晩期効果:造血幹細胞移植前処置としてのATG(4)
【晩期効果を有するATG】
ATGの血中半減期は2週間程度です。
しかし、T細胞抑制効果は数年以上持続する可能性が示唆されています。
これは、何らかの機序でATGが胸腺機能に影響して起こるものと考えられています。
Bacigalupoらは、非血縁者間骨髄移植患者109例を対象に、移植前処置にATGを用いるか用いないかでランダム化試験を実施して、移植後3年の時点で生存率に差がみられなかったと報告しています。
しかし、その後さらに3年間観察を続けたところ、前処置にATGを用いた群と用いない群では、広汎性慢性GVHDの発症率が15% vs. 41% (P=0.01)、Karnofsky score 90%以上の患者割合が89% vs. 57% (P=0.03)と差が認められました。
特に、慢性肺機能障害の割合が19% vs. 51%(P=0.005)と、大きな差が認められたのは印象的です。
6年生存率は44% vs. 31%(P=0.8)と有意差はありませんでしたが、1年以上生存した患者に限ると85% vs. 58%(P=0.09)とATG群に良好な傾向がみられました。
したがって、非血液腫瘍例や、移植後早期再発の可能性が低く移植関連死亡が懸念される症例は、ATGのよい適応と思われます。
(続く)
【シリーズ】造血幹細胞移植前処置としてのATG
1)背景
2)作用機序
3)GVHD予防
4)晩期効果
5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法
6)臍帯血移植&GVHD
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GVHD予防:造血幹細胞移植前処置としてのATG(3)
【ATGによるGVHD予防】
GVHD予防効果を抗ヒトT 細胞グロブリン(ATG)の有無・使用方法で比較検討した報告が多数あります。
初期の報告では、GVHD予防・移植関連死亡(TRM)は低下したものの、再発率が高まり相殺されたものが多いようです。
Russellらは、抗胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(商品名:サイモグロブリン TG)投与量を従来の7.5-15 mg/kgから4.5 mg/kgに減らしました。
これにより、GVHD予防効果を保持したまま、再発率と致死的感染症発症増加を抑え、生存率が改善することを示しました。
さらに、ATGを用いれば、非血縁者間移植でも血縁者間移植と同等の治療成績が期待できることも示されました。
さらに、Remberger らは、非血縁者間移植患者を対象に、TGの使用量を4・6・8・10 mg/kgの4段階にわけて比較検討しました。
TG 4 mg/kgでは急性GVHD予防効果に乏しく、また10 mg/kgの場合はGVHD予防効果はTRMと再発率増加で相殺されました。
生存率が最も高かったのは、TG 6または8 mg/kgだったのです。
使用量の検討はとても重要のようです。
(続く)
【シリーズ】造血幹細胞移植前処置としてのATG
1)背景
2)作用機序
3)GVHD予防
4)晩期効果
5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法
6)臍帯血移植&GVHD
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作用機序:造血幹細胞移植前処置としてのATG(2)
【ATGの作用機序とGVHD予防】
抗ヒトT細胞グロブリン(ATG)は移植片対宿主病(GVHD)予防に20年以上使われていますが、作用機序は不明な点も多いのです。
ATGは、T細胞特異抗原に対する抗体以外に、T細胞に関連しない抗体を少なくとも23種類含んでいます。これによっても生体内に何らかの影響を与えていると想像されています。
ATGは高濃度の場合、補体依存性細胞溶解、抗体依存性細胞傷害活性、網内系細胞によるオプソニン効果誘導によりリンパ球を抑制します。
低濃度の場合、Fas-Fasリガンド系を介して活性化リンパ球のアポトーシスを誘導します。
ATGは主にT細胞数を減らしてT細胞を抑制します。カニクイザルを用いた実験でも、ATG用量依存性にリンパ球が減ることが確認されています。この効果は、末梢血と脾臓で認められましたが、胸腺ではみられませんでした。そのほか、T細胞上抗原をdown regulationする作用も有しています。
またATGは、成熟の程度を問わず樹状細胞を細胞傷害し、機能も抑制します。ホストの樹状細胞は急性GVHD発症の中心的役割を担っていることから、ATGの急性GVHD予防効果を考える上でこの作用は重要です。
Regulatory T cell (Treg)は、免疫反応抑制・免疫寛容維持に重要な役割を担っています。マウスモデル実験で、Tregが移植片の拒絶とGVHD予防効果を有していることが示されました。臨床では、移植片中のTregが多いほどGVHDは起こりくいです。
最近、TG(抗胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン、商品名:サイモグロブリン)がTregの数を増やし機能を高めることが明らかとなりました。しかもウマ由来のATGを用いた場合はみられませんでした。
また、この効果はTGを低濃度で用いた場合にかぎりみられました。これは、TGを低濃度で用いた場合、Tregを介したGVHD抑制効果が期待できることを示唆しています。
(続く)
【シリーズ】造血幹細胞移植前処置としてのATG
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2)作用機序
3)GVHD予防
4)晩期効果
5)急性GVHDに対するpre-emptive ATG療法
6)臍帯血移植&GVHD
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:02
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背景;造血幹細胞移植前処置としてのATG(1)
【ATGの背景】
抗ヒトT 細胞グロブリン(ATG)は、移植片対宿主病(GVHD)の予防および治療薬として、1980年代より海外で広く使用されています。
2008年9月日本でも、抗胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(商品名:サイモグロブリンTG)が、造血幹細胞移植時の急性GVHD予防および治療薬として薬価収載されました。
海外では、抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン(商品名:ゼットブリンZB)も急性GVHD予防・治療に用いられています。
なお、TG・ZBはいずれも重症・中等症の再生不良性貧血にも適応を有しています。
【造血幹細胞移植前処置にATGが必要となる背景】
● GVHD発症率が高い
1) 末梢血幹細胞移植
2) 高齢患者
3) 高齢ドナー
4) 非血縁者間移植
5) HLA不適合移植
● 生着不全が起こりやすい
1) 緩和的前処置移植
2) 臍帯血移植
● その他:初期治療無効GVHDの予後不良
日本は海外と比べGVHDの発症率が低いため、移植片からT細胞を除くex vivo purgingや、患者にATGを投与してT細胞を除くin vivo purgingで急性GVHDを予防する必要はほとんどないと考えられてきました。
ただし、末梢血幹細胞移植が一般に行われるようになり、この治療は骨髄移植と比較してGVHD(特に慢性GVHD)が起こりやすいという問題が生じてきました。慢性GVHDの中でも肺病変を合併した場合には、生命予後不良だけでなく、QOL(生活の質)も著しく低下します。
さらに、緩和的前処置移植が可能となり、高齢の移植患者が急増しました。患者が高齢になるほどHLA一致同胞間移植は困難となり、親子間移植や非血縁者間移植が増えました。同時に、HLA不適合ドナーからの移植も増加しました。
患者年齢およびドナー年齢の高齢化、HLA一致同胞間以外の移植は、いずれもGVHDの危険因子になります。
低用量の全身照射または、全身リンパ節照射単独かフルダラビンを組み合わせる特に弱い前処置を用いる場合には拒絶のリスクが高いため、生着を担保する目的でATGを用いることがあります。また、近い将来非血縁者からの末梢血幹細胞移植が可能になると、重症GVHDの発症は益々増えると予想されます。
加えて、急性・慢性GVHDの二次治療が確立していないという問題もあります。急性GVHDがステロイド無効に終われば、長期生存できる可能性は2〜3割程度に過ぎません。しかも、急性GVHDは一旦発症しますと、発症から1週間以内にATGを投与しても、急性GVHD予後改善は期待できません。
ステロイド治療を要しない軽症急性GVHDを発症すれば、良好な予後が期待できる可能性はあります。しかし、それはサイコロを振るようなものなのです。急性GVHDはgraft-versus-malignancy効果を得るために必要悪との考えもありました。
しかし現在は、急性GVHDの発症は可能な限り防ぐという考え方が主流と思われます。
ただし、急性GVHD予防治療の選択には、合併症の問題も考慮する必要があります。
(続く)
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2)作用機序
3)GVHD予防
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6)臍帯血移植&GVHD
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 18:43
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インフルエンザ:タミフル耐性、リレンザ、関節痛
インフルエンザが猛威をふるっているようです。金沢でも大流行となっています。
金沢市内の某病院では、ある日曜日(最近です)に当番医担当になったそうですが、約60人の受診がありそのうち約40人がインフルエンザだったそうです。
また、現在流行のインフルエンザは、タミフル耐性が多いことも問題になっているようです。インフルエンザの症例に遭遇するたびに、タミフルを処方して良いのか、あるいはリレンザを処方した方が良いのか、管理人も迷うことがしばしばです。
インフルエンザQ&A(厚生労働省HP)でも、タミフル耐性の問題を複数とりあげています。
管理人自身の経験ですが、少なくとも金沢では微熱のインフルエンザがかなり多い印象を持っています。典型的なインフルエンザでは、高熱(38.5℃以上)が見られますが、今シーズンは高熱の出ないインフルエンザも少なくない印象を持っています。
ただし、インフルエンザと診断された方では、関節痛や鼻水を訴えられる方が多いようです。特に、関節痛を伴った風邪症状の方では、インフルエンザを疑うべきではないかと思っています。
(追伸)
本日、以下のような記事もありました。
リレンザの供給増を要請=タミフル耐性ウイルス対策−厚労省
治療薬タミフルに耐性を持つインフルエンザウイルス「Aソ連型」が全国に拡大していることから、厚生労働省は28日までに、耐性ウイルスに有効とされる別の治療薬「リレンザ」の製造販売元「グラクソ・スミスクライン」に対し、今冬の供給量を増加できないか要請した。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:04
| 医学全般
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DICで、FDP(Dダイマー)の上昇しない意義(図解35)
FDP(Dダイマー)は、播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断の上で、最も重要なマーカーの一つです。世界中には、多くのDIC診断規準が存在しますが、FDP(Dダイマー)が入っていない診断基準は一つもないでしょう。
日本においても、厚生労働省(旧厚生省)DIC診断基準、急性期DIC診断基準などが存在しますが、FDPまたはDダイマーは最も重要なマーカーの一つと認識されています。
しかし、FDP(Dダイマー)の評価には注意が必要です。
血栓が存在しない場合(これは生体にとって良い状態です)であっても、
血栓が存在するが溶解しない場合(これは生体にとって悪い状態です)であっても、どちらであってもFDP(Dダイマー)は上昇しないのです。
生体にとって、不都合な時も、都合の良い時も同じ変動をするマーカーは臨床的意味があるのでしょうか。。。。。。?
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中!!)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:10
| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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第10回 北陸血管病変研究会のご案内
第10回北陸血管病変研究会
当番世話人 山岸正和
世話人 金子周一、多久和陽、竹原和彦、中尾眞二、山本博(五十音順)
◆日 時 平成21年2月19日(木) PM6:00〜8:00
◆場 所 ホテル金沢 2階 ダイヤモンド
プログラム
開会の挨拶 金沢大学医薬保健研究域医学系細胞移植学教授 中尾眞二
一般演題(18:00)
座長 金沢大学大学院医学系研究科血管分子生理学 多久和 陽 先生
1.能登半島地震におけるDVTボランティア活動から得た教訓
寺上貴子1,2,大場教子2,吉田知孝2,森下英理子1,3,朝倉英策3,木村圭一4,大竹裕志4,渡邊剛4,和田隆志2,中尾眞二3
(金沢大学大学院医学系研究科病態検査学1,同附属病院検査部2、血液内科3、心肺・総合外科4)
2.脂肪組織由来間葉系幹細胞と骨髄由来間葉系幹細胞の遺伝子発現、分泌タンパク質の差異の検討
中西千明、坪川俊成、多田隼人、土田真之、高田睦子、川尻剛照、野原淳、田川庄督、井野秀一、山岸正和
(金沢大学附属病院 循環器内科)
3. ラット高血圧モデルにおける血管平滑筋のミオシン軽鎖ホスファターゼMLCPを負に制御するCa2+依存性PI-3KC2α- Rho経路の活性化
岡本安雄、Mohammed Ali Azam, 吉岡和晃, 多久和陽
(金沢大学大学院医学系研究科 血管分子生理学)
【特別講演】 (19:00)
座長 金沢大学循環器内科教授 山岸正和 先生
「幹細胞生物学の血管医学への応用」
東海大学 基盤診療学系 再生医療科学 教授 浅原孝之 先生
閉会の挨拶 金沢大学大学院医学系研究科血管分子生物学教授 山本博先生
【特別講演要旨】
幹細胞生物学の血管医学への応用
近年の神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞などの発見、研究が進む中、血管内皮前駆細胞 endothelial progenitor cellが成体の血液中に存在し、重症虚血部位の血管形成に関与することが判明した。
この機序は、胎児期のみに存在するとされた血管発生(Vasculogenesis)、つまり血管内皮前駆細胞が 未分化のままその場所にたどり着き、増殖、分化することで血管を構築する過程、に一致し、これまで考えられてきた成体の血管形成、既存隣接血管の血管内皮細胞による増殖 、遊走により成立する血管新生Angiogenesis とは異なる概念が生まれた。
この血管内皮前駆細胞は、骨髄移植マウスの実験から骨髄由来で癌、創傷治癒、虚血あるいは子宮、卵巣の血管形成にvasculogenesisの機序で参加していく事が判明した。
病理学的状態の場合、サイトカイン・増殖因子の影響で血管内皮前駆細胞の分画は骨髄より強制動員mobilization され、血管内皮前駆細胞動態の活性化が血管形成の発達に寄与している事も判明した。
この血管内皮前駆細胞の研究は医療応用に大きな可能性を秘めている。虚血部位の血管新生療法や動脈硬化部位の血管内皮再生療法に、増殖させた血管内皮前駆細胞を応用する試み(Cell therapy) が研究されている。
本講演では、この血管内皮前駆細胞の幹細胞生物学を紹介すると共に、血管再生治療のための血管内皮前駆細胞の臨床応用の現状と未来を紹介する。とくに、最近の研究では、血管再生と臓器再生の相互性が注目されつつある。臓器再生治療への、これらの細胞治療の可能性についても紹介する。
【一般演題(1)の抄録】
能登半島地震におけるDVTボランティア活動から得た教訓
【目的】平成19年3月25日AM9:42に、能登半島沖を震源地とするM 6.9の強い地震が発生した。そこで今回我々は、金沢大学附属病院エコノミークラス症候群予防チームを発足し、地震発生5日目と9日目に、深部静脈血栓症(DVT)の予防と早期発見・早期治療を目的として、問診およびFDP・Dダイマーの測定、下肢静脈エコー検査を実施した。さらに平成19年7月に、追跡調査を目的として3回目の検査を実施した。今回、地震後早期に2回実施した結果および追跡調査の結果を解析し、下肢静脈エコー所見によるDVTの発症状況と血液検査結果についてまとめたので報告する。
【対象および方法】対象は、19ヶ所の避難所で避難所生活を余儀なくされていた一般住民789例とした。希望した被災者に医師が問診および検査の説明を行い、書面による承諾が得られた対象者に下肢静脈エコーと血中FDP、血中Dダイマーを測定した。
【結果】DVT陽性例は、第1回目は12/167例(7.2%)で、血栓性状より急性期3例、慢性期9例、第2回目は9/31例(29.0%)で、急性期4例、慢性期5例であった。地震発生直後、総計で21/198例(10.6%)でDVTが認められ、急性期DVTは7例(3.5%)であった。血中FDPおよびはDダイマーは、DVT陽性群で有意に高値を示した。追跡調査である第3回目のDVT陽性率は、7/39例(17.9%)で全例慢性期DVTであった。前回DVT陽性であった21例のうち10例が経過観察として再検査を実施し、4例でDVTを認めた。血中FDPおよびDダイマーは、共にDVT陽性群と陰性群では明らかな有意差は認めなかった。なお、今回FDP・Dダイマーが共に高値を示すがエコー検査にてDVT陰性と判定され、再検査にて血栓を認めた1症例を経験した。一方で、両マーカーが共に正常値を示す急性期DVT陽性例が3例存在した。
【総括】地震後早期のDVT陽性者の血中FDPとDダイマー値は、陰性者に比し有意に高値を示し、FDPおよびDダイマーの測定はDVTの診断に有用であると考えられた。ただし、これらのマーカーのみではDVTの見落としがありえるため、エコー検査を併用するとともに、DVT発症急性期をより感度よく検出するマーカーの検討も、今後必要であると思われた。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:28
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先天性アンチトロンビン欠損症の治療
【先天性アンチトロンビン欠損症】
アンチトロンビン(旧名称:アンチトロンビンIII)は、プロテインCやプロテインSなどとともに、生理的に存在する重要な凝固阻止因子です。先天性アンチトロンビン欠損症(常染色体優性遺伝)では、深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)、肺塞栓(pulmonary embolism:PE)などの静脈血栓症を発症しやすくなることが知られています。
従来、脳梗塞や心筋梗塞など動脈血栓症発症の危険因子とはあまり関係ないと考えられてきましたが、これに対して異を唱える考え方もあるようです。
【血栓症急性期の治療】
DVT、PEなどの静脈血栓症の急性期では、ヘパリン類である未分画ヘパリン、低分子ヘパリン(商品名:フラグミン)、ダナパロイド(商品名:オルガラン)による治療を行います(関連記事:ヘパリン類の表)。これらの薬物は、アンチトロンビンの活性を高めることで抗凝固活性を発揮しますので、先天性アンチトロンビン欠損症では十分な効果を発揮できないことになります。
このような場合には、アンチトロンビン濃縮製剤(アンスロビンP、ノイアート、献血ノンスロン)を併用します。
急性期を脱しましたら、以下の慢性期の治療に移行します。
【血栓症慢性期の治療】
先天性アンチトロンビン欠損症は先天性の疾患ですので、治癒させることはできません。しかし、血栓症を発症させないようにコントロールすることは可能です。
アンチトロンビン濃縮製剤は高価な薬剤ですので、一生にわたり連日のごとく使用することは困難です。アンチトロンビン濃縮製剤は血栓症急性期の治療のみとして用いるのが一般的です。
慢性期には、ワーファリンによる抗凝固療法を行います。血栓症の発症を契機に先天性アンチトロンビン欠損症の診断がなされた場合には、永続的に内服するのが理想ですが、出血の副作用が出ないようにPT-INR(またはトロンボテスト)で厳重なコントロールを行います。
先天性アンチトロンビン欠損症の発端者からの家族調査でこの病気の診断がなされたけれども、また一度も血栓症を発症していない場合の治療に関しては専門家の間でも意見が分かれると思いますが、管理人らは血栓症発症を待たずに弱めのワーファリンコントロールを始めても良いのではないかと思っています。
【妊娠、挙児希望時の注意点】
この病気でなくても、妊娠するだけで凝固活性化状態になります。先天性アンチトロンビン欠損症であれば、極めて厳重な管理が必要になります。
ワーファリンには催奇形性の副作用の問題がありますので、挙時希望の女性や妊娠中の女性には投与できません。この場合、妊娠中はヘパリンによる治療を継続することになります(処方例:カプロシン5000単位、1日2回皮下注)。ヘパリンには催奇形性の副作用はありません。また、必要があれば適宜アンチトロンビン濃縮製剤の補充を行うことになります。
【先天性AT欠損症の将来の治療】
先天性アンチトロンビン欠損症に対しては、遺伝子治療により、アンチトロンビンの発現を正常化させる治療ができる時代になって欲しいと夢みています。
【人類の血栓症治療の将来】
今の人間の、凝固と抗凝固のバランスはとても悪いです。血小板や凝固因子と言った止血因子は本当に必要な量の数倍〜10倍もあるくせに、アンチトロンビン、プロテインC、プロテインSなどの凝固阻止因子はぎりぎりの量しか存在しません。
数字で書きますと、血友病Aの患者様でも第VIII因子が10%に低下した場合には軽症血友病になります。ほとんど出血症状はないでしょう。臨床的に出血症状が出やすくなるのは、第VIII因子が5%以下に低下した、中等症〜重症例です。
また、血小板数の正常値は、20〜40万/μLです。もし1/10に低下すれば、3万/μLですが、それだけではほとんど出血しません。特発性血小板減少 性紫斑病(ITP)の患者様でも、血小板数3万/μLあれば無治療で経過観察している方も多数おられます。出血症状がほとんどないからです。
一方で、凝固阻止因子はどうでしょうか?
通常、先天性アンチトロンビン欠損症と言えば、アンチトロンビン活性が50%に低下したヘテロ接合体の方をイメージします。アンチトロンビン活性は半減しますと血栓症を発症しやすくなります。
凝固因子などの止血因子は1/10に低下しても大丈夫であっても、凝固阻止因子の方は半減しただけでも高度の血栓傾向になってしまうのです。このバランス はとても悪いです。それでは、全人類のアンチトロンビン、プロテインC、プロテインSなどの凝固阻止因子を今の10倍量に増やしてみてはどうでしょうか? この世から血栓症は激減するに違いありません。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:24
| 血栓性疾患
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女性医師の時代の足音が聞こえますか(検索順位)
金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ(血液・呼吸器内科のお役立ち情報)で、先日まで「
女性医師の時代の足音が聞こえますか」をシリーズで掲載させていただきました。このシリーズ記事は大変示唆に富む優れた内容になっています。是非、多くの皆様にご覧いただきたいと思っています。
試しにGoogleで、「女性医師の時代」を検索しました。このキーワードは頻用されるようで、約596,000件もヒットしました。その中で、私たちのブログ記事は、1&2位に検索されました。
「
女性医師の時代の足音が聞こえますか」は、多くの皆様にご覧いやだけるのではないかと期待しているところです。
(補足)
子育て女性医師に対する取り組み(金沢大学 血液内科・呼吸器内科)では、当科の取り組み状況をご覧いただけます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:20
| 女性医師(当科)からのメッセージ
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金沢大学附属病院と研修医募集での検索
試しに「金沢大学附属病院 研修医募集」の掛け合わせで、YAHOOで検索をしてみました。
スポンサーサイトの、〜病院は別としまして、私たちのホームページ(HP)は、2位の検索順位となりました。1位の金沢大学附属病院は当然だと思いますが、その次に私たちのHPが検索されたことにちょっと感激しました。
検索順位は時間単位で変動しているようですので、一時的な現象なのかも知れませんが嬉しいものですね。
Googleでも同じく検索してみました。やはり、3&4位と好位置で検索されるようです。
だから何なんだとおしかりを受けそうですが、HP&ブログに関与させていただいている管理人としましては、このようなちょっとした出来事が、モチベーションアップにつながっています。
ご訪問の皆様におかれましては、日々、多大なるご支援をいただき大変ありがとうございます。
今後ともどうかよろしくご支援、ご鞭撻のほどお願い申しあげます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:49
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ビタミンK欠乏と骨粗鬆症(納豆)
従来、ビタミンK欠乏症(血中のビタミンK濃度が低下している症例)においては、骨粗鬆症に伴う骨折が多いことが指摘されてきました。
この理由としては、ビタミンK欠乏のため、γ-カルボキシラーゼによるオステオカルシン(オステオカルシン(ビタミンK依存性蛋白)とグラケー)のGla化が行われない(オステオカルシンが活性化されない)ことが指摘されてきました。
また、血中低カルボキシル化オステオカルシン濃度高値群(オステオカルシンの活性化が不十分の群)では、大腿骨頸部の骨密度が低く、骨折しやすくなるという報告も見られます。
さらに、38〜63歳の女性約7万人を対象にビタミンK摂取量と大腿骨頸部骨折発症との関連を10年間にわたり追跡した大規模な検討によりますと、ビタミンKの摂取量不足は大腿骨頸部骨折の有意な危険因子であると報告されています。
ビタミンKと言いますと、ビタミンK依存性凝固因子(VII、IX、X、II)のイメージが強いですが、骨との関連も高いビタミンなのです。
(補足1)
興味深い報告があります。納豆(ビタミンKの含有量が極めて多い食品)摂取量の多い地域では、大腿骨頸部骨折が少なく、納豆摂取量が少ない地域では大腿骨頸部骨折が多いそうです。
納豆消費量は、西日本で少なく東日本で多いそうですが、大腿骨頸部骨折は西日本で多く東日本で少ないそうです。
(補足2)
ワーファリン(ビタミンK拮抗薬)を内服している方は、納豆(ビタミンK含有量が大量)を食することはできません。ワーファリンの効果が無くなってしまうためです。
ただし、ワーファリン以外の抗血栓薬(アスピリン、プラビックス、パナルジン、プロサイリン、ドルナー、プレタールなど)を内服中の方は、納豆を食しても何ら問題ありません。
関連記事
オステオカルシン(ビタミンK依存性蛋白)とグラケー
ビタミンK依存性蛋白:凝固因子、プロテインC、電撃性紫斑病
ビタミンK依存性凝固因子(肉納豆、にくなっとう、2 9 7 10?)
PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
ワーファリン:経口抗凝固薬、PT-INR
プラビックス、プレタール、パナルジン、プロサイリン、ドルナー、ワーファリン、納豆
先天性血栓性素因の診断(NETセミナー)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:39
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播種性血管内凝固症候群(DIC):FDP(Dダイマー)低値の別の意味(図解34)
前回の記事からの続きです。FDP(Dダイマー)が上昇しない時というのはどういう場合でしょうか?
一つは、前回書かせていただいたように、凝固活性化が高度ではなく、血栓形成量が乏しい場合です(この場合は、生体にとっては好都合です)(FDP(Dダイマー)低値の意味(図解33))。
しかし、FDP(Dダイマー)が上昇しないという現象は、全く別の状況でも発生するのです。
つまり、上図のように大量の組織因子(tissue factor:TF)が誘導され、高度な凝固活性化の結果として大量の血栓が形成された場合です。前回の記事とはまるで正反対の病態になります。
大量の血栓が形成されたとしましても、線溶阻止因子PAI(plasminogen activator inhibitor:プラスミノゲンアクチベータインヒビター)の過剰な発現がありますと、線溶に強い抑制がかかります。そのために、プラスミンはあまり産生されず、血栓の溶解が進行しにくくなります。
血栓が大量に形成されても(生体にとっては不都合な状態です)、線溶が抑制された状態では、FDPやDダイマーはあまり上昇しないのです。
と言う事は、FDPやDダイマーが上昇しない意義としましては。。。。 (続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中!!)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:14
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女性医師の時代の足音が聞こえますか
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:18
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女性医師と多様な働き方:女性医師の時代の足音(6)
シリーズ『女性医師の時代の足音が聞こえますか』の6回目の記事です。
1回目からご覧いただきますと記事がつながっていますので、よろしくお願いいたします。
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女性医師の時代の足音が聞こえますか (6)
最後に、このような女性医師への対策は今後早急に必要なことでありますし、また大変有難いことだと思います。
女性医師が増えるに伴ってますます様々な考え方を持った医師が増えるわけで、結婚や子供も望まず仕事一筋にやりたい人もいれば、仕事も大事だが育児に十分な時間をかえたいと願う人もいるでしょう。
多様な働き方が選べて最終的に医師という職業を放棄せず、医師同士が男女を問わず協力して働ける社会になって欲しいものです。
一人一人が仕事に対する自覚と責任を持って、自ら声を出して動いていかなければならないと思います。
我が医局の「女医会」も、もしかしたらこれから少しずつ変わっていくのかもしれません。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:44
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医師不足と業務のあり方:女性医師の時代の足音(5)
シリーズ『女性医師の時代の足音が聞こえますか』の5回目の記事です。
1回目からご覧いただきますと記事がつながっていますので、よろしくお願いいたします。
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女性医師の時代の足音が聞こえますか (5)
ここで思うのは、女性医師の問題を女性医師だけの対策で解決できるかという疑問です。
昔の(?)理想の医師像は、自分のことを投げ打っても患者に寄り添う高潔な姿です。
当直明けもそのまま勤務し、夜や休日も呼び出されるのが当たり前のように思っていました。しかし、「医師」も一つに職業であることに変わりありません。もっと個人の希望する生活様式に合った勤務形態を望む気持が、最近の若い医師の診療科選びなどに現れているのではないでしょうか。
「最近の若い奴等は・・・」と嘆く代わりに、
そろそろ医療界全体が男女問わず医師の仕事のあり方などを考える時期に来ているのかもしれません。
そのような取組みも始めていかなければ、女性医師問題だけでなく診療科や地方における医師不足や偏在は解決していかないのではと思います。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:07
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医師不足の解消へ:女性医師の時代の足音(4)
シリーズ『女性医師の時代の足音が聞こえますか』の4回目の記事です。
1回目からご覧いただきますと記事がつながっていますので、よろしくお願いいたします。
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女性医師の時代の足音が聞こえますか (4)
このような取組みはまだ始まったばかりだという印象ですが、実際に各地域や医療機関で具体的な対策に動きだしているところもあります。
たとえば大阪厚生年金病院の院長は、前任の岡山大学小児科の教授時代から、女性医師に育児と仕事を両立をしてもらわなければ医師不足に陥ってしまう現実を経験されておられました。
小児科は皮膚科、眼科についで女性医師の割合が既に3割を超える診療科であるからです。そのため育児環境の整備に力を入れ、職員駐車場を育児中の職員優先にしたり、病棟を使用して院内に病児保育所を設置しました。
保育所はあっても病児保育を行う施設はまだ少なく、これが女性が安心して働けない大きな原因になっているからです。
これは女性医師だけでなく看護師にも恩恵が深く、この病院には勤務希望者が多く看護師・医師不足に陥らずに済んだそうです。
また医師には研修医やフェローなどが案外多く、正職員と全く同じ仕事をこなしていても臨時雇用の扱いをされることが多いものですが、この病院では正職員だけでなく臨時職員にも、また女性だけでなく男性にも産前産後の有休休暇を取れるよう勤務制度を整備したそうです。
これらに対して当初は女性医師を優遇しすぎるのではという意見もあったそうですが、
女性医師が十分な労働力を提供できる体制を整備する結果として、最終的には男性医師への負担が減ることを必ず実感してもらえる
と病院長は述べておいでました。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:52
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女性医師問題・バンク:女性医師の時代の足音(3)
シリーズ『女性医師の時代の足音が聞こえますか』の3回目の記事です。
以前の記事を未だ読んでおられない場合には、1回目からご覧いただきますと、記事がつながっています。
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女性医師の時代の足音が聞こえますか (3)
このような問題を女性医師だけでなく医療界全体の問題として捉え、厚生労働省や日本医師会が女性医師問題に対する対策活動を開始しています。
厚生労働省と 日本医師会が今年度(執筆当時:以下同様)、離職した女性医師の再就職を支援するため「女性医師バンク」を設立し、大阪と東京の2箇所を拠点に全国の女性医師の職業斡旋を行うと しています。
あわせて再就職を希望する女性医師には再教育を受ける制度が必要だと思われますが、具体的なことは現在検討中ということです。
また日本医師会 では平成16年に女性医師懇談会を設立し、さまざまな観点から女性医師問題の検討が始まっています。
各都道府県医師会にも積極的な活動を働きかけており、 現在のところ12都道府県医師会に女性医師問題を検討する部会や委員会が設立され今後も増える見通しです。
北陸では富山県が既に委員会を発足していました が、今年度石川県医師会、また金沢医師会にも新たな委員会が設立されました。
女性医師を多く抱えるわが医局から私を含む4名が委員になっています。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:53
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女性医師の役割:女性医師の時代の足音(2)
シリーズ『女性医師の時代の足音が聞こえますか』の2回目の記事です。
もし、1回目の記事を未読の場合には、1回目からご覧いただきますと、記事がつながっています。
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女性医師の時代の足音が聞こえますか(2)
世界的に見ても近年の女性医師の急増は著しく、2004年の厚生労働省の調査では、全医師数に占める女性医師の割合はポーランドの54.2%(執筆当時の統計:以下同じ)をトップに、フィンランドやポルトガルでは40-50%、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどでは35%以上、アメリカでは21.8%となっています。
わが国の現在の女性医師の割合は16.7%に留まっていますが、医師国家試験合格者における女性の割合が30%を越してから久しく、今後近い将来に新卒医師の約半数を女性医師が占め、いずれ欧米並みに女性医師が増えると予測されています。
また単に医師数だけでなく、2050年頃には医師の若い年代層を女性医師が占め、高齢者層を男性医師が占めるとも予測されており、女性医師がこれからの医療の大きな担い手になるのは間違いないでしょう。
しかし現在のところわが国では、免許取得後10年間に女性医師の就業率は急速に減少し、2006年の厚生労働省の発表では70%台に落ち込むとされています。
出産・育児を経て仕事との両立が困難であるのが主な原因であることは、全国的な調査で明らかになっています。この医師としての最初の10年間は、医療技術の習得と重なる30歳台の医師は、医育機関や第一線の医療機関で昼夜問わず激務をこなさなければなりません。
既に女性医師の割合の高い東欧諸国では、この年代の女性医師の就業率がほとんど低下しない国も数多く、日本とは異なる保育環境や職場環境などが整備されているのでしょう。このような先進諸国でも1970年台には、変化や整備に伴い、女性が働く国ほど子供が生まれているという調査結果がでているそうです。
わが国でも、女性にとって子供を生み育てるという素晴らしくも楽しい一時期を、仕事と無理なく両立できるという欲張りな願いがかなえば、少子化にも少し歯止めがかかるのかもしれません。
(続く)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:48
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科にご支援ありがとうございます。
昨年の9月11日に、金沢大学 血液内科・呼吸器内科のHP(ブログ併設)をリニューアルさせていただきました。
リニューアル後、多くの皆様にご支援いただいていますことを深く感謝申しあげます。
さて、2009年1月14日に、記念すべきことがありましたので記事にしておきたいと思います。
初めて、金沢大学 血液内科・呼吸器内科のHP&ブログへのセッション数(ほぼ訪問者数)が、1,000人/日の大台を超えました。
これからも、多くの皆様にご支援いただけるサイトを目指していきたいと思いますので、今後ともよろしくご指導のほど、お願い申しあげます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:13
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金沢大学血液内科・呼吸器内科 女医会:女性医師の時代の足音(1)
今回からシリーズで、『女性医師の時代の足音が聞こえますか』をお届けいたします。
著者は、石川県予防医学協会理事(予防医学クリニック院長 )の、魚谷知佳先生です。魚谷先生は、私たちの金沢大学 血液内科・呼吸器内科(第三内科)のご出身です。管理人とは同世代の先生ですが、見事に仕事と家庭を両立されて、バリバリとご活躍中です。
今回からシリーズでお届けする記事は、私たちの同門会報に魚谷先生が2年前に掲載されているのですが、大変示唆に富む素晴らしい原稿ですので、日本中の多くの方にご覧いただけるように、御本人の許可のもと、ブログ記事としても公開させていただきます。
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女性医師の時代の足音が聞こえますか(1)
皆さんは我が医局の「女医会」なるものの存在をご存知でしょうか。この会が発足して早10年余りになるでしょうか。実態は一年に一度、女医仲間が集まって、仕事や職場の話に留まらず、家事育児、料理の話に噂話、内輪の情報交換を行う親睦会のようなものです。女性医師の待遇改善を求めて活動しようなどといった動きは、今のところ全くありません。
しかし参加させて頂くたびに、「女医さん」が年々増えて活躍されていることに驚かされます。
また何気ない会話から、仕事や家庭・育児との両立など、皆それぞれが様々な悩みを持って頑張っている姿に、お互いが励まされているようにも感じています。
私が入局した昭和60年、この頃は全国的に女子医学生の割合も、医療現場で働く女性医師の割合も、まだ10%未満と低い状況でした。また診療科によっては、女性医師の入局大歓迎という雰囲気にない医局がいくつもあったのも事実です。
しかし、我が医局は女性医師に広く門戸を開いて、家庭との両立を支援する姿勢を見せて下さったのが大変印象的でした。
当時医局にはお二人の先輩女性医師がおられ、まさに子育てと仕事の両立を実践されておられました。子連れで実験されたり医局行事に参加されたりする姿に勇気付けられ、また周囲の先生方が暖かく見守ってくださる様子に感激したのを覚えています。実際医局は女性医師に出産後の勤務先や研究期間などいろいろ考慮して下さり、今思えば私など本当に甘えさせて頂いたと感謝しています。
しかしその後徐々に女性医師の数が増えて、「女医会」が発足した頃にはかなり状況が変わってきたようでした。女性医師の割合は増えましたが入局者数が伸び悩むようになり、さらに新しい研修医制度が追い討ちをかけた形で医師不足が深刻化してきました。
関連病院へ希望とおりに医師を派遣することも難しくなり、女性医師も産休明け早々に現場復帰が求められるようになってきました。しかしこれは我が医局に限らず、若い女性医師を擁する診療科全てに共通する状況かと思います。
女性医師も働きたいのはやまやまですが、幼い子供を抱えていては、当直や急の夜間呼び出しなどにも対応が難しく、他にもいろいろな面で育児と仕事との両立に苦慮しているのは間違いありません。これまでそれぞれの医局が中心となって人事関係中心の女性医師支援をしてくださり、各関連病院でも当直免除などの特別対応をしてくださる場合がありました。
しかし今後ますます女性医師の割合が増える状況では、医局に頼った女性医師支援だけでは限界があるのは明らかだと思います。(続く:数回にわたるシリーズになります)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:00
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オステオカルシン(ビタミンK依存性蛋白)とグラケー
前回の記事(ビタミンK依存性蛋白:凝固因子、プロテインC、電撃性紫斑病)からの続編です。
もう一つ是非知っておきたいビタミンK依存性蛋白として、オステオカルシンを挙げることができます。
ビタミンK依存性蛋白として、凝固第VII, IX, X, II因子、プロテインC、プロテインS、そしてオステオカルシンを把握しておきたいところです。
骨粗鬆症のお薬の中に、ビタミンK製剤(商品名:グラケー)がありますが、ビタミンK依存性蛋白であるオステオカルシンなどに着目して開発された薬物です。
歴史的には、ウサギの骨折がビタミンKの投与により治癒しやすくなるといった報告や、妊婦に対するワルファリン(商品名:ワーファリン)の投与により奇形児(骨・軟骨形成不全)が生まれるという報告はみられましたが、骨とビタミンKとの関連を直接結びつけたものとして、1975年にHauschkaらによる骨中Gla(γ-カルボキシグルタミン酸)の発見が挙げられます。
Priceらによって、1976年には骨よりbone Gla protein(BGP:オステオカルシンともいう)が精製され、1983年にはmatrix Gla protein(MGP)も精製されました。
ビタミンKは,活性を有していないビタミンK依存性蛋白内のグルタミン酸残基(Glu)を,活性のあるγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)へ転換するカルボキシル化反応(この反応にγ-グルタミン酸カルボキシラーゼが関与)において、補酵素として作用しています。ですから、ビタミンK欠乏状態では、このカルボキシル化反応が進まず、ビタミンK依存性蛋白は活性を有することができないのです。
Glaは血液凝固と関連した蛋白(第VII,IX,X,II因子、プロテインC、プロテインS)以外にも、骨、腎、肺、精子、大動脈弁などにも広く分布しています。ビタミンKは生体の広範囲において重要な役割を果たしているものと考えられているのです。
関連記事
ビタミンK依存性蛋白:凝固因子、プロテインC、電撃性紫斑病
ビタミンK依存性凝固因子(肉納豆、にくなっとう、2 9 7 10?)
PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
先天性血栓性素因の診断(NETセミナー)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:48
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ビタミンK依存性蛋白:凝固因子、プロテインC、電撃性紫斑病
ビタミンKと言えば、活性を有したビタミンK依存性凝固因子(VII, IX, X, II)を産生するのに必要なビタミンとして良く知られています。
そもそも、ビタミンKの「K」の語源は、オランダ語のKoagulation(英語ではCoagulation)からきています。まさに、凝固のためのビタミンがビタミンKと言うことができます。
その他にもビタミンK依存性蛋白は多数知られていますが、ビタミンK依存性凝固因子の次に有名なのが、ビタミンK依存性凝固阻止因子である、プロテインC(protein C)、プロテインS(protein S)でしょう。
ですから、ビタミンK拮抗薬であるワーファリンを使用いたしますと、ビタミンK依存性凝固因子のみならず、ビタミンK依存性凝固阻止因のプロテインC、プロテインSも低下することが良く知られています。
先天性プロテインC欠損症(ヘテロ接合体:プロテインC活性が半減)の患者様に対して、ワーファリンを投与しますと、全てのビタミンK依存性凝固阻止因子活性が低下する前に、半減期の短いプロテインCが速やかに低下してしまいます。そのため、皮肉なことに先天性プロテインC欠損症のプロテインC活性は、ワーファリンによってさらに低下して0%に近づいてしまいます。
この時にみられる著しい血栓性病態のことを、電撃性紫斑病(purpura fulminans)と言っています。紫斑病とは言っても、本態はDICと類似した著しい血栓傾向です。皮膚の微小循環レベルで、微小血栓が多発して血管が閉塞するために、二次的に紫斑を来します。
先天性プロテインC欠損症(ホモ接合体)では、元々プロテインC活性は0%に近いですので、生後間もなく電撃性紫斑病を発症します。
また、一部の重症感染症(髄膜炎菌感染症、肺炎球菌感染症など)において、プロテインC活性が著減することがあり、電撃性紫斑病を発症することがあります。四肢循環障害に伴い、肢の切断が必要になることもあることが知られています。
ビタミンK依存性蛋白としては、上記のように凝固第VII, IX, X, II、凝固阻止因子プロテインC、プロテインSがあります。そして更に是非知っておきたいビタミンK依存性蛋白としましては。。。。。(続く)
関連記事
ビタミンK依存性凝固因子(肉納豆、にくなっとう、2 9 7 10?)
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図解】
PT-INRとは(正常値、PTとの違い、ワーファリン)?
先天性血栓性素因の診断(NETセミナー)
血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)
全身性出血性素因の最初の検査
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:30
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白目の出血(眼球結膜出血):眼科&血液内科
眼科から血液内科にご紹介いただく疾患がいくつかあります。以下はその中でも、よくご紹介いただく疾患です。
1) 網膜中心動脈閉塞症、網膜分枝動脈閉塞症:原因が分かる場合に最も多い疾患は、抗リン脂質抗体症候群です。ただし、血液内科的に原因がはっきりしないことも少なくありません。
2) 網膜中心静脈閉塞症、網膜分枝静脈閉塞症:同上。
3) 虚血性視神経炎:同上。
4) 黒内障:視野が暗くなる症状ですが、1)2)の血栓症が原因のことがあります。
5) 眼球結膜出血:いわゆる白目の出血です。充血や結膜炎ではありません。
6) その他の眼科領域の出血。
7) 造血器悪性腫瘍の眼科領域での原発、または眼科領域への浸潤。
8) その他。
上記の中で、眼球結膜出血は、ある日突然に白目が真っ赤になります。出血が原因です。患者様はびっくりして、まず眼科を受診されます。
その後、血液内科を紹介されることが多いです。出血性素因がないかどうかを精査いたします。
管理人も、多数の眼球結膜出血症例を拝見してきましたが、出血性素因を有しておられる方はほとんどおられませんでした。
しかし、ある血液検査(生活習慣病と関連した検査です)が異常となる方の頻度が極めて多い印象を持っています。現時点では、残念ながらこれ以上の詳細を記事にできないのですが、眼球結膜出血の方では、必ず生活習慣病と関連した検査をしっかり行うべきと思っています。
関連記事
全身性出血性素因の最初の検査
血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)
鼻出血(鼻血が止まらない):粘膜出血
抗リン脂質抗体症候群、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント
止血剤の種類と疾患:ノボセブン、アドナ、トランサミンなど。
ノボセブン(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤):究極の止血剤。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:30
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巨大血小板:Bernard-Soulier(ベルナール-スーリエ)症候群など
巨大血小板(giant platelet)を呈する疾患にはいくつかの疾患が知られていますが、下記が代表的な疾患になります。巨大血小板は、直径8〜10ミクロン以上となり、小リンパ球大以上の大きさとなります。
以前に管理人が、某出版会社の医学部学生用参考書の執筆を依頼された時に、巨大血小板をきたす疾患として、Bernard-Soulier症候群が有名であると書いたところ、国家試験では3つの疾患を知っている必要があるということで、追記を指示されたことがあります。
1)Bernard-Soulier(ベルナール-スーリエ)症候群(BSS):
血小板膜糖蛋白GPIb/IXが欠損しているために血小板粘着能が低下する先天性出血性素因です。
血小板凝集能のリストセチン凝集が欠如することでも有名です(リストセチン凝集が低下する疾患は、BSSとvon Willebrand病です)。
この病気で、巨大血小板が出現することは大変有名で、血液専門医試験でもよく出題されるそうです(血液専門医試験マル秘情報?です)。
2)May-Hegglin(メイ-ヘグリン)異常症:
巨大血小板のみでなく、好中球のデーレ小体が出現することでも有名です。
3)特発性血小板減少性紫斑病(ITP):
血液内科で最も多い疾患の一つです。平均血小板容積(MPV)や、血小板分布幅(PDW)が大きくなります。参考までに、再生不良性貧血では、MPVやPDWは小さくなります。
関連記事
MPV、PDW(血小板マーカー)
ピロリ菌と特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
全身性出血性素因の最初の検査
【リンク】
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:49
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鳩尾(みぞおち)の場所:心窩部
今回は、血液内科、呼吸器内科とは直接的には関係はありませんが、「鳩尾(みぞおち)の場所」についての記事を書かせていただきます。
医学的には、みぞおちのことを、心窩部(しんかぶ)と言っています。胸骨の下で、臍(へそ)の上あたりをさします。
みぞおちに相当する部位には胃が存在します。しかし、胃の病気でなくても多くの病気でみぞおちの痛みを生じます。内科領域のみならず、いろんな病気で痛みの部位と病気の部位が異なるということは少なくありません。このブログは消化器内科のブログではありませんので、頻度の高い疾患のみ紹介させていただきます。
1) 胃潰瘍、胃炎、進行した胃癌など:よく患者様より自分は胃が痛くなることはないから胃は心配していないと言ったニュアンスのことをおっしゃることがありますが、それは間違っています。例えば、早期胃癌は通常全く症状はありません。それで定期的に健康診断で胃を検査している訳です。
2) 十ニ指腸潰瘍:十ニ指腸潰瘍はみぞおちよりやや右側に存在しますが、みぞおちの痛みとして感じることが多々あります。しばしば空腹時に痛みが強いのが特徴です。逆に食事をとりますと痛みが和らぐことがありますが、だからと言って、十ニ指腸潰瘍が良くなった訳ではなく、更に悪化しますと空腹時も食後も痛みが見られるようになります。1)2)では、病変部位から出血が見られる場合には、鉄欠乏性貧血の原因となりえます。
3) 胆石(疼痛発作時):胆嚢に結石ができる病気です。胆嚢は右季肋部(右脇腹)に存在しますが、しばしばみぞおちの痛みとして感じます。
4) 虫垂炎(一般の方が言われる、所謂「もうちょう(盲腸)」):虫垂は右下腹部にあります。通常は右下腹部の痛みを生じますが、虫垂炎の初期では、みぞおちが痛くなることがあります。2)3)4)ともに、痛みの場所と、病気の場所が違っている例になります。
ところで、みぞおちの語源は2つあるようです。
一つは、水を飲みこんだあとに達する部位という意味からの命名です。水落ち→みずおち→みぞおち という変化です。
もう一つは、みぞおちの部位が、鳩の尾のように見えるということで、みぞおちに、鳩尾という漢字を当てるというものです。肋骨の下側の線が、鳩の尾のように広がっているということに由来するそうです。管理人は、最近ハトを見た事がありませんので、恥ずかしながら鳩尾と言われてもピンとこないのが正直なところです。
関連記事
便潜血:便ヒトヘモグロビン検査の盲点(胃癌の見落とし)
タール便(黒色便)と血便
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播種性血管内凝固症候群(DIC):FDP(Dダイマー)低値の意味(図解33)
FDPやDダイマーは、DICの診断上、最も重要なマーカーの一つです。しかし、これらのマーカーの解釈には注意が必要です。
FDP(Dダイマー)が上昇しない時というのはどういう時でしょうか?
一つは、上図のような場合です。
つまり、凝固活性化が高度ではないために(トロンビン形成は少量であるために)、血栓の形成量が乏しい場合です。血栓量が少ない訳ですから、線溶活性化によりプラスミンが形成されても、血栓分解産物を反映するFDP(Dダイマー)の上昇は軽度にとどまるでしょう。
このような場合は、生体にとってはあまり不都合ではないことになります。
しかし、FDP(Dダイマー)が上昇しないという現象は、生体にとって好都合な場合ばかりではありません。実は。。。。。 (続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:17
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アレルギー疾患の講演と相談会(第15回アレルギー週間)
第15回アレルギー週間
『第15回アレルギー疾患の講演と相談会』
平成7年より財団法人日本アレルギー協会の指導のもとにアレルギー週間(2月20日を含む1週間)が設立されました。日本アレルギー協会北陸支部石川ブロックにおいてアレルギー週間に合わせたアレルギー疾患に関する啓蒙活動を毎年行なっております。例年、一般の方々を対象として「アレルギー疾患の講演と相談会」を開催しております。
本年も「第15回アレルギー疾患の講演と相談会」を平成21年2月21日(午後2時から4時)にホテル金沢において開催いたします。内容は、金沢大学附属病院から小児科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、呼吸器内科の医師による講演会と個別相談を行ないます。アレルギー疾患に興味のある方は参加をお待ちしております。
日 時:平成21年2月21日 (土) 午後2時〜4時
場 所:ホテル金沢 金沢市堀川新町1番1号(JR金沢駅前)
参加費:無料(当日直接お越し下さい。)
講演会:講演のテーマ「アレルギーをよく知ろう」
1 皮膚科 午後2時〜金沢大学附属病院皮膚科 浜口 儒人先生
2 小児科 午後2時20分〜金沢大学附属病院小児科 柴田 文恵先生
3 眼科 午後2時40分〜金沢大学附属病院眼科 武田 久 先生
4 耳鼻咽喉科 午後3時〜金沢大学附属病院耳鼻咽喉科 (未定)
5 呼吸器内科 午後3時20分〜金沢大学附属病院呼吸器内科 徳田 麗 先生
個別相談会:
上記講演会と同時に、各科専門医による相談会も実施いたします。
主催: 日本アレルギー協会北陸支部石川県ブロック
連絡先(事務局):
920-8641 金沢市宝町13-1 金沢大学附属病院 呼吸器内科
藤村政樹,片山伸幸,西辻雅,大倉徳幸
電話:076-265-2273
ファックス:076-234-4252
E-mail: nori@med3.m.kanazawa-u.ac.jp
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:17
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播種性血管内凝固症候群(DIC):線溶活性化と臓器障害(図解32)
TATとPICの相関の記事でも書かせていただいたように、凝固・線溶活性化のバランスと、DIC病態は密接に関連しています。
つまり、著しい凝固活性化(TATの著増)に伴い線溶活性化も高度な(PICも著増する)場合には(FDPは著増、Dダイマーも上昇)、重要臓器において多発した微小血栓(microthrombi)が溶解されるために、微小循環障害に起因する臓器障害(多臓器不全:MOF)はきたしにくいと考えられます。
一方、凝固活性化は著明(TATは明らかに上昇)であるものの線溶活性化は軽度にとどまる(PICはあまり上昇しない)場合は(FDP&Dダイマーの上昇は軽度)、重要臓器において多発した微小血栓が溶解されにくく、臓器障害をきたしやすいと考えられます。
このように、DICにおける凝固、線溶のバランスは、DICの病態と密接に関連しています。
換言しますと、DICにおける凝固活性化(TAT)と線溶活性化(PIC)の評価はとても重要と考えられます。
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中!!)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:21
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播種性血管内凝固症候群(DIC):TATとPICの相関(図解31)
前回の記事では、
FDPの値と、DICの重症度が相関しない(むしろ逆説的である)と書かせていただきました。DICにおける凝固活性化の程度と線溶活性化の程度の相関をみることで、さらに深くこの逆説を理解することが可能になります。
凝固活性化の程度は、
トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)で、線溶活性化の程度は
プラスミン-α2プラスミンインヒビター(PIC)で評価することが可能です。上図は、DIC症例におけるTATとPICの相関関係をみたものです。
まず、下段から見てみましょう。多臓器不全(multiple organ failure:MOF)を合併していないDIC症例におけるTATとPICの相関を見ています。両者の間には、正の相関関係が見られています。つまり、MOFのない症例では、凝固活性化(TAT)と線溶活性化(PIC)が並行して進行していることになります。
それでは、上段のMOFを合併している症例ではどうでしょうか?
凝固活性化が進行していましても(TATが上昇しても)、線溶活性化は見られません(PICは上昇しません)(敗血症に合併したDICなど)。 DICにおいては、凝固活性化と線溶活性化が並行して進行すると考えられてきた歴史があったと思います。しかし、MOF合併のDIC症例では、凝固活性化が進行しましても、決して線溶活性化は進行しないのです。
凝固活性化と線溶活性化のバランスは、DICにおける臓器不全などの病態と密接に関連していることが分かります。
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中!!)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:21
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播種性血管内凝固症候群(DIC):多臓器不全(MOF)の有無とFDP(図解30)
上図では、DIC症例を、多臓器不全(multiple organ failure:MOF)の有無で分類して比較しています。MOF合併例は予後不良で死亡例が多く含まれていますが、MOF非合併例では全員がDICから離脱して生還しています。
MOFの有無にかかわらず、
TATの上昇がみられています。
PTの延長がみられる症例もありますが、ほとんど正常の症例も少なくありません。フィブリノゲンは、MOFの有無とは関係なく、むしろ正常に留まっている例が多いことが分かります。最近は、DIC診断におけるフィブリノゲン低下の意義は乏しくなっていますが(線溶亢進型DICを除く)、上図からもその点の理解ができます。
さて、
FDPはどうでしょうか?
予想に反して、 FDPはMOFを合併して予後不良であったDIC症例の方が上昇の程度が軽度です。一方、MOFの合併がなく予後良好であった症例の方が高度に上昇しています。たとえば、
旧厚生省DIC診断基準では、FDPが高値であるほどDICスコアは大きくなり重症であると考えられてきた歴史があると思いますが、上図ではその逆の結果となっているのです。
その逆説の理由は何でしょうか?
MOFを合併したDIC症例では、線溶阻止因子PAIが著増するために、線溶に強い抑制がかかります。そのため線溶活性化は軽度にとどまり(
PICの上昇は軽度に留まり)、血栓の溶解はあまり進行しません。血栓分解を反映するFDPは軽度上昇にとどまる訳です(参考:
敗血症に合併したDIC)。
一方、MOF非合併DIC症例では、線溶阻止因子PAIの上昇はあまりないために、線溶に抑制がかかりまません。そのため線溶活性化は高度となり(PICの上昇は高度となり)、血栓の溶解が進行します。血栓分解を反映するFDPは明らかに上昇する訳です。
このように、FDPの上昇度によってDICの重症度が反映されない(むしろ逆説的になる)ということは、データを解釈する際に注意が必要なのです。
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 10:26
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播種性血管内凝固症候群(DIC):基礎疾患とFDP、Dダイマー(図解29)
前回の記事では、各種基礎疾患(APL、APL以外の急性白血病、固形癌、敗血症)におけるFDPのみのデータでしたが、今回は前回のFDPのデータにDダイマー(D-dimer:DD)の成績を重ねてみました。
上図では、2つのことを強調したいと思います。
1)おおよそ、FDPが高値であれば、Dダイマーも高値であること。
2)急性前骨髄球性白血病(APL:M3)症例では、FDPとDダイマーの間に解離現象がみられること。
2)については以下のように理解されます。
FDPと言うのは、既に記事にさせていただいた通り、フィブリン分解産物(その細小単位がDダイマー)と、フィブリノゲン分解産物の総和です。
APLのように著しい線溶活性化を伴ったDIC(線溶亢進型DIC)では、フィブリン分解にとどまらず、フィブリノゲン分解も進行します。すなわち、線溶亢進型DICでは、Fibrinogenolysis(フィブリノゲン分解)が進行する点が大きな特徴です。
そのためAPLでは、FDP(フィブリン分解産物+フィブリノゲン分解産物)は著増しますが、Dダイマー(フィブリン分解産物の細小単位)は上昇はするもののFDPほどではありません。
このような現象を、FDPとDダイマーの解離現象と言います。
換言しますと、FDPとDダイマーの間に解離現象があった場合(FDPが上昇していることが大前提)には、著しい線溶活性化がある(フィブリノゲンの分解も進行している)ものと考えられるのです。
なお、同じDICであっても、敗血症に合併したDICにおいては、FDP、Dダイマーの上昇が、白血病や固形癌ほどではないことも大変注目されます。
(続く)
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播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:13
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金沢大学血液内科・呼吸器内科ブログ記事(アクセス数週間ベスト10)
金沢大学血液内科・呼吸器内科のブログ「血液・呼吸器内科のお役立ち情報」の記事で、最近1週間でアクセスが多かった記事を紹介させていただきます(ごく最近の動向を集計する意味で、1ヶ月ではなく敢えて1週間での集計です)。
専門医試験関連の記事は、ごく最近書かせていただいたばかりなのですが、早くも多くのアクセスをいただいていることを認識しました。
専門医試験情報は多くの方にとって、関心が高いのだと思います。今後も、専門医試験関連の情報を発信していければ。。。と思っています。
次点の、11位は、日本臨床腫瘍学会専門医認定試験の対策(重点記事)でした(77アクセス、1.71%)。やはり、専門医関連の記事は関心の対象になっているようです。
なお、今回はブログ記事のアクセス数ベスト10のみのご紹介でしたが(上図のごとくベスト10合計で29.83%)、残りの約7割の記事の方が合計すればはるかにアクセス数が多いことも強調させていただきたいと思います。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 03:37
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謹賀新年(金沢大学 血液内科・呼吸器内科)
明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりありがとうございます。
本年もどうかよろしくお願い致します。
なお、この画像のタイトルは、「金沢大学 血液内科・呼吸器内科で研修する若手医師たち」でございます(お正月用記事でございます)。
追伸:本ブログ「血液・呼吸器内科のお役立ち情報」では、相互リンクしていただけるサイト様を募集いたしております。どうか、遠慮なくご連絡くださいませ。
info@3nai.jp
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 19:31
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