播種性血管内凝固症候群(DIC):基礎疾患とFDP(図解28)
DIC診断の上で、最も重要なマーカーの一つと信じられているのがFDPです。上図は、DICの代表的基礎疾患ごとに、FDPの変動をみたものです。図の右側に書かれている、1、2、3点というのは、厚生労働省(旧厚生省)DIC診断基準でのスコアリングです。
急性前骨髄球性白血病(APL:M3)では、高度のFDP上昇が見られています。
一方で、敗血症(sepsis)に合併したDICにおきましてもFDPの上昇は見られていますが、その上昇の程度はAPLと比較しますとごく軽度です。確かにFDPは上昇するものの、健常人と比較しましても軽度上昇に留まっています。以前の記事で書かせていただいたように、敗血症におきましては、線溶阻止因子PAI(プラスミノゲンアクチベータインヒビター)が著増するために、線溶に強いブレーキがかかり血栓が溶解しにくいために、FDPはあまり上昇しないものと考えられます。
APL以外の急性白血病(acute leukemia:AL)、固形癌(solid cancer)に合併したDICにおきましては、APLと敗血症の中間的なFDPの上昇です。
FDPはDIC診断に不可欠と考えられているマーカーではありますが、その上昇の程度は基礎疾患によって相当に異なる点には注意が必要です。
特に、敗血症に合併したDICにおきましては、典型的なDICでもFDPの上昇は軽度にとどまります。敗血症症例では過度にFDPを重要視しますとDICの診断が遅れる懸念があるのです。
(補足)
上図での症例は、厚生労働省(旧厚生省)DIC診断基準でDICと診断された症例について検討したものです。
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:56
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播種性血管内凝固症候群(DIC):FDPとDダイマーの違い(図解27)
研修医の先生や、医学部学生さんから、FDPとDダイマーはどう違うのかという御質問をよくいただきます。図を使用して解説を試みたいと思います。
以前の記事でも書かせていただいたように、FDPというのは、fibrin/fibrinogen degradation products(フィブリン/フィブリノゲン分解産物)の頭文字をとっています。ですから、フィブリンが分解してもFDPですし、フィブリノゲンが分解してもFDPです。
フィブリンやフィブリノゲンを分解する現象のことを線溶と言いますが、この役割を演じている酵素はプラスミンです(参考記事)。
さて、Dダイマー(D-dimer:DD)とは何でしょう? 上図右側のフィブリン分解産物の細小単位です。FDPの一部であるフィブリン分解産物(上図の円の右半分)の、さらに細小単位がDダイマーです。ですから、FDPの一部の、さらに一部がDダイマーです。
通常、フィブリノゲンよりもフィブリンの方が遥かにプラスミンの作用を受けやすいために、FDPの大部分はフィブリン分解産物です。そのため、FDPとDダイマーは絡み合うように上昇することが多いです。たとえば、FDP20μg/mLならばDダイマー15μg/mL、FDP50μg/mLならばDダイマー40μg/mLと言った感じです。
ただし、絡み合わないことがあります。たとえば、FDP100μg/mLでDダイマー20μg/mLと言ったデータです。このような成績をみた時に、FDPとDダイマーの間に解離現象があると評価します。
どういう時に、FDPとDダイマーの間に解離現象がみられるのでしょうか?上図をじっくり見ますと分かるのではないかと思います。円の左側、すなわちフィブリノゲン分解産物が増加した場合です。この場合は、フィブリン分解産物の取り分が少なくなってしまいますので、必然的にDダイマーの取り分が少なくなります。
フィブリノゲンは、本来は止血に必要な蛋白ですから分解されて良い訳がありません。
どういう場合にこのような不都合なことがおこるかと言いますと、極めて高度な線溶活性化を生じている場合です。
極めて高度な線溶活性化が生じている場合(線溶亢進型DICなど)には、フィブリノゲンの分解が進行するために、FDPとDダイマーの間に解離現象を生じます(FDP/Dダイマー比が上昇します)。
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:30
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播種性血管内凝固症候群(DIC):診断基準とFDP&DD(図解26)
前回のDIC(図解シリーズ)記事で、DIC診断上、FDPや
Dダイマー(D-dimer)は極めて重要ではあるものの、その限界を知ることにより、適切にこれらのマーカーを使用できると書かせていただきました。
基礎疾患の存在は必須条件ですが、世界中に存在するDIC診断規準には以下のような項目が含まれることがほとんどです。
1) 血小板数の低下
2) FDPの上昇(Dダイマーの上昇を伴うこと)
3) フィブリノゲンの低下
4)
プロトロンビン時間の延長
5) 出血症状、臓器症状の存在
この中でも、やはり血小板数の低下とならんで、FDP(Dダイマー)の上昇はDIC診断において最も重要なマーカーと信じられています。
これほどまでに多くの人に重要と思われているFDP(Dダイマー)ですが、一体どのような限界(弱点)があるのでしょうか?
何回か後の記事で、
TATや、
PICの話が出てきますが、今回はその伏線的な記事になっています。
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:24
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日本臨床腫瘍学会専門医認定試験の対策(重点記事)
<第4回日本臨床腫瘍学会専門医認定試験を経験して >
試験には、8月末までに提出する書類審査(一次審査)と、11月22日から23日に行われた筆記試験と面接試験がありました。
用意する書類には、受け持ち症例の要約を30症例分、剖検報告書1例以上、臨床腫瘍医としての経歴や抱負の記述、論文・学会発表等の業績がありました。
私(註:この記事の投稿者です)は、8 月31日締め切りのところ、準備を始めたのが8月の上旬でしたから、完成したのは締め切りの直前でした。1ヶ月弱では、とてもきついと思います。
2ヶ月ぐらいの余裕を持って準備する必要があると思いました。
症例の要約は、自分の専門分野(血液)から20症例を、呼吸器から7症例、頭頸部から3症例を選びました。剖検報告書は1例分のみ提出しました。プロフィールの欄には、経歴、現在興味を持っていること、専門医を取得することへの意気込みについて記述しました。
用意する書類の量は多く、内容も複雑であるため、日本臨床腫瘍学会のホームページにある認定試験の申請の仕方を熟読しておく必要があります。漏れがないか何度も確認することが重要だと思います。
書類審査の合否は、10 月半ばに電子メールで通知されました。試験勉強は、その後から本格的に開始しました。勉強期間は約1ヶ月ですが、仕事上いろいろと制限を受けるので、正味2週間ぐらいだったかもしれません。
私が受験勉強に用いた教材は、日本臨床腫瘍学会発行の「新臨床腫瘍学−がん薬物療法専門医のために」という分厚い書籍、国立がんセンターの「がん診療レジデントマニュアル」、それと教育セミナーの教材および日本臨床腫瘍学会のホームページで聴講できる教育セミナーのビデオです。
ビデオは非常に役に立ちました。
ビデオの時間は15分から50分ぐらいです。診療の合間に適当な長さのものを選び見るようにすれば効率よく勉強することが出来ると思います。
ビデオで紹介された内容がかなり試験に出ていたのではないかと思うので、本を読むより遙かに効率がよいのではないかと思います。ビデオの復習に本を用いれば、より理解が深まり、記憶が鮮明になるように思います。
がん診療レジデントマニュアルも必須です。
新臨床腫瘍学は時間が限られている人にとっては読む時間がないためあまり役に立ちません。
教育セミナーの教材もスライドのコピーが多いので、勉強するには意味が分かりにくいものがありました。
筆記試験は、午前2時間と午後2時間の2回行われます。問題文は、比較的大きいフォントサイズで記載されていましたので、40 代の私の視力でも十分に耐えられるものでした。
問題数は午前午後とも80問前後で日本内科学会総合内科専門医試験に比べれば、難易度はさておき、時間的な余裕は十分にありました。
一題一題じっくり読み進めて大丈夫です。回答はマークシート方式です。
「・・・を選べ。」という問いに、いくつ選べばよいのかわからなかったのですが、表紙の注意書きを読めば1つだということがわかりました。
「・・・を2つ選べ。」と複数選ばせる問題もあり注意が必要です。
最初に表紙の注意書きをじっくり読みましょう。
問題は、基礎、薬理、統計、臨床試験、病理、臨床、放射線、支持療法、緩和医療、コミュニケーション・スキルなど、幅広く出題されていました。
教育セミナー(そのビデオ)とがん診療レジデントマニュアルで8割以上はカバーされるのではないかと思いますが、それにはなかった癌腫も出題されていました。
正解率7割が合否ラインなので、勉強する時間の少ない人は、最低限ビデオの内容とがん診療マニュアルの内容をしっかりやる必要があります。逆にいえばこの2つをしっかりやれば合格できると思います。 特に、臨床の問題以外ではビデオが最も少ない時間で効率よく勉強できる教材だと思います。
基礎では、細胞周期、シグナル伝達、血管新生などについて出題されていました。はじめが基礎から始まるため、このところを勉強していないと、試験開始早々じっとこらえる(焦って取り乱す)時間が続くことになります。内容的にはやはり教育セミナー(直近のAとB)の内容をしっかり押させていれば8割以上は取れるように思います。始まりが暗い気分にならないためにもしっかり勉強した方がよいと思います。
統計(臨床試験)もビデオをみて勉強しました。東大の大橋先生のセミナーは素晴らしいのですが、試験対策からは国立がんセンターの柴田先生のビデオが役に立ちました。
試験で、αエラーとβエラーの意味を問う問題がでたのですが、柴田先生のセミナーで、αエラーはあわてんぼうの“あ”がαエラー、βエラーはぼんやりのエラーの“ぼ”がβエラーと覚えると解説していたことを思い出し、解くことが出来ました。
薬理学もビデオを中心に勉強をしました。
神戸大学の南先生の臨床薬理のビデオは必ず見ておく必要があると思います。
倫理、臨床試験、放射線、サイコオンコロジーに関しても時間の関係上、教育セミナーのビデオだけしか勉強する時間はありませんでした。難しい問題もありましたが、セミナーの内容から多くが出題されていたと思います。
病理は、免疫染色で使用する抗体の診断的意味を理解しておく必要があります。
臨床の問題が当然のことながら最も多くを占めていました。疫学、染色体異常や遺伝子異常、病期分類ごとの標準治療、副作用、分子標的薬について出題されていました。
臨床ではビデオよりも、「がん診療レジデントマニュアル」が役に立ちました。
陰茎癌などマニュアルにない癌腫も出題されていましたが、70%の合格ラインを突破する内容は十分に含まれていると思います。分厚い「新臨床腫瘍学−がん薬物療法専門医のために」を読む時間のない人にはマニュアルをしっかりと勉強することが大切です。
ただし、 極めて新しい内容も出題されていますので、一番新しいセミナーの内容を確認することも重要だと思います。
病期分類ごとの標準療法を問う問題では、薬剤名を覚えておくことは大切ですが、投与量や投与スケジュールの細かいことを問う問題はありませんでした。ただし、パクリタキセルとドセタキセルは単剤で使用した場合の投与量が出題されていました。
2日目は面接試験でした。面接は20ブースほどに分かれて行われます。面接時間はあらかじめ通知されていて、30 分ほど前に集合することになっていました。面接時間は30分ほどですが、移動時間などで正味は25分ほどでした。
はじめに提出した30症例のコピーを持参するのですが、面接開始時にその中の1症例を指定されます。指定される症例は専門外のものが多いようです。
私に指定された症例は頭頸部癌(耳鼻科領域) の症例でした。5分ほどでその症例のプレゼンを行い、その後質問を受けました。質問の内容は、病期に応じた標準療法、副作用、予後などでした。また耳鼻科とはどのように診療協力をしていたかも質問されました。
症例要約はその場で見ることができるため、 要約の考察欄に上記の質問事項に対する回答はあらかじめ記載しておくことよいと思います。要約作成時にこの症例に対してどのような質問があるかを念頭に置きつつ作成 すると面接で役に立つのではないかと思いました。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:13
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臨床検査専門医認定試験の受験経験(筆記試験)
筆記試験(1日目の午後)
すべて文字通り文章を書かせる筆記試験です(2.5時間)。マークシートではありません。口から火がでるくらい難しかったです。しかも2.5時間解答を書き続ける必要がある問題量でした(最後の10分位は手が動かなくなってきて苦労しました)。
試験責任者の先生が、試験前に各試験会場を回られて、問題は大変難しいけれども必ず何か書いてくださいと言われました。白紙だと0点にせざるを得ませんが、何か書いてあれば加点するということです。なお領域によっては、自分が解きたい問題を選択させるものがありました。
【血液】全部は思い出せません。以下同様です。
1. 汎血球減少症をきたす疾患を3つ挙げて、必要な検査を書きなさい。
2. DVTと流産の症例提示があり、考えられる凝固異常を3つ書きなさい。必要な検査も。
3. CMLの検査上の特徴を書きなさい。
【免疫】
1. RA診断に必要な検査を書きなさい。A4で1枚の白紙の解答用紙です。どうやってスペースを埋めるか苦しみました。
2. 輸血不規則抗体検査の意義とその実際を述べなさい。
3. 抗好中球細胞質抗体陽性の疾患を2つ述べて、解説しなさい。これもどうやってスペースを埋めるか苦しみました。
4. 各種甲状腺自己抗体検査の意義を述べなさい。
【微生物】
1. 血液培養で、CNS陽性菌が検出された。主治医に連絡すべきことは?感受性試験はどうするか?
2. 標準予防法について述べなさい。
3. 培養検査でS判定と、臨床効果が合わないのはどういう時か。
4. B型肝炎の針刺し事故時の対応を述べなさい。
5. 培養以外で菌の同定を行う方法。具体的な菌名が数個書かれていて、それぞれにつき記載させる。クラミジア、マイコプラズマはあったと思います。あとは思い出せません。
【生化】
1. CA19-9が前医で高値であった。当院では高値ではあったが、正常上限位であった。何が考えられるか。
2. 検体が古いと、尿試験紙法での成績はどうなるか。7項目くらい書かせる欄がありました。
3. Artifactのデータを見せて、原因を判読させる問題。溶血検体の生化データ、EDTA-2Kの生化データがありました。
以上、ご参考になれば幸いです。
管理人は、内科専門医試験の時よりも遥かに勉強したように思います。
新鮮な知識の獲得もあり、とても良い経験になりました。
最後にもう一度強調したいと思います。
この試験は全く勉強しないのでなければ、合格をいただけるのではないかと思います。
ご検討をお祈りいたします。
1)臨床検査専門医試験の受験経験(序)
2)臨床検査専門医試験の受験経験(実技試験)
3)臨床検査専門医試験の受験経験(筆記試験)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:39
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播種性血管内凝固(DIC )治療のインデックス
このブログ(血液・呼吸器内科のお役立ち情報)で、播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)関連の記事が増えてきましたので、一度このキーワードにしぼってインデックスページを作成しておきたいと思います。
【関連記事】
<特集>播種性血管内凝固症候群(図説)← クリック(シリーズ進行中!)
今後も、「DIC 治療」に関係した記事は漸次増えていきますので、とりあえずの目次ということで御容赦いただければと思います。
なお、NETセミナー(DICの治療戦略)はブログではなく、金沢大学 血液内科・呼吸器内科ホームページにある、NETセミナー記事の一つですが、念のため加えさせていただきました。
・NETセミナー(DICの治療戦略)
・トロンボモジュリン製剤(リコモジュリン):最新治療薬
・フサン(FUT:メシル産ナファモスタット):線溶亢進型DICの特効薬
・急性白血病などの造血器悪性腫瘍のDIC治療
・急性前骨髄球性白血病(APL)に対するATRAというDIC治療
・ヘパリン類の種類と特徴
・ヘパリン類の特徴(表):フラグミン、クレキサン、オルガラン、アリクストラ
・低分子ヘパリン(フラグミンなど)
・オルガラン
・プロタミン(ヘパリンの中和)
・スロンノン(アルガトロバン)とHIT
トランサミン(インデックスページ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)<図解>(インデックスページ)
以下でも、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
血液凝固検査入門(インデックスページ) ← クリック! 血液凝固検査入門シリーズの全記事へリンクしています。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:48
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金沢大学血液内科・呼吸器内科(検索順位)4回目集計
金沢大学第三内科ホームページ(このブログはHPに併設)を、リニューアルオープンさせていただいて、3ヶ月が経過しました。
「血液内科」「呼吸器内科」「研修医募集」などの主要キーワードで、GoogleやYahoo検索でどのあたりに掲載されるか気になるところです。
3回目の集計記事から時間が経っていますので、今日の時点での4回目の記録を残しておきたいと思います。
<Google検索>
「血液内科」での検索: 6位/762,000件(11位←14位←18位)
「血液内科 研修医募集」での検索: 3位/29,400件(1位←14位←11位)
「呼吸器内科」での検索:11位/896,000 件(12位←12位←11位)
「呼吸器内科 研修医募集」での検索:5位/45,700 件(3位←6位←7位)
<Yahoo検索>(今回初めての集計)
「血液内科」での検索: 10位/2,590,000件
「呼吸器内科」での検索:31位/20,300,000 件
分母の数が各群で相当違いますので、単純に順位だけれは比較できませんが、いずれにしましてもかなりの善戦ではないかと思います。特に、血液内科のGoogle検索では、6位まで順位が上がってきました。
また、Yahoo検索では今までそんなに目立つ順位にはなかったのですが、上位に食い込んできたようです。
多くの方にご支援いただいていますことを、この場をかりて厚く御礼申しあげます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 12:31
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播種性血管内凝固症候群(DIC):FDPとDダイマー(D-dimet)(図解25)
DICは、極めて予後不良の症候群です。
臨床症状(出血症状、臓器症状)が出現してから対処していたのでは手遅れです。
臨床症状が出現する前に、血液検査で診断して治療を開始することがとても重要です。
DIC診断に重要な血液検査にはいくつかありますが、最も重要な検査項目は、血小板数と、FDP(Dダイマー) ではないでしょうか。FDPとDダイマーの違いにつきましてはまた記事にさせていただきますが、今回はFDPは何の略であるかを紹介させていただきます。
FDPは、あまりにも有名なマーカーですので、知らない人はいないと思いますが、一体FDPは何の略ですか?と聞かれたら、間髪を入れずに答えられる方は何割おられるでしょうか。その位、FDPという省略語は有名になっています。
FDPと言うのは、fibrin/fibrinogen degradation productsの頭文字を取って、FDPです。
ですから、fibrin degradation products(フィブリン分解産物)もFDPですし、fibrinogen degradation products(フィブリノゲン分解産物)もFDPです。
つまり、FDPが高値というのは、フィブリンまたはフィブリノゲンの分解が進行したことを意味します。この究極的な病態がDICということになるます。
追伸:
かくも重要なFDP、Dダイマーですが、弱点(限界)も知った上での使用が大事と思います。限界を知る事で、これらのマーカーを最大限に活用できるものと思っています。
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:25
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悪性リンパ腫(ろ胞性リンパ腫関係):標本4
BSL標本カンファレンス:毎週火曜 17:30〜18:00ごろ 金沢大学第三内科医局
(関連記事)
NETセミナー:悪性リンパ腫の診断
悪性リンパ腫:1
悪性リンパ腫:2
悪性リンパ腫:3
悪性リンパ腫:4
2008年10月7日
今回のテーマは「ろ胞性リンパ腫関係」でした。
今回を含めて、全部で3症例提示します
症例4 50代女性
現病歴 10年以上前から化学療法、放射線療法を繰り返している治療抵抗性ろ胞性リンパ腫の症例。
鼡径部リンパ節生検標本
◆H-E染色
弱拡大(左):正常なろ胞構造は残っておらず、小さなろ胞が多数みられている(後述の免疫染色の方が見やすいと思います)。
ろ胞内部の強拡大(右):小型の細胞が多くを占めており、大型の細胞が少数混在する。
小さい細胞:centrocytes
大きい細胞:centroblastsとfollicular dendritic cells
centroblastsの量でろ胞性リンパ腫はgrade1-3a, bに分類される
Grade 1: 強拡大視野でcentroblasts が0-5個
Grade 2: 6-15
Grade 3: >15
3a: centrocytesが存在する
3b: シート状にcentroblastsが増生し、centrocytesを認めない本症例はcentroblastsが少ないため、grade1〜2
免疫染色(陽性は茶色に染まる)
◆CD20(B細胞のマーカーで、リツキサン®の標的となる細胞):陽性
◆CD79α(同じくB細胞のマーカー):陽性
◆bcl6(B細胞性リンパ腫の中でこれが陽性になるのはろ胞性リンパ腫に特徴的):陽性
◆CD10(bcl6と同様で、ろ胞性リンパ腫に特徴的):陽性
◆CD3(T細胞のマーカー):陰性
↓下図左はCD79α。ろ胞を中心に陽性細胞が存在
↓下図右はCD3。ろ胞外に陽性細胞が存在しており、ろ胞内部に存在する腫瘍細胞は陰性。
CD20、bcl-6、CD10はCD79αとほぼ同じ所見のため図は省略。
2つを比べると、ネガとポジのように陽性細胞の分布が逆転している。
◆bcl-2(アポトーシス抑制遺伝子で、正常なリンパ節ではろ胞外に陽性細胞が存在し、ろ胞内部は通常染まらない。しかしろ胞性リンパ腫の大部分でろ胞内部が陽性になるため、反応性ろ胞過形成とろ胞性リンパ腫の鑑別に役立つ。ただしbcl-2陰性のろ胞性リンパ腫もあり、他の低悪性度B細胞性リンパ腫も陽性となる。)
:陽性
↓bcl-2陽性細胞はろ胞を中心に存在し、上記のCD79αなどと同じような分布である。
◆診断:ろ胞性リンパ腫、grade1〜2
◆Q&A
centroblastとcentrocyteの区別がよく分からない
ただし、follicular dendritic cellとcentroblastとの区別は専門家でも難しいとのことでした。
また、区別をつける意義は?
follicular dendritic cellは正常なリンパ節にも存在する細胞である。ろ胞性リンパ腫(低悪性度リンパ腫)はcentroblastの数によってgrade分類されるが、grade 3bとなるとびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(中悪性度リンパ腫)と同じような臨床像を呈するため、治療方針や予後が大きく異なるため鑑別が必要となる。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:03
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臨床検査専門医認定試験の受験経験(実技試験)
実技検査(2日目の午前&午後に行われます)
1. 検尿沈渣:変形赤血球、白血球、各種円柱、各種結晶、病原虫など25題(PCに入っている画像を見て解答を記載する)。勉強してあれば極めて簡単ですが、勉強してないと解けないと思います。
2. 簡易血糖測定装置での血糖測定 2検体、試験管は何を使うか(NaFです)、簡易血糖測定装置の測定原理を数行で記載。セミナーで一見重要そうには見えない(?)プリントを1枚もらいます。それを勉強してないと白紙解答になってしまうと思います。
3. 精度管理:X-R管理図の解釈。トレンド、シフトなどの用語を知っている必要あり。どういう時にそうなるかも。これも、セミナーで一見重要そうには見えないプリント数枚セットをもらいます。それを勉強してないと白紙解答になってしまうと思います。
4. LDHアイソザイムの判読:肝炎、心筋梗塞、悪性リンパ腫など。推測ですが、年によって、アミラーゼ、CPK、ALPなどシャッフルするのだと思います。セミナーでもらう問題集をしておけば大丈夫です。
5. 面接:機種、技師数、検体数、検査部の経営がよくなるにはどうすれば良いか、どういう人に技師長になって欲しいか、なぜ専門医試験に受けにきたのかなどを質問されました。
6. 骨髄像:MM、ALL、巨赤芽球性貧血、APLの4題。病名のみでなく、所見や、他に必要な検査なども記載。
7. 血栓止血:sugar water試験の写真を見せてこの病気で見られる凝固異常は何か、末梢血ストリッヒの血小板を判読させる問題、血小板凝集能カーブを見せて何の検査ですか、凝固活性化/線溶活性化検査を言いなさいなど。
8. 血液検査管理:自分の病院で使用している血算機器の名称を述べよ、精度管理の方法、数個のデータみせて血算のパニック値を発見させる質問、SI表示はどれか、血算の再検はどういう時にしているか(XE-2100ではFragが立つ)、外部精度管理は何に参加しているか(大きいのは、日本医師会と日臨技です)。
9. 採血をモデルの前腕でさせる。ラベルの貼り方(字が隠れる貼り方は不可;つまり縦張りにします)、血算・凝固・生化学の採血管をあてさせる問題、採血試験管順、針の捨て方など。
10. 血液型判定、表と裏が一致しない結果になりました、なぜか(B型亜型など)、交差適合試験(生食法とブロメリン法)、なお交差適合試験は生食法とブロメリン法で違う結果になりました、なぜか?不規則抗体のパネルを判読させる問題。
11. 抗核抗体で、Homogeneous pattern、Peripheral pattern、Centromere pattern、のカラー写真を見せて何パターン答えさせる問題。Peripheral patternは、Homogeneous patternに見えましたが、プロが見れば典型的なPeripheral patternなのだそうです。M蛋白の免疫固定法の写真を判読させる問題。IgE-λでした。
12. グラム染色:セミナーで習った方法と、エタノール脱色の方法が違っていてとまどいました。
13. 黄色ブドウ球菌、緑膿菌の感受性試験はどの抗生剤のセットを用いれば良いか?臨床検査専門医会のHPの問題集と同じ問題でした。ディスク法の阻止円の成績を示して、感受性かどうかをあてさせる問題。各抗生剤のSは何mm以上かなどは覚えなくても試験用紙に書かれていました。カラー写真を見せて、菌名をあてさせる問題が10問位(クリプトコッカス、HIVでトキソプラズマ脳症の人のトキソプラズマ、サイトメガロ感染症の病理、β溶血の写真、淋菌のグラム染色、など。検体の患者背景も簡単に記載されていました)。セミナーのカラー資料を制覇しておけば8割は解けますが、2割は分かりませんでした。
14. 扁平上皮の多い痰検体を鏡見させて主治医にどういえば良いか(Geckler分類1群でしたので、再度採痰させるが解答です)、菌名をあてさせる(グラム染色で最も分かりやすい肺炎球菌でした)、適切な培地をあてさせる(実際のシャーレ培地の実物が4つおかれていました。そこから2つ選択させる問題です。答えは羊血液寒天培地、チョコレート寒天培地でした。その他に、BTB培地、SS培地が置かれていました)。
1)臨床検査専門医試験の受験経験(序)
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3)臨床検査専門医試験の受験経験(筆記試験)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:31
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科入局に関して
入局する時期は、卒後3年目の内科後期研修の開始時が最も一般的ですが、
それより先でも後でも可能です。
入局者の多くは当科(金沢大学附属病院 血液内科・呼吸器内科)で後期研修をします。
しかし、後期研修先は富山県立中央病院ですが、同時に当科に入局した人もいます。
後期研修を金沢大学付属病院や当科の関連病院以外で行い、卒後6年目の時点で入局した人もいます。
入局はいつでも可能です。
血液内科や呼吸器内科に関心を持った時点で入局を考えていただければよいかと思います。
また、他大学の医局に所属していた方で、郷里が北陸であるため地元での勤務を希望して入局した人もいます。そのような希望での入局も大歓迎いたします。
過去三年間の入局者の出身大学は金沢大学 5名、福井大学 1名、金沢医科大学 1名、広島大学 1名、岐阜大学1名と、約半数は金沢大学以外からの入局者です。
当科では、出身大学によって、入局後の進路や人事に差が出ることは一切ありません。
学位取得時期までは機会均等・負担均等を原則とし、学位取得時期以降は適材適所と実力に応じて人事を行っています。
入局に関してご質問がありましたら遠慮なくご連絡下さい。お待ちしています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:55
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臨床検査専門医認定試験の受験経験(序)
臨床検査専門医(日本臨床検査医学会)は、あまり聞き慣れないかも知れません。
しかし、この資格は今後いろんな意味で大きな意味を持つものと思っています。
たとえば、臨床検査専門医の有無により、病院診療における保険点数の算出方法が変わるようになるかも知れません。
管理人が臨床検査専門医試験を受験したのは2〜3年前ですが、記憶をたどりながら記事にしてみたいと思います。この試験の特徴は、筆記試験のみでなく、実技試験もあるところです。しかも、実技試験の比重が大きいです。
当時、受験者用セミナーが数回開催されていました。この受講が極めて重要です。
実技の講習も含まれています。
また、セミナーでいただく資料は受験用必須アイテムと思います。
当時の合格率は、75〜80%位だったと思います。ですから、全く勉強せずに臨むと不合格になるでしょう。換言しますと、勉強して臨めば、確実に合格をいただけます。
今後の記事で、箇条書き的に当時の試験内容を書かせていただきます。ご参考となれば幸いです。
ただし、かなり記憶が薄らいでいますので、実際と異なる記載が入ってしまうかも知れません。ご容赦ください。
1)臨床検査専門医試験の受験経験(序)
2)臨床検査専門医試験の受験経験(実技試験)
3)臨床検査専門医試験の受験経験(筆記試験)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:26
| 専門医試験受験談
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止血剤の種類と疾患:ノボセブン、アドナ、トランサミンなど。
止血剤は、文字通り出血を止めるためのお薬です。
管理人が研修医時代には(大昔の話です)、止血剤と言えば、アドナ、トランサミン、ビタミンKでした。種々の出血に対して、上記の処方を繰り返してきた記憶があります。
しかし、今の医学で考えますと、あまり適正に止血剤が使用されてきたとは思えないのが正直なところです。20年以上前の話ですので、医学レベルが今とはまるで違っていたということでお許しください。
まず止血剤には強力なものと、マイルドなものがあります。
また、出血の種類によって、処方内容は当然変わってきます。
今回の記事は、止血剤の種類別に、解説を加えたいと思います。
当然ながら、何に対して有効であるかが変わってきます。
参考書籍リンク:しみじみわかる血栓止血 Vol.1 DIC・血液凝固検査編 ← クリック
1)濃厚血小板(pletelet concentrates:PC):
血小板数や、血小板機能が極端に低下している場合の出血に対して有効です。
血液疾患などで、濃厚血小板が必要となる疾患は通常入院が必要となります。
ただし、濃厚血小板は繰り返し使用していますと、抗体ができて効果が減弱してきますので、本当に必要な時にのみ使用します。
2)新鮮凍結血漿(fresh frozen plasma:FFP):
新鮮凍結血漿には全凝固因子が含まれています。
新鮮凍結血漿が必要となるのは、重症の肝不全、血液疾患(DIC合併例を含む)などで、凝固因子が枯渇しているような疾患です。
3)第VIII因子濃縮製剤:
血友病A(先天性第VIII因子欠損症)の止血管理用です。ただし、第VIII因子は血友病Aの人にとっては未知の蛋白であるため、皮肉なことに第VIII因子濃縮製剤を使用しますと抗体(インヒビター)が形成されてしまうことがあります。この時の止血管理には、バイパス製剤(ノボセブン、ファイバなど)が必要になります。
4)第IX因子濃縮製剤:
血友病B(先天性第IX因子欠損症)の、出血時の特効薬です。インヒビターの発症はありえますが、血友病Aの場合と比較しますと遥かに少ないです。
5)DDAVP(抗利尿ホルモン):
DDAVPは興味あることに、血管内皮からフォンヴィレブランド因子(VWF)を放出させる作用があります。そのため、フォンヴィレブランド病(VWD)に対して有効です。ただし、重症のフォンヴィレブランド病には限界があります。また、繰り返し、DDAVPを使用していますと、放出されるフォンヴィレブランド因子が枯渇してきますので、効果が減弱してきます。
参考記事:鼻出血時の疾患と血液検査
6)コンファクトF(第VIII因子濃縮製剤の一つ):
第VIII因子濃縮製剤は最近は、遺伝子組み換えのものが主流になってきていますが、コンファクトFは昔ながらの血漿由来の第VIII因子濃縮製剤です。しかし、これが幸いしています。なぜなら、この血漿由来の第VIII因子濃縮製剤は純度が悪く、第VIII因子のみでなく、フォンヴィレブランド因子が混入しています。そのため、フォンヴィレブランド病の止血管理としても有効です。
7)遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(ノボセブン):
これは究極の止血剤です。血友病の患者さまで、濃インヒビターが出現した時の代替え治療薬(バイパス製剤)として用いられます。また後天性血友病にも適応があります。日本では、血友病インヒビターと後天性血友病に対してのみ保険が通っています。ただし、脳出血、外傷時の出血などほとんど全てのタイプの出血に対して有効ではないかと期待されています(ノボセブンの参考記事)
ただし、1アンプルが約30万円と高価なことと、現在は血友病インヒビターと後天性血友病にしか使用が認められていないのが残念です。しかし、ほとんど全てのタイプの出血に有効ではないかと期待されている究極の止血剤ですので、早く種々の出血に対しての使用が認可されて、価格も安くなってほしいと願っています。
8)ビタミンK製剤:
ビタミンK欠乏症の時の出血に対して、劇的に効きます。表現を変えますと、ビタミンK欠乏症以外の出血に対しては、全く無効です。
9)アドナ(内服も注射もあります):
止血剤と言えば、このお薬をまずイメージすることが多いくらい有名なお薬ですが、効果は極めてマイルドです。副作用もまずありませんので、使用しても良いですが過度な期待は禁物です。
10)トラネキサム酸(商品名:トランサミン):
線溶活性化が強い時の出血に対しては、劇的に効果を発揮します。しかし、表現をかえれば、線溶活性化が強い時の出血でなければあまり効果を期待できません。アドナよりはまだ効果があるかも知れませんが。。。
トランサミンは、線溶活性化が極めて強いタイプの播種性血管内凝固症候群(DIC)に対して上手に使用しますと(ヘパリンと併用して)著効しますが、間違って使用しますと全身性の血栓症により死亡するという報告もあります。正に諸刃の剣的なお薬です。DICに対して使用する時は、必ず専門家に相談して使用すべきと考えられます。
トランサミン(インデックスページ)へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)<図解>(インデックスページ)
(以下でもリンクしています)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:32
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ノボセブン(遺伝子組換え活性型第VII因子製剤):究極の止血剤。
遺伝子組換え活性型第VII因子製剤(recombinant factor FVIIa:rFVIIa)(商品名:ノボセブン)をご存知でしょうか。
保険適応は、血友病A&Bにインヒビターが出現した場合の止血管理用、および後天性血血友病のみです。
しかし、ノボセブンは上記の出血以外にも、脳出血(上記疾患とは無関係です。以下同様)、外傷時出血、吐血&下血、血小板数または機能低下時の出血、出産時大出血、心臓手術に伴う出血など多くの出血に対して有効ではないかと期待されています。播種性血管内凝固症候群(DIC)の出血に対して有効という報告(論文抄録)まであります。また、世界的な戦闘地域で、負傷時の止血目的に使用されているという話を耳にしたこともあります。
実際、Pub Medなどで、rFVIIaを検索しますと、本来の血友病インヒビターや後天性血友病の保険適応のある使用の論文よりも、適応外使用の論文の方が多いかも知れません(世界的に適応外使用が数多く行われているのが現状です)。
そのため、適応外使用は慎重に行うべきだという警鐘をならす論文がJAMAに報告(論文抄録)されたほどです。換言しますと、その位、ノボセブンは劇的に効くので愛用する人は多いということではないかと思います。
一度使用経験のある人はあまりに有効であるために、一発でノボセブンのファンになるようです。早く、現在の保険適応の疾患以外にも多くの出血性疾患に使用できるようになって欲しいものです。
なお、現在、ノボセブンの改良型の開発中のようです。より効果の強いアナログ、半減期のより長い改良型が開発中です。将来が大変楽しみです。
(補足) この度、この記事に対して貴重なコメントをいただきました。誤解がないように補足させていただきます。
脳出血に関してましては、rFVIIaは予後や機能障害を改善しなかったというN Engl J Medの報告があります。N Engl J Med. 2008 May 15;358(20):2127-37.
ただし、登録基準設定法や、投与法の工夫、あるいは効果の強いアナログ、半減期のより長い改良型ではどうかなど、まだ可能性はあるのではないかと思っています。
そのあたりを「期待されています」と表現させていただきましたが、誤解を与えてしまう表現だったかも知れません。ここで、補足させていただきます。
また、コメントいただいた方に感謝いたします。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 10:09
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血栓性素因の血液検査(アンチトロンピン、プロテインC、抗リン脂質抗体他)
血栓症(thrombosis)は、大きく動脈血栓症と静脈血栓症に分類されます。このうち、特に静脈血栓症に関しては、血栓性素因のチェックが重要になります。
なお、血栓症の分類や抗血栓療法につきましては、以下の記事がご参考になるのではないかと思います。
血栓症の分類と抗血栓療法の分類
抗血小板療法 vs, 抗凝固療法(表)
NETセミナー:血栓症と抗血栓療法のモニタリング
さて、この中でも、血液内科的な血栓性素因にはどのようなものがあるでしょうか?
換言しますと、血栓性素因はないでしょうかというコンサルトを血液内科にいただいた場合に、どのような血液検査をすれば良いでしょうか。
金沢大学 血液内科・呼吸器内科の血栓止血外来にご紹介いただいた場合には、以下の疾患についてのチェックを行っています。
1.先天性凝固阻止因子欠乏症(参考NETセミナー:先天性血栓性素因の診断)
・アンチトロンビン欠乏症
・プロテインC欠乏症
・プロテインS欠乏症
2.線溶異常症
・プラスミノゲン異常症
・高Lp(a)血症:Lp(a)は線溶因子プラスミノゲンと類似構造を有し、拮抗的に作用する。
3.後天性血栓性素因
・抗リン脂質抗体症候群:抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント
・高ホモシステイン血症
<血栓性素因の血液検査として行うべき特殊検査>
アンチトロンビン(AT)、プロテインC(PC)、プロテインS(PS)、Lp(a)、ホモシステイン、プラスミノゲン、抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピン-β2GPI複合体抗体、ループスアンチコアグラント、総PAI、第XII因子
<血栓性素因の血液検査として行うべきルーチン検査>
PT、APTT、フィブリノゲン、FDP(Dダイマー)、TAT(SF、F1+2)、PIC
症例によっては、上記全て必要ではないこともありますので、適宜割愛しています。上記はMAXのオーダーということになります。
なお、上記の検査の結果として血栓性素因の原因が究明される場合に(もちろん究明されないこともあります)、最も多い原因は、少なくとも金沢大学では抗リン脂質抗体症候群(antiphopholipid syndrome:APS)です。抗リン脂質抗体症候群の発症頻度は極めて高いです。
診断のついていない、いわゆる隠れ抗リン脂質抗体症候群の患者様が多数おられるのではないかと推測しています。ひょっとしたら、将来は健康診断項目にリン脂質抗体がはいるのではないかと思っている位です。
関連記事
・ 血液凝固検査入門:インデックスページ ← クリック(全記事、分かり易く図解)
(以下でリンクしています)
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 04:32
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播種性血管内凝固症候群(DIC):病態の共通点と相違点(図解24)
播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)は、臨床例であってもモデルであっても、共通点と相違点があります。
全DIC例に共通してみられることとしては、基礎疾患の存在、全身性持続性の極端な凝固活性化状態を挙げることができます。基礎疾患のないDICは存在しません。また、凝固活性化の所見が無ければ、他にDICを疑わせる所見がいくらあったとしてもDICとは言えません。
一方で、個々のDICによって異なる所見としましては、線溶活性化の程度、出血症状・臓器症状の出現の仕方、病理学的な血栓形成の程度をあげることができます。
これらの詳細は既に記事にさせていただいた通りです(播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】)。
さて、DICの適切な治療を行うためには、DICの適切な診断が必要です。
DICの診断に最もポイントとなるのは何でしょうか?
もちろん臨床症状ではありません。
DICは極めて予後不良の症候群です。
臨床症状が出現する前にDICと診断して治療を開始することが予後の改善につながっていきます。
そのためには。。。(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:20
| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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鼻出血(鼻血が止まらない):粘膜出血
出血症状としては、紫斑(青あざ)、鼻出血(鼻血)、口腔内出血、消化管出血、過多月経、外傷時出血、脳出血、肺出血など多くの臨床症状があります。
その中でも、粘膜出血の一つである鼻出血(鼻血が止まらない)は、外来でご相談いただく出血症状として、紫斑などとともに最も多い出血症状の一つではないかと思います。
鼻出血の原因としては多くのものが知られていますが、大きく以下の2つに分類されると思います。
1) 耳鼻咽喉科の疾患:
たとえば、鼻ポリープ、鼻腔の腫瘍、鼻腔の炎症などです。換言しますと、鼻出血の患者様を拝見しましたら、耳鼻咽喉科は必ず受診した方が良いです。上記の疾患があるかどうかによって、治療方針は大きく変わります。
2) 全身性出血性素因:
全身性出血性素因の一症状としての鼻出血が見られる場合です。血液内科で扱う疾患になります。
耳鼻咽喉科から、出血性素因がないかどうかということで、ご紹介いただくことも多いです。
全身性出血性素因は、さらに以下のように分類されます。
1. 先天性出血性疾患:
von Willbrand病(フォン・ヴィレブランド病;旧日本語名称はフォン・ビルブランド病;VWD)は、鼻出血などの粘膜出血が見られやすい疾患です。この疾患であるにもかかわらず、診断がされていないいわゆる隠れvon Willbrand病の方も少なくないものと思っています。
2. 後天性出血性疾患:
多数の疾患があります。たとえば血小板数が低下するような疾患です。あるいは、消炎鎮痛剤(アスピリン、インドメタシンなどなど)の連用でも、血小板の機能が低下して出血傾向をきたすことがあります。健康食品(抗動脈硬化作用を有すると書かれている食品など)の一部に、血小板の機能を抑制するものがあります。
さて、鼻出血の患者様を拝見した場合に、
血液内科としてはどのような検査をすれば良いでしょうか。
以前も記事(全身性出血性素因の最初の検査)にさせていただいたように、
以下の検査は必ず行う必要があります。
<鼻出血の検査>スクリーニング
1)血算(血小板数を含む)
2)プロトロンビン時間(PT)
3)活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
4)フィブリノゲン
5)FDP
6)出血時間(必要に応じて、初めから血小板凝集能を行うこともあり)
:鼻出血が主訴の場合には、やはり血小板凝集能は初めから行なうべきでしょう。von Willebrand病(VWD)では、リストセチン凝集の欠如と言う特徴的な所見が見られます。
PT(PT-INR)やAPTTではスクリーニングされない第XIII因子、α2PIも測定しておいた方が無難です。
また、特に鼻出血の場合には、APTTや出血時間が正常でも、von Willebrand因子(VWF)抗原&活性、第VIII因子も測定する必要があります(軽症のvon Willebrand病ではAPTTや出血時間でスクリーニングされない場合があります)。
von Willebrand因子の低下が確認された場合には、von Willebrand因子マルチマー構造解析、Family studyが必要になります。
von Willebrand病の中でも、最も老いtype Iでは、常染色体優性遺伝します。
Family studyは、発端者の診断にも意味がありますが、家族を守る(大事にいたる前に、von Willebrand病の人を前もって診断して将来の適切な診療につなげる)という意味でも重要です。
なお、注意点があります。
血液型O型の人は、これだけでvon Willebrand因子が低下することがあります(血液型O型の人は、vWF活性が低い)。
ですから、慎重に診断する必要があります。
関連記事のご案内:
凝固検査のカテゴリーへ【推薦】:医療関係者用
播種性血管内凝固症候群(DIC)<図解>のカテゴリーへ【推薦】:医療関係者用
出血性疾患のカテゴリーへ
止血剤の種類と疾患へ
トランサミン(インデックスページ)へ
全身性出血性素因の最初の検査へ
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:30
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タール便(黒色便)と血便
1.タール便(黒色便)とは
推薦書籍:「臨床に直結する血栓止血学」
黒色便が見られる疾患が知られています。若い方は、タールと言ってもピンとこないかも知れません。道路を舗装する時に使うコールタールが語源です。そのコールタールのように黒い便ということで、タール便と言います。黒色便ということもあります。
参考書籍:「臨床に直結する血栓止血学」(出血性疾患&血栓性疾患について詳述されています)
2. どういう時にタール便が見られるか?
これは、胃や十二指腸から相当出血している時に、みられる特徴的な便です。胃酸と血液が混合することで、黒色便になります。
具体的には、以下のような疾患でタール便が見られます。
1)胃から出血する疾患:胃潰瘍、胃癌、重症の胃炎など。
2)十二指腸から血が出る病気:十二指腸潰瘍、十二指腸乳頭部癌など。
3)食道から血が出る病気:食道静脈瘤、食道癌(いずれも出血を伴う場合)など。
4)大量の鼻出血・口腔内出血を飲み込んだ場合など。
ただし、少量の出血では、タール便にはなりません。たとえば、早期胃癌で、わずかの出血しかない場合にはタール便になることはないでしょう(そういう時には、便潜血検査←クリック を行います)。
タール便がみられましたら、胃や十二指腸からの相当量の出血があることを意味しますので、早々に胃カメラなどの検査が必要です。
一方、直腸癌など、肛門に近い部位からの出血では、タール便にはなりません。この場合は、暗赤色の血便になるでしょう。あるいは、痔からの出血では、鮮紅色の血液が便に付着するでしょう(下記)。
3.タール便と、血便の違い
血便は、文字通り、便に赤い血液が混じります。暗赤色のこともあります。
血便の場合は、大腸癌(直腸癌を含む)や重症の大腸炎などがある場合にみられます。血便は、胃酸の影響のない部位からの相当量の出血で見られる症状です。
痔(特に切れ痔)でも、しばしば便に血が混じります。切れ痔の場合は、便の上に血液がのるという感じになります。便に血液が混入すると言っても、タール便(黒色便)と血便では、意味するところが違うのです。
4. 抗血栓療法とタール便
抗血栓薬というのは、文字通り血栓症の発症を抑えるお薬です。具体的には、抗血小板薬のアスピリンや、抗凝固薬のワーファリンなどです。
抗血栓薬を内服していますと、出血の副作用がみられることがあります。たとえば、紫斑(青あざ)が出やすいかもしれませんし、怪我をした後も止血しにくいかも知れません。
しかし、胃や十二指腸に病気がないのに、抗血栓薬を内服していてタール便がみられることはあまりありません。
ただし、抗血栓薬を内服していますと、小さな潰瘍や癌であっても止血しにくく、タール便になりやすい可能性はあります。この点、抗血栓薬の内服によって、タール便という症状が増幅しやすい(早期診断につながりやすい)可能性があります。
5. 解熱鎮痛薬(NSAID)とタール便
風邪薬には、しばしば解熱鎮痛薬が含まれています。医学的には、非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAID)と言います。
この解熱鎮痛薬には、いろんな種類がありますが(古くは、アスピリンやインドメタシンがあります)、時に、胃粘膜に障害を与えて、胃潰瘍を起こすことがあります。
胃潰瘍を起こしますと、胃の中に出血をきたし、胃酸と混じることで、タール便(黒色便)がみられることがあります。風邪薬をのんでいて、黒い便が出たというのは、風邪薬のなかの解熱鎮痛薬の成分で胃潰瘍を起こした可能性があるのです。風邪薬を処方する際、しばしば胃薬を含めますのは、そのような背景からです。
なお、管理人自身の経験ですが、風邪薬を内服すると必ず毎回黒い便が出るという患者様がいらっしゃいました。検査の結果、先天性出血性疾患の患者様であることが判明しました。
6. 造血剤と黒色便
貧血のお薬に、造血剤があります。造血剤の中身は、鉄(Fe)そのものです。
実は、造血剤(鉄剤)を内服しますと、便は黒色(タールのように見えるかも知れません)になります。しかし、これはもちろんタール便ではありません。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:29
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アメリカ血液学会総会(ASH)報告:サンフランシスコ
アメリカ血液学会総会(ASH)レポートです。
<提供:金沢大学第三内科(血液内科・呼吸器内科)Dr.T >
(ASH会場入り口で、全体に血液の赤を基調にしています)
アメリカ血液学会総会が12月6日から9日までサンフランシスコで開かれました。
この総会は1年に1回、通常12月はじめに開かれます。
世界最大の血液学総会であるだけでなく、参加人数は数万人規模で、そもそも世界で最も多くの参加人数を誇る学会総会なのだそうです。
今年は第50回記念総会にあたり、スローガンは、
"ConqueringBlood Diseases -From research to patient care"
(直訳すると「血液病を克服する研究成果を診療へ」)でした。
この言葉からも、この学会が実際の臨床に役立つ研究を重視しているのがわかります。
今やアメリカにとどまらず世界中の専門家・臨床医が一同に会し、血液疾患の新たな診断・治療法を発表し議論する学会総会と言えます。
当科から中尾教授はじめ7名が参加し、国内外の研究者と交流を深めました。
そのうち5名が研究成果を発表し、海外の参加者からも大いに注目を集めました。
当科から参加した各々も大変な刺激を受け、今後の診療に活かす思いを強くしました。
また、ちょうどクリスマス前で、最もアメリカらしい華やいだ雰囲気を楽しむこともできました。
この写真は、歴代学会長写真のコーナーです。
左下隅の写真は、骨髄移植を確立しノーベル賞を受賞した、E.D. Thomas博士です。
やはりここで写真を撮る人が一番多かったです(Dr.Tもその一人)。
この写真は、サンフランシスコで有名な、ユニオンスクエアのクリスマスツリーです。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:35
| 血液内科
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播種性血管内凝固症候群(DIC):病型分類(動物モデルとの対比)(図解23)
上図は、臨床のDIC病型分類に、ラットDICモデルを追加したものです。
LPS誘発DICモデルでは、線溶阻止因子PAI(plasminogen activator inhibitor;プラスミノゲンアクチベータインヒビター)が著増して線溶抑制状態にあります。そのために血栓は溶解されにくく、Dダイマー(D dimer)は軽度上昇にとどまります。肝腎障害は高度でしたが、出血症状としての血尿は全く見られませんでした。この点、臨床の線溶抑制型DIC(旧名称:凝固優位型DIC)に類似した病態と考えられます。
一方、組織因子(TF)誘発DICモデルでは、線溶阻止因子PAIの上昇は軽度にとどまります。そのために血栓は溶解されやすく、Dダイマーは明らかに上昇します。出血症状としての血尿は高頻度に見られましたが、肝腎障害はほとんど見られませんでした。この点、臨床の線溶亢進型DIC(旧名称:線溶優位型DIC)〜線溶均衡型DICに類似した病態と考えられます。
DICの本態は全身性持続性の著明な凝固活性化状態です。確かにこの点は全DICに共通した病態ですが、それ以外ではむしろ相違点が大変多いと言えます。このことは、DICの診断の上でも留意すべきと考えられますし、最終的には最も適切なDIC治療法が異なるという方向へ向かっていくものと考えられます。
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:56
| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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金沢大学 血液内科・呼吸器内科が、YAHOOカテゴリー登録。
この度、私たちのHPが、YAHOOカテゴリー登録されることになりました。
YAHOOカテゴリー登録は、超難関と聞いていますので、この度の朗報をとても嬉しく思っています。
今後とも皆様に御支援いただけるようサイトを充実させていきたいと思っていますので、どうかよろしくご指導の程、お願い申しあげます。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:11
| その他
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播種性血管内凝固症候群(DIC):出血症状(血尿)(図解22)
DICの2大症状は、出血症状と、臓器症状です。
前回、前々回のこのシリーズの記事では、LPS誘発DICモデルでは臓器障害は高度で腎糸球体フィブリン沈着は高度であるのに対して、組織因子(TF)誘発DICモデルでは、臓器障害はほとんどなく腎糸球体フィブリン沈着は軽度であると書かせていただきました。
それでは、DICのもう一つの症状である出血症状についてはどうでしょうか。
私たちは、上図の結果に大変驚きました。TF誘発DICモデルでは高頻度に出血症状としての血尿が見られたのに対し、LPS誘発DICモデルでは血尿は全く見られなかったからです。
どちらのDICモデルにおいても、血小板数やフィブリノゲンは同程度に低下したにもかかわらず、血尿出現率がまるで違うのです。
このことからも、DICにおいて出血が見られる場合には、その理由は、単に血小板数や凝固因子の低下と言った消費性凝固障害(consumption coagulopathy)の要素のみでは説明できないものと考えられます。
やはり線溶活性化(enhanced fibrinolysis)に伴う止血血栓の溶解が、出血しやすいかどうかの大きな要素になっているようです。
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 18:19
| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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造血幹細胞移植(骨髄・末梢血幹細胞・さい帯血 移植)
造血幹細胞移植とは:
血液がん(白血病やリンパ腫、骨髄腫など)や骨髄不全症(再生不良性貧血や発作性夜間ヘモグロビン尿症など)などを治すため、造血幹 細胞が含まれる血液を移植する治療法。
自家(または自己)造血幹細胞移植:移植する血液が元々患者自身のものである場合。
同種造血幹 細胞移植:移植する血液が他人のものである場合。
同系造血幹細胞移植:同種造血幹細胞移植でも、患者の一卵性 双生児から血液をもらう場合。
ドナー:血液をもらう相手(血液提供者)。
レシピエント:血液をもらう人、つまり患者。
造血幹細胞を含む血液の種類による分類
1)骨髄移植
2)末梢血 幹細胞移植
3)さい帯血移植
造血幹細胞移植(GVHDを含む)に関する本格記事は以下から御覧頂けます。
造血幹細胞移植 ← クリック
移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断 ← クリック
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:38
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
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GVHD(分類、ステージ、重症度、ガイドラインなど)
移植片対宿主病(GVHD)
1) ドナーのリンパ球が患者のからだを攻撃する拒絶反応。
2) GVHDには、
1. 急性GVHD:同種造血幹細胞移植が行われてから100日以内に起こりやすい。
2. 慢性GVHD:同種造血幹細胞移植が行われてから100日を過ぎてから起こりやすい。
(備考)ただし、移植から100日以降に急性GVHDがみられたり、逆に慢性GVHDが100日以内に起こることもある。また、急性 GVHDと慢性GVHDの症状が同時に起こることもあり、その場合は慢性GVHDに分類される。
移植片対宿主病(GVHD)の分類、急性GVHD臓器障害のステージ・重症度分類(グレード)、慢性GVHDの診断・臨床徴候・臓器スコア・重症度分類・重症度分類のフローチャート・発症様式、ECOG performance statusなどに関する記事は以下から御覧いただけます。
移植片対宿主病(GVHD)の分類と診断 ← クリック
また、造血幹細胞移植(GVHDを含む)に関する記事は以下から御覧頂けます。
造血幹細胞移植 ← クリック
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:37
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急性骨髄性白血病(生存率、CBF、予後、移植)JALSG/AML
急性骨髄性白血病(AML)の治療
化学療法と、さまざまな方式の造血幹細胞移植療法を適切に組み合わせることにより、
完全寛解にとどまらず、治癒を目指して行われています。
急性骨髄性白血病の治療戦略は、予後因子に基づいて治療反応性を予測し、患者をいくつかのサブグループに層別化することにより、きめ細かく治療方法を工夫する方向へと向かっています。 このことで、生存率の向上につながっています。
本格記事は以下からご覧いただけます。
急性骨髄性白血病の治療 ← クリック
(上記リンク先の内容は以下の通りです)
AML治療の概観
寛解導入療法
寛解後療法
Ara-C大量療法(HD-AC)
造血幹細胞移植療法
予後因子
予後因子に基づく治療戦略
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:21
| 血液疾患(汎血球減少、移植他)
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播種性血管内凝固症候群(DIC):腎糸球体フィブリン沈着(図解21)
DICモデル比較の続きです。
前回の記事では、LPS誘発DICモデルでは肝腎障害は高度であるけれども、組織因子(TF)誘発DICモデルでは肝腎障害はほとんどないことを紹介させていただきました。両モデルは、同程度の凝固活性化がみられたにもかかわらず、臓器障害の出現の仕方がまるで異なるのです。
今回は、腎糸球体フィブリン沈着の程度をPTAH染色で評価した結果を紹介させていただきます。昔の教科書には、DICの特徴的な病理像として微小血栓の沈着が記載されています。
上図の通り、LPS誘発DICモデルでは確かに腎糸球体フィブリン沈着は高度であり、しかもフィブリン沈着が遷延しています。ところが、TF誘発DICモデルにおいては腎糸球体フィブリン沈着は軽度でありしかも速やかに消退しています。
TATで評価される凝固活性化が同程度であり、血小板数やフィブリノゲンの低下で評価される消費性凝固障害が同程度であったとしても、腎糸球体フィブリン沈着の程度はまるで異なります。
つまり、昔の教科書に書かれていたDICの病理所見「微小血栓の沈着」は、決してDICにおいて普遍的に言える訳ではないことになります。
DICの2大症状は、臓器障害(微小血栓の多発による微小循環障害)と、出血症状です。さて、出血症状に関しては両モデル間で差違はあるのでしょうか?
(続く)
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ(シリーズ進行中)
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:09
| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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子育て女性医師に対する取り組み(金沢大学 血液内科・呼吸器内科)
当科の医局長からのメッセージ
「子育て女性医師に対する取り組み」の5回シリーズが完結しましたので、
インデックスページを作成しておきたいと思います。
医師不足が大きな問題になっている現在(もちろん医師不足が現在ほど問題になっていなかった時代も同じなのですが)、子育て女性医師が如何に快適な環境で無理なく臨床を継続できるかを考え、改善していくことはとても重要なことだと思っています。
そのことが、子育て女性医師以外の医師にとっても激務の軽減につながるようになれば、良い歯車が回り出すのではないかと思います。
子育て女性医師に対する取り組み(1) :医師不足、育児、産休
子育て女性医師に対する取り組み(2) :当直、時間外勤務、医師不足
子育て女性医師に対する取り組み(3) :外来・入院診療
子育て女性医師に対する取り組み(4) :症例検討会、支援
子育て女性医師に対する取り組み(5) :非常勤、大学病院
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 05:08
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子育て女性医師に対する取り組み(5) :非常勤、大学病院
子育て女性医師に対する取り組み (特集5)
<金沢大学 血液内科・呼吸器内科>
子育て女性医師が勤務できるようになるためには、医師の増員が必要になってきます。
大学病院は非常勤枠に余裕がありますが、大学病院以外の大規模な公立病院では常勤医師数が限られているため、これらの病院で子育て女性医師が勤務できる体制が整うまでにはまだしばらく時間がかかると思います。
しかし、富山県南砺市の南砺市民病院では、
子育て女性医師を常勤医師として迎えようとしています。
今後、南砺市民病院のような 病院がどんどん増えることを願っています。
私たちは、
「さらによりよいシステムを作り、 子育て女性医師が働く環境を構築するノウハウを提供できるようにしたい」
と考えてい ます。
子育て女性医師に対する取り組み(1) :医師不足、育児、産休
子育て女性医師に対する取り組み(2) :当直、時間外勤務、医師不足
子育て女性医師に対する取り組み(3) :外来・入院診療
子育て女性医師に対する取り組み(4) :症例検討会、支援
子育て女性医師に対する取り組み(5) :非常勤、大学病院
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:43
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子育て女性医師に対する取り組み(4) :症例検討会、支援
子育て女性医師に対する取り組み (特集4)
<金沢大学 血液内科・呼吸器内科>
また、 通常勤務医が当直をした翌日や外勤日などで不在のときには、
子育て女性医師が代診を出来るようになれば(現在これを検討しています)、
通常勤務医の負担はさらに軽減されることになります。
子育て女性医師が入院患者を担当するためには、
症例検討会に出席できるようにする必要があります。
大学病院では、早朝や夕方以降のいわゆる勤務時間外の時間帯に入院患
者の症例検討会をする科がほとんどだと思います。
しかし、本年度より私たちの科(いまのところ血液内科だけですが)では、勤務時間内、具体的には13時から15時に症例検討会をすることにしました。
さて、当科の関連病院でも女性医師への支援について考えているところがあり。。。
(続く)
子育て女性医師に対する取り組み(1) :医師不足、育児、産休
子育て女性医師に対する取り組み(2) :当直、時間外勤務、医師不足
子育て女性医師に対する取り組み(3) :外来・入院診療
子育て女性医師に対する取り組み(4) :症例検討会、支援
子育て女性医師に対する取り組み(5) :非常勤、大学病院
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:42
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子育て女性医師に対する取り組み(3) :外来・入院診療
子育て女性医師に対する取り組み (特集3)
<金沢大学 血液内科・呼吸器内科>
私たちの科では、
子育て女性医師も外来診療はもちろん入院患者の診療も担当していま す。
通常勤務医には当直や時間外の呼び出しへの対応義務はありますが、子育て女性医師は免除されています。
勤務時間内に入院患者の診療が終了しないときには、当直医や副担当医に引き継がれます。
医局の方針として、
勤務終了時間を厳密守るようにすることで、
女性医師の心理的な負担を軽減しようと考えています。
当直医や副担当医は時間外の負担が大きくなるように感じますが、
子育て女性医師が外来診療や入院患者を担当している分、
通常勤務医が担当する入院患者数や外来診療の負担は減っています。
これらに加えて。。。
(続く)
子育て女性医師に対する取り組み(1) :医師不足、育児、産休
子育て女性医師に対する取り組み(2) :当直、時間外勤務、医師不足
子育て女性医師に対する取り組み(3) :外来・入院診療
子育て女性医師に対する取り組み(4) :症例検討会、支援
子育て女性医師に対する取り組み(5) :非常勤、大学病院
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:23
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子育て女性医師に対する取り組み(2) :当直、時間外勤務、医師不足
子育て女性医師に対する取り組み (特集2)
<金沢大学 血液内科・呼吸器内科>
女性医師のキャリアがどうして出産や育児により途切れてしまうのでしょうか。
それには医師の勤務体系が大きく影響しています。
医師であれば、当直や患者急変時などの夜勤や時間外の呼び出しに対応できなくてはならないと思われています。
しかし、子育て女性医師には夜勤や時間外の対応が出来ないため、勤務を続けるためには夜勤や時間外診療を免除される必要があります。
しかし、通常勤務医に対して申し訳ないと思う気持ちや反感を買うことを恐れて、免除を申し出ることがなかなか出来ず、その結果退職を選択していたのではないでしょうか。
子育て女性医師が置かれた状況に病院側が積極的な対応を取って来なかったのも大きな要因だと思います。
子育て女性医師が臨床の場にいることは、
通常勤務医にとっても社会全体にとってもよいことであるため、
子育て女性医師が、
精神的・肉体的な負担を感じることなく、
働ける環境を構築することは、
非常に重 要なことだと考えています。
さて、私たちの科では。。。。
(続く)
子育て女性医師に対する取り組み(1) :医師不足、育児、産休
子育て女性医師に対する取り組み(2) :当直、時間外勤務、医師不足
子育て女性医師に対する取り組み(3) :外来・入院診療
子育て女性医師に対する取り組み(4) :症例検討会、支援
子育て女性医師に対する取り組み(5) :非常勤、大学病院
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:22
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子育て女性医師に対する取り組み(1) :医師不足、育児、産休
今回の記事は、女性医師からのメッセージの記事カテゴリーに含めましたが、正確には当科の医局長からのメッセージになります。どうぞよろしくお願いいたします。
子育て女性医師に対する取り組み (特集1)
<金沢大学 血液内科・呼吸器内科>
出産・子育てを契機に離職する女性医師がたくさんいます。
離職が本人たちの希望に反 することであれば、本人のみならず勤務医不足が問題化している我が国にとっても、と ても不幸なことだと思います。
臨床から長期に離れてしまうと、再び臨床の場に戻って くることはなかなか容易なことではありません。
私たちの科では、出産前後や育児中の 女性医師(以下“子育て女性医師”と呼ぶことにします)が育児と仕事を両立すること ができ、医師としてのキャリアが途切れないように取り組んで行きたいと考えています。
子育て女性医師が臨床の場にいることは、
専門医不足の解消にも繋がり、
男性医師や普通の女性医師(両者を併せ以下“通常勤務医”と呼ぶことにします)の
負担軽減にもなると考えています。
女性医師のキャリアがどうして出産や育児により途切れてしまうのでしょうか。。。
(続く)
子育て女性医師に対する取り組み(1) :医師不足、育児、産休
子育て女性医師に対する取り組み(2) :当直、時間外勤務、医師不足
子育て女性医師に対する取り組み(3) :外来・入院診療
子育て女性医師に対する取り組み(4) :症例検討会、支援
子育て女性医師に対する取り組み(5) :非常勤、大学病院
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:03
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悪性リンパ腫(ホジキン病、非ホジキンリンパ腫):標本3
BSL標本カンファレンス(金沢大学第三内科)
(関連記事)
NETセミナー:悪性リンパ腫の診断
悪性リンパ腫:1
悪性リンパ腫:2
悪性リンパ腫:3
2008年9月30日(火)「ホジキン病関連」その3
症例3 60代女性
現病歴 5ヶ月前から皮疹が出現、3ヶ月前から発熱と全身リンパ節腫脹を自覚。
身体所見 体幹に点状紅斑、両側頸部、腋窩、鼠径のリンパ節腫脹、左下肢のpitting edemaを認める
主要な検査結果 汎血球減少、LDH 360、sIL-2R 7760、PETにて全身リンパ節・骨髄に集積亢進を認める。
左鼠径部リンパ節の生検標本
◆H-E染色:
弱拡大では正常なリンパ節の基本構造が認められない。
強拡大では大型ホジキン様細胞、RS様細胞も存在。
それ以外の細胞の多くも核小体がはっきりし、細胞質がやや淡明な細胞である点が前2例と異なる。
前2例は小型細胞が多かったため、核がより密集しているように見受けられた。
◆CD30:中型〜大型細胞のほとんどが陽性
前2例と比べ、陽性細胞(茶色)がびまん性に存在しているところが相違点かもしれない。
◆CD15:陰性
◆CD20、79α、EBER:大型の細胞が陽性
写真はCD20。
大型細胞は陽性(→)
周囲に散在する小型で異形成のないCD20陽性細胞(▲)は、正常Bリンパ球と考えられる。
ここまでは症例1、2と大きな違いがない
◆CD3:中型〜大型の異型細胞細胞が強陽性
前2症例では異型細胞周囲の小型細胞が陽性であったが、本症例は核小体のはっきりしたやや大きめで異型のある細胞が陽性。
◆CD4:写真上ほとんどの細胞が陽性
◆CD8:染まっている細胞はまばらに存在
CD4陽性細胞>>CD8陽性細胞であり、CD4が優位の結果であった。
骨髄穿刺・生検、皮疹の生検もほぼ同様の結果であった。
前2症例同様ホジキン様細胞が見られ、病理標本上ホジキンリンパ腫が鑑別にあがる症例。
本症例ではリンパ節生検で成熟異型リンパ球の増殖がみられ(CD4優位)、下記に示すようなろ胞樹状細胞(FDC: follicular dendritic cell)の増生を伴い、骨髄・皮膚浸潤があることなどからT細胞性非ホジキンリンパ腫と診断された。
診断
T細胞性非ホジキンリンパ腫、臨床病期 IVB(皮膚・骨髄浸潤)、IPIはhigh intermediate
サブタイプ Angioimmunoblastic T-cell lymphoma, associated with reactive Hodgikinoid B-cells
本疾患に特徴的なCD21、CD35(FDCが特異的に染まる)を施行した
◆CD21+35:腫瘍細胞の背景に強く染まる細胞集団が存在
このリンパ腫では時にEBV陽性細胞が散見されるが、免疫低下状態による二次感染と考えられている。
本症例でもホジキン様の大型細胞はCD30+、CD20+、79α+、EBER+であり、EBVの感染に起因する大型B細胞の増殖と考えられた。
Hodgkin like cell、RS like cellが出現しうるホジキンリンパ腫以外のリンパ腫
・ALCL:Anaplastic large cell lymphoma
・AILT:Angioimmunoblastic T-cell lymphoma
・ATLL:Adult T-cell leukaemia/lymphoma
・PTCL:Peripheral T-cell lymphoma
・Primary cutaneous CD30-positive T-cell lymphoproliferative dislrders
-Primary cutaneous ALCL
-Lymphomatoid papulosis
・Diffuse large B-cell lymphoma anaplastic variant
・Age related EBV-associated B-cell lymphoproliferative disorders(senile lymphoma)
Q&A
・AILTでは高ガンマグロブリン血症が見られるが、B細胞はどこにあるのでしょうか?
>>AILTのリンパ節標本では類上皮組織球や多数の好酸球、形質細胞が見られることが多い。また、AILTは骨髄浸潤を伴うことが多いが、骨髄浸潤を認めない場合でも骨髄にポリクローナルな形質細胞増多がよくみられることが知られており、高ガンマグロブリン血症の原因となっていると考えられる。
・CD30の特徴とは?
>>classical Hodgkin lymphomaの多くで陽性となる。Bリンパ球なら腫瘍でなく反応性でも陽性となる。Tリンパ球は活性化されたものが染まるが、病理的にはTリンパ球でCD30が陽性ならリンパ腫と考えてよい。本症例では、CD20、79α、EBER に陽性を示したホジキン様の大型細胞も、CD3、4に陽性を示した腫瘍細胞もCD30陽性であった。ホジキン様のCD30陽性細胞はEBVに反応したBリンパ球で、CD3、4にも陽性を示した中型〜大型CD30陽性細胞はT細胞性リンパ腫であると考えられる。
◆主治医から学生さんへメッセージ
同じリンパ腫でも多彩な病理組織像を示し、それによって臨床所見も予後もそれぞれ特徴があります。奥深いと思いませんか?
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 07:01
| 血液内科(標本)
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播種性血管内凝固症候群(DIC):臓器障害の比較(図解20)
組織因子(TF)誘発DICモデルと、LPS誘発DICモデルの比較の続きです。
上図は、腎障害をクレアチニン(Cr)で、肝障害をALT(GPT)で評価したものです。私たちはこの成績を初めて見た時に、大変驚きました。LPS誘発DICモデルでは、高度の肝腎障害が見られたのに対しまして、TF誘発モデルではこれらの臓器障害はほとんど見られなかったからです。
血小板数やフィブリノゲンの低下で示される消費性凝固障害や、TATの上昇で示される凝固活性化の程度は、両モデル間で同等であったにもかかわらず、臓器障害の程度が大きく異なっていたのです。
特に、DICの本質と考えられる凝固活性化の程度が同程度であるにもかかわらず、臓器障害の程度がこんなにも異なっていたということは、DICにおいて臓器障害をきたす理由は凝固活性化が原因ではないということになります。
さて、一体DICにおける臓器障害の原因は何でしょうか?
続く。。。
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:50
| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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金沢大学血液内科・呼吸器内科 HP&ブログの訪問者数
金沢大学血液内科・呼吸器内科 (旧第三内科)HP(ホームページ)&ブログを、本年9月11日にリニューアルオープンさせていただきました。
おかげさまで、多くの皆様にご支援いただいています。本当にありがとうございます。
上図はセッション数(ほぼ訪問者数)の推移をお示しています。
昨日は、910人/日のご訪問をいただきました。
大変うれしく思いますとともに、皆様のご期待に添えるようなサイトとして、今まで以上に発展させていきたいと決意を新たにしているところです。
今後ともどうかよろしく、ご指導、ご支援のほど、お願い申しあげます。
金沢大学血液内科・呼吸器内科 (旧第三内科)HP
金沢大学血液内科・呼吸器内科 (第三内科)ブログ:血液・呼吸器内科のお役立ち情報
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:29
| その他
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日本血栓止血学会よりリンクの御礼
この度、日本血栓止血学会より、私たちのこのブログをリンク(日本血栓止血学会リンク集)していただきました。
毎日、血栓止血学を含む記事を充実させる努力をしてまいりましたが、学会よりご評価いただきましたことを大変嬉しく思っております。
この場を借りまして、学会に深く御礼申しあげます。
今後ともどうぞよろしくご指導くださいますよう、お願い申しあげます。
追伸:
私たちのブログも、以前より日本血栓止血学会の目玉記事特集「血栓止血の臨床ー研修医のためにー」をリンクさせていただいています。
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投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:21
| 血栓止血(血管診療)
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金沢大学血液内科系統講義試験(輸血学)
本日の、血液内科試験に関しまして、輸血領域の問題&正答と、簡単な解説をアップします。
28.ABO型異型(不適合)赤血球輸血について誤っているものはどれか.一つ選べ.
a) 死亡率は約20%である.
b) 原因として最も多いのは輸血バッグの取り違えである.
c) ショックやDIC,腎不全に備える.
d) バイタルサインを測定したのち輸血を中止する.
e) 原則ICU管理とする.
(正答)d
(解説)ABO不適合輸血が判明した場合、まずは輸血を中止する。
29.輸血療法に関して正しいものはどれか.一つ選べ.
a) 体重40 kgの患者に赤血球製剤を2単位輸血すれば,Hbは約2 g/dL上昇する.
b) 輸血した血小板の約50%は脾臓に捕捉される.
c) 血清アルブミン値1.5 g/dLは,アルブミン投与の絶対適応である.
d) 新鮮凍結血漿は,融解後6時間以内に輸注する.
e) アルブミン投与後の血管回収率は通常100%である.
(正答)a
(解説)
a)赤血球製剤を1単位輸血するとHbは(40/患者体重)分増加する。患者体重40 kgの場合40/40=1 g/dL増加することになる。2単位の場合これを2倍すればよい。
b)輸血した血小板の約1/3はただちに脾臓に補足され破壊される。したがって、輸血した血小板のうち、血小板数増加に寄与するのは全体の約2/3である。
c)アルブミン投与の適応は「低アルブミン血症に伴う血漿膠質浸透圧低下・循環血漿量低下の改善」である。難治性腹水を伴う肝硬変や重症熱傷などがこれに相当する。低アルブミン血症だけではアルブミン投与の適応と言えない。
d)新鮮凍結血漿は、解凍後の失活を避けるため、原則として解凍後3時間以内に輸注する。
e)投与したアルブミンのうち血中にとどまるアルブミンの割合は血管回収率と呼ばれ、通常40%程度である。病態により変動するが、100%になることはない。残りは血管外へ漏出する。「血漿膠質浸透圧低下・循環血漿量低下の改善」に有益なのは、通常血中アルブミンに限られる。
30.下記の中で,手術前に赤血球輸血準備を考慮すべきものはどれか.一つ選べ.
a) 患者がRhD陽性
b) 患者がAB型
c) 不規則抗体陰性
d) 輸血の可能性が20%
e) 予想出血量400 mL
(正答)e
(解説)
以下のいずれかの場合、手術前に赤血球輸血準備を考慮する。
・輸血の可能性が30%以上
・予想出血量が400 mL以上
・RhD陰性
・不規則抗体陽性
したがって、答えはeとなる。
31.輸血前に調べなくてもよい感染症検査はどれか.一つ選べ.
a) HBs抗原
b) HBs抗体
c) HBc抗体
d) HCV抗体
e) HTLV-I抗体
(正答)e
(解説)
輸血前患者は下記検査を受けることが推奨されている。
・HBs抗原
・HBs抗体
・HBc抗体
・HCV抗体
・HCVコア蛋白
・HIV検査(同意が必要)
32.不規則抗体に関し正しいものはどれか.一つ選べ.
a) 不規則抗体は,Landsteinerの法則に従う血液型関連抗体である.
b) 不規則抗体は経産婦より未産婦の方が検出されやすい.
c) 不規則抗体は,抗A・抗B抗体を含む血液型関連抗体である.
d) 血液センターから供給される赤血球製剤は副試験不要である.
e) 不規則抗体は溶血の原因にならない.
(正答)d
(解説)
a)不規則抗体は、Landsteinerの法則に従わない血液型関連抗体である。
b)不規則抗体は、妊娠・出産・輸血などを契機に産生される。
c)抗A・抗B抗体はLandsteinerの法則に従う規則抗体である。
d)血液センターから供給される血液は、不規則抗体陰性が確認されているため、通常は副試験不要である。
e)不規則抗体は溶血性副作用を起こすことがある。
33.輸血後GVHDについて誤っているものはどれか.一つ選べ.
a) 血液製剤に含まれるリンパ球が患者を攻撃して起こる.
b) 致死率はほぼ100%である.
c) 年々増加している.
d) 近親者からの輸血を避けることは,予防策となる.
e) 新鮮血を避けることは,予防策となる.
(正答)c
(解説)
血液製剤への照射が行われるようになってから、輸血後GVHDは少なくなった。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 20:40
| 医師国家試験・専門医試験対策
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金沢大学血液内科系統講義試験(平成20年12月2日)
本日の、金沢大学血液内科進級試験(系統講義試験)のうち、血栓止血領域の7題について、回答と簡単な解説をアップします。
なお、試験会場で見て回ったところでは、7〜8割くらいの人は、以下の7問に関しては満点だったと思います。
詳細な回答は、以前の過去問解説(右サイド医師国家試験・専門医試験対策のカテゴリー)も参照してもらえればと思います。
21.下記の疾患または病態のうち,検査所見の記載が正しいのはどれか.一つ選べ.
|
出血時間 |
PT |
APTT |
Fbg |
HPT |
a) 血友病 A |
延長 |
正常 |
延長 |
正常 |
正常 |
b) von Willebrand病 |
延長 |
正常 |
正常 |
正常 |
正常 |
c) 先天性第VII因子欠損症 |
正常 |
延長 |
正常 |
正常 |
正常 |
d) アスピリン内服 |
延長 |
正常 |
正常 |
正常 |
正常 |
e) Bernard-Soulier症候群 |
延長 |
正常 |
延長 |
正常 |
正常 |
PT:プロトロンビン時間
APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間
Fbg:フィブリノゲン
HPT:ヘパプラスチンテスト
(正答)d
(解説)ごく若干名の方が、cを選択していましたが、HPTはVII、X、II因子を反映するため、先天性第VII因子欠損症では、HPTが低下します。
22.下記の疾患のうち出血,血栓の両者がみられる疾患・病態はどれか.一つ選べ.
a. 高Lp(a)血症
b. 高ホモシステイン血症
c. 異常フィブリノゲン血症
d. 先天性α2プラスミンインヒビター(α2PI)欠損症
e. 高プラスミノゲンアクチベータインヒビター(PAI)血症
(正答)c
(解説)異常フィブリノゲン血症では、出血、血栓の両者をおこしやすいです。ごく若干名の方が、 高ホモシステイン血症を選択していましたが、この疾患は血栓性病態です。
23.抗リン脂質抗体症候群(APS)に関する記載内容として正しいものはどれか.一つ選べ.
a. 血小板数,APTT,PTが正常で,抗カルジオリピン抗体が陰性であれば,APSを否定できる.
b. 40歳未満のAPS症例は例外的である.
c. 動脈血栓症では脳梗塞が最も多い.
d. 習慣性流産の若年女性に対しては,妊娠判明後ワルファリンによる抗凝固療法を行う.
e. ループスアンチコアグラント陽性例では,フィブリノゲンが上昇する.
(正答)c
(解説)動脈血栓症では脳梗塞が最も多いです。ほぼ全員が正答だったと思います。
24.播種性血管内凝固症候群(DIC)の記載として正しいものはどれか.一つ選べ.
a. 血小板数,フィブリノゲンともに正常であれば,DICを否定できる.
b. 急性前骨髄球性白血病に合併したDICでは,血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が著増する.
c. 線溶抑制型DICでは,血中トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)が正常である.
d. 敗血症に合併したDICでは,血中プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)が著増する.
e. 敗血症に合併したDICでは,フィブリノゲンが低下しやすい.
(正答)b
(解説)ごく若干名の方が、eを選択していましたが、敗血症では強い炎症反応のためフィブリノゲンは上昇し、DICを合併しても、フィブリノゲンは低下しにくいです。
25.血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)の両者に共通した所見の記載として正しいはどれか.一つ選べ.
a. 直接ビリルビンの上昇
b. ク−ムス試験陽性
c. 血清ハプトグロビンの上昇
d. 血清LDHの上昇
e. ADAMTS 13に対する自己抗体の出現
(正答)d
(解説)ごく若干名の方が、aを選択していましたが、直接ビリルビンではなく間接ビリルビンと見間違えてしまったのかも知れません。
26.血栓止血関連疾患の治療に関する記載として正しいのはどれか.一つ選べ.
a. 深部静脈血栓症の再発予防としては,アスピリンによる抗血小板療法が有効である.
b. 単純性紫斑病に対しては,ビタミンCの投与が半数例で有効である.
c. アレルギー性紫斑病に対しては,ビタミンKの投与が半数例で有効である.
d. 閉塞性黄疸を合併したビタミンK欠乏症に対しては,ビタミンKの内服が有効である.
e. インヒビターを有する血友病B症例の出血に対しては,遺伝子組換え活性型第VII因子製剤を投与する.
(正答)e
(解説)ごく若干名の方がaを選択していましたが、深部静脈血栓症の再発予防としては,ワルファリンによる抗凝固療法が有効です。
27.患者:22歳女性.抜歯後の止血困難の精査目的に来院した.血液検査は下記の通りであった.Hb 9.2 g/dL,血小板数 32.7万/μL,出血時間17分,PT 11.0秒,APTT 74.3秒,フィブリノゲン 322 mg/dL,FDP 1.9 μg/mL.妹には幼少時から頻回に鼻出血がみられる.「この22歳女性の疾患」と「血友病A」に共通しているのはどれか.一つ選べ.
a. 遺伝形式
b. 主な出血部位
c. 巨大血小板の出現
d. 血小板粘着能の低下
e. 血漿由来第VIII因子製剤(コンファクトF)が有効
(正答)e
(解説)この問題が一番難しいのではないかと思いましたが、ほとんどの人が正答でした。von Willebrand病と、血友病Aに共通しているのはどれかという問題です。血漿由来第VIII因子製剤(コンファクトF)は、von Willebrand因子も含有した第VIII因子濃縮製剤です。
血栓止血領域の7問は以上です。
全員が合格になっていることを祈っています。
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 16:52
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播種性血管内凝固症候群(DIC):組織因子(TF)誘発DICモデル(図解19)
LPS誘発DICモデルと、組織因子(TF)誘発DICモデルの比較についての続編です。
前々回の記事で書かせていただいたように、血小板数、フィブリノゲン(Fbg)、TATからのみでは、両モデルの差異を見いだすことはできませんでした。
ところが、前回の記事でも書かせていただいたように。DダイマーとPAIによって両モデルの大きな差異を見いだすことができるのです。
TF誘発DICモデルでは、PAIの上昇はほとんどありません。線溶に対する抑制はなく、血栓が溶解しやすい病態になります。血栓が溶解されやすいために、Dダイマーは急峻に上昇します。
また、両モデルにおけるDダイマーの動態も対照的であることも強調したいと思います。LPS誘発DICモデルでは、Dダイマーの上昇は軽度で、しかも軽度上昇が遷延します。一方、TF誘発DICモデルでは、急峻に上昇しますが、その後速やかに低下します。
血小板数、Fbg、TATだけでは分からなかったことが、PAI、Dダイマーで分かるということは、いかにPAI、Dダイマーというマーカーが重要であるかを示しているのではないかと思います。
以下で、DIC関連記事とリンクしています。
NETセミナー:「DICの病態・診断」へ
NETセミナー:「DICの治療戦略」へ
播種性血管内凝固症候群(DIC)【図説】へ
DIC(敗血症、リコモジュリン、フサン、急性器DIC診断基準など)へ
投稿者:血液内科・呼吸器内科at 06:41
| 播種性血管内凝固症候群(DIC)(図解)
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