) 金沢大学附属病院 血液内科,
3) 金沢大学大学院医学系研究科血液情報統御学
12.「先天性アンチトロンビン欠乏症の遺伝子診断と機能解析」
林史朗1) , 上野智浩1) , 仁井見英樹1) , 北島勲1)
1)富山大学付属病院検査部 遺伝子検査室
− 休 憩 − (19:10 〜 19:20)
IV. 特別講演 (19:20 〜 20:20)
座長 福井大学医学部麻酔科蘇生科学 教授 重見 研司 先生
「Sepsisに対する最近の治療戦略」
京都府立医科大学附属病院
集中治療部 副部長 志馬 伸朗 先生
V. 閉会の挨拶
金沢大学大学院研究科 循環医科学専攻 血液情報発信学 教授 稲葉 英夫 先生
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:07
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異型輸血と不適合輸血
輸血は同型輸血が原則です。
ただし、異型輸血は必ずしも不適合輸血ではありません。
もちろん同型輸血が原則ですが、急を要する場合は、不適合ではない異型輸血を行うことがあります。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:05
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敗血症に合併したDICの発症機序
敗血症に合併したDICの発症機序は大変複雑です。この複雑であることが敗血症に合併したDICの予後が現在でも大変厳しい理由でもあります。少しでも分かりやすく説明を試みたいと思います。今回は、接着因子や好中球活性化(顆粒球エラスターゼ)の内容は割愛いたしました。
【関連記事】
<特集>播種性血管内凝固症候群(図説)← クリック(シリーズ進行中!)
DIC病型分類に関する欧文論文:Classifying types of disseminated intravascular coagulation: clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2014, 2: 20.
1)組織因子(TF)と凝固活性化:
敗血症では、lipopolysaccharide(LPS)や炎症性サイトカイン(TNF、IL-1など)が大量に体内に発現、存在します。
LPSや炎症性サイトカインが、単球/マクロファージや血管内皮細胞に作用しますと、これらの細胞から、組織因子(TF)が大量に産生されて、凝固活性化がおこります。
凝固活性化の結果、トロンビンが過剰に産生されますと、フィブリン(=DICの場合は微小血栓)が多発します。
2)血管内皮トロンボモジュリンの抗凝固性の低下:
LPSや炎症性サイトカインが、血管内皮に作用しますと、血管内皮に存在している抗凝固性物質であるトロンボモジュリン(TM)の発現が低下します。このことも、凝固活性化に拍車をかける要因になります。最近、使用可能となった遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン)は、この発現低下したTMを補充することになります。
3)PAIと線溶抑制:
血栓を溶解しようとする作用が線溶です。血管内皮から組織プラスミノゲンアクチベータ(t-PA)が産生されますと、t-PAはプラスミノゲンをプラスミンに転換し、プラスミンが血栓を溶解します(これを線溶と言います)。
しかし、敗血症では、LPSや炎症性サイトカインの作用により、線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベーターインヒビター(PAI)が過剰に産生されます。
そのため、敗血症に合併したDICでは、線溶が抑制されて血栓が残存しやすくなり、微小循環障害に起因する臓器障害をきたしやすくなります。
敗血症に合併したDICでは臓器障害をきたしやすいのですが、線溶抑制状態にあることが大きな理由の一つです。
DIC関連記事(リンクしています)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態、診断、治療(研修医/学生対応)
・DIC病態(造血器悪性腫瘍)
・DIC治療(造血器悪性腫瘍)
・敗血症に合併したDICの発症機序
・急性期DIC診断基準 vs. 厚労省DIC診断基準
・急性前骨髄球性白血病(APL)とDIC:ATRA、アネキシンII
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・フサン(線溶亢進型DICに対する特効薬)
・リコモジュリン(トロンボモジュリン製剤)
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:04
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トロンボモジュリン製剤(リコモジュリン):DIC治療薬
トロンボモジュリン製剤(リコモジュリン)
リンク:臨床に直結する血栓止血学
参考書籍:しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編 ← クリック
【関連記事】
<特集>播種性血管内凝固症候群(図説)
DIC病型分類に関する欧文論文:Classifying types of disseminated intravascular coagulation: clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2014, 2: 20.
【はじめに】
トロンボモジュリンは、トロンビンと結合して抗トロンビン作用を発揮するのみでなく、トロンビン-トロンボモジュリン複合体は凝固阻止因子であるプロテインCを飛躍的に活性化させることでも、抗凝固活性を発揮する。
2008年5月より、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(商品名:リコモジュリン)が日本において使用可能となり、播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療薬として保険収載された。全く新しい作用機序を有したトロンボモジュリン製剤の登場により、DIC治療は大きな発展をとげたことになる。
関連記事:トロンボモジュリン製剤(インデックス)<全8記事>
【トロンボモジュリンの構造とリコモジュリン】
ヒトトロンボモジュリンは、557個のアミノ酸からなり(分子量105kDa)、N末端は細胞膜の外側に位置し、C末端は細胞内に位置する。
トロンボモジュリンはN末端から順番に、レクチン様ドメイン、EGF様ドメイン、セリン/スレオニンリッチドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインの5領域から構成されている。この中で、EGF様ドメインでは、6個の上皮成長因子(EGF)構造が繰り返されている。
トロンボモジュリンのレクチン様ドメインには抗炎症効果があることが近年明らかになっている(文献)。以前より指摘されてきた活性型プロテインの抗炎症作用とともに、トロンボモジュリンの抗炎症作用に寄与している。
リコモジュリン(rTM)は、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインを除くドメインからなっており、分子量は約64kDaである。rTMは、生理的なトロンボモジュリンと同様にトロンビンと結合することでトロンビンの向凝固活性や血小板活性化作用を抑制するとともに、プロテインCを活性化することによっても抗凝固活性を発揮する。
rTMは低濃度ではプロテインCを活性化することによる抗凝固活性が主体になるのに対して、高濃度ではトロンビンとの直接結合が主体となって抗凝固活性を発揮する。日本においてDICに対して使用されるrTM濃度は、前者の抗凝固活性を期待した用量設定となっている。
このことは、rTMはトロンビンが血中に存在する場合には抗凝固活性を発揮するが、血中トロンビン濃度が低下すると抗凝固活性を発揮しないことを意味している。rTMは出血の副作用が少ない薬物であるが(文献)、トロンビンが存在しない状態では抗凝固活性を発揮しないことと密接な関係があるのかも知れない。
rTMの血中半減期は約20時間と長いため、ヘパリンのような24時間投与は必要とせず、1日1回の投与(380U/kg、約30分で点滴静注)で充分な抗凝固活性を期待できる。
【DICに対するrTM】
造血器悪性腫瘍および重症感染症を基礎疾患としたDIC(n=234)に対して、rTMまたは低用量未分画ヘパリン(8U/kg/時間)6日間が投与される二重盲見無作為臨床試験が行われている。その結果、rTM投与群でのDIC離脱率が66.1%であったのに対して、ヘパリン投与群でのDIC離脱率は49.9%に留まっていた。また、rTM投与群では出血症状の改善が有意に高率であった(p=0.0271)。出血と関連した有害事象は、rTM投与群では43.1%だったのに対して、ヘパリン投与群では56.5%に達している(文献)。
このように、DICに対してrTMを投与した場合に、DIC離脱率そして出血の軽減の観点から優れた効果を発揮するものと考えられる。
従来の日本で行われてきたDIC臨床試験は、多岐にわたる基礎疾患の症例が区別されることなく登録され検討されてきたのが実状である。DICは基礎疾患によって病態が大きく異なっていることが明らかになっており、現在の医学水準で考えると多種多様のDIC症例を登録して解析した過去の臨床試験は問題があったのではないかと思われる。この点、rTMの臨床試験は、基礎疾患を造血器悪性腫瘍および重症感染症に限定しており、今までに日本で行われてきたDIC臨床試験とは比較にならない位に質の高い臨床試験となっている。
従来日本で行われてきたDIC臨床試験としては、低分子ヘパリン、ダナパロイドナトリウム、活性型プロテインCなどが知られているが、低用量未分画ヘパリンと比較して非劣性を検証しているに留まっている。この点からも、低用量未分画ヘパリンと比較して優越性を証明しえたrTMの臨床試験の意義は大きいものと考えられる。
なお、rTMは抗凝固活性のみならず抗炎症効果を発揮するため(rTMそのものによる抗炎症効果と活性化プロテインCによる抗炎症効果)、重症感染症に合併したDICに対する予後改善効果も期待されていた。推計学的には有意差はないものの、Day28における死亡率はヘパリン投与群と比較してrTM投与群では6.6%低下していた。重症敗血症を対照としたPROWESS試験においても、遺伝子組換え活性型プロテインCの死亡率低下効果は6.1%であったことを考えれば、rTMでの6.6%低下という数字は妥当なところではないかと考えられる。症例数が大きくなれば有意差となる可能性が高い。
【rTMに今後期待すること】
rTMの特徴は、
1)抗凝固作用と抗炎症作用を合わせもつこと
2)トロンビンの存在下で初めて有効に抗凝固活性を発揮するため出血の副作用が少ないこと
3)半減期が約20時間と長いこと
などが挙げられる。
DICの合併の有無とは関係なく、敗血症その他の炎症性疾患に対する効果を是非とも検証したいところである。
DICとくに重症感染症に合併したDICにおいては、血管内皮トロンボモジュリンの発現が低下しているが、加えてアンチトロンビン活性が低下している。DICに対して、rTMとアンチトロンビン濃縮製剤の併用投与が行える医療環境になって欲しいところである。
抗リン脂質抗体症候群の不育症の治療は、現在ヘパリンの皮下注(1日2〜3回、10ヶ月間)が行われている。この10ヶ月間の治療は患者によっては負担になることも少なくない。半減期の長いrTMの皮下注投与(点滴静注でなく)であればさらに半減期は長くなり、患者の負担が軽減するのではないかと期待される。
DIC関連記事(リンクしています)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態、診断、治療(研修医/学生対応)
・DIC病態(造血器悪性腫瘍)
・DIC治療(造血器悪性腫瘍)
・急性期DIC診断基準 vs. 厚労省DIC診断基準
・急性前骨髄球性白血病(APL)とDIC:ATRA、アネキシンII
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・フサン(線溶亢進型DICに対する特効薬)
・リコモジュリン(トロンボモジュリン製剤)
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:03
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大学病院医局制度のメリットと臨床研修制度のあり方
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081016-00000007-cbn-soci
今回の記事は、上記からの引用です。
その中で、富田院長の記事部分を抜粋させていただきました。
管理人の思いと相通じるところがあって、とても感銘いたしました。
ーーーーーーーーーーーー
富田院長は、
「大学病院の医局制度の良さを適正に評価せず、医局崩壊を図ったことが問題だ」
と指摘。
「日本では大学病院が軸となって、『医の心』『倫理感』を大切にして、拝金主義、市場原理主義に偏らない真の医療を教育してきた。
また、そのことが地域医療を支えてきた。
大学の医局制度は、日本が150年かけて試行錯誤しつつ築いてきた『資本主義と社会主義の中庸をいく』素晴らしいシステムだ」と医局制度のメリットについて言及し、大学病院を基軸にして地域医療を立て直すべきだと強調した。
また、「大学病院専門医特別コース」を全科に適応するプランを提案。
これによって、
▽実質的に、研修期間が1年短縮することになる
▽医学部との連帯感が強くなり、卒業大学の病院に残る率が高まる
▽指導医が教育に力を入れやすくなる
▽地域医療が大学病院と行政の連携を強くする—などのメリットがあるとした。
研修医たちが研修先の病院で、手掛けた症例の数(かかわった症例の数)を競っている現状についても取り上げ、
「(医師は)患者に対してそんなことを言ってはいけない。一人の患者に対し、真心を込めて最高の治療を提供することが医師の役目だ」との持論を展開。
さらに、「地域医療は(経験の少ない)若い医師に任せればいいという意見は、地域(の患者)にとって失礼ではないか。そんな医師には誰も診てほしいと思わないはずだ」と疑問を投げ掛けた。
ーーーーーーーーーーーー
以上、抜粋引用です。
富田院長のご指摘のように、大学病院の医局制度の良さも多々あったわけです。
医局制度の良さを全く評価することなく、全てを刷新しようとしたところに大問題があったのではないかと思います。
医局制度に限らないかも知れませんが、良い部分をさらに伸ばし、改善すべき点は改善するという考え方が肝要なのだと思います。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:18
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播種性血管内凝固症候群(DIC)に対するフサン(FUT)治療
メシル酸ナファモスタット(商品名:フサン)
【はじめに】
播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療薬としては、多くの薬剤が知られています。メシル酸ナファモスタット(商品名:フサン FUT)は、DICの治療薬の一つです。メシル酸ガベキサート(商品名:FOYなど)とともに、合成セリンプロテアーゼインヒビターという分類に属する薬物です。
関連記事:フサン(FUT)治療が有効なDIC症例
フサンは、凝固活性化のみならず、線溶活性化も抑制する作用が強い点が特徴です。このため、線溶活性化が強いタイプのDIC(線溶亢進型DIC:出血しやすいタイプのDIC)に対して、極めて有効な治療薬になります。
線溶亢進型DICに対して、ヘパリン類のみを投与いたしますと、出血をかえって助長することが少なくありません。
DIC病型分類に関する欧文論文:Classifying types of disseminated intravascular coagulation: clinical and animal models. Journal of Intensive Care 2014, 2: 20.
【フサンの良い適応】
フサンは、具体的には以下のような疾患に合併したDICに対して、特に有効です。現疾患が不変あるいは悪化するような場合ですら、DICに伴う出血が軽快することが多々あります。
使用量は、標準的体重の方では、200 mg/24時間位になります。
1) 急性白血病(線溶亢進型DIC):ただし、急性前骨髄球性白血病(APL)に対してATRA(ビタミンA誘導体)を使用している場合を除きます。APLでは、ATRAそのものがDIC治療効果を発揮します(参考記事)。
2) 転移性前立腺癌(線溶亢進型DIC)
3) その他の一部の癌(線溶亢進型DIC)
4) 腹部大動脈瘤(線溶亢進型DIC)
5) 膵炎:フサンは膵炎治療薬でもあります。
【DIC治療の重要性】
DICの現疾患の治療が最も重要であることは言うまでもありませんが、DICのために全身性の出血に悩まされている患者さまのコントロールを行う必要があります。
また、線溶亢進型DICでは血小板数が比較的保たれていても、脳出血などの致命的な出血を突然発症することがあります。脳出血を発症してしまわれますと、現疾患の治療どころではなくなってしまいますので、DICの治療はとても重要です。
【フサン無効例に対する治療】
線溶亢進型DICに対して、多くの場合はフサンが有効ですが、もし充分な効果が期待できない場合は、次の特効する治療方法があります(今回は省略)。
ただし、使用方法を間違えますと全身性の血栓症を発症する可能性があります。専門家にコンサルトできる場合のみに限定すべきと考えられます。
【フサンの副作用】
時に、高カリウム血症の副作用がみられます。
フサン投与中は、電解質に十分な注意が必要です。
【FOY vs.フサン】
● FOYとフサンの共通点
1)DIC治療薬です。
2)膵炎治療薬でもあります。
3)合成セリンプロテアーゼインヒビターです。
4)アンチトロンビン非依存性に、抗凝固活性を発揮します。
5)DICに使用する場合は、どちらも24時間持続点滴が必要です。
● FOYとフサンの相違点
1)フサンは、抗凝固活性のみならず、抗線溶活性も強力です。FOYは、抗線溶活性は強力ではありません。
2)フサンは、高カリウム血症の副作用があります。FOYには高カリウム血症の副作用はありません。
3)フサンは線溶活性化が強いタイプのDICに有効ですが、FOYは線溶活性化が強いタイプのDICにはあまり有効でありません。
● FOYとフサンの使い分け
1)線溶亢進型DIC(出血症状が著明なDIC)には、フサンが絶対的に有効です。たとえば、前述のような急性白血病、前立腺癌、腹部大動脈瘤などに合併したDICにはフサンが有効です。
2)マイルドな効果を期待したい場合は、FOYが選択肢にあがります。たとえば、出血傾向が強くヘパリン類は使用できないし、しかもカリウム濃度が高く、フサンも使いがたい時などです。
3)どちらも、DIC治療を語る上で、必ず登場する必要がある重要な薬剤です。
【管理人の経験】
出血症状が著明な線溶亢進型DICに対してフサンを用いた場合、著効例では出血がみるみる引いていくことも少なくありません。管理人は、著効例を多数経験していますが、フサンの著効例を経験した臨床家は、フサンのファンになるこ間違いなしと思います。
特に管理人にとって、一生忘れることのできない経験があります。
70歳代の男性患者様(Xさん)は、ある部位の癌のために重症のDICを合併しておられました。XさんのDICは、出血がみられやすいタイプでした(線溶亢進型DIC)。Xさんは、出血性胃炎で大出血、筋肉内出血、皮下出血、鼻出血、口腔内出血、全身性紫斑など、まさに全身の高度な出血状態でした。
しかし、これほどの激しい出血症状をきたしたDICだったにもかかわらず、フサンによる治療を開始したところ、翌日の回診時には、全身の出血は奇麗にひいていました。まるで「魔法がかかったように」止血しました。一生忘れることのできない、極めて優れた治療効果でした。もし、昔の教科書に書いてあるようにヘパリンによる治療を行っていましたら、患者様の出血はかえって悪化していたことでしょう。
DIC診断にとどまらず、DICの病型診断にまで踏み込むことで(この患者様の場合は線溶亢進型DIC)、奇麗に治療に反応した良い例ではないかと思います。
【関連記事】
<特集>播種性血管内凝固症候群(図説)← クリック(シリーズ進行中!)
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・DIC治療(造血器悪性腫瘍)
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・フサン(線溶亢進型DICに対する特効薬)
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 11:01
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【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2006年)
(設 問)
患者:23歳女性。
抜歯後の止血困難の精査目的に来院した。血液検査は下記の通りであった。Hb 9.6 g/dL,血小板数 22.9万/μL,出血時間13分,PT11.0秒,APTT 71.2秒,フィブリノゲン 238 mg/dL,FDP 3.5 μg/mL.妹は、幼少時から頻回に鼻出血がみられる。この患者にたいする止血治療として正しいのは下記のうちどれか。
a. 第IX因子の投与
b. 第XIII因子の投与
c. 第VIII因子の投与
d. フィブリノゲンの投与
e. デスモプレシン(DDAVP)の投与
(ポイント)
設問本文は、2005年での出題内容(1つ前の記事)と全く同じである。ただし、選択肢は全て差し替えられており、2005年は検査に関連した選択肢、2006年は治療に関する選択肢である。この設問での診断は、1つ前の記事での記載の通り、von Willbrand病である。
a. 第IX因子濃縮製剤が投与されるのは、血友病Bである。
b. 第XIII因子濃縮製剤が投与されるのは、先天性第XIII因子欠損症、術後の縫合不全や瘻孔、シェーンライン・へノッホ紫斑病における腹部症状,関節症状に対してである。
c. 第VIII因子濃縮製剤が投与されるのは、血友病Aである。
d. フィブリノゲン製剤は、現在ほとんど使用されない。現在、フィブリノゲンを補充したい場合には新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP)が使用される。
e. 抗利尿ホルモンDDAVPは、血管内皮からvon Willbrand因子を放出させる作用があるため、von Willbrand病の止血目的に使用される【国家試験既出】。ただし、DDAVPは連用すると効果が減弱する。またコンファクトF(精製度が低いためにvon Willbrand因子も含有された血漿由来第VIII因子製剤)も、von Willbrand病の止血目的に使用される。遺伝子組換え第VIII因子製剤は、von Willbrand因子が含有されていないため、von Willbrand病に対して無効である。
(医師国家試験対策 & 内科専門医試験対策)
von Willebrand病:出血時間&APTTの延長。PTは正常。vWF&第VIII因子活性が低下する。最も多いtype Iは、常染色体優性遺伝。粘膜出血(鼻出血など)が特徴的。
治療:vWF含有の血漿由来第VIII因子濃縮製剤、DDAVP。
血友病A: APTTの延長。出血時間&PTは正常。第VIII因子活性が低下する。伴性劣性遺伝。関節内出血が特徴的。
治療:第VIII因子濃縮製剤
(血液専門医試験対策)
von Willebrand病のサブタイプによっては禁忌治療があることを理解しておく必要がある。
(答)e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:49
| 医師国家試験・専門医試験対策
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【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)
(設 問)(一部改変)
患者:23歳女性。
抜歯後の止血困難の精査目的に来院した。血液検査は下記の通りであった。Hb 9.6 g/dL,血小板数 22.9万/μL,出血時間13分,PT11.0秒,APTT 71.2秒,フィブリノゲン 238 mg/dL,FDP 3.5 μg/mL.妹は、幼少時から頻回に鼻出血がみられる。この患者の検査所見として正しいのは下記のうちどれか。
a. 凝固第VIII因子 98 %
b. 凝固第IX因子 6 %
c. 血小板凝集能のリストセチン凝集の低下
d. 血小板凝集能のADP一次凝集の低下
e. 血小板膜糖蛋白GPIb/IXの発現低下
(ポイント)
本症例では、出血時間の延長と、APTTの延長が特徴的所見である。また、妹も幼少時から鼻出血がみられており、先天性の出血性素因が疑われる。貧血が見られているが、鼻出血のためかも知れない。
疾患は、von Willebrand病が強く疑われる。なお、出血時間&APTTともに延長する先天性出血液素因はvon Willebrand病のみである。
a. von Willebrand病では、von Willebrand因子(vWF)が低下している。vWFは、第VIII因子のキャリアー蛋白であるため、von Willebrand病では第VIII因子も低下する。
b. 凝固第IX因子活性が低下する先天性出血性素因は、血友病Bである。
c. 血小板凝集能のリストセチン凝集の低下はみられるのは、2疾患のみである。von Willebrand病と、Bernard-Soulier症候群である。
d. 血小板凝集能のADP一次凝集の低下がみられるのは、血小板無力症である。
e. 血小板膜糖蛋白GPIb/IXの発現低下がみられるのは、Bernard-Soulier症候群である。なお、血小板膜糖蛋白GPIIb/IIIaの発現低下がみられるのは、血小板無力症である。
(医師国家試験対策 & 内科専門医試験対策)
von Willebrand病:出血時間&APTTの延長。PTは正常。vWF&第VIII因子活性が低下する。最も多いtype Iは、常染色体優性遺伝。粘膜出血(鼻出血など)が特徴的。
血友病A: APTTの延長。出血時間&PTは正常。第VIII因子活性が低下する。伴性劣性遺伝。関節内出血が特徴的。
(血液専門医試験対策)
von Willebrand病のサブタイプ分類が出題されることがある。
(答)C
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:19
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【金沢大学血液内科進級試験過去問題解説】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)
(設 問)(一部改変)
血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか。
a. 肺塞栓症例の再発予防としては、アスピリンによる抗血小板療法が有効である。
b. 偽性血小板減少症に対しては、副腎皮質ステロイドの投与が半数例で有効である。
c. 単純性紫斑病の若年女性に対しては、ビタミンCの投与が半数例で有効である。
d. 閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては、ビタミンKの内服が有効である。
e. インヒビターを有する血友病A症例の出血に対しては、活性型第VII因子製剤が有効である。
(ポイント)
a. 深部静脈血栓症(DVT)や肺塞栓(PE)の発症(再発)予防目的としては、ワルファリンによる抗凝固療法が有効である。
b. 偽性血小板減少症とは、EDTA採血管内で、血小板の凝集が起きるために、血小板数が実際よりも少なくカウントされてしまうartifactである(血算は通常EDTA採血管を使用)。自動血球計算機で血小板数を測定する際に、凝集した血小板は大きな固まりとなってしまうために自動血球計算機では血小板と認識されないのである。もちろん、偽性血小板減少症は治療の必要はない。なお、クエン酸ナトリウム採血管またはヘパリン採血管で採血することでこのartifactの現象は消失することが多い。
c. 単純性紫斑病は、若年女性でみられやすい。全ての血栓止血関連検査は正常である。放置して支障ない。参考:老人性紫斑
d. 閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対して、ビタミンKの内服を行っても吸収されないため無効である。ビタミンKを点滴で、経静脈的に投与する必要がある。ビタミンKは脂溶性ビタミンであるため、吸収されるためには胆汁が必要である。
e. インヒビターを有する血友病A症例の出血に対してはバイパス製剤を投与する。近年、活性型第VII因子製剤(商品名:ノボセブン)の使用頻度が増加している。
(医師国家試験対策)
ビタミンK欠乏症になりやすいTrias
1) 食事摂取量の減少:ビタミンKの摂取も低下するため。
2) 抗生剤投与:ビタミンKは腸内細菌から産生されているが、抗生剤投与により腸内細菌が死滅する。
3) 閉塞性黄疸:胆汁が出なくなるために、脂溶性ビタミンであるビタミンKが吸収されなくなる。
ビタミンK依存性凝固因子:VII、IX、X、II
その他のビタミンK依存性蛋白:プロテインC、プロテインS、オステオカルシンなど。
(内科専門医試験対策)
アスピリンとワルファリンの使い分けは理解している必要がある。
・抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法
・抗血小板療法 vs. 抗凝固療法
(血液専門医試験対策)
インヒビターを発症した血友病A症例の診断、治療は出題されやすい。
後天性血友病も頻出である。
クロスミキシング試験を解釈できる必要がある(参考記事 ← クリック)。
(答)e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:03
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Dダイマー(D dimer:DD)とは? :FDP/Dダイマー比
Dダイマー
(D dimer:DD)
参考書籍リンク:しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編 ← クリック
正式名称:
Dダイマー(D dimer)
血液凝固検査入門:インデックスページ ← クリック(全記事、分かり易く図解)
関連記事:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
類義語:
架橋化フィブリン分解産物(cross-linked fibrin degradation products)
正常値:
用いる試薬、機器により異なります(通常正常値は、<2〜3μg/mL)
意義:
Dダイマーの説明をさせていただく前に、FDPの説明をさせていただきたいと思います。FDPは、fibrin/fibrinogen degradation productsの頭文字をとっています。直訳すれば、フィブリン/フィブリノゲン分解産物です。ですから、FDPは、フィブリン分解産物とフィブリノゲン分解産物の両者を合わせた概念です。
さて、Dダイマーですが、架橋化フィブリン分解産物の最小単位です(フィブリンは重合したのちに、第XIII因子によって架橋化を生じます)。ですから、FDPの一部の一部がDダイマーということになります。
ほとんどの病態では、FDPとDダイマーは平行して上昇しますが、時に解離する(FDPが著増するにもかかわらず、Dダイマーは軽度上昇に留まる)ことがあります。線溶活性化が極めて高度なタイプのDICでは、フィブリノゲンの分解が進行してしまうために、FDPが著増するにもかかわらず、Dダイマーは軽度〜中等度上昇に留まる現象がみられます。
Dダイマーが上昇する病態:
1)DIC
2)DIC準備状態
3)深部静脈血栓症、肺塞栓
4)大量の胸水、腹水(DICとの鑑別が問題となる)
5)大血腫の吸収(DICとの鑑別が問題となる)
6)その他の凝固・線溶活性化状態
Dダイマーが低下する病態:
なし
関連マーカー:
1)FDP:上記
2)可溶性フィブリン(soluble fibrin: SF)、フィブリンモノマー複合体(fibrin monomer complex: FMC):フィブリノゲンがフィブリンに転換しておく過程で産生されます。
臨床に役立つお役立ち情報:
FDP/Dダイマー比(Dダイマー/FDP比)で、ある程度DICのタイプが分かります。
線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC)では、フィブリン分解のみならず、フィブリノゲン分解も進行するために、FDP/Dダイマー比は大きくなります(Dダイマー/FDP比は小さくなります)。
線溶亢進型DICの病型診断のためにはPICの測定が不可欠ですが、医療機関によってはPICが即日結果の出ないこともあると思います。このような場合には、FDP/Dダイマー比によっても、ある程度病型を推測することが可能です。
【関連記事】
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・ PT(PT-INR)とは?
・ PT(ワーファリン)&トロンボテスト
・ APTT
・クロスミキシング試験
・ Dダイマー
・ DICの病態、診断、治療:リンク先から更に他のヘパリン類やDIC関連記事がリンクされています!
・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:04
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クロスミキシング試験(凝固因子インヒビター定性):混合試験 mixing test
クロスミキシング試験
凝固因子インヒビター定性
混合試験 mixing test
意義:
患者血漿と正常血漿を、例えば上図のような比で混合し、凝固時間(APTTなど)を測定するのが、クロスミキシング試験(混合試験)です。
凝固時間の延長が、凝固因子の欠損によるものか、凝固因子に対するインヒビター(ループスアンチコアグラントを含む)によるものかをスクリーニングする検査です。APTTなどの凝固時間の延長原因を究明する上で、最初のステップで行うべき大変重要な検査です。
なお、第VIII因子インヒビターのスクリーニング時には、血漿の混合後に2時間incubationする必要があります。
最近、保険収載されましたので、今後全国的に検査件数が増加するものと予想されます。APTTの院内測定を行っている医療機関であれば、クロスミキシング試験も院内で簡単に施行できます。
解釈:
Inhibitor pattern(上向きに凸となる混合曲線)
患者血漿に正常血漿を加えても、凝固時間の延長は是正されません(上図の1)。また、正常血漿に患者血漿を加えますと、凝固時間が延長します(上図の2)。
代表的疾患は、第VIII因子インヒビター、ループスアンチコアグラントなどです。
VIII因子インヒビター以外には、第XII因子、XI因子、IX因子に対するインヒビターでもこのパターンになります。
Deficiency pattern(下向きに凸となる混合曲線)
患者血漿に正常血漿を加えますと、凝固時間の延長が是正されます(上図の3)。また、正常血漿に患者血漿を加えても、凝固時間は延長しません(上図の4)。
代表的疾患は、肝不全(凝固因子産生の低下)、血友病A&Bです。
ビタミンK欠乏症、先天性第XII、XI因子欠損症でもこのパターンになります。
クロスミキシング試験の関連記事
・ クロスミキシングテスト(混合試験):血液凝固検査入門(24)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:24
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APTTとは? ヘパリンのモニタリングか。。。
参考書籍:「臨床に直結する血栓止血学」(APTTなど凝固検査の内容も充実しています)
APTTとは?
正式名称:
活性化部分トロンボプラスチン時間
(activated partial thromboplastin time:APTT)
リンク:血液凝固検査入門:インデックスページ ← クリック(全記事、分かり易く図解)
関連記事:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
正常値:
用いる試薬、機器により異なります(通常正常値は、30〜40秒位です)
意義:
APTTは、内因系凝固活性化機序を反映する検査です。
すなわち、凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II(プロトロンビンと同義)、I(フィブリノゲンと同義)因子の活性低下で、APTTは延長します。
APTT試薬の中身は、エラジン酸などの活性化物質(いわゆる異物成分)です。血液が凝固する方法は2種類あります。その2種類というのは、組織因子または、異物(陰性荷電)による凝固です。APTTは、この2種類のうち異物による凝固を反映した検査です。
PT(組織因子による凝固)、APTT(異物による凝固)は、血液が凝固する2つの機序を反映しているという意味でも、血液凝固の最も本質的検査ということができます。
APTTが延長する病態:
1)ループスアンチコアグラント(LA):ただし、LA感度が良いAPTT試薬でも、全LAをスクリーニングできません。ですから、LAが疑われる症例では、APTT延長がなくても、カオリン凝固時間(混合試験)や希釈ラッセル蛇毒時間のようなLA検査を行う必要があります。
2)血友病Aまたは第VIII因子インヒビター
3)血友病Bまたは第IX因子インヒビター
4)von Willebrand病(vWD):vWDではvon Willebrand因子(vWF)活性が先天性に低下しています。vWFは第VIII因子のキャリアー蛋白でもあるため、vWDでは第VIII因子活性も低下します。
5)先天性第XII、XI因欠損症。または、これらの凝固因子に対するインヒビター。
6)凝固第X、V因子、プロトロンビン、フィブリノゲンの欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター(この場合は、PTも延長)。
7)ヘパリン投与時。
8)ワーファリン(ビタミンK拮抗薬)内服中またはビタミンK欠乏症:PT記事を参照。
9) 肝不全:PT記事を参照。
APTTが短縮する病態:
なし
(ただし凝固活性化状態でAPTTが短縮することがあります)
関連マーカー:
1) PT:外因系凝固活性化機序を反映する検査です。
2) 凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子、プレカリクレイン、高分子キニノゲン:APTTが延長しているというのは、これらの凝固因子のどれか(複数のこともあり)の活性が低下していることになります。
3)全血凝固時間:20数年以上前までは行われていた検査です。ガラス試験管に血液を入れて、何分で凝固するかを見る古典的検査です。今は全く行われなくなっています。
4)PTT:これも20数年以上前までは行われていた古典的検査です。再現性が悪く、今では行われていません。ただし、PTTの改良型はループスアンチコアグラントの検査に使用される可能性があります。
臨床に役立つお役立ち情報:
(PTよりもAPTTの方が延長しやすい病態)
1) ループスアンチコアグラント
2) ヘパリン投与時
(ヘパリン投与時のモニタリング)
ヘパリンを投与する際に、APTTを〜倍(たとえば2倍)に延長するようにヘパリンコントロールを行うべきである、という考え方があります。しかし、管理人はこのような考え方に反対の立場です。日本人では、APTTを2倍以上に延長させるとむしろ出血の副作用が懸念されます。
APTTをあまり延長させないように(出血の副作用をあまり出さないように)、ヘパリンを投与するのが良い投与方法と思っています。
実際、ヘパリンの改良型で、低分子ヘパリン(フラグミンなど)やダナパロイド(オルガラン)といったヘパリン類がありますが、APTTを延長させないために出血の副作用が少ないことをウリにしています。
ヘパリンにかぎませんが、欧米で行われている抗血栓療法をそのまま日本人にあてはめるのは危険と考えています。日本人は欧米人よりも弱めのコントロールを行うさじ加減が重要ではないかと思います。
なお、ヘパリンの効果判定は、FDP、Dダイマー、TATなどで行うべきでしょう。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:18
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PT(PT-INR)とは? 正常値、ワーファリン、ビタミンK欠乏症
参考書籍:「臨床に直結する血栓止血学」(INRなど凝固検査の内容も充実しています)
第21回日本検査血液学会学術集会(金沢2020年):血栓止血関連プログラムも豊富です。
参考書籍:しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編 ← クリック
PT(PT-INR)
関連記事:血栓止血の臨床(日本血栓止血学会HPへ)
血液凝固検査入門:インデックスページ ← クリック(全記事、分かり易く図解)
抗血栓療法、抗血小板療法、抗凝固療法(アスピリン、ワーファリン)← クリック
正式名称:
PT(prothrombin time):プロトロンビン時間
PT-INR(prothrombin time-international normalized ratio):プロトロンビン時間 国際標準比
正常値:
PT:用いる試薬、機器により異なります(通常正常値は、10〜12秒位です)
PT-INR:正常値は、1.0です。ただし、PT-INR(あるいは単にINR)は通常ワルファリン(商品名:ワーファリン)コントロール時に用いる用語です。ワーファリンコントロール時には、INR 2〜3でコントロールすることが多いです。
意義:
PTは、外因系凝固活性化機序を反映する検査です。
すなわち、凝固VII、X、V、II(プロトロンビンと同義)、I(フィブリノゲンと同義)因子の活性低下で、PTは延長します(INRは上昇します)。
PTが延長することと、INRが上昇することは同義です。
PT試薬の中身は、組織因子(tissue factor:TF)です。血液が凝固する方法は2種類あります。その2種類というのは、組織因子または、異物(陰性荷電)による凝固です。PTは、この2種類のうち組織因子による凝固を反映した検査です。
PT(組織因子による凝固)、APTT(異物による凝固)は、血液が凝固する2つの機序を反映しているという意味でも、血液凝固の最も本質的検査ということができます。
なお、INRは、以下の式で算出されます。
ISI:PT試薬ごとに国際感受性指標 (International Sensitivity Index:ISI)が設定されています。1.0〜1.4くらいのことが多いです。ISIが、1.0に近いPT試薬が好まれています。
PTが延長する(=INRが上昇する)病態:
1) ワーファリン内服中:ワーファリンはビタミンKの拮抗薬です。ビタミンK欠乏状態に伴い、VII、IX、X、IIの順番で凝固因子活性が低下します。VII因子が最も半減期が短いですので、最初に低下します。ですから、ビタミンK欠乏症では、APTTよりもPTの方が先に延長します。
2) ビタミンK欠乏症:同上。
3) 肝不全(肝硬変、劇症肝炎、慢性肝炎など):凝固因子は肝臓でできますので、肝不全ではPTやAPTTが延長します。特に、半減期の短い第VII因子を反映するPTは、敏感に延長します。
4) 凝固第VII、X、V因子、プロトロンビン(=凝固第II因子)、フィブリノゲン(=凝固第I因子)の欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター。
PTが短縮する(=INRが低下する)病態:
なし
関連マーカー:
1) APTT:内因系凝固活性化機序を反映する検査です。
2) 凝固VII、X、V、II因子:PTが延長しているというのは、これらの4つの凝固因子のどれか(複数のこともあり)の活性が低下していることになります。
3) PIVKA-II:PTが延長する病態の一つにビタミンK欠乏症があります。PTが延長していてビタミンK欠乏症を疑った場合には、PIVKA-IIが陽性であることを確認してビタミンK欠乏症の確定診断を行います。
(補足)ビタミンK欠乏症の確定診断としては治療診断もよく行われます。ビタミンKの補充によりPTが速やかに短縮すれば、ビタミンK欠乏症と診断できます。換言すれば、ビタミンKの補充によりPTが正常化しなければ、PT延長の原因はビタミンK欠乏症ではありません。
臨床に役立つお役立ち情報:
(APTTよりもPTの方が延長しやすい病態)
多くの場合、凝固第VII因子の半減期が短いことが理由になっています。
1) ビタミンK欠乏症
2) ワーファリン内服
3) 肝不全、肝硬変、慢性肝炎
4) 蛋白合成能低下(低栄養状態)
5) 先天性第VII因子欠損症
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研修医・入局者募集へ
金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:09
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科(検索順位)3回目集計
ホームページ通称:金沢大学 血液内科・呼吸器内科
ホームページ正式名称:
金沢大学附属病院血液内科・呼吸器内科・細胞移植学講座(旧第三内科)
上記ホームページ(このブログは上記HPに併設)を、2008年9月11日にリニューアルオープンさせていただいて、1ヶ月以上が経過しました。とは言っても、まだ1ヶ月とも言えます。
「血液内科」「呼吸器内科」「研修医募集」などの主要キーワードで、GoogleやYahoo検索でどのあたりに掲載されるか気になるところです。
今日の時点でも記録を残しておきたいと思います。
「血液内科」での検索:Google 11位/1,170,000件(←14位←18位)
「血液内科 研修医募集」での検索:Google 1位/66,400件(←14位←11位)
「呼吸器内科」での検索:Google 12位/508,000 件(←12位←11位)
「呼吸器内科 研修医募集」での検索:Google 3位/70,600 件(←6位←7位)
なかなか善戦しているのではないかと思います。
特に、血液内科の方での伸びが大きいようです。
何と、「血液内科 研修医募集」のGoogle検索では、1位にランキングされました。
この、掛け合わせで検索された方は、必ず訪れていただけるのではないかと思います。
次の目標は、「血液内科」や「呼吸器内科」の単独キーワードでの1ページ目登場です。
今後とも、どうかご支援のほど、お願い申しあげます。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 10:15
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仕事と生活の調和の実現にむけた取り組みと女性医師(日本血液学会)
第70回日本血液学会総会(会場 国立京都国際会館)の3日目の朝、
Morning Conferance(10月12日(日)8:00〜8:50)が開かれました。
学会初の企画で、金沢大学第3内科からは2人も参加しました!
テーマは、
『仕事と生活の調和の実現にむけた取り組みと女性医師』
〜女性医師の現状の問題点と求められる支援〜
とのことで、東京女子医科大学血液内科教授の泉二登志子先生から、女子医大での取り組みを説明していただきました。
金沢大学附属病院も病児保育室(たんぽぽルーム)ができて働きやすい環境が整えられつつありますが、女子医大は来年度初めより学内/学童保育所の設置も検討されているとのことでした。
私たちの他、京都府立医大、群馬大、京都大学関連病院、筑波大学、愛知医科大学などの
先生たちが参加され、会が終わっても話はつきませんでした。
来年以降 血液学会の女医会(!?)の約束がなされたような気がします。
資料が欲しい方はぜひ金沢大学第3内科までとりにいらしてください。
P.S.
軽食が出るとのことでしたが、私たちは、おそらく簡単なものしかでないだろうと予測し、早起きしてホテルでしっかり朝食をとっていったところすごく立派な食事でホテルで食べたものより数段上でした!!
(横でしまった〜〜とショックを受けていたM助教授の顔が印象的でした。)
研修医・入局者募集へ ←クリック
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 17:16
| 女性医師(当科)からのメッセージ
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第70回 日本血液学会総会:京都
第70回 日本血液学会総会 が京都で開催されました。
2日目の夜。来年入局が決まった(!?)細川先生と、先斗町の鴨川沿いの料亭の前で。
細川先生より『ぜひ一緒に働きましょう』ということで同期を大募集中!!
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 20:47
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アンチトロンビン(AT)とは? :DIC、AT濃縮製剤
ATIII (or AT)
正式名称:
アンチトロンビンIII(antithrombin III)_
近年は、IIIを割愛して、単にアンチトロンビン (antithrombin)と称することが多いです(アンチトロンビンは現在IIIのみのため)。
正常値:
100±30 %
意義:
ATは、プロテインCやプロテインSとともに、体内の重要な凝固阻止因子です。循環血中にも存在しますが、血管内皮上のヘパリン様物質にも結合しています。ATはヘパリンの作用により抗凝固活性が飛躍的に上昇するため、流血中のATよりも血管内皮に結合したATの方が重要な意義を有している可能性があります。
ATは肝臓で産生されるために、肝予備能が低下した場合にも血中AT濃度は低下します。
上昇する病態:
なし。
低下する病態:
1) DIC
2) 肝不全、肝硬変などの肝疾患
3) 先天性AT欠損症
関連マーカー:
全身性血栓性素因の精査として行う血液検査
1) アンチトロンビン
2) プロテインC
3) プロテインS
4) 抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピン-β2GPI複合体抗体
5) ループスアンチコアグラント
6) Lp(a)
7) ホモシステイン
臨床に役立つお役立ち情報:
DICにおいてATが低下する機序
1) 消費性凝固障害:トロンビン、Xaなどの活性型凝固因子との結合によりATが消費されます。
2) 肝不全の合併:特に敗血症に合併したDICにおいては肝不全を合併しやすいです。
3) 血管外への漏出:特に敗血症に合併したDICにおいては血管透過性が亢進して、ATが血管外に漏出しやすいと考えられています。
4) 酵素によるATの分解:特に敗血症に合併したDICにおいては、顆粒球エラスターゼによるATの分解が見られます。
従来、DICにおいてATが低下する機序としては、1)が強調されてきましたが、むしろ2)3)4)の要素の方が大きいと考えられます。
たとえば、急性白血病に合併したDICでは、著しい凝固活性化がみられてもATはほとんど低下しません(2、3、4の要素がないためと考えられます)。
また、ATは凝固活性化マーカーのTATとは全く相関しませんが、アルブミンとは強い相関が見られます(参考文献)。このことも、1)の要素よりも他の要素が大きいことを意味しています。
アンチトロンビン濃縮製剤(アンスロビンP、ノイアート、ノンスロン)
DICに対して、アンチトロンビン濃縮製剤を使用する場合、保険ではATの血中濃度70%以下での使用が認められています。ただし、この70%という数字には医学的根拠はなく、AT活性を正常以上に上昇させてはどうかという考え方があります(参考文献)。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 09:33
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PICとは?(血液凝固線溶関連の検査)
PIC
正式名称:
プラスミン-α2 プラスミンインヒビター複合体
(plasmin-α2 plasmin inhibitor complex: PIC)
正常値:
<0.8 μg/mL
意義:
プラスミンとその代表的な阻止因子であるα2 プラスミンインヒビター(α2 PI)が1:1結合した複合体がPICです。PICにより、生体内における線溶活性化の程度を評価することができます。
線溶活性化に伴い産生される最終的な酵素はプラスミンですが、プラスミンの一部は速やかにα2 PIと結合して、プラスミン-α2 プラスミンインヒビター複合体(PIC)
が形成され、プラスミン自身は不活化されます。
プラスミンの血中半減期は極めて短いため直接測定することは不可能ですが、PICの血中半減期は数時間であるため測定することが可能です。
血中PIC濃度を測定することで、採血時の凝固活性化の程度を知ることができます。
上昇する病態:
1)DIC、DIC準備状態
2)深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓(PE)
3)線溶療法(t-PA、ウロキナーゼ)
施行時
4)その他の線溶活性化状態
低下する病態:
なし。
関連マーカー:
PICが著増する病態では(たとえば線溶亢進型DIC)、α2PIは著減することが多いです。プラスミノゲンも軽度〜中等度低下します。
典型的な線溶亢進型DIC(旧:線溶優位型DIC)でのマーカーの変動を下記します。あくまでも目安です。肝不全の有無、炎症反応の強さにより必ずしも下記とおりにはなりませんので、念のため補足します。
PIC>10.0 μg/mL
プラスミノゲン 60〜80%
α2PI 30〜50%
TAT 20〜50 ng/mL
アンチトロンビン 100±20%
臨床に役立つお役立ち情報:
PICはDICの病型分類に有用なマーカーです。おおよそ以下のような目安になります(TATが高値であることは大前提)。
線溶亢進型DIC:典型例では、PIC>10.0 μg/mL
(ただし、7〜8μg/mL以上でも、線溶亢進型の病型と思われる例も少なくないです)
線溶抑制型DIC:典型例では、PIC<2〜3 μg/mL
線溶均衡型DIC:上記の中間
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:40
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TATとは?(血液凝固関連の検査)
TAT
正式名称:
トロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex: TAT)
正常値:
<3〜4 ng/mL
意義:
トロンビンとその代表的な阻止因子であるアンチトロンビンが1:1結合した複合体がTATです。TATにより、生体内における凝固活性化の程度を評価することができます。
凝固活性化に伴い産生される最終的な酵素はトロンビンですが、トロンビンの一部は速やかにアンチトロンビンと結合して、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が形成され、トロンビン自身は不活化されます。
トロンビンの血中半減期は極めて短いため直接測定することは不可能ですが、TATの血中半減期は3〜15分であるため測定することが可能です。血中TAT濃度を測定することで、採血時の凝固活性化の程度を知ることができます。
上昇する病態:
1)DIC、DIC準備状態
2)深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓(PE)
3)心房細動の一部、僧房弁狭窄症に合併した心房細動
4)その他の凝固活性化状態
低下する病態:
なし。ただし、ワルファリン(商品名:ワーファリン)による抗凝固療法を行っている場合には、正常下限となることがあります。
関連マーカー:
現在、凝固活性化のマーカーとしては、TATの他にプロトロンビンフラグメント1+2(prothrombin fragment 1+2: F1+2)や、可溶性フィブリンモノマー複合体(soluble fibrin: SFやfibrin monomer complex: FMC)なども知られています。
理論的には、これらのマーカーは併行して変動しても良いはずですが、代謝経路や血中半減期が異なるため、必ずしも相関はしません。
臨床に役立つお役立ち情報:
大量胸水や大量覆水が貯留している症例では、時にFDPやDダイマーが上昇し、DICかどうか悩ましいことがあります。この際、TATが正常であればDICを否定できます。
管理人自身の経験ですが、大量腹水が貯留して、FDP&Dダイマーが著しく上昇した肝硬変の症例(血小板数低下、フィブリノゲン低下、PT延長の所見もあり)を経験したことがあります。DICだろうと考えヘパリン類の指示を出そうとしたところ、TATのデータが到着しました。その結果は、TATは全く正常でしたのでDICを否定しました。あやうく間違って、ヘパリン類を投与してしまうところでした。TATが正常ということは、凝固活性化がないという訳ですので、ヘパリン類は不要です。
TATで、治療方針の大転換があるという意味でも、大変にパワフルなマーカーではないかと思います。
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急性期DIC診断基準 vs. 旧厚生省(厚労省)DIC診断基準
【はじめに】
播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation: DIC)は、基礎疾患の存在下に持続性の著しい凝固活性化をきたし、全身の主として細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態です。
旧厚生省研究班疫学調査によりますと、DICの死亡率は60%程度と報告されており、予後改善のためにも適切な診断の意義は大きいと考えられます。
下記もご参照(クリック)いただければ幸いです。
・播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
【旧厚生省(厚労省)DIC診断基準】(長所と短所)
我が国では、旧厚生省(厚労省)DIC診断基準が現在まで長年にわたって使用されています。今も日本で最も頻用されている診断基準です(NETセミナー:表1)。
● 長所:
典型的なDICで見られる臨床所見・検査所見を列挙し、スコアリングすることで客観的にDICを診断するのが長所です。
用いられている項目は、1)基礎疾患の存在、2)臨床症状(出血症状・臓器症状)、3)FDP、4)血小板数、5)フィブリノゲン、6)プロトロンビン時間(PT)です。
● 短所:
臨床症状が出ないとDICと診断されにくいことです。
また、特に感染症に合併したDICではフィブリノゲン低下がまず見られないこと、PTはDICよりも肝予備能低下やビタミンK欠乏症の要素で延長することが少なくないことなども問題点と考えられます。
このため、DIC早期診断には不向きとの指摘が多いです。
【急性期DIC診断基準】(長所と短所)
● 長所:
急性期DIC診断基準には、いくつかの特徴があります(NETセミナー:表1)。
まず血小板数において、経時的な要素を取り入れた点です。経時的要素を取り入れたDIC診断基準はこの基準が世界初です。
また、救急領域で遭遇しやすい敗血症に合併したDIC(線溶抑制型DIC:FDP上昇が軽度にとどまることが多い)を想定し、FDPが軽度上昇であっても高スコアを得られるようにしている点も特徴です。このため、感染症に合併したDICの診断には威力を発揮します。
● 短所:
急性期DIC診断基準は白血病群には適応できません。
また、SIRSの概念は救急領域では浸透しているものの内科領域ではなじみにくいこと、感度上昇を求めた反面として特異度が低下している懸念があることは短所と考えられています。
また、前述のようにPTは、DICの要素よりも、肝不全(肝予備能低下)やビタミンK欠乏症の要素で変動することが少なくありません。PTはDICの診断には不要ではないかという指摘があります。
【理想的なDIC診断基準へ】
既存の全DIC診断基準に共通の問題点があります。それは、DICの本態は著しい凝固活性化ですが、これを評価するマーカーが含まれていないことです。
この点、TATなどの凝固活性化をみる分子マーカーを診断基準に組み込みたいところです。
また、線溶活性化の程度がDIC病態に大きな影響を与えるため、何らかの形でPICなどの線溶活性化マーカーを取り入れたいところです。
管理人らの私見ですが、たとえば急性期DIC診断基準からSIRS項目を割愛し、PTに代わってTATなどの凝固活性化マーカーを組み込んではどうかと考えています。また、補助診断項目(DIC病型分類用)として、PICなどの線溶活性化マーカーを採用したいです。
診断基準は誰でもどこでも使用できる基準にすべきとの意見も一理あるのですが、むしろ有用な分子マーカーを積極的にDIC診断基準に取り込むことで、これらのマーカーの普及と医学レベルの向上につながるものと確信しています。
診断基準は誰でもどこでも使用できる基準にすべきという意見だけでは、100年経っても診断基準の発展はないのではないかと思っています。
DIC関連記事(リンクしています)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態、診断、治療(研修医/学生対応)
・DIC病態(造血器悪性腫瘍)
・DIC治療(造血器悪性腫瘍)
・急性期DIC診断基準 vs. 厚労省DIC診断基準
・急性前骨髄球性白血病(APL)とDIC:ATRA、アネキシンII
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:13
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多発性骨髄腫と静脈血栓塞栓症:サリドマイド、レナリドマイド
多発性骨髄腫は、M蛋白が上昇するため血液粘度が上昇し、易血栓状態になるものと指摘されてきましたが、それ以外にも血栓傾向となる機序がいくつか指摘されています。
M蛋白の向凝固作用やフィブリン構造への干渉、活性化プロテインC抵抗性、血管内皮障害、炎症性サイトカイン産生亢進による凝固活性化、von Willebrand因子の上昇、プロテインS活性の低下などが指摘されています。
多発性骨髄腫症例での静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症 DVT&肺塞栓 PE)の発症頻度は、報告によって幅はあるものの3〜10%とされています。ただし、これらは海外での報告であり、本邦での発症頻度はこの数字と同じかどうかは不明です。
近年、多発性骨髄腫に対して血管新生抑制作用も期待されているサリドマイド(thalidomide)やその誘導体であるレナリドマイドが投与されることが多くなりました(ただし日本では、従来は保険適応外でした)。
これらの薬剤は、単独で用いた場合には血栓症の発症を増加させることはありませんが、デキサメタゾンやアントラサイクリン系薬剤など他の薬剤を併用することで、静脈血栓塞栓症の頻度を有意に増加させることが知られています。
この傾向は、特に新規診断症例において顕著となっています。
その他にも、サリドマイドおよび誘導体治療関連の静脈血栓塞栓症発症リスクを高めるのではないかと現在考えられている要因として以下が知られています。
1. 初回治療であること。
2. サリドマイドが高用量であること。
3. デキサメタゾンが高用量であること。
4. アントラサイクリン系薬物が併用されていること。
5. エリスロポエチン製剤の使用。
6. 一般的な血栓症の危険因子を有していること(血栓症の既往、経口避妊薬の内服、Factor V Leiden、寝たきりなど)。
なお、活性化プロテインC抵抗性に関しては、先天性Factor V Leiden(欧米で多い血栓性素因:日本人では報告なし)ではなく、多発性骨髄腫に一過性に合併する後天性のものが報告されています(約10%の症例で出現)。
この活性化プロテインC抵抗性の合併した症例に対して、サリドマイドを含む治療を行うと、静脈血栓塞栓症の発症頻度は、12%から66%に上昇するという報告が見られています。多発性骨髄腫における活性化プロテインC抵抗性の機序としては、プロテインCに対する自己抗体産生の可能性を指摘する報告も見られています。
多発性骨髄腫に対して他剤(デキサメタゾンやアントラサイクリン系薬剤など)とともにサリドマイド(および誘導体)を投与して血栓症を誘発しやすくなる理由ついては不明な点が多く、なお検討すべき課題と考えられます。
上記のような治療を行う多発性骨髄腫症例に対しては(血栓症発症のリスクがあると考えられる症例に対しては)、抗血栓療法により予防すべきという考え方がありますが、日本人における予防治療指針はありません。
管理人は、少なくともリスクの高い場合には、何らかの抗血栓療法を行ってはどうかと考えています。この場合、化学療法にともなって食事摂取量が大きく変動しやすかったり、抗生剤が必要となったりする時期には、ワーファリンコントロールよりもヘパリン(カプロシンなど)の方がコントロールしやすいかも知れません。
参考文献
1) Semin Thromb Hemost 2003; 29:275-82.
2) Haematologica 2007; 92: 279-80.
3) Cancer 2004; 101: 558-66.
4) Lancet 2007; 370(9594): 1209-18.
5) Leukemia 2008; 22: 414-23.
6) Thromb Haemost 2008; 99: 1001-7.
7) Thromb J 2006; 4: 11.
8) Br J Haematol 2006; 134:399-405.
9) Ann Hematol 2004; 83:588-91.
10) J Thromb Haemost 2004; 2:327-34.
11) J Thromb Haemost 2003; 1: 445-9.
血液凝固検査入門(インデックスページ) ← クリック! 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンクしています。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:12
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【金沢大学血液内科進級試験過去問題(DIC)】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)
(設 問)(一部改変)
播種性血管内凝固症候群(DIC)の検査所見に関する記載として正しいものはどれか。
a. PT、APTT、フィブリノゲンともに正常であれば、DICを否定できる。
b. 線溶抑制型DICでは、血中プラスミノゲンアクチベーターインヒビター (PAI)活性が正常である。
c. 線溶亢進型DICでは、血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が著増する。
d. 線溶抑制型DICでは、血中プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)が著増する。
e. 線溶亢進型DICでは臓器症状がみられやすい。
(ポイント)
a. PT、APTT、フィブリノゲンともに正常であってもDICのことはありうる。この場合、FDP&Dダイマー、TATは必ず上昇している。
b. 線溶抑制型DIC(代表的基礎疾患は、敗血症)では、線溶阻止因子PAIは著増する。
c. 線溶亢進型DICであっても、線溶抑制型DICであっても、DICであれば必ず著しい凝固活性化があるため、TATは著増する。
d. 線溶抑制型DICでは、PAIが著増して線溶が抑制されているため、PICの上昇は軽度にとどまる。
e. 線溶亢進型DICでは、多発した微小血栓は溶解しやすいため、微小循環障害をきたしにくい。出血症状は高度であるが、臓器症状はみられにくい。
(内科専門医試験対策)
FDP、Dダイマー、TAT、PICの意義は熟知している必要がある。
DIC診断上、PT、APTT、フィブリノゲンの重要性はやや落ちる。
TAT:凝固活性化マーカー。DICでは必ず上昇する。
PIC:線溶活性化マーカー。 線溶亢進型DICでは著増、線溶抑制型DICでは軽度上昇。
FDP&Dダイマー:血栓が分解して生じる分解産物。DICでは必ず上昇。
・播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態、診断、治療(研修医/学生対応)
(血液専門医試験対策)
HPのNETセミナーに目を通しておこう!
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
(答)C
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:38
| 医師国家試験・専門医試験対策
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L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)と血栓症、DIC
L-アスパラギナーゼ(L-asparaginase:ロイナーゼ)は、急性リンパ性白血病などのリンパ性悪性疾患に対して使用される抗腫瘍薬です。
本薬は肝での蛋白合成を抑制しますが、それを反映して凝固第V、VII、VIII、IX、X、XI、フィブリノゲンといった凝固因子活性が低下します。加えて、凝固阻止因子であるアンチトロンビン、プロテインC、プロテインSも低下しますので、出血・血栓のいずれにも傾斜しやすい不安定な血栓止血病態となります。
従来、脳梗塞、深部静脈血栓症、肺塞栓などの報告が見られています。
小児科の急性リンパ性白血病を対象としたメタ解析によりますと、血栓症の発症頻度は5.2%と報告されています(1,752症例での検討)(文献←クリック)。
ほとんどの例で寛解導入療法時に血栓症を発症しています。また、L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)を少量長期間投与する場合に特に発症頻度が高くなっているようです。
凝固異常の程度が強い場合は、新鮮凍結血漿により、凝固因子、凝固阻止因子の両者を補充し、血栓止血のバランスを安定化させることで対応可能です。
なお、管理人は、L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ)によりDICを発症した症例を経験しています。
【関連記事】
<特集>播種性血管内凝固症候群(図説)← クリック(シリーズ進行中!)
DIC関連記事(リンクしています)
・播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態、診断、治療(研修医/学生対応)
・DIC病態(造血器悪性腫瘍)
・DIC治療(造血器悪性腫瘍)
・急性前骨髄球性白血病(APL)とDIC:ATRA、アネキシンII
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:59
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DICの治療(急性白血病などの造血器悪性腫瘍):APL、ATRAほか。
【はじめに】
DICの治療としては、重要な順番に、基礎疾患の治療、抗凝固療法、補充療法、抗線溶療法が挙げられます。この優先順位は、造血器悪性腫瘍に限らず全ての基礎疾患に合併したDICに共通しています。
DIC(図解シリーズ)連載中! ←クリック
【基礎疾患の治療】
基礎疾患の治療は、急性前骨髄球性白血病(acute promyelocytic leukemia:APL)の場合には、ビタミンA誘導体であるall-trans retinoic acid(ATRA)を使用します。ATRAの素晴らしいところは、APLを分化誘導させるのみならず、APLに合併したDICをも劇的に改善させるところです。APLの分化誘導に成功するためには1〜2ヶ月を要しますが、DICは翌日にも軽快することが少なくありません。APLに対するATRA療法は、DIC治療を兼ねていることになります(参考記事 ← クリック)。
その他の造血器悪性腫瘍の場合は、通常多剤併用による化学療法を行います。造血器腫瘍細胞の急激な破壊とともに、DICは一過性に悪化することが多いですが、この時期を上手に乗り切ることに成功すれば、腫瘍細胞の減少とともに速やかにDICから離脱することが多いのが特徴です。このDICの一過性悪化の時期にDICに伴う致命的な出血(脳出血など)を阻止することが、造血器悪性腫瘍に合併したDIC治療の最重要ポイントになります。
ただし、化学療法に抵抗性の場合にはDICからの離脱が困難な場合があります。また、DICが再燃してくる場合には、基礎疾患も再燃していることが多いため、そのような視点での経過観察が必要となります。
【造血器悪性腫瘍合併DICに対する抗凝固療法】
抗凝固療法は、敗血症に合併したDICの場合には、アンチトロンビン濃縮製剤(商品名:アンスロビンP、ノイアート、ノンスロン)とヘパリン類(ダナパロイドナトリウム、低分子ヘパリン、未分画ヘパリン)の併用が中心的治療法になるのに対して、造血器悪性腫瘍の場合は出血傾向が高度なことが多く、ヘパリン類を使用しがたい場合が多い点に特殊性があります。
管理人らは、造血器悪性腫瘍に合併したDICのように線溶活性化が高度なDIC(線溶亢進型DIC)に対しては、メシル酸ナファモスタット(商品名:フサン)を用いてDICの良好なコントロールが得られる症例を蓄積しています。フサンは、凝固活性化に対してのみならず線溶活性化に対しても抑制効果が強く、線溶活性化が高度なタイプのDICに対しては、極めて相性の良い薬剤なのです。ただし、高K血症の副作用には注意が必要です。
加えて、今後は、遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(rTM)(商品名:リコモジュリン)に対しても期待が高まっています。リコモジュリンは、造血器悪性腫瘍および重症感染症を基礎疾患としたDICに対して、従来と比較して極めて質の高い臨床試験が行われており、優れた有用性が報告されています(参考文献 ← クリック)。特に、リコモジュリンはヘパリンと同等以上の効果を有しているにもかかわらず、出血の副作用がヘパリンよりも少ない点が注目されています。
リコモジュリンは、直接的な抗トロンビン効果ではなく、生体内で生じたトロンビン・トロンボモジュリン複合体がプロテインC(PC)を活性型PC(APC)に転換させることによるAPCの抗凝固活性を期待した薬物濃度の設定になっています。すなわち、生体内で過剰なトロンビンが形成されている間(凝固活性化を抑制したい間)は抗凝固活性を発揮しますが、トロンビン形成がなくなりますと(凝固活性化を抑制する必要がなくなりますと)効果を発揮しなくなることになります。そのため、本当に必要な時のみ効果を発揮する点が、出血の副作用が少ない理由ではないかと考えられます。リコモジュリンには抗炎症効果も期待されており、重症感染症〜造血器悪性腫瘍にわたって多くの基礎疾患に合併したDICに対して有用ではないかと期待されています。
なお蛇足ながら、造血器悪性腫瘍ではなく敗血症に合併したDICに対しては、アンチトロンビン濃縮製剤とリコモジュリンの併用療法が、最強療法になるのではないかと管理人らは思っています。
【造血器悪性腫瘍合併DICに対する補充療法】
補充療法としては、濃厚血小板(血小板の補充)や新鮮凍結血漿(凝固因子の補充)の輸注が必要になることがあります。
特に、造血器悪性腫瘍に合併したDICにおいてはDICのコントロールを行っても血小板数の回復は期待できないことが多く(現疾患による血小板産生低下のため)、濃厚血小板の輸注はしばしば必要となります。通常、血小板数2〜3万以上を維持できるように適宜輸注します。
【造血器悪性腫瘍合併DICに対する抗線溶療法】
抗線溶療法はDICに対して原則禁忌です。
ただし、線溶活性化が極めて高度であり、出血症状が重症である場合には、ヘパリン類との併用下に抗線溶療法(トラネキサム酸)を行いますと、出血症状に対して著効することがあります。ただし、使用方法を間違えますと致命的な血栓症を誘発するため、専門家にコンサルトできない場合には安易に行う治療ではないと思われます。
なお、APLに対してATRA療法を行っている場合には、抗線溶療法は絶対禁忌です(参考記事 ← クリック)。
【関連記事】
<特集>播種性血管内凝固症候群(図説)← クリック(シリーズ進行中!)
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・急性前骨髄球性白血病(APL)とDIC:ATRA、アネキシンII
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 18:53
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慢性咳嗽の鑑別診断(藤村政樹 呼吸器内科長):テレビ東京
金沢大学附属病院 藤村政樹 呼吸器内科長(当科)が、
テレビ東京に出演します!
話題の医学「慢性咳嗽の鑑別診断」
テレビ東京 2008年10月5日(日曜日)5:00〜5:15
参考1、参考2
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:51
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DIC病態(急性白血病などの造血器悪性腫瘍):治療法改善へ
【はじめに】
DICは、基礎疾患の存在下に持続性の著しい凝固活性化をきたし、全身の主として細小血管内に微小血栓が多発する重篤な病態です。そういう意味では、DICは究極の血栓症(血栓症の王様)とも言えます。
DICの基礎疾患としては多くの疾患が知られていますが、急性白血病、固形癌、敗血症は三大基礎疾患として知られています。
【造血器悪性腫瘍に合併したDIC病態:敗血症と比較して】
DICの発症機序や病態は基礎疾患によって相当に異なります(DICの病型分類)。
敗血症においては、LPSやTNF、IL-1などの炎症性サイトカインの作用により、単球/マクロファージや血管内皮から大量のTFが産生され、著しい凝固活性化を生じます。また、血管内皮上に存在する抗凝固性蛋白であるトロンボモジュリン(TM)の発現が抑制されることで、凝固活性化はさらに拍車がかかることになります。
加えて、血管内皮から産生される線溶阻止因子であるプラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)が過剰に産生されるため生じた血栓は溶解されにくい病態です(いわゆる線溶抑制型DICの病態)。
臨床的には、臓器症状は重症化しやすいですが、出血症状は比較的見られにくいのが特徴です。
一方、造血器悪性腫瘍(急性白血病など)や固形癌などの悪性腫瘍においては、腫瘍細胞中のTFにより外因系凝固が活性化されることが、DIC発症の原因と考えられています。血管内皮や炎症の関与がほとんどない点において、より直接的な凝固活性化の病態となっています。これらの悪性腫瘍、特に造血器悪性腫瘍に対して、化学療法を行いますと腫瘍細胞中のTFが一気に血中に流入するためにDICは一時的にかえって悪化する現象が良く知られています。
ただし、このことを理由に基礎疾患の治療を躊躇してはいけません。
【造血器悪性腫瘍に合併したDICのマーカーの変動】
急性白血病(特に、APL)などの造血器悪性腫瘍に合併したDICにおいては、凝固活性化のみならず線溶活性化も著しいために、凝固活性化マーカーであるトロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)のみならず、線溶活性化マーカーであるプラスミン-α2プラスミンインヒビター(PIC)も著増するのが特徴です(典型例では、PIC>10μg/mL)(いわゆる線溶亢進型DICの病態)。
線溶阻止因子PAIは上昇することはなく、α2プラスミンインヒビター(α2 PI)は消費性に著減します(典型例では、α2 PI<50%)。著しい線溶活性化を反映してFDPや Dダイマーは明らかに上昇しますが、フィブリノゲン分解も進行しますと、FDP/Dダイマー比は上昇します(Dダイマー/FDP比は低下します)。
【造血器悪性腫瘍に合併したDICの臨床症状】
造血器悪性腫瘍に合併したDICにおいては、臨床的には出血がしばしば高度ですが、臓器症状はほとんどみられないのが特徴です。たとえば脳出血、吐血・下血、肺出血などの致命的な出血をきたすような症例においても、肝腎障害などの臓器障害は全くみられないことがほとんどです(敗血症に合併したDICと極めて対照的です)。
その理由としましては、線溶活性化が高度であるために多発した微小血栓が速やかに溶解して臓器における微小循環障害をきたさないためと考えられています。ただし、この高度な線溶活性化は止血のための血栓(止血血栓)までも溶解してしまうために、しばしば致命的な出血をきたしてしまいます。
造血器悪性腫瘍に合併したDICの治療の主眼は、致命的な出血症状が出現しないようにコントロールすることになります。
【化学療法のみでも良い?】
造血器悪性腫瘍に合併したDICにおいては、化学療法が特効すればDICは速やかに消退しますが、このことを理由にDICの治療を行わなくて良いというのは間違った考えです。それは、たまたま致命的な出血を来さなかっただけなのです。知命的な出血である脳出血であっても、極論すれば1秒前までは症状はありません。脳出血を発症してしまってからDICの治療を行うのでは完全に後手に回ってしまいますし、こんな残念なことはありません。
DICの病態を正確に把握し、適切な治療を行うことが肝要です。
【補足:管理人の辛い経験】
管理人は、20数年前(まだDICの病型分類の概念がなかったころですが)、線溶亢進型DICで脳出血をきたした症例を何例か経験しています。当時は、それはヘパリンの使用量が少なかったからではないかと考察されていましたが、今の医学で考えますと大間違いでした。むしろ、ヘパリンを(しかも単独で)使いすぎていたので脳出血をきたしていたのです。
DIC治療を、今の医学レベルで当時行っていれば脳出血を起こすようなことはなかったでしょう。思い出しますと、とても残念な思いです。
【関連記事】
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・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:00
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第5回 北陸 血管・血液セミナー(歓迎:研修医、学生)
第5回 北陸 血管・血液セミナー pdfファイル
ーーー 研修医の皆さん、学生の皆さんの御参加を歓迎しています ーーー
日時:平成20年11月8日(土)16 : 00 〜 18 : 30
会場:金沢ニューグランドホテル 3階 「加賀宝生」 金沢市高岡町1−50
ノボセブン情報提供
ノボ ノルディスク ファーマ株式会社 ノボセブン事業部
メディカル アドバイザー 桑原 光弘
開会の挨拶 金沢大学大学院医学系研究科 細胞移植学 教授 中尾 眞二 先生
16:10〜16:30
座長:金沢大学大学院医学系研究科 高密度無菌治療部 准教授 朝倉 英策 先生
指定演題 『後天性フォン・ヴィレブランド病と思われる1例』
石川県立中央病院 血液免疫内科 橋本 江梨 先生
16:30〜17:20
座長:金沢大学大学院医学系研究科 細胞移植学 教授 中尾 眞二 先生
教育講演 『大動脈腸骨動脈疾患に対する血管内治療』
金沢大学大学院医学系研究科 経血管診療学講座 助教 眞田 順一郎 先生
17:20〜17:30
〜 コーヒーブレイク 〜
17:30〜18:30
座長:富山大学医学部 臨床分子病態検査学講座 教授 北島 勲 先生
特別講演 『小児出血性疾患』
産業医科大学 小児科学 教授 白幡 聡 先生
主催:ノボ ノルディスクファーマ株式会社
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:35
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ヘパリン類の特徴(表):フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ
今回は、ヘパリン類である未分画ヘパリン(標準ヘパリン)、低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)、オルガラン、アリクストラにつきまして、その特徴を表にしてみました。
このブログでの、このような形での表は 初めてではないかと思います。
体裁は今一かもしれませんが、割と役に立つ表になっているのではないかと思います。
ヘパリン類 |
未分画ヘパリン
(標準ヘパリン) |
低分子ヘパリン
(ダルテパリン/
エノキサパリン) |
ダナパロイド |
フォンダパリヌクス |
商品名 |
ヘパリン |
フラグミン/クレキサン |
オルガラン |
アリクストラ |
適応症 |
・DIC |
・フラグミン:
DIC、血液体外循環時の還流血液の凝固防止(欧米ではDVTも) |
・DIC(欧州ではDVTも) |
・下肢整形外科および腹部外科術後のVTE発症抑制 |
|
・体外循環の血液凝固防止(透析) |
・クレキサン:
下記の下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制(股関節全置換術 、膝関節全置換術、股関節骨折手術)
|
|
|
|
・血栓症の予防と治療 |
|
|
|
抗Xa/トロンビン比 |
1:1 |
2〜5:1 |
22:1 |
7,400:1 |
半減期 |
0.5〜1時間 |
2〜4時間 |
20時間 |
17時間 |
用法・用量 |
5〜10単位/kg/時間持続点滴(DIC) |
・フラグミン:75単位/kg/24時間(DICに対して)
・クレキサン:2,000IU(20mg)×2回皮下注(術後DVT予防として) |
1,250単位×2回静注(DIC) |
2.5mg(1.5mg)×1回皮下注(術後DVT予防として) |
関連記事(リンクしています)
・血管内皮と抗血栓作用
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
・低分子ヘパリン(フラグミン、クレキサン)
・オルガラン(ダナパロイド )
・アリクストラ(フォンダパリヌクス)
・プロタミン(ヘパリンの中和)
・スロンノン(アルガトロバン)
・フサン(線溶亢進型DICに対する特効薬)
・リコモジュリン(トロンボモジュリン製剤)
・NETセミナー:DICの病態・診断
・NETセミナー:DICの治療
・血栓症の分類と抗血栓療法の分類
・抗血小板療法 vs, 抗凝固療法(表)
・PT-INRとトロンボテスト
・NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
・ワーファリン
・プラビックス:パナルジン、プレタール、プロサイリン、ドルナー、ワーファリンとの比較(納豆は大丈夫か?)
・抗Xa vs. 抗トロンビン
・深部静脈血栓症
・ロングフライト血栓症
・閉塞性動脈硬化症
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:32
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【金沢大学血液内科進級試験過去問題】兼:医師国家試験・専門医試験対策
金沢大学血液内科進級試験過去問題(2005年)
(設 問)
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通した所見の記載として誤っているものはどれか。
a. 血清ハプトグロビンの低下
b. 血清LDHの上昇
c. ク−ムス試験陰性
d. 破砕赤血球の出現
e. ADAMTS13に対する自己抗体の出現
(ポイント)
a. TTP&HUSともに溶血のため、血清ハプトグロビンは低下する。
b. TTP&HUSともに溶血のため、血清LDHは上昇する。
c. クームス試験は、自己免疫性溶血で陽性となるが、TTP&HUSでは陰性。
d. TTP&HUSともに破砕赤血球が出現する。
e. ADAMTS13に対する自己抗体は、TTPでのみ出現する。
(内科専門医試験&血液専門医試験対策)
TTP、HUSは共通点している点も多く、血栓性微小血管障害症 (thrombotic microangiopathy, TMA)と総称されている。
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の五主徴:
1)溶血性貧血
2)血小板数減少
3)腎障害
4)発熱
5)動揺性精神神経障害
溶血性尿毒症症候群(HUS) の三主徴:
1)溶血性貧血
2)血小板数減少
3)急性腎不全
TTPに特徴的な病態(HUSでは見られない)
TTPにおいては、von Willebrand 因子(VWF)の特異的切断酵素(VWF-cleaving protease, VWF-CP)(ADAMTS13とも言う)に対する自己抗体が出現し、ADAMTS13活性が低下する。
ADAMTS13は、unusually large VWF multimer (UL-VWFM)(強い血小板凝集作用を有する)を分解する作用を有している。TTPでは、ADAMTS13活性が低下しているため、このUL-VWFMが血中に存在し、血小板凝集が進行する。
TTPの本態は、ADAMTS13に対する自己抗体の出現という観点から、自己免疫性疾患と言えるが、HUSではこの機序はみられない。
TTPに対して、血漿交換が有効な理由
1) UL-VWFMが除去される。
2) ADAMTSに対する自己抗体が除去される。
3) ADAMTSが正常血漿により補充される。
(血液専門医試験対策)
先天性にADAMTS活性が低下している疾患(いわゆる先天性TTP)が知られており、Upshaw-Schulman症候群(USS)と称されている。
(答)e
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:09
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第6回北陸血栓研究会
第6回北陸血栓研究会(旧DIC研究会):pdfファイル
ーーーー 研修医の皆さん、学生の皆さんの御参加を歓迎しています ーーーーー
2008 年10月25日(土) 16:30〜20:00
金沢都ホテル 5F 「 加賀の間」
代表世話人 金沢大学大学院医学系研究科
がん医科学専攻 機能再生学講座 細胞移植学 中尾 眞二
当番世話人 福井大学医学部 麻酔科蘇生科学 重見 研司
プログラム
16:30〜16:40 学術情報提供 CSLベーリング株式会社
16:40〜18:40 一般演題 (10題予定)
18:50〜19:50 特別講演
座長 福井大学医学部 麻酔科蘇生科学 教授 重見 研司 先生
「Sepsisに対する最近の治療戦略 」
京都府立医科大学附属病院 集中治療部 志馬 伸朗 先生
会費:500円(学生を除く)
※ 研究会終了後、情報交換会を予定しております。
※ 本研究会は、石川県病院薬剤師会生涯教育制度の1.5単位に該当しますので、会場で研修シールを受け手帳に貼付して下さい。
※ 本研究会は、福井県病院薬剤師会生涯教育制度の2 単位に該当しますので、会場で研修シールを受け手帳に貼付して下さい。
※ 本研究会は、日本臨床衛生検査技師会生涯教育研修制度 専門教科 20点に該当します。
共催
北陸血栓研究会(旧DIC研究会)
CSLベーリング株式会社
(社)石川県臨床衛生検査技師会
後援
石川県病院薬剤師会
福井県病院薬剤師会
(社)富山県臨床衛生検査技師会
(中間法人)福井県臨床検査技師会
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 11:50
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抗Xa薬か、抗トロンビン薬か:抗凝固療法開発の歴史
抗凝固薬開発の歴史の中で興味あることとして、活性型第X因子(Xa)およびトロンビンの2つの活性型凝固因子のうち、より選択的にXa活性を抑制する薬剤と、より選択的に抗トロンビン活性を抑制する薬剤、異なった方向性での薬剤の探究が行われてきたことがあげられます。
抗Xa薬(低分子ヘパリン、フォンダパリヌクスなど)開発の根底にある考え方は、トロンビンを強力に抑制すると出血の副作用が強くなってしまうために、抗Xa/トロンビン活性比が高い薬物を開発しようということでした。
一方で、抗トロンビン作用をもとめての開発もされてきました。
新規経口抗凝固薬のうちで抗トロンビンであるダビガトラン(プラザキサ)、ヒルジン、トロンボモジュリン製剤(リコモジュリン)は、抗トロンビン作用を有しています。
一体、抗Xa薬と、抗トロンビン薬のどちらが優れているのでしょうか?
それぞれの抗凝固薬については、効果、副作用両面からの検証が必要だと思いますが、どの薬剤が優れた薬剤であるかはまだ結着はついていないのではないかと思います。
管理人らは、それぞれの臨床の状況ごとに最も有用な薬剤は異なってくるのではないかと考えています。
また、前述のように、抗凝固薬探究の別の観点からの動向として、内服可能な薬剤の開発が挙げられます。
これまでは内服可能な抗凝固薬はワルファリンのみでしたが、ワルファリンはビタミンK依存性凝固因子活性を低下させますが、ヘパリンのように活性型凝固因子を阻止する訳ではありません。
活性型凝固因子を阻止する内服可能な抗凝固薬(新規経口抗凝固薬/NOAC)は、臨床的に今後とても期待されるところです。
(※)図中で、トロンボモジュリンは抗トロンビン作用のみでなく、活性化プロテインCを介して、Va&VIIIaも抑制しますので、※印をつけてあります。
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・血管内皮と抗血栓作用
・ヘパリン類(フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ)
・ヘパリン類の種類と特徴(表)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:15
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